遺伝性皮膚疾患外来

遺伝性疾患

遺伝性疾患とは、単一遺伝子病・多因子遺伝病・染色体異常・ミトコンドリア遺伝病に分類されます。
 単一遺伝病:ある一つの遺伝子に何らかの遺伝子変異があることによって生じます。皮膚科領域では、皮膚や粘膜以外の臓器に病変を合併する症候性と、基本的に皮膚や粘膜のみに症状がでる非症候性に分かれます。症候性の単一遺伝性皮膚疾患には、皮膚線維腫症や結節性硬化症、Ehlers-Danlos症候群、弾性線維性仮性黄色腫、Fabry病などがあります。一方、非症候性の単一遺伝性皮膚疾患には、皮膚がガサガサになる角化症(魚鱗癬など)、水ぶくれが生じやすい水疱症(表皮水疱症など)、メラニンの産生に異常がある色素異常症(眼皮膚白皮症)などがあります。
 多因子遺伝病:複数の遺伝子や環境要因など様々な因子が関与することによって発症します。口蓋裂や口唇裂などがその代表です。皮膚科領域では、アトピー性皮膚炎とフィラグリン遺伝子変異の関連が知られています。 染色体異常:ヒトは、通常22対の常染色体と1対の性染色体を持ちます。しかし、このいずれかの染色体の部分的な異常や本数の異常により様々な疾患が発症します。例えば、21番目の染色体が3本存在するとダウン症候群を発症します。
 ミトコンドリア遺伝病:ミトコンドリアは全身の細胞の中に存在し、エネルギーを産生する役割を担っています。このミトコンドリアには独自の遺伝子が存在し、このミトコンドリアの遺伝子に何らかの異常があるために、ミトコンドリアの働きが低下します。
 遺伝性皮膚疾患外来では、これらの中で、単一遺伝性の皮膚疾患や染色体異常、ミトコンドリア遺伝病を中心に診療しています。

表皮水疱症


表皮水疱症は、表皮と真皮を接着させるタンパクに生まれつき異常があるため、日常生活における軽微な外力によって皮膚や粘膜のただれ(びらん)や水ぶくれ(水疱)を生じる単一遺伝性の皮膚病です(図)。そもそも表皮と真皮は、それぞれの間に存在するタンパクによって強固に接着しているため、皮膚に外力が加わっても簡単には解離しない構造になっています。しかし、そのタンパクが正常に産生されないと表皮水疱症を発症するわけです。
 表皮水疱症は表皮と真皮が解離する組織学的位置により単純型,接合部型,栄養障害型などに大別されます。さらに皮膚の症状や遺伝形式、遺伝子検査によって細かく分類されます。表皮真皮間に存在するタンパクを特異的に認識する抗体を用いた蛍光抗体法で、患者の皮膚においてそれぞれ発現しているタンパクの状態(正常、減弱、あるいは欠損)を調べ、必要に応じて遺伝子変異の検索を行うことで正しい病型診断を行います。
 新潟大学皮膚科では、全国各地の医療機関と連携し、蛍光抗体法や電子顕微鏡、遺伝子検索などを行い、表皮水疱症の診断と解析を行っています。また、表皮水疱症患者団体であるDebRA Japanと連携を取り、表皮水疱症患者が少しでも快適に生活できるよう診療を行っています。