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診療のご案内
不整脈診療分野

循環器内科では年間200件以上の不整脈診断・治療のためのカテーテル検査を施行しており、新潟県における不整脈治療に貢献しています。平成24年度から「不整脈センター寄附講座」も立ち上がり、他院、他県から数多くの紹介患者さんを受け入れています。特に、難治性不整脈(心室頻拍など)や心房細動患者さんは当科への紹介数が多く、カテーテルアブレーション、植込み型除細動器(ICD)などの治療件数が年々増加しております。

心房細動

心房細動は不整脈の中で頻度が高い部類のもので、高齢者になるほど多く見られます。今、日本では高齢化社会を迎え心房細動はどんどん増加しています。このまま増加すると、2050年には心房細動患者が全国で103万人に達し、全人口の1.1%を占めるといわれています。新潟県でも今のままの人口で計算すると、約2万5千人の方が心房細動を発症するということになります。この身近な不整脈について、よく知っていただきたいのです。

心房細動患者さんには、健診ではじめて指摘されるような症状の比較的少ない人もいますが、発作性に起き強い症状を呈する人もいます。しかし、症状の有無は治療の必要性と関係はなく、無症状の方でも治療した方がいい場合が多くあります。

左房内の血栓形成
左房内血栓により発症した脳梗塞

心房細動の一番怖い余病は血栓塞栓による脳梗塞です。著名な野球監督、サッカー日本代表を率いた監督、首相経験者などの有名な方が心房細動による脳梗塞をきたしてしまったことは、大きな衝撃を持って伝えられました。そして、心房細動による脳梗塞はとても重症化しやすいことが知られています。1年で半分の方がその後命を落とすというデータも出ています。そのため、リスク(危険因子)が多くある人(脳梗塞の既往がある、年齢75歳以上、高血圧、糖尿病、心不全)は抗凝固療法の適応となります。抗凝固療法には古くからワーファリンという薬が使用されています。ただ、この薬は食べ物(特に、納豆が食べられないことで有名)や他の薬との相性がときどき問題になります。そのような場合、最近新しく発売になった、プラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナなどの薬も相談のもと使用いたします。

心房細動はしばしば強い症状を引き起こします(強い動悸、胸痛、めまい、息切れなど)。その場合は抗不整脈薬を使用することによって症状が軽減する場合もありますが、不確実な効果しか得られない場合や薬剤の副作用が危惧される状況も多いため、カテーテルアブレーションによる治療を行っています。当院では主に80歳以下で症状にお困りの方や、心房細動の根治を希望される方を中心に、カテーテルアブレーションを勧めています。80歳を超える方や、アブレーションの効果が得られにくい左房径の大きい方では、基本的に薬物による治療によって症状を軽減させることを勧めていますが、個々の患者さんで相談いたします。

カテーテルとは、長くて細い管状や棒状の器具のことを呼びます。不整脈に対するカテーテル処置では、主に足や首の血管からカテーテル挿入して先端を心臓まで運びます。特殊なカテーテルを用いて高温や冷却によって心筋壊死を誘導し、不整脈を消失させる処置のことをアブレーション(心筋焼灼術)と呼んでいます。心房細動を中心にほとんどの頻拍性不整脈(脈の早い不整脈)がカテーテルアブレーションにより治療できる時代となりました。

心房細動に対するカテーテルアブレーション治療は、この10年で非常に進歩しました。カテーテルアブレーション治療の有効性は、発作性心房細動であれば1回の治療で70~80%です。心房細動が再発してしまっても2回目の治療を行うことで80~90%の患者さんにおいて心房細動を抑制することが可能です。また、心房細動が持続してしまって薬物治療が効かないような患者さんにおいても、カテーテル治療が有効な場合も多く認められます。現在、当院では、3種類あるカテーテル治療器具から患者さんの病状や心臓の形態に合わせて使用器具を選択し、心房細動のカテーテルアブレーション治療に当たっています。

1.高周波カテーテルアブレーション

 20年以上前からさまざまな不整脈のアブレーション治療に用いられているカテーテル器具です。カテーテル先端と体幹に貼った対極板の間に高周波の電気を流すことによって、カテーテル先端部分に熱を発生させます。不整脈の原因となっている異常な心筋や、不整脈の通り道となっている部位の心筋を標的にします。カテーテルを動かし、標的とした部分で通電することにより熱による心筋壊死を生じさせて不整脈を治療します。心房細動のメカニズムはまだ十分に明らかになっていませんが、左房に接続している肺静脈付近の心筋から心房細動のきっかけになる異常な興奮が生じることが分かっています。また、心房細動が持続するためにも肺静脈付近の心筋が関与していると言われています。そのため、心房細動のカテーテル治療では、左右上下の4本の肺静脈の入り口付近にカテーテルを留置して高周波によるアブレーションを行います。少しずつカテーテルを移動させることにより、肺静脈と左房との間に心筋壊死巣の輪状の隔離線を作成します。その結果、肺静脈と左房の間は電気的に隔離され、心房細動の発生や維持を抑制することができます。高周波カテーテルアブレーションでは、肺静脈だけでなく、心房内の様々な領域に線上または巣状のアブレーションを行うことが可能です。

2.冷凍凝固アブレーション(クライオアブレーション)

 当院では2016年より、新たな心房細動のカテーテル治療としてクライオバルーンを用いたアブレーション治療も行っています。上記の高周波カテーテルと同じく、クライオバルーンのカテーテルを心臓の中まで運びます。亜酸化窒素ガスを充満させてバルーン(風船)を膨らませ、肺静脈の一本を密閉させます。バルーンに接触している組織が-40℃から-60℃まで低下し、心筋が冷凍壊死します。壊死した心筋組織により、肺静脈と左房間に電気的隔離が完成し、結果として心房細動の発生や維持が抑制されます。上記の高周波カテーテルは、一度に治療できる範囲が狭く、多数のアブレーション回数が必要になりますが、クライオバルーンでは、一度に円周状の心筋壊死巣ができるため、治療時間が短縮できる利点があります。

クライオアブレーションによる心房細動治療

3.高周波ホットバルーンアブレーション

 当院では2017年より、ホットバルーンによる心房細動のアブレーション治療を開始しています。ホットバルーンは風船の水を高周波により60℃から70℃に温めて、その熱を用いて肺静脈入口部に心筋壊死巣を作り、肺静脈と左房間の電気的隔離を導きます。治療の方法はクライオバルーンによる方法と似ており、短時間で肺静脈に円周状の心筋壊死巣を作成できるのが特徴です。特にホットバルーンでは風船が柔らかくできており温水の量を調節することで風船の大きさを肺静脈の血管径に合わせて大小に調節することができます。

高周波ホットバルーンによる心房細動治療

心室性不整脈

心室頻拍の心電図

不整脈の中でも、心室頻拍や心室細動のように命にかかわるものもあります。とくに心室細動などは一瞬にして血圧が維持できなくなるため、失神および突然死の原因になるとても怖い不整脈です。多くの場合、心筋梗塞や心筋症など心臓病が原因になることがほとんどですが、稀に明らかな心臓病がなくてもそのような致死性不整脈を引き起こすことがあります。

心室頻拍の治療は、大きく分けて薬物治療、カテーテル治療、植込み型除細動(ICD)による治療の3つがあります。当科では、いずれの治療においても豊富な症例数があり、県内外より紹介患者を受け入れております。カテーテル治療に関しては、CARTO3システムやEnSiteシステムなどの最先端の設備を使用して心室頻拍のカテーテルアブレーションも積極的に行っております。

致死性不整脈が発生した場合時間的な余裕がない場合も多く、病院に搬送される前に重篤になる場合もあります。このような患者さんに対する治療として植込み型除細動器(ICD)があります。ICD は胸部の皮下に入れた本体と心臓に静脈を介して挿入したリードとの間で電気ショックをかけることにより致死性不整脈を停止するものです。最近では、リードからの電気刺激(ほとんど体には感じないほどの刺激)でショック無しに不整脈を停止する機能も発展しています。このシステムにより、致死性不整脈が発生してから10秒~20秒以内に治療が完了し、病院に搬送される前に治療が可能です。

以前は本体が大きく腹部に入れていましたが、現在では、ペースメーカーと同じように、本体は前胸部に、リード線は静脈を通して心臓まで持って行くことが可能となりました。さらに、最近ではリード線を静脈や心臓内に挿入することなく、皮下に除細動器本体とリード線を留置することで、致死性不整脈を停止することが可能なシステム(完全皮下植込み型除細動器:S-ICD)が開発されています。このシステムでは、リード線による血管閉塞や心臓を傷つけるリスクが低く、デバイスの細菌感染による重症の全身感染症の発症が少ないことが示されています。当院では、S-ICDの植込み治療も、いち早く取り入れ患者さんの診療にあたっています。

完全皮下植込み型除細動器(S-ICD)

リードレスペースメーカー

◆ ペースメーカーとは、

 心臓は休むこと無く動き続けていますが、このためには心臓の細胞が電気的に興奮することが必要です。心臓には、心臓の細胞を興奮させるための合図となる電気信号が存在し、刺激伝導系と呼ばれる特殊な心筋を通じて心臓全体に伝わります。一般に正常な脈というわれる調律を洞調律といいますが、この調律を司るのは右心房にある洞結節という部分です。洞結節の機能が低下した場合を洞不全症候群といい、脈拍数が一過性にまたは持続性に低下したり、脈が一時的に停止したりする場合があります(徐脈といいます)。ふらつきや失神などの症状を呈する場合があります。また、刺激伝導系の機能が低下したり消失した場合には、心房から心室に電気信号が伝わらず、心室の心筋細胞が興奮できなくなります。これを房室ブロックといいます。この場合にも、脈拍数の低下を引き起こし、ふらつき、失神、ときに突然死の原因となる場合があります。

 このような徐脈に対する有効な内服治療は開発されておらず、最も有効で確実な方法は、ペースメーカーの植え込み手術になります。ペースメーカーは心臓の脈拍を常に感知し続けています。徐脈が発生すると設定された決まりに従って人工的な電気信号を心臓へ送りこみ、心臓を刺激して脈を打たせることができます。一般的なペースメーカーでは、胸部の鎖骨付近の皮下に5~8cm程度のペースメーカー本体を植え込みます。静脈を経由して心臓内に1本または2本のリード線(電線)を心臓に挿入して留置し、皮下の本体と接続して機能する仕組みです。

◆ リードレスペースメーカーとは、

 リードレスペースメーカーとは、鉛筆ほどの太さで、長さがわずか2.6cmのカプセル型の本体でできています。皮下に植え込むのではなく、カテーテルを用いて直接に心臓内に挿入して留置します。そのため従来のペースメーカーのようなリード線が存在せず、胸部にも本体の留置がありません。そのためリード断線や創部感染などの問題が生じないという利点があります。また、10年以上の電池寿命が予想されます。心房と心室の電気的な同期ができないという問題があり、リードレスペースメーカーの適応となる患者さんはペースメーカーが必要な患者さんの3割程度になると言われています。当院でも2017年よりリードレスペースメーカーの植込手術を行っています。

リードレスペースメーカー

心臓再同期療法(Cardiac Resynchronization Therapy:CRT)

◆ 心臓再同期療法(CRT)とは

心臓刺激伝導障害を合併した心不全患者さんに対する特殊なペースメーカー治療です。心筋梗塞や拡張型心筋症などに代表される疾患では、心筋障害が進行すると左室の収縮機能が低下し、心不全と呼ばれる肺うっ血や浮腫や臓器障害をきたしてしまいます。心筋障害の進行は刺激伝導の障害を併発する場合があり、その際には心筋収縮に大きなずれが現れ、より心臓機能の低下をもたらしてしまいます。現在、この心臓の非同期状態を治療することのできる内服治療は存在しません。特殊なペースメーカーを上手く利用して心臓伝導障害を補正することで、心臓機能の改善を行う治療を心臓再同期療法(CRT)と呼んでいます。これは、心房・右心室・左心室側の冠状静脈などにペースメーカー導線(リード)を手術で配置し、ペースメーカー機器を用いて最適なタイミングで電気刺激することで行われます。この治療により心臓の収縮を再び適切に同期させることが可能となります。心臓再同期療法の植込み型デバイス機器の手術治療は、現在ではすべて静脈を経由した方法で、認可を得た施設で行うことが可能となっています。

◆ 心臓再同期療法(CRT)が必要な状態

現在、最も治療が勧められる患者さんは、最適な薬物治療が行われているにも関わらず中等度から重症の心不全状態にあり、左室駆出率の中等度以上の低下があり、心電図のQRS幅が120ms以上の心室内伝導障害を持つ洞調律の方です。最近では明らかな伝導障害を持つ軽症の心不全患者にも有効性が示されてきています。一方で、このCRTを受けた患者さんの中で、心不全が改善しない場合も30%ほど存在することが知られているため、十分な検査を行ったうえで治療が行われています。

CRTの本体にはペースメーカー機能が主であるCRT-Pと、致死的不整脈に対して除細動を行って突然死を予防する植込み型除細動器(ICD)機能も加わったCRT-Dの2種類があります。患者さんの病態によって適切な方が選択されます。

◆ 心臓再同期療法(CRT)の効果

CRTの治療開始後、数週間から数か月かけて心臓機能が改善し息切れ・倦怠感・むくみなどの心不全症状が改善することが期待されます。過去の研究で、CRTが有効と考えられる適切な患者さんにCRTが行われた場合には、その生命予後が改善した、心不全の再入院が減少した、歩行距離が延長した、生活の質が改善した、などの治療効果が得られることが報告されています。前述のように、心臓機能や心不全の改善の程度は患者さんにより様々であり、約30%の方には十分な改善が得られない場合があるため、どのような条件の場合にCRTへの良好な反応が得られやすいのか、現在(2016年4月)も当科やそのほかの施設で研究が進められています。

CRTの手術方法
診療実績

【平成26年度】
カテーテルアブレーション:113例
植込み型除細動器(ICD)手術:50例
心臓再同期治療(CRT-P, CRT-D)手術:11例
ペースメーカー手術:24例

【平成27年】
カテーテルアブレーション:152例
植込み型除細動器(ICD)手術:50例
心臓再同期治療(CRT-P, CRT-D)手術:10例
ペースメーカー手術:34例

【平成28年】
カテーテルアブレーション:199例
植込み型除細動器(ICD)手術:59例
心臓再同期治療(CRT-P, CRT-D)手術:24例
ペースメーカー手術:41例

【平成29年】
心臓電気生理検査:5例
カテーテルアブレーション:201例
植込み型除細動器(ICD)手術:53例
心臓再同期治療(CRT-P, CRT-D)手術:18例
ペースメーカー手術:39例
植込み型ループレコーダー手術:6例