新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野-旧内科学第三講座-

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留学だより

ハーバード留学記 2 森 祐介 先生

2016年2月13日

2015年7月より米国 ハーバード大学ケネディ行政大学院行政学修士課程に留学中
 2月に入り、ボストンでは、にわかに寒さが増してきました。本日夜は最低気温が氷点下21℃との予報であるところ、もはや私の想像を超えています。
 さて、昨年9月から12月までの間は秋学期でした。私が所属するミッドキャリア行政学修士プログラムは、授業選択の柔軟性が非常に高く、卒業要件となる8単位のうち、3単位は「経済・定量分析」「マネジメント、リーダーシップ、決定科学」「政治思想・制度」の各カテゴリに属する科目から1つずつ選択しなければなりませんが、残りの5単位は自由、うち2単位は、ハーバードビジネススクールやMIT等、ケネディスクール以外の講義を受講しても良いこととなっています。秋学期は、「世界規模の発展のためのイノベーション」「リーダーシップの実践」「行動経済学と公共政策」そしてMIT工学システム研究科の「科学技術と公共政策」を受講しました。
 講義は通常、各科目週2回、1回75分間です。つまり一週間に8コマだけであるため、時間割はすかすかに見えます。しかし講義の前には膨大な宿題が課され、例えば、科学技術の推進と規制について、主に経済学的、科学技術社会論的、生命倫理・研究倫理学的な観点から議論する「科学技術と公共政策」では、毎回100ページ以上の文献を読んだ上で講義に備える必要がありました。特に、私のような海外生活が初めての人間には、英語の壁が大きく立ちはだかり、他の学生の何倍も時間をかけないと同程度の理解には達せませんでした。また、少人数でのグループワークも授業外で行われるため、実際は朝から晩まで勉強漬けの生活となります。さらに、予習をすればそれなりに講義の理解度は増しますが、議論は非常に早いペースで進んでいきますので、容易に発言の機会を逃してしまいます。そのため、日本の事例を紹介するのが適切と思われるような場面において積極的に発言することで講義への貢献を図ったり、じっくりと腰を据えて取り組めるレポートに多くのエフォートを割いたりすることとしました。その結果、学んだ理論を文部科学省での経験と関連づけることで自己消化しやすくなることを徐々に学習し、最終的には2つの講義で上位10〜15%となる最高のA評価を得ることもできました。
 講義外の課外活動にも取り組んでいます。例えば、MIT国際研究センター 新興技術プログラムのKenneth Oye教授と共同で、日本の合成生物学政策についての調査研究に取り組んでおり、途中経過を2つのシンポジウムで発表しました。  また、11月には、コロラド州デンバーで開催された第114回米国人類学会年会において、当科客員研究員として日本の幹細胞研究について発表しました。発表内容が人類学者達に受け入れられるか不安でしたが、重大な科学的成果がどのように政府を駆り立て、逆に政府のコミットメントがどのように科学者や産業界を奨励するかについての議論が大変意義深いと評価してもらうことができました。また質問の多くは、研究成果に対する市民の関心やその調査方法についてでしたが、「TERUMOとJRCの再生医療製品について、非常に高額とのことだが、どのように市販後試験のサンプル数を確保するのか?」といった技術的なものもあり、興味深かったです(設定された薬価は1,000万円以上であるが、保険適用となるため患者の負担は数十万円になる。そのため、治療費が理由となってサンプル数が確保できないということはあまりないのではないか。他方、健康保険提供者の負担は多大なものになることに注意が必要である。と回答)。
 このように書くと勉強と研究ばかりに追われているような感じがしますが、適度に息抜きもしています。例えば、10月にはクラスメートと一緒に、お隣ニューハンプシャー州のWhite Mountainsまでトレッキングに行きました。流石、ニューイングランド地方の紅葉は美しいと言われているだけあって見事なものでした(しかし日本の紅葉には敵いません)。また、11月のThanksgiving Dayには、ホストファミリーとその友人達と一緒にMartha’s Vineyardで過ごし、アメリカの伝統的な家族行事に触れることができました。何より、大晦日から家族が合流したことが大きな心の支えになっています。極寒の朝7時に、長女とスクールバスを待つのも、後になれば楽しい思い出となることでしょう。    1月からスタートした春学期は、早くもケネディスクールでの最後の学期となりますので、より多くの学びを得られるよう頑張りたいと思います。

National Science Foundation (NSF, 米国国立科学財団)の合成生物学シンポジウムにおいて。(2015年9月 MIT)
第114回米国人類学会年会において。(2015年11月 デンバー)
相当な頻度で食べているShake Shackバーガー。最近、東京にも進出した。(2015年11月)
仲良しのシンガポール、中国、台湾の同級生とWhite Mountainsへ。(2015年10月)
ハーバードvs. プリンストン。元アメフト部の友人による解説付き。(2015年10月)
Thanksgiving Dayにホストファミリーと。1620年、清教徒(ピルグリム・ファーザーズ)がイギリスからマサチューセッツ州プリマスに渡ったときのお話を皆で演じた。(2015年11月)(2015年11月)
ハーバードケネディスクールのAnnual Party。学生が1,000人もいるため、普段あまり話せない人と話す良い機会であった。(2015年10月)
積雪後の夕焼けとチャールズ川。(2016年2月 ケンブリッジ)
一度も振り返らずにスクールバスに乗り込む長女。氷点下10℃台、毎日、日本と違って何分に来るかわからないバスを待つのはなかなか辛いものがある。(2016年1月 ケンブリッジ)(2015年11月)
森 祐介
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