新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野-旧内科学第三講座-

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留学だより

弘前大学留学体験記 高綱 将史 先生

2016年2月

私は2014年4月から2016年3月末まで、弘前大学医学部病理生命科学講座へ国内留学させていただいております。弘前大学は私の母校でもあり、同講座の教授である鬼島先生は学生のころから良くしていただいておりました。そのご縁もあり、青柳前教授と鬼島教授にわがままを言って国内留学させていただき、寺井教授のご厚意で継続させていただきました。

その1.勉強内容 留学中の内容としては、診断病理を中心に勉強しております。 診断については、2年間で自分が診断した検体数は生検からEMR, ESD標本、手術標本、その他諸々を合わせますと、1500件くらいになりました。また、手術標本やESD標本の作製もスタッフの先生方と一緒にやらせてもらっていますし、剖検の手伝いもさせてもらっています。講座の先生方は私が外部の大学院生ということもあり、私の許容量も加味していただき、程よい量の標本を任せて頂いたのだと思います。スタッフの先生には大変感謝しております。また、病理診断報告には病理専門医のサインが必要で、当講座の専門医は教授ともう一人の助教の先生で、そのどちらか一方の先生と一緒に検鏡し、検閲してもらい、報告書を提出しています。この時こそが病理の目を鍛えるチャンスです。上級医に診断のポイントを説明してもらい、次の診断に反映する。その繰り返しにより、診断力を身につけていきました。今ではたまに上級医に褒められることもあります。このやり取りは内視鏡の修行にも似ていると感じました。この他に、週一回のペースで大学の消化器内科の先生との合同カンファに出席しています。主にESDの内視鏡診断と病理診断との対比はどうかなど、臨床と病理とのディスカッションを積み重ね、相互の理解を深めています。
自分の研究につきましては、週一回のスタッフミーティングで進行状況を確認してもらっています。このミーティングは各自の研究状況を報告する機会です。中国の留学生もいることもあり、可能な限り英語でのプレゼンが義務付けられています。私の場合、英語は苦手ですので、片言の英語と片言の?日本語で乗り切っています。自分の研究内容は教授から指示されたものでなく、自分の興味が出たものをプレゼンし、スタッフの先生方とディスカッションしながら生まれたものです。そういった意味では、自由に研究をさせてもらいました。しかし、研究計画を立案し、それをプレゼン、進行具合を報告しなくてはならなかったので、成果が出るまでは一苦労でした。しかし、このミーティングがあったおかげで、私のことを気にかけてもらえたため、大変良かったと実感しております。まとまった内容となったところで、学外の病理医の反応を見たかったので、去年は病理学会で発表をさせもらいました(ポスターでしたが)。現在はその内容に近いもので論文を投稿中です。

その2.弘前での生活 弘前の気候は、ご存じの通り新潟より冬は寒いです。最高気温は0℃に届かない日が多いです。しかし、降雪量は長岡よりは少ない感じがしました。夏の日中は冷房を必要としますが、夜は窓を開けていても涼しく過ごせます(蚊は入ってきません)。弘前の四季もとてもはっきりしています。春は弘前城の桜とりんごの花が満開となります。夏は十和田湖から奥入瀬渓流の避暑が有名です。秋はリンゴの収穫と田んぼアート、冬は雪まつりなど、観光には事欠かないように感じました。
私の家族は現時点で3人です(2016年4月に長男誕生予定です)。弘前に行った当初は妻と二人、一年後には長女が産まれました。私の平日のスケジュールは8時半までに講座へ到着、だいたい19時くらいに帰宅していました。たまに緊急で解剖がありましたが、たいてい土日は家族サービスをさせてもらいました。鬼島先生は「子育ては一生に数回しかなく短いもの。参加できるうちは子育てに参加しなさい。」というスタンスな方です。そのため、妻と子供の時間を大切にさせてもらいました。これは他の留学された先生方より甘々な待遇だったと思います。その分、平日は計画的に働いていた気がしますし、どうしてもずれ込む場合は子供を風呂に入れ、寝かしつけてから講座へ戻り、また休日の朝から昼まで仕事をしていました。そんな甲斐もあり、長女のお守は一日、妻から任せられる程度にはなりました。

その3.留学中の収入 私は鬼島先生のご厚意もあり、青森市内の病院(一応、救急対応)の日当直のバイトをさせていただいております。具体的には午前は内視鏡と腹部エコー、午後は診察、夜間の当直、翌朝から内視鏡と腹部エコーをして帰宅という内容です。このバイトで、家族を養えるくらいの額を頂いております(大変ありがたいです)。検査の件数はさほどではありませんが、程よく?大好きな内視鏡を握っております。

弘前大学の鬼島先生は、新潟大学の味岡先生と同門です。そのため、新潟の病理診断に近い考え方をお持ちだと思います。また、スタッフの先生方も科研費を独自に取り研究されており、研究に対する姿勢を学ばせて頂きました。鬼島先生はお忙しいこともあり、スタッフの先生方には論文作成にあたり、とても良くしてもらいました。ですので、弘前で二年間、病理を学んだことは私の人生の宝物になったと思います。今後の実臨床に活かせるよう、これからも精進していきたいと思います。 最後に青柳前教授、鬼島教授、寺井教授には、今まで小生のわがままで弘前へ留学させていただき、本当にありがとうございました。

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