新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野-旧内科学第三講座-

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留学だより

文部科学省研究振興局での研修を終えて

2017年3月30日

2015年9月より文部科学省研究振興局に留学
 東北地方太平洋沖地震の2週間後の2011年4月から2年間地域医療に携わり、2013年度は臨床の中で注目した癌性腹水中の抗腫瘍抗体を研究テーマに大学に帰局させて頂きましたが、計画性の未熟さ等から研究の進捗状況は芳しいものではありませんでした。一方で研究環境が整備されている研究室では抗腫瘍抗体に着目した分子標的薬の研究も盛んで、ハイブリドーマの作成に数か月要していた自分の軌道修正を求められていました。2014年度に並行して興味ある分野であったヘルスケアリサーチの会議等を通じて厚生労働省等に知り合いができました。そんな中で2015年1月に新潟大学消化器内科の教授に就任された寺井教授の紹介で文部科学省研究振興局に留学できる機会を頂戴しました。具体的には、牛木医学部長、鈴木病院長、寺井教授のご尽力で2015年9月から、特任助手という立場で文部科学省研究振興局の学術行政調査員で出向させて頂けることになりました(新潟大学医学部としては初めての交流人事です)。文部科学省研究振興局は日本のライフサイエンス系の研究分野のマネジメントを行っている部署です。赴任後最初はがん事業、オーダーメイド医療事業、感染症事業、ヒューマンフロンティアサイエンス事業と広く携わらせて頂き、2016年1月途中から感染症事業を中心にいくつかの事業も担当させて頂きました。1事業あたり20億円以上の大型予算を獲得する必要のある事業であります。
 4月~8月にかけて、事業の管理、予算獲得にむけての作業に加え、省内や他省庁からくる感染症分野の照会や調整費といわれる事業の拡充のための予算獲得業務が存在しました。また2016年は日本でサミットが開催される年であり、感染症対策がG7伊勢志摩サミットでも主要議題として取り上げられ、感染症を担当する文科省の窓口としての仕事が例年になく多くなりました。その過程で、国の基本計画やアクションプラン策定や行政文書の作成等も協力させて頂きました。5月に行われた科学技術大臣会合にはライフサイエンス課長とともに参加させて頂ける機会を頂戴しました。どの会議であっても、準備作業において文言の盛り込み等において激しいやりとりがあり、出向前は標題しかみないことが多かった行政文書の背景にある重みを身に染みて感じるようになりました。大学や病院で組織を支えていく立場になった際に、公募要領にしても、行政文書にしても、文書の言葉一つに含まれている内容をとらえる作業が大事になってくるのではないかと感じています。
 また通常業務と並行して、感染症の新規事業の立ち上げがあり、国主催の会議の担当をさせて頂きました。学会の著名な先生方にショートの依頼(締切が短い)をし、文書の訂正を依頼するのは二度とはできない経験でありました。ライフサイエンスの広場のホームページは必見であります(http://www.lifescience.mext.go.jp/)。添付写真の国会議事堂の前を夜中の1時過ぎに自転車で帰ることが増えたのはこの時期でした。
 毎年10月になるとノーベル賞受賞者の発表があります。出向期間中に大村先生、大隅先生の両名がノーベル医学生理学賞を受賞されました。小学校の卒業文集に書いた将来の夢は「ノーベル賞を取りたい」でありました。まだあきらめたわけではありませんが、自分が日々行っている業務が将来ノーベル賞受賞者を輩出する源となる実感を得ることができました。また日本の貢献度が高いヒューマンフロンティアサイエンス事業は数多くの世界のノーベル賞受賞者や受賞候補者が関与していますが、その中の中曽根賞に関わる業務を管理させて頂き、遺伝子編集に関わる研究者の業績整理を行い、一瞬自分も夢をみることができました。
 10月以降はさらに文部科学省で掲げる2017年度文部科学省戦略目標の立ち上げのメンバーに加えて頂きました。本事業の組み立ては若手主体であり、係長からチャンスを頂戴して、省内でプレゼンを行う機会も頂戴して、最終的にいい形での導出ができる予定であります。本事業からノーベル賞受賞者が輩出された場合、当時の同僚とその源を築いた喜びを分かち合いたいと思います。
 日本は資源の少ない国であり、科学技術の発展は海外に対抗できる手段の一つであります。さりながら、一部の研究資金が、欧米がリードしている研究機器に流出しているのも現状であります。また医療機器や製薬に関してもパテント政策を講じている欧米に一部が流出しているのも臨床医であれば目の当たりにしています。出向期間中に得た知識や嗅覚を生かして、前述の問題に対しても貢献できるように当教室において日々精進したいと思います。臨床の中での気づきはやはり重要と考えています。
 少子化問題を含む日本が抱える数々の問題は中央官庁内部で働いていても正確な方向性を示し、持論を展開している人は少ないと思います。「良民の上には良き政府あるの理なり」中央官庁の建物は霞が関にありますが、新潟にいてもアンテナを張って自分の領域の諸問題を考えることも大事なことだと深く刻まれました。
 貴重な機会を与えて頂いた、牛木医学部長、鈴木病院長、寺井教授、新潟大学医学部、消化器内科学教室にこの場を借りて御礼を申し上げます。

雨の日以外は国会議事堂前が通勤路でした。出向直前の2015年8月30日はこの場所に多くの人が集まりました
同門会の皆様へ