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1.研究概要

 大学院医歯学総合研究科において、以下の二つの分野に分かれ、両分野で専門性の高い研究が行われている。両分野が協力することで腫瘍外科学と機能再建医学とが融合した研究もおこなわれている

  • 1)分子細胞医学専攻/遺伝子制御/腫瘍外科学分野
  • 2)生体機能調節医学専攻/機能再建医学/消化器・一般外科学分野

 詳しい研究内容については、消化器外科学ホームページをご覧ください。

2.臓器別研究グループ

  • 肝胆膵グループ
  • 上部消化管グループ
  • 下部消化管グループ
  • 乳腺・内分泌外科・外科代謝・栄養グループ

3-1.肝胆膵グループの研究テーマ

  • 胆道癌の進展様式に関する臨床研究(研究成果参照)
  • 再発胆道癌・膵癌に対する外科切除の臨床的意義に関する多施設共同研究
  • 膵全摘の臨床的意義に関する多施設共同研究
  • 肝胆膵悪性腫瘍におけるDNA damage responseに関する研究
  • 膵移植・肝移植の実践と免疫学的研究

3-2.上部消化管グループの研究テーマ

  • StageV治癒切除胃癌に対する術後補助化学療法に関する臨床試験
  • 食道癌における化学放射線療法を併施した集学的治療に関する臨床試験(2件)
  • 洗浄細胞診陽性胃癌に対する胃切除の予後に与える影響に関する研究
  • 胸部食道癌における食道切除の術後呼吸機能およびQOLに与える影響に関する研究
  • 消化管間質腫瘍(GIST)の遺伝子多型と分子標的薬に関する臨床試験(5件)・治験(4件)

3-3.下部消化管グループの研究テーマ

  • 大腸癌における遺伝子変異とその臨床的意義に関する研究(研究成果参照)
  • 大腸癌における薬物療法耐性機序に関する研究
  • 大腸癌における発育先進部病理所見の臨床的意義に関する研究
  • 潰瘍性大腸炎に合併する大腸癌の分子生物学的研究

3-4.乳腺・内分泌外科・外科代謝・栄養グループの研究テーマ

  • 乳癌における個別化医療実現へ向けた網羅的遺伝子変異解析に関する研究
  • 癌微小環境における癌細胞と間質の相互作用に関する研究
  • 薬物療法(ホルモン療法、化学療法)の耐性機序に関する研究
  • 癌固有の代謝制御における脂質メディエーターの働きに関する研究(研究成果参照)

4.研究の成果

[分野] 悪性腫瘍一般(腫瘍外科学)

[研究テーマ] プレシジョン・メディシンを目指した大腸癌201例における包括的がん遺伝子検査

[内容]
次世代シークエンサーを用いたがん遺伝子検査の最終目標は、がん遺伝子変異の特徴に基づいて個別に最適治療を行うプレシジョン・メディシンを実現することである。我々は包括的遺伝子検査を用いてがんに関連する遺伝子のみを調べることで、大腸がんにおいて重要なドライバー遺伝子変異や遺伝子変異頻度を効率よく解析できるという仮説を立てた。本研究の目的は、日本人大腸がんにおいて、固形がんで重要な415遺伝子について解析し、上記仮説を検証することである。大腸がん患者、日本人201例と米国人108例を対象とし、次世代シークエンサーによる包括的がん遺伝子検査を用いて、415遺伝子について深度500倍のディープシークエンスにより遺伝子変異を解析した。TCGAで全エクソン解析を行われた大腸がん224例と結果を比較検討した。日本と米国の大腸がん患者において、99%の症例でドライバー遺伝子変異を検出した。全体として日米の大腸がんの遺伝子変異パターンは類似していたが、ERBB2やBRAF遺伝子変異の頻度は日米間で有意差が認められた (図A, B)。日米両国の大腸がん患者において、遺伝子変異の多いHypermutated phenotypeを示す症例が同定され、これらの患者では免疫チェックポイント阻害薬が奏効する可能性が考えられる(図C-E)。大腸がんに関連する分子標的薬の標的となる26遺伝子を用いて、クラスター解析を行ったところ、大腸がん患者は8つの異なるサブクラスに分類され、各々のサブクラスにおいて、遺伝子変異パターンと関連した分子標的治療が示唆された(図F)。EGFR抗体治療が施行されたStage IV大腸癌(n=39)ではサブクラスによって治療効果が異なり、Progression-free survivalに有意差を認めた(P<0.009)(図G, H)。415遺伝子パネルを用いたがん遺伝子検査は、重要な遺伝子変異を確実に同定することができ、日本人の大腸がんにおける最適な治療提案を行うことができる可能性がある。

[写真など]

図1

[分野] 悪性腫瘍一般(腫瘍外科学)

[研究テーマ] 悪性腫瘍におけるスフィンゴシン-1-リン酸の機能と臨床的意義に関する研究

[内容]
スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は、脂質でありながらタンパク質と同様に細胞内外で情報伝達物質をして機能する脂質メディエーターである。S1Pは、癌細胞の増殖や遊走、癌微小環境中の血管新生やリンパ管新生、炎症細胞の誘導など多様な機能を有しており、癌に対する新たな治療標的として期待されている。S1Pは、癌細胞や周囲の血管・リンパ管内皮細胞などに存在する2種類のS1P産生酵素(SphK1、SphK2)によって産生され、産生されたS1Pは細胞外に放出され、その機能を発現する。
われわれはこれまでに、SphK1が乳癌細胞のS1P産生(J Biol Chem 2010)や、乳癌のリンパ行性転移に重要な機能を有すること(Cancer Res 2012)を明らかにしてきた。またS1Pは脂質のため、これを直接測定することは困難であったが、国際共同研究により乳癌手術検体中のS1Pを測定し、実際の乳癌症例において癌部のS1P濃度が正常乳腺と比較して高値であること(J Surg Res 2016)、原発巣のS1P濃度がリンパ節転移と相関することを明らかにした(J Surg Res 2016)。また腫瘍を取りまく微小環境中のS1Pの役割を明らかにするため、組織標本中の間質液を採取する新規の手法を開発し、腫瘍間質液中のS1P濃度の測定を行うことにも成功した(J Mammary Gland Biol Neoplasia 2016)。さらに乳癌だけでなく、大腸の慢性炎症や大腸炎関連発癌におけるS1Pの関わりについても明らかにした(Cancer Cell 2017)。
現在われわれは胃癌や膵癌などの臨床検体においてもS1Pの測定を行っており、臓器横断的なS1Pの臨床的意義について研究を進めている。また最新の動物実験モデルを用いて、癌細胞と宿主のそれぞれが産生するS1Pと癌の進展との関わりについて詳細な解析を行っている。このような基礎医学と臨床とを結ぶトランスレーショナルリサーチを通して、S1Pシグナルを標的とした効果的で安全な治療法の開発に挑みたい。

[写真など]

図2

[分野] 悪性腫瘍一般(腫瘍外科学)

[研究テーマ] 胆嚢癌における上膵頭後部リンパ節郭清の妥当性

[内容]
胆嚢癌において、上膵頭後部リンパ節を領域リンパ節に含めるか否かに関しては未だ議論がある。本研究では上膵頭後部リンパ節郭清の必要性を明らかにするために、上膵頭後部リンパ節転移が胆嚢癌の予後に与える影響を評価した。上膵頭後部リンパ節郭清を含む根治切除が実施された胆嚢癌患者148例を対象とした。各々のリンパ節における転移頻度と転移陽性例の生存率を算出した。148例中70例(47%)がリンパ節転移陽性であった。UICCのTNM分類で領域リンパ節として定義されている胆嚢管リンパ節、胆管リンパ節、門脈リンパ節、肝動脈リンパ節、総肝動脈幹リンパ節に関して、転移頻度は8.3%〜24.3%、転移陽性例の5年生存率は12.5%〜46.4%であった。上膵頭後部リンパ節に関しては、転移頻度12.8%、転移陽性例の5年生存率は31.6%であった。上膵頭後部リンパ節のみに起因する遠隔リンパ節陽性の症例の成績(5年生存率55.6%)は、上膵頭後部リンパ節以外の遠隔リンパ節陽性の症例の成績(5年生存率15.0%)よりも良好であった(p=0.046)。一方、前者の成績と領域リンパ節のみ転移陽性の症例の成績(5年生存率40.7%)とは同等であった(p=0.426)。胆嚢癌において、上膵頭後部リンパ節は転移頻度と生存率への影響の点で領域リンパ節と同等である。上膵頭後部リンパ節を領域リンパ節に含めることを考慮すべきである。

[写真など]

図3


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