分子生物学分野

新潟大学大学院医歯学総合研究科

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研究内容の詳細

オートファジーとは

生命活動を維持するためには、一旦合成されたタンパク質を適切に分解処理する必要があり、そのメカニズムの破綻や異常はさまざまな疾患の発症原因となります。オートファジーは自食作用とも呼ばれ、細胞質の一部が隔離膜によって取り囲まれたオートファゴソームが形成される過程と、オートファゴソームがリソソームと融合しタンパク質等の細胞質成分を分解する過程からなる大規模な細胞内分解経路です(図1)。

図1図1. オートファジー。細胞質に隔離膜と呼ばれる膜構造体が出現し、細胞小器官を含む細胞質成分を取り囲んだオートファゴソームが形成される。オートファゴソームが加水分解酵素を含んだリソソームと融合することにより細胞質成分は構成成分(タンパク質の場合はアミノ酸)にまで分解される。

研究の背景

細胞内成分をリソソーム経由で分解する仕組みとしオートファジーの存在が明らかになったのは、1950年代後半から1960年代前半にかけた頃、即ちC. de Duveによるリソソームの発見後間もなくです。C. de Duve、TP. Ashford、AB. Novikoffらは、電子顕微鏡観察からオートファゴソームを見出し、オートファジーが栄養飢餓応答として重要であることを最初に示しました。この後、GE. MortimoreやPO. Seglenのグループにより主に生化学手法によりオートファジー研究は着実に進められました。しかし、“膜形成・輸送を伴うタンパク質分解"への実験手法の難しさから、他のタンパク質分解系や細胞内膜輸送研究に比べ、飛躍的な進展がありませんでした。1990年代、大隅良典教授(東京工業大学)のグループによる酵母オートファジーの発見そしてオートファジー必須遺伝子(Atg遺伝子)群の同定により、その分子機構とともに様々のモデル生物におけるオートファジーの生理機能が明らかになり、現在の爆発的な研究展開を迎えています。

オートファジーの生理機能

1)飢餓適応

オートファジーの最も基本的な役割は飢餓適応です。オートファジーは実際に栄養飢餓に応じて激しく誘導され、エネルギー産生やタンパク質新生のために、細胞内のタンパク質を分解し、アミノ酸を供給します(図2)。

図2

図2. オートファジーは、絶食に伴う栄養飢餓時だけでなく、受精卵の初期発生過程や出生後においても激しく誘導されます。水島昇教授(東京医科歯科大学)のグループは、遺伝子改変マウスの解析から、オートファジーが初期発生(おそらく母性タンパク質の分解を介したアミノ酸供給、それに引き続く新生タンパク質合成)に必須であること、胎盤からの栄養供給が絶たれる新生時飢餓を乗り越えるために必須であることを報告しています。

2)恒常性維持

栄養が十分に存在する状況においてもオートファジーは低いレベルですが常に起きています。この恒常的なオートファジーにより不要な細胞内小器官やタンパク質が除去され、細胞のホメオスタシスが保たれ、そして個体としての健康が維持されます(図3)。従って、恒常的オートファジーの破綻は神経変性や肝機能障害を引き起こします。詳しくはこちらへ

図3

図3. 恒常的オートファジー。私達はオートファジー必須遺伝子の一つAtg7のコンディショナルノックアウトマウスを作成し、様々な臓器特異的Creトランスジェニックマウスと交配させることにより、種々の臓器特異的オートファジー欠損マウスを作成、解析してきました。その結果、栄養条件に係らず低いレベルで起こっているオートファジー(基底レベルのオートファジー)が、恒常的な細胞内代謝回転を担うことにより様々な病気を防いでいることが明らかになりました。

3)選択的オートファジー

オートファジーは、飢餓に応じて細胞質中にオートファゴソームがランダムに形成されるため、基質選択性の低い分解系と定義されてきました。しかしながら、近年、オートファゴソーム前駆体やオートファゴソームに局在するAtgタンパク質との相互作用を介してある特定のタンパク質や変性ないしは不必要な細胞小器官が選択的にオートファゴソームに取り込まれ、分解されることが分かってきました。つまり、長い間非選択的と考えられてきたオートファジーに“選択性"があること、さらに、選択的オートファジーの破綻が、神経変性疾患、がん等の重篤疾患の発症に深く関与することが明らかになってきました。

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