新潟大学医学部医学科

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平成28年10月13日

No_47 ミャンマー呼吸器感染症制御へのアプローチ 第1回日本・ミャンマー合同シンポジウムin新潟

平成27年度より、日本医療研究開発機構(AMED)の感染症研究国際展開戦略プログラム(J-GRID)の一つとして、新潟大学はミャンマーの国立衛生研究所に感染症研究拠点を設け、ミャンマーで蔓延する感染症、特にインフルエンザや小児重症肺炎の制御に向けた予防、診断治療に資する新しい技術の開発及び高度専門人材の育成を目的とし、調査・研究を開始しました。
本シンポジウムでは、ミャンマーの研究者を招き、新潟大学と国立感染症研究所の研究者と共に合同の報告会を行います。

 日時:平成28年11月2日(水)午後1時〜5時
 会場:新潟大学医学部有壬記念館大会議室(二階)
 対象:本学教職員及び医療関係者・関係研究機関等
 備考:参加費無料・申込は下記問い合わせ先まで
 

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本件に関するお問い合わせ先
新潟大学ミャンマー感染症研究拠点
e-mail:arai-2006@med.niigata-u.ac.jp

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平成28年09月06日

No_46 9月3日(土)Post-CC-OSCEを実施しました

平成28年9月3日(土)に医学科6年生全員が参加して、臨床実習終了時OSCE(Post-clinical clerekship OSCE)プレトライアルという臨床スキルを評価する試験が施行されました。
医学科の学生に対して、4年次の共用試験OSCE以外のOSCEを実施するのは、新潟大学医学科で初めての試みです。試験はトラブルもなく順調に終了しました。
来年度以降は、卒業資格に必要な試験として6年生に対して実施されます。

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平成28年08月24日

No_45 てんかんや小頭症を伴う遺伝性重度発達障害の原因解明

新潟大学大学院医歯学総合研究科分子遺伝学の小松雅明教授、石村亮輔客員研究員らは、原因不明のてんかんや小頭症を伴う重度発達障害がたんぱく質修飾活性化酵素UBA5をコードする遺伝子の変異によって引き起こされることを突き止めました。
研究成果は、ヘルシンキ大学のAnna-Elina Lehesjoki教授、新潟大学大学院医歯学総合研究科神経解剖学竹林浩秀教授らとの共同研究で得られたもので、2016年8月18日(米国時間)のThe American Journal Human Genetics誌(IMPACT FACTOR 10.931)に掲載されました。
<<Biallelic variants in UBA5 link dysfunctional UFM1 ubiquitin-like modifier pathway to severe infantile-onset encephalopathy>>
 
研究成果のポイント
1. てんかんや小頭症を伴う重度発達障害患者を持つ欧州の複数の家系を特定した。
2. 遺伝子解析から、たんぱく質の修飾に関わるUBA5酵素をコードする遺伝子に変異を同定した。
3. 患者由来の変異を持つUBA5たんぱく質はその酵素活性が減弱していた。
4. UBA5関連遺伝子を神経細胞で欠失させたマウスは、神経細胞死を伴った小頭症を呈し、生後数日以内に死亡した。
5. 原因不明であった遺伝性重度発達障害の病態発症機構を解明した。
 
研究の背景
たんぱく質は生合成された後、リン酸化、糖鎖付加、脂質付加、メチル化、アセチル化等により修飾され、これら修飾により機能や活性が調節されます。高等生物では遺伝子配列に基づき合成されたたんぱく質が、直接機能を発揮することは少なく、多くは様々な修飾を受けることで機能の多様性が発揮されます。
UBA5はユビキチン様たんぱく質UFM1を活性化する酵素です。UFM1はUBA5酵素により活性化された後、UFC1酵素に転移され、最終的に細胞内の標的たんぱく質を修飾し、たんぱく質の機能変換を担うと考えられています(参考図1)。
 
研究の概要
原因不明であった遺伝性重度発達障害患者の遺伝子解析を行った結果、UBA5たんぱく質をコードする遺伝子に変異があること、さらにその変異によるUBA5酵素活性の減弱が疾患発症の原因であることを突き止めました。
 
研究の成果
今回、小松教授らは、原因不明のてんかんや小頭症を伴う重度発達障害患者を持つ欧州の5家系を特定し、遺伝子解析を行った結果、たんぱく質修飾分子UFM1を活性化する酵素UBA5をコードする遺伝子に変異(351番目のアラニン残基がトレオニン残基に置換する変異とたんぱく質の欠失を伴う変異の複合ヘテロ接合体)があることを発見しました。患者由来の変異を持つUBA5たんぱく質はその酵素活性が減少し(参考図2)、結果的にUFM1によるたんぱく質修飾も障害されました。さらに、中枢神経系特異的にUFM1遺伝子を欠損させたマウスを作成・解析した結果、神経細胞死を伴った小頭症を呈し、生後数日以内に死亡することを見出しました(参考図3)。これらのことは、UFM1たんぱく質修飾機構の異常が、遺伝性重度発達障害を引き起こすことを意味します。
 
今後の研究について
欧州人の0.28%が今回特定したUBA5の遺伝子変異(351番目のアラニン残基がトレオニン残基に置換する変異)キャリアーであり、多数のUBA5変異を有する重度発達障害患者が存在することが予想されます。また、ごく最近、小児性小脳変性疾患患者を持つ中国の1家系からもUBA5の遺伝子変異が報告されました。今後、日本人のUBA5遺伝子変異を持つ患者の検索を行うとともに、UBA5酵素活性を増加させる薬剤のスクリーニングを行うことで臨床応用を目指しています。
 

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研究内容に関する問合せ先
新潟大学大学院医歯学総合研究科 分子遺伝学分野
小松雅明 教授
e-mail:komatsu-ms@med.niigata-u.ac.jp

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平成28年07月01日

No_44 肝臓がんを抑制する新規化合物を同定

分子遺伝学の小松雅明教授、斎藤哲也特任助教らは、肝細胞がんが増殖する仕組みを解明し、その仕組みを打ち消す新規化合物により肝細胞がんの悪性化を抑制することに成功しました。
研究成果は、消化器外科学の若井俊文教授、東京大学創薬機構の岡部隆義教授、慶應義塾大学先端生命科学研究所の曽我朋義教授らとの共同研究で得られたもので、2016年6月27日(英国時間)のNature Communications誌(IMPACT FACTOR 11.470)に掲載されました。
<<p62/Sqstm1 promotes malignancy of HCV-positive hepatocellular carcinoma through Nrf2-dependent metabolic reprogramming >>
 
研究成果のポイント
1. 肝細胞がんはマロリー小体と呼ばれる構造体をその細胞内に蓄積するが、その機能は不明だった。
2. マロリー小体の主成分であるp62/SQSTM1は転写因子NRF2を活性化し、がん細胞の増殖、抗がん剤耐性に有利な状態へと誘導した。
3. p62/SQSTM1を標的にした新規化合物は、肝細胞がんの増殖を抑制し、抗がん剤の効果を高めた。
4. p62/SQSTM1あるいはNRF2を標的にした薬剤は肝細胞がん治療薬として期待できる。
 
研究の背景
肝細胞がんは肝臓組織から発生する日本人のがん死因3位の悪性腫瘍です。長期の飲酒、B型やC型肝炎ウイルスの持続感染が肝臓に炎症と再生を繰り返し、肝細胞がんを発症すると考えられています。また、最近では飲酒習慣のない脂肪肝からも、がんの発生が報告されています。肝細胞がんは、症状が乏しいため発見された時には進行しているケースが多く、また、再発率も高く、現在でも十分な治療は難しい状態です。
 
研究の概要
肝細胞がん患者のがん細胞において、マロリー小体と呼ばれる構造体が大量に存在することが知られています。今回、この構造体の主成分であるp62/SQSTM1が、肝細胞がんの増殖や抗がん剤耐性に有利な状態へと誘導する仕組みがあること、さらに、その仕組みを打ち消す新規化合物が肝細胞がんの増殖を抑制し、抗がん剤に対する感受性を増加させることを見出しました。
 
研究の成果
今回、小松教授らは、p62/SQSTM1たんぱく質が転写因子NRF2を分解へと導くKEAP1と結合し、恒常的にNRF2を活性化する仕組みがあること、さらに、このNRF2の活性化が肝細胞がんの増殖および抗がん剤耐性を引き起こすことを見出しました(参考図1)。次に、東京大学創薬機構との共同研究によりp62/SQSTM1たんぱく質によるNRF2活性化を防ぐ新規化合物K67を同定しました(参考図1)。K67は、肝細胞がん細胞の増殖を抑制するとともに、既存の抗がん剤の薬効を高めることが確認されました(参考図2)。
 
今後の研究について
現在、臨床応用を目指しK67の薬効を高めるK67誘導体の開発、NRF2自体を標的にした薬剤開発を進めています。これらの薬剤は肝細胞がん治療薬として期待されます。
 

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研究内容に関する問合せ先
新潟大学大学院医歯学総合研究科 分子遺伝学分野
小松雅明 教授
e-mail:komatsu-ms@med.niigata-u.ac.jp

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平成28年06月17日

No_43 口腔がん細胞の浸潤に関与する因子を新手法で解明しました

新潟大学大学院医歯学総合研究科顕微解剖学分野の三上剛和准教授と日本大学歯学部病理学講座の小宮山教授らの研究グループは、3次元器官培養モデルの開発と網羅的な遺伝子発現解析によって、口腔がん細胞の浸潤に、タンパク質分解酵素の働きを抑制するSecretory Leukocyte Protease Inhibitor(SLPI)因子が深く関与していることを明らかにしました。本研究の成果は、平成28年6月17日のCancer Letters誌(IMPACT FACTOR 5.992)に掲載予定です。(電子版は5月28日公開)
 
【本研究成果のポイント】
・初期の口腔がんが浸潤する(拡がる)メカニズムの一部を解明しました。
・浸潤する様子を観察するために、新しい3次元器官培養モデルを開発しました。
・新たに開発した培養モデルは、今後のがん研究の進展に大きく貢献するとともに、今回発見した因子を標的としたがん細胞の浸潤・転移に対する新薬の開発への応用も期待されます。
 
Ⅰ.研究の背景
口腔がんは、日本では毎年約1万人近くの人が罹患し、約7000人が死亡しています(国立がんセンター統計)。口腔に多いがんは舌癌と歯肉がんで、舌は血管が豊富でよく動く臓器です。がんが進行すると血流やリンパ流に乗ってリンパ節に転移することから、舌癌は転移のリスクが高い癌だと考えられます。また、歯肉では、すぐ下に顎骨があり進行すると骨を壊して大きな手術が必要になります。
口腔がんの多くは、がんが発症する前の段階にある前癌病変があり、やがて浸潤・転移するがんに進行します。したがって、初期のがんが浸潤する(拡がる)メカニズムを解明できれば、がんの早期治療に役立つと考えられます。しかし、これまでにもがんの浸潤機構について世界中で多くの研究がなされてきましたが、従来のがんの浸潤モデルは、動物実験の他、寒天培地(アガー)の上にがん細胞を撒いて浸潤増殖を観察するもので、ヒトの生体内の微小な環境を十分に反映しているとはいえませんでした。そこで、私たちは人の体に近い環境の実験モデルを作り、がんの浸潤メカニズムを解明する研究を進めてきました。
 
Ⅱ.研究の概要
私たちはがん細胞の浸潤能をより正確に評価する方法として、ヒトの良性腫瘍である子宮筋腫の切片を使用した3次元器官培養モデルを開発しました。そして、この培養モデルと網羅的な遺伝子発現解析によって、口腔がん細胞の浸潤に、タンパク質分解酵素の働きを抑制するSecretory Leukocyte Protease Inhibitor(SLPI)因子が深く関与していることを明らかにしました。
 
Ⅲ.研究の成果
私たちは、ヒトの良性腫瘍である子宮筋腫の切片の上にがん細胞を撒いて浸潤する様子を観察する3次元器官培養モデルを開発しました。いままでの研究から、がん細胞が浸潤・転移する時に、タンパク質分解酵素の働きを抑制するSLPI因子が増加することが解っていましたが因果関係は明らかでありませんでした。私たちはSLPIを発現し、浸潤能を有する口腔がん細胞のSLPI遺伝子を欠損させ、その浸潤能に対する影響を、新規に開発した子宮筋腫培養モデルを使って調べてみました。
実験の結果、SLPI欠損がん細胞では、予想どおり浸潤能が消失していることが明らかになり、一方SLPIを欠損させていない癌細胞は筋腫切片内に浸潤していました。そこで、この2つの癌細胞について、マイクロアレイを用いて遺伝子の網羅的解析を行いました。SLPI欠損がん細胞と、欠損させていないがん細胞の遺伝子発現を比較したところ、さまざまな遺伝子の発現を調節する転写因子SNAI1の発現が顕著に抑制されており、細胞接着因子であるE-Cadherinの発現が増加していたことを明らかにしました。
E-Cadherinは、細胞どうしの接着を担う因子であり、その消失は、がん細胞の浸潤、転移において不可欠です。またSNAI1は細胞内でこのE-Cadherinの発現を抑制する因子であります。私たちの研究結果から、SLPIがSNAI1を介してE-Cadherinの発現を制御することによって、がん細胞の浸潤に重要な役割を果たしていることがわかりました。
今後、新たに開発した子宮筋腫組織を用いた3次元器官培養モデルが、がん研究の進展に大きく貢献するとともに、SLPIを標的としたがん細胞の浸潤・転移に対する新薬の開発への応用も期待されます。

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Ⅳ.今後の展開
がん細胞が浸潤する際には、がん細胞自身の特性の他に、その周りの生体内の環境が大きな影響を与えます。今回開発した培養モデルを参考に、がん細胞が浸潤する際に必要な生体内の微小環境についても研究を進め、より簡便で使いやすい実験モデルを開発していく予定です。また、SLPI遺伝子の発現を制御できるタンパク質や、化学物質などを発見し、新薬の開発へ繋げていければと考えています。
 
Ⅴ.研究成果の公表
これらの研究成果は、平成28年6月17日のCancer Letters誌(IMPACT FACTOR 5.992)に掲載予定です。(電子版は5月28日公開)
論文:Mikami Y, Fukushima A, Komiyama Y, Iwase T, Tsuda H, Higuchi Y, Hayakawa S, Kuyama K, Komiyama K.Human uterus myoma and gene expression profiling: A novel in vitro model for studying secretory leukocyte protease inhibitor-mediated tumor invasion.Cancer Lett. 379:84-93.2016.doi:10.1016/j.canlet.2016.05.28.
 
本件に関するお問い合わせ先
新潟大学医歯学総合研究科顕微解剖学分野
准教授 三上 剛和(みかみ よしかず)
e-mail:mikami-yoshikazu@med.niigata-u.ac.jp
 

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平成28年06月10日

No_42 神経生理学分野の長谷川功教授らの論文がNature Communications誌に掲載されます

−記憶障害の病態解明やBMI技術の開発促進に期待−
独自に開発した高密度皮質脳波(ECoG)法により、脳活動が作り出す空間的なパターンによって長期記憶がコード(表現)されることを明らかにしました。
 
本研究のポイント
・新たに開発した高密度皮質脳波電極を使って、サルの大脳側頭葉で長期記憶をコード(表現)する脳活動の空間的なパターンを発見。
・脳活動のパターンから記憶内容をデコーディング(解読)することに成功。
・今回の発見は、記憶障害の病態解明や、Brain-machine Interface技術の開発促進に繋がることが期待される。
 
概要
新潟大学超域学術院准教授(現・高知工科大学脳コミュニケーション研究センター・情報学群教授)の中原潔、新潟大学大学院自然科学研究科・元大学院生の安達賢、新潟大学大学院医歯学総合研究科教授の長谷川功らの研究グループは、独自に開発した高密度皮質脳波(ECoG)法を使ってサルが記憶を想起する際の脳の側頭葉の活動を調べ、脳活動が作り出す空間的なパターンによって長期記憶がコード(表現)されることを明らかにしました。
これまでの研究から、側頭葉に局在する比較的少数の記憶ニューロンが記憶をコードすることが分かっていましたが、従来の手法では個々の記憶ニューロンの活動を調べることしかできませんでした。そのため、脳における記憶痕跡の形成が主に少数の記憶ニューロンによる局所神経回路によるものか、それとも、より広範な脳の領野に広がる神経回路の再編を伴うものか分かっていませんでした。
今回の実験で研究グループは、サルの側頭葉のうち記憶ニューロンが局在することが分かっていた36野を中心として、TE野、海馬傍皮質、及び嗅内皮質の一部を含むように128チャンネルのECoG電極を設置し、サルに記憶した図形を見せた時に生じる脳活動の空間パターンを調べました。その結果、シータ帯域(4-8Hz)の周波数を持つ脳活動の空間パターンが図形の記憶をコードすることが分かりました。この空間パターンは36野からTE野、海馬傍皮質の一部にまで広がっていたことから、脳の領野間に広がるメゾスコピックな神経回路の再編が記憶痕跡の形成に重要であることが示唆されました。
高密度ECoG法は広い範囲の大脳皮質の脳活動を高い次空間分解能で記録することを可能とするもので、高次脳機能を担う神経回路の動作原理の解明やアルツハイマー病などを含む認知症の病態解明、さらにはBrain-machine Interface(BMI)技術への応用が期待されます。
本研究論文は2016年6月10日午後6時(日本時間)に国際科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(オープン・アクセス)に掲載されます。
 
研究の背景
記憶の神経機構の解明は神経科学における最も重要な問題の一つであり、アルツハイマー病などの記憶障害の病態の解明など、医学的にも大きな意義を持つものです。
個々の記憶は、例えば人の顔と名前のように、関連のあるもの同士が結び付けられて記銘されます。このような記憶を連合記憶と呼びます。サルを使ったこれまでの研究で、脳の側頭葉(注1)のうち、36野と呼ばれる領域に局所的に存在するニューロン群が連合記憶をコードすることが明らかにされています。しかし従来の手法では、一個一個の記憶ニューロンの活動を調べることしかできなかったため、脳における記憶痕跡の形成が主に少数の記憶ニューロンによる局所的な神経回路によるものか、それとも、より広範な脳の領野に広がる神経回路の再編を含むものか、分かっていませんでした。
 
研究の内容
この問題に取り組むため、研究グループの鈴木隆文(情報通信研究機構・脳情報通信融合研究センター主任研究員)らが中心となって、高密度皮質脳波電極(ECoG電極)を独自に開発しました(図1、注2)。このECoG電極は厚さ20ミクロンのフィルム上に128個の電極を最小1.25ミリ間隔で配置したもので、脳の表面に密着させて広い範囲の脳活動の空間的パターンを高い時空間分解能で計測することができます。このECoG電極を、記憶ニューロンが局在することが分かっていたサルの側頭葉の36野を中心として、TE野、海馬傍皮質、及び嗅内皮質の一部を含むように設置しました。このサルに5組の図形のペアを学習させ、ペアの片方を手がかりとして見せた時、もう片方の図形を想起する対連合記憶課題を訓練しました(図2、注3)。そしてサルがこの課題を行う間、側頭葉に生じる脳活動のパターンを調べました。
解析の結果、サルにペアとして記憶した図形を見せた時、互いに類似した脳活動のパターンが生じることが分かりました。この結果から脳活動の空間パターンが図形の連合記憶をコードするものと考えられます。この空間パターンは36野からTE野、海馬傍皮質の一部にまで広がっていたことから、脳の領野間に広がるメゾスコピックな神経回路の再編が記憶痕跡の形成に重要であることが示唆されました(図3)。
また、この脳活動のパターンはシータ帯域(4-8Hz)の活動において見られました(注4)。シータ帯域の脳活動は脳の情報伝達に関わるとされることから、今回見つかった脳活動パターンは、記憶をコードする神経回路における情報の流れのパターンを示している可能性があります。
さらに、研究グループの神谷之康(京都大学大学院情報学研究科教授、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)脳情報研究所客員室長、高知工科大学脳コミュニケーション研究センター客員教授)らが中心となって、脳情報デコーディング(解読)の手法を用いて解析したところ、脳活動のパターンから、記憶した図形ペアを高い精度で解読することに成功しました(図4)。
最後に、このような脳活動パターンの類似は連合記憶学習を行ったことによって生じたことを確かめるために、サルに新しく3ペアの図形を記憶学習させ、学習前後の脳活動パターンを比較しました。その結果、学習前には見られなかった脳活動パターンの類似性が、学習後に新たに生じることが明らかとなりました。
 
社会的意義・今後の展開
研究グループが開発した高密度ECoG法は、広い範囲の大脳皮質の脳活動の高精度の計測を可能とするもので、記憶や認知などの高次機能を産み出す脳の機構を神経回路のレベルで明らかにすることができます。こうした高次脳機能の動作原理を明らかにする研究は、アルツハイマー病などを含む認知症の病態解明に向けて基礎的な知見を提供するものと期待されます。またECoG法はBMI技術への応用が期待されており、本研究結果はBMI技術開発促進にも大きく貢献するものです。

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用語解説
注1)側頭葉
大脳は前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉の4つの葉に分けられる。側頭葉は外側溝の腹側に位置し、聴覚、高次視覚認知、記憶などの中枢である。
 
注2)皮質脳波
通常の脳波は頭皮上から記録されるが、皮質脳波は大脳皮質上に設置した電極から直接記録されるものであり、電極直下のニューロンの集団が生じる集合電位を高精度に計測できる。
 
注3)対連合記憶課題
いくつかの単語や図形を対として被験者に予め覚えてもらい、対の片方を手掛かり刺激として提示して、もう片方を思い出してもらう記憶課題。臨床的にも記憶障害などの検査で用いられる。
 
注4)シータ波
脳波など、ニューロンの集団によって生じる電気活動は特定の周波数を持った律動を示すことが多い。このうち、およそ4-8Hzの周波数帯域の律動を示すものをシータ波と呼ぶ。
 
発表雑誌
雑誌名:「Nature Communications」
論文タイトル:
“Associative-memory representations emerge as shared spatial patterns of theta activity spanning the primate temporal cortex”
 
著者:
Kiyoshi Nakahara¹,², Ken Adachi¹, Keisuke Kawasaki, Takeshi Matsuo, Hirohito Sawahata, Kei Majima, Masaki Takeda, Sayaka Sugiyama, Ryota Nakata, Atsuhiko Iijima, Hisashi Tanigawa, Takafumi Suzuki, Yukiyasu Kamitani, Isao Hasegawa²
1:equal contribution; 2:co-corresponding author
 
DOI: 10.1038/ncomms11827
 
謝辞
本研究は、科学研究費補助金(日本学術振興会、文部科学省)、革新的研究開発プログラム(内閣府)、新分野創成センターブレインサイエンス研究分野プロジェクト(自然科学研究機構)、戦略的国際共同プログラム(科学技術振興機構、日本医療研究開発機構)、戦略的情報通信研究開発推進事業(総務省)、武田科学振興財団、脳科学研究戦略推進プログラム(文部科学省)からの助成を受けました。
 
お問い合わせ先
長谷川 功(はせがわ いさお)
新潟大学大学院医歯学総合研究科神経生理学分野 教授
e-mail:ihasegawa-nsu@umin.ac.jp
 

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平成28年04月08日

No_41 気持ちを新たに臨床実習へ〜医学部医学科白衣式

 臨床実習を行うにふさわしい技能・知識を身に着けているかを評価する共用試験OSCE・CBTに合格して春から臨床実習に参加する医学部医学科新5年生に白衣を授与し、門出を祝う白衣式を挙行いたしました。128名の新5年生には共用試験修了証明書および大学のネーム入りの白衣が授与されました。
 また、宣誓書に一人一人がサインをし、学年代表の巻渕絢子(まきふちあやこ)さんが牛木医学部長および教授陣の前で、臨床実習を行う上での遵守事項を守ることを誓いました。
 式典は終始和やかな雰囲気で行われ、出席した教授陣から白衣を着せてもらい、激励を受けた新5年生たちは臨床実習に向けて気持ちを新たにしていました。
 これから新5年生は本学医歯学総合病院および魚沼基幹病院において、医師免許を取得するための実務を学んでいきます。

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平成28年03月29日

No_40 がんプロフェッショナル養成推進プラン「がん専門医療人養成コース」2016年度入学生募集

東北がんプロフェッショナル養成推進プラン
東北大学・山形大学・福島県立医科大学・新潟大学共同プロジェクト
 
地域がん医療に貢献する「がん専門医療人養成コース」2016年度入学生募集
 
腫瘍専門医養成コース
・がん薬物療法医養成コース(がん教育改革)
・がん薬物療法医養成コース(地域腫瘍内科医)
・がん専門医養成コース(地域腫瘍外科医)
・放射線腫瘍医養成コース
・がん緩和医療医養成コース(地域緩和医療医)
 
医師以外のメディカルスタッフ養成コース
・博士前期課程・医学物理士養成コース
・博士後期課程・医学物理コース
 
がん専門インテンシブ研修コース
・がん薬物療法医養成コース(インテンシブ)
・医学物理士養成・臨床研修コース(レジデント)(インテンシブ)
 

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問い合わせ先
〒951-8510 新潟県新潟市中央区旭町通1番町757
新潟大学大学院医歯学総合研究科がんプロ事務局
TEL:025-227-0389 FAX:025-227-0715 E-mail:n-ganpro@med.niigata-u.ac.jp
ホームページURL:http://www.med.niigata-u.ac.jp/gan/

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平成28年02月23日

No_39 新潟大学の医学物理士レジデントコースが、医学物理士認定機構の医学物理士臨床研修課程(条件付き)認定を受けました

 新潟大学医歯学総合病院の医学物理士レジデントコースが、一般財団法人医学物理士認定機構(JBMP: Japanese Board of Medical Physicist Qualification)の2016年度医学物理教育コース認定審査で、「条件付き認定」と判定され、2016年4月1日からJBMP認定臨床研修課程となることが承認されました。条件付きではありますが、医学物理士レジデントコース(臨床研修課程)のJBMP教育コース認定は、筑波大学に次いで全国で2番目であり、今後より一層の充実を目指していきます。
 新潟大学医学物理士レジデントコースは、大学院を修了し、医学物理士認定試験に合格した人が、放射線腫瘍学臨床医学物理士として、独立して高精度放射線治療の精度管理を行う能力を身に着けるための2年間の臨床研修コースであり、IAEA-TCS37の能力評価シートを用いて放射線腫瘍学臨床医学物理士に必要な能力項目とレベルを満たす、国際標準臨床医学物理士レジデントコースを目指しています。
 

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平成28年02月09日

No_38 放射線医学分野の青山英史教授が主任研究者を務めた多施設共同研究が米国臨床腫瘍学会(ASCO)の「Clinical Cancer Advances 2016 (CCA)」に選定されました

新潟大学医歯学総合研究科放射線医学分野の青山英史教授が主任研究者を務めた日本放射線腫瘍学研究機構(JROSG)多施設共同研究が、米国臨床腫瘍学会(ASCO)が選定する最も重要と考えられる研究を総括した「癌治療の進歩と最新動向に関する年次報告(2016年);Clinical Cancer Advances 2016 (CCA)」に選ばれました。この研究は、転移性脳腫瘍に対して定位照射単独治療と定位照射と全脳照射併用治療を比較した臨床試験(JROSG99-1)の二次解析であり¹、定位照射に全脳照射を併用することで恩恵を受ける可能性がある患者群を特定したものです。この結果が癌治療の進歩における重要な貢献と認定されました。本報告はASCOのサイトに掲載されており、PDFデータのダウンロードが可能です(www.CancerProgress.Net/cca)、さらに、専門雑誌「Journal of Clinical Oncology」にてオンライン公開されています。

Research led by Hidefumi Aoyama, Niigata University, one of the members of Japanese Radiation Oncology Study Group (JROSG) was selected by the American Society of Clinical Oncology (ASCO) for inclusion in Clinical Cancer Advances 2016, the Society’s annual review of progress against cancer and emerging trends in the field. The study, which is the secondary analysis of the randomized clinical trial comparing stereotactic radiosurgery (SRS) monotherapy and SRS plus whole brain radiotherapy (WBRT) for brain metastases (JROSG99-1)¹ and identified a group of patients who may benefit from combination of SRS and WBRT, is featured as one of the year’s major achievements in clinical cancer research and care. To learn more, read the report at www.CancerProgress.Net/cca.
 

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Reference:
1. Aoyama H, Tago M, Shirato H; Japanese Radiation Oncology Study Group 99-1 (JROSG 99-1) Investigators. Stereotactic Radiosurgery With or Without Whole-Brain Radiotherapy for Brain Metastases: Secondary Analysis of the JROSG 99-1 Randomized Clinical Trial. JAMA Oncol. 2015 Jul;1(4):457-64. doi: 10.1001/jamaoncol.2015.1145.

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