消化管疾患トピックス


[ Asahimachi Campus Home Page ] - [ School of Medicine Home Page ]


*消化管疾患トピックス


  1. 鋸歯状腺腫に伴う大腸癌の頻度、組織学的特徴および予後についての研究。(June 20, 2001)

    大腸鋸歯状腺腫は大腸腫瘍のなかでも異質なものとして提唱され続けてきた。鋸歯状腺腫から癌への発育はいままで報告されてきたが、鋸歯状腺腫から発生した癌の罹患数やそれらの臨床病理学的特徴は知られていない。この研究では、多くの大腸癌を使って、鋸歯状腺腫を伴っている大腸癌とそうでないものとで臨床病理学的特徴を比較した。
          1986年―1996年の間手術が施行された466人の大腸癌患者の標本を使って、鋸歯状腺腫と癌が併存している症例が再評価された。場所、Duke's stage、組織異型度、粘液分化、予後などの、臨床病理学的特徴が評価された。
     27症例(5.8%)の大腸癌が鋸歯状腺腫に近接していた。そのうち8人は男性で、19人は女性であった。これら大腸癌のすべてが鋸歯状腺腫に類似した鋸歯状構造を示していた。9症例(33%)は粘液癌で、粘液成分を持つものはさらに11症例(41%)に認められた。大腸癌の大半は、回盲部(14症例; 51%)または直腸(9症例; 33%)に存在した。MSI (microsatellite instability)は、鋸歯状腺腫に関連する大腸癌(37.5%)の方がそれ以外の癌(11.0%)に比べより多く見られた。
     鋸歯状腺腫に関連する大腸癌は異なった大腸悪性腫瘍の型であり、この研究では全大腸癌の5.8%に認められた。回盲部や直腸への偏在はそれらの病因学的因子を反映しているのかもしれない。女性に多く認められたことは、過形成ポリープや鋸歯状腺腫とは反対の結果であった。

    【コメント】  大腸鋸歯状腺腫serrated adenomaは、1990年にLongacreおよびFenoglio-Preiserらによって提唱された大腸腺腫の組織亜型であり、過形成ポリープに類似した鋸歯状腺管構造と通常の腺腫に類似した腫瘍性細胞異型とを組織学的特徴としている。しかし、その診断基準は明確ではなく、過形成ポリープや他の腺腫との鑑別が難しいため、現在でも各施設間での診断基準に混乱がみられている。今後、早急に統一的な診断基準の作成が必要と思われる。
     大腸鋸歯状腺腫は、提唱者らによって、その37%にdysplasiaを、11%に粘膜内癌が認められ、癌化のポテンシャルがあることが報告されてきた。近年、鋸歯状腺腫由来の大腸癌が報告されつつあるが、小規模で、その臨床病理学的特徴はあまり述べられていなかった。  この研究では、多くの大腸癌を使って鋸歯状腺腫を伴っている大腸癌とそうでないものとで、予後など臨床病理学的特徴を比較しており、とても興味深いと考えられた。       

    文献

    Makinen MJ, George SM, Jervall P, Makela J, Vihko P, Karttunen TJ. Colorectal carcinoma associated with serrated adenoma -prevalence ,histological features, and prognosis. J Pathol 2001; 193: 286-294.

    (文責 新潟大学医学部第3内科 廣野 玄)

  2. 免疫組織学的に同定されるリンパ節の微小転移 (disseminated tumor cell, occult metastasis, micrometastasis)は、再発に関与しているか。(June 18, 2001)。

    上皮に特異的な抗体や腫瘍関連抗原に対する抗体を用いた免疫組織学的方法の発達により、通常のHEによる病理検索では同定困難な、リンパ節微小転移(micrometastasis)が検索可能となった。しかし、この微小なリンパ節転移が、HE染色でみられるようなリンパ節転移 (overt metastasis)へと進展していくのか、それとも、一時的にリンパ液中を流れるだけで、やがて排除されていくものであるのかについては、はっきりとわかっていない。この論文では、リンパ節におけるmicometastatic cellの生物学的特徴、予後に与える影響について、食道癌患者126例を用いて検討を行った。その結果、通常の病理検索で転移なしと診断されたリンパ節の中で、上皮に特異的な抗体であるBer-EP4抗体を使用し、126例中 89例 (71%)の患者にmicrometastasisを認めた。また、micrometastasis陽性例は、micrometastasis陰性例に比べ、有意に無再発生存率が低かった。
    次に、Ber-EP4陽性細胞の生物学的特徴、悪性のポテンシャルを確認するために、この陽性細胞および、原発巣の癌細胞からそれぞれcell lineを作製した。すると、この両者のcell lineは、同様のp53 mutationを有し、multiplex-FISHにおいて、共通の染色体異常を有していた。また、この陽性細胞を無免疫状態のヌードマウスに移植したところ、その全てに癌細胞の生着を認め、転移を来したものも認められた。以上の結果より、免疫組織学的に同定されるリンパ節のmicrometastatic cellは、悪性のpotentialを有していることが、直接的に証明された。

    コメント
    免疫組織学的方法の発達により、今まで同定できなかったリンパ節における微小転移の同定が可能となった。この微小転移が、予後や再発に与える影響については、一定の見解が得られていないのが現状である。従って、臨床的には、微小転移が陽性であった症例に対して、通常の転移陽性例と同様に術後の化学療法を行うべきなのかといった問題も生じてきている。
    また、微小転移が、標的臓器で着床、増殖するpotentialをもっているのか、それとも、一定期間のみ生存し、やがて排除されていくものなのかについて、これまで直接証明した報告はなかった。今回のこの論文を含め、こういった、微小転移そのものの性質、malignant potentialについて、最近ようやく、研究がなされてきた段階であるといえる。近い将来、この微小転移の概念が画一化され、術中のリンパ節郭清 (sentinel node navigation surgery)、術後のchemotherapyの適応や効果判定など、様々な分野で臨床応用されていくものと考えられる。       

    文献

    Hosch S, Kraus J, Scheunemann P, Izbicki JR, Schneider C, Schumacher U, Witter K, Speicher MR, Pantel K. Malignant potential and cytogenetic characteristics of occult disseminated tumor cells in espphageal cancer. Cancer Research 2000; 60: 6836-40.

    (文責 新潟大学医学部第3内科 横山純二)

  3. 大腸sm癌におけるリンパ節転移予測因子としてのcathepsin Dの可能性(March 25, 2001)。

    本研究の目的は、大腸粘膜下層(sm)浸潤癌におけるリンパ節転移の予測因子としてcathepsin Dが利用できるか否かにを明らかにすることである。対象は大腸sm浸潤癌254病変で、浸潤先進部における癌細胞と間質細胞のcathepsin Dの発現について免疫組織学的に検討した。癌細胞の発現は細胞内の局在性により、腺管内腔側限局型(polarity positive, apical type, PA)、基底側限局型(polarity positive, basal type, PB)、びまん性型(polarity negative, PN)、消失型(no expression, NE)に分類した。PN、NEはPA、PBより有意にリンパ節転移が高率にみられた。一方、間質細胞陽性例は陰性例に比べ有意にリンパ節転移が高率であった。PAあるいはPBで、かつ間質細胞陰性例には、リンパ節転移は認めなかった。以上より、cathepsin Dの癌細胞と間質細胞との発現を合わせて検討することにより、リンパ節転移の予測が可能となり、大腸sm癌の内視鏡治療の適応拡大が期 待される。

    コメント
    大腸sm癌のリンパ節転移率は約10%とされている。しかし、sm 癌の多くは内視鏡的に完全切除されても、リンパ節転移を確実に否定できる指標がないため、生命予後を重視し、追加腸切除がなされることが多い。この著者らは、これまで、sm微小浸潤(粘膜筋板より400μm未満)と浸潤先進部での高分化型および高〜中分化型腺癌は、リンパ節転移がないか、非常に少ないため、curative EMRが可能であると報告してきた。しかし、浸潤量の測定や組織型の判定には、いくつかの問題点が指摘されており、より客観的な指標が求められている。さらに今後は、浸潤した癌の性格(浸潤能、転移能)を遺伝子あるいは蛋白レベルで検討する必要があると思われ、この論文では、多数例の免疫組織学的検討の結果より、リンパ節転移0%の指標が示唆されており、意義がある。
     一方、cathepsin Dはaspartic protease familyの1つで、 乳癌を始めとして種々の臓器の癌で有用な予後因子として報告されている。大腸癌においても以前より検討がなされてきたが、sm癌におけるリンパ節転移の関係について検討された報告はこの論文が最初である。また、これまでは、発現強度にのみ着目されてきたが、最近この論文のように、細胞内の局在性につても検討されてきている。しかし、論文では、cathepsin Dの局在と機能との関係は全く触れられておらず、特にNE症例は解釈が困難である。さらに、Proteaseには他にも多くの酵素が存在し、癌細胞と間質細胞との間で複雑に絡み合っていると思われる。大腸sm癌の追加腸切除の適応については約20年前より、繰り返し論議されているが、結論が出ていない。最終的には癌の浸潤、脈管侵襲、リンパ節転移、リンパ節再発といった、癌の本質における分子生物学的メカニズムが全て解明されるまでは、結論は出ないかもしれない。よって、とりあえずは、多くの症例を用いた長期間のfollow up studyを行いながら、新しい指標の検証を繰り返していくことが必要と思われる。      

    文献

    Oh-e H, Tanaka S, Kitadai Y, Shimamoto F, Yoshihara M, Haruma K. Cathepsin D expression as a possible predictor of lymph node metastasis in submucosal colorectal cancer. Eur J Cancer 2001; 37: 180-8.

    (文責 新潟大学医学部第3内科 小林正明)

  4. ワイヤレスカプセル型内視鏡と従来型小腸内視鏡の小腸病変検出能の比較(February 6, 2001).

    <背景、目的> ワイヤレスカプセル型内視鏡は、小腸全体を視認できる患者負担の少ない新しい検査法である。カプセル型内視鏡の小腸病変検出の感度、特異度および安全性を従来型内視鏡(プッシュ型)と比較した。
    <方法> 9個から13個のX線不透過性のカラービーズ(直径 3−6 mm)が9頭の実験動物(モングレル犬)小腸内に開腹により縫いこまれ、1頭あたり1回の従来型内視鏡と3回のカプセル型内視鏡が施行され、それぞれのビーズ検出能が比較された。
    <結果>カプセル型内視鏡は、従来型内視鏡に比べより多くのビーズを発見した。(中央値 6 [range, 2-9] 対 3 [range, 2-6]; P < 0.01) カプセル型内視鏡の感度は64%に比し、従来型内視鏡の感度は32%であった。カプセル型内視鏡の特異度は92%に比し、従来型内視鏡の特異度は97%であった。当然のことながら、カプセル型内視鏡は従来型内視鏡の到達範囲より肛門側ではより多くのビーズ発見した。(中央値 4 [range, 2-7] 対 0; P < 0.0001) ビーズ以外にもカプセル型内視鏡は体毛、誤飲されたプラスチック片、潰瘍、粘膜下腫瘍、回虫などを明瞭に描出できた。カプセル型内視鏡通過後の小腸には特に大きな外傷は見られず安全性に問題はなかった。
    <結論>ワイヤレスカプセル型内視鏡は従来型内視鏡に比べより多くの小腸病変を発見できた。
    外径は30X11mm、バッテリー駆動時間は6時間、推進力は蠕動により、取り込まれた画像はUHF波にて体外の受信機に送信される。送気、送水および生検機能はなし。同じグループが健常人で行ったトライアルでは、安全性に問題はなく、胃平均通過時間は80分 (range 17-280分)、小腸平均通過時間は90分 (range 45-140分)、経口から排出されるまでの平均時間は24時間 (range 10-48時間)であった。
    まだまだ試作の段階であるが、順調に開発が進めば近い将来スクリーニング検査に使用されると思われる。(内視鏡医が必要なくなる時代がくるのか?)

    文献

    Appleyard M, Fireman Z, Glukhovsky A, Jacob H, Shreiver R, Kadirkamanathan S, Lavy A, Lewkowicz S, Scapa E, Shofti R, Swain P, Zaretsky A. A randomized trial comparing wireless capsule endoscopy with push enteroscopy for the detection of small-bowel lesion. Gastroenterology 2000; 119: 1431-1438.

    (文責 新潟大学医学部第3内科 鈴木恒治)




TOP Go to TOP
INDEX 第三内科ホームページへ戻る

Third Department of Internal Medicine,
NIIGATA UNIVERSITY School of Medicine
1-757 Asahimachi-dori, Niigata city, 951, JAPAN

This WWW Page is maintained by Toru Takahashi, M.D.
Email comments, questions or suggestions to : torutoru@med.niigata-u.ac.jp


This page last changed : June 20, 2001
URL: http://www.med.niigata-u.ac.jp/in3/regional.html