新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野-旧内科学第三講座-

HOME > 留学だより > 森先生 ハーバード留学記 > ハーバード留学記3

留学だより

ハーバード留学記 3 森 祐介 先生

2016年5月9日

2015年7月より米国 ハーバード大学ケネディ行政大学院行政学修士課程に留学中
 ボストンは3月半ばごろから暖かくなってきていましたが、4月3日に降雪があり、開き始めていた木蓮の花も駄目になってしまってがっかりしていたところ、5月も半ばに差し掛かりようやく春らしくなってきました。
さて、3月12日から3月20日まで、ハーバード大学はスプリングブレイクという1週間の休み期間でした。この期間を利用して、様々な国の学生が、自国に同級生を連れていく、「トレック」というものを企画するのですが、我々日本人学生も、日本の政策や文化に触れてもらうことで知日家・親日家を育むことを目的とした「ジャパントレック」を主催しました。このトレックは2003年に当時の在校生が始めたもので、今年は20カ国から過去最大の50人が参加しました。(なお、応募は100件を超え、希望理由を丁寧に査読して参加者を決定しました。)
3月12日 成田着、東京観光
3月13日 (東京)東京観光、歓迎ディナー
3月14日 (東京)「女性進出」朝食会セミナー、トヨタ株式会社訪問、遠藤オリパラ担当大臣との意見交換、ケネディスクール卒業生との懇親会
3月15日 (東京)安倍総理との意見交換、寿司作り体験、社会起業家交流会
3月16日 (東京)JR東日本TESSEI訪問(新幹線車内清掃見学)、海外進学を目指す高校生との交流
3月17日 (福島)福島第一原発、双葉郡被災地訪問
3月18日 (京都)京都大学iPS細胞研究所の訪問
3月19日 (京都)文化遺産等の見学、京都観光
3月20日 成田発
 安倍総理との懇談では、「女性の活躍推進」及び2016年に施行した「平和安全法制」、いわゆる安保法制が議題になりました。安倍総理からは、「決断や行動には批判が伴うが、その判断・決断が正しいかということを自分自身しっかり議論する中において、正しいと思ったことについては時にはこうした批判を受けながらも判断すべきだと思う」というリーダーとしての心構えについて示唆をいただきました。この考え方は、まさに我々がケネディスクールで学んでいるリーダーシップ論そのものです。
 遠藤利明オリンピック・パラリンピック担当大臣との懇談では、2020年東京オリンピック・パラリンピックを契機に、日本が抱えるどのような課題を克服するべきかという点について議論し、遠藤大臣からは、外国人に優しい都市にするのはもちろんのこと、障がいのある方々が生活しやすいまちづくりをしたい、との回答をいただきました。遠藤大臣の優しく、実直な人柄に、複数の参加者から「あのような人が大臣として任命されるというのは素晴らしいことで、日本特有のことではないか。」との感想が寄せられました。
 福島第一原発の訪問は、私自身にとってこのトレック中で最も印象に残るものになりました。昨年9月に全域避難の自治体では初めて避難指示が解除された楢葉町の松本幸英町長との意見交換を通じ、地域の活性化のために行うべきと確信する政策が、同時に激しい痛みを伴うものであることが容易に予期される場合、組織の長としてこのジレンマをどのように乗り越えるか、という点について一筋縄ではいかない「適応的挑戦」(Heifetz, R.A. 1994)であることを再認識させられました。福島第一原発内では全員が線量計を着用し、4号機付近を中心にバスで周り、放射性物質の封じ込め作業の現況について、石崎芳行東京電力副社長よりお話をお伺いしました。封じ込めに係る技術的な課題はもちろんのこと、リスクを伴う作業を担う従業員のマネジメント、地域社会との関係、賠償への対応等、種々の困難が山積しており、しかし、全てに対して責任を果たすという姿勢は、私がお話させていただいた全ての社員の方に共有されていると確信しました。
 最終目的地である京都では、京都大学iPS細胞研究所を視察しました。サイエンスコミュニケーターのPeter Karagiannis博士よりiPS細胞研究の現状や研究所運営についてお話をお伺いした後、Ayaka Nakauchi博士の案内で研究所を見学しました。参加者からは、「日本が科学技術をそのバリューとして掲げていることについて心から納得できた」、「ぜひ世界にもその技術を広めてほしい」との声があり、日本の最先端の生命科学研究の現場を、これから世界中で活躍することが期待されるリーダーの卵たちに見せることができ、大変良い訪問になりました。
 1月からスタートした春学期も今週で終わり、早いもので卒業式まで残りあと1ヶ月となりました。ボストンの春を楽しみつつも、引き続き気を引きしめて頑張ってまいります。

安倍総理との懇談。この写真の後、一人一人と握手をしてくださった。(2016年3月 総理官邸)
遠藤大臣との懇談。センシティブな質問にも、全て正直、丁寧に答えてくださった。(2016年3月 合同庁舎8号館)
京都大学iPS細胞研究所の見学。(2016年3月 京都大学)
JR東日本テクノハートTESSEIによる、新幹線の清掃「7分間の奇跡」の見学。(2016年3月 東京駅)
2011年の震災後手つかずのスーパーにて。(2016年3月 福島県富岡町)
2011年の震災後手つかずの寿司屋にて。(2016年3月 福島県富岡町)(2015年11月)
東京電力福島復興本社との意見交換。(2016年3月 福島・Jヴィレッジ)
握り寿司体験。(2016年3月 麻布十番)
ケネディスクール同窓会主催の懇親会にてガーナ、リトアニア、日本の同級生と。(2016年3月 麹町)
森 祐介
ラオケで親睦を深める。(2016年3月 福島県いわき市)
森 祐介
ほとんどの参加者が旅館初体験。会津若松の日本酒、「末廣」を堪能。(2016年3月 福島県いわき市)
森 祐介
ジャパントレック企画者の皆さん、本当にお疲れさまでした!(2016年3月 福島県いわき市)
森 祐介
同門会の皆様へ