その他のトピックス


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*その他のトピックス


  1. C. elegansにおいてsir-2遺伝子の増加は寿命の延長をもたらす。(April 5, 2001)

    C. elegans においては、insulin-like receptor (daf-2)あるいはphosphatidylinositol3-OH kinase (age-1)の活性低下を引き起こす変異によって容易に幼生発達段階における永続幼生状態がもたらされ、成体における長寿化が生じる。このシステムの不活化は、成体における永続幼生化、ストレス抵抗性、長寿化を制御するfork head型転写因子であるdaf-16の活性化を引き起こす。酵母においてはSir2遺伝子が母細胞の寿命を決定し、Sir2遺伝子の増加は長寿化をもたらす。Sir2はnicotinamide adenine dinucleotideを補因子とするヒストンdeacetylase活性を有し、クロマチンの不活化を引き起こす。我々は、染色体の一部が倍化したC. elegansの寿命を検討した。その結果、最も酵母のSir2遺伝子と相同性の高いsir-2.1を含む染色体部分の倍化は、50%までの長寿をもたらした。遺伝子解析は、sir-2.1導入遺伝子がinsulin-likeシグナル伝達系の中に存在するdaf-16の上流で機能していることを示した。これらの結果は、Sir2蛋白が数多くの真核生物において長寿と栄養とを結び付けてくれることを示唆する。

    これまでの研究で1) Mitochondria、2) Oxidative damage、3) Germ-line precursor、4) Histone deacetylase、5) Nutrition、6) Hormoneといった因子が長寿化に関与する事が分かっている。今回紹介する論文は、これらのうち3)-6)までの因子がひつの系として働いている可能性を示し、そのシステムが酵母から真核多細胞生物まで共通に利用されている可能性を示した点で画期的である。

    文献

    1. Tissenbaum HA, Guarente L. Increased dosage of a sir-2 gene extends lifspan in Caenorhabditis elegans. Nature 2001; 410: 227-230.
    2. Kaeberlein M, McVey M, Guarente L. The SIR2/3/4 complex and SIR2 alone promote longevity in Saccharomyces cerevisiae by two different mechanisms. Genes Dev 1999; 13: 2570-80.
    3. Kirchman PA, Kim S, Lai CY, Jazwinski SM. Interorganelle signaling is a determinant of longevity in Saccharomyces cerevisiae. Genetics 1999; 152:179-90.
    4. Kenyon C, Chang J, Gensch E, Rudner A, Tabtiang R. A C. elegans mutant that lives twice as long as wild type. Nature 1993; 366: 461-4.
    5. Apfeld J, Kenyon C. Regulation of lifespan by sensory perception in Caenorhabditis elegans. Nature 1999; 402: 804-9.
    6. Hsin H, Kenyon C. Signals from the reproductive system regulate the lifespan of C. elegans. Nature 1999; 399: 362-6.
    7. Melov S, Ravenscroft J, Malik S, Gill MS, Walker DW, Clayton PE, Wallace DC, Malfroy B, Doctrow SR, Lithgow GJ. Extension of life-span with superoxide dismutase/catalase mimetics. Science 2000; 289: 1567-9.
    8. Weiner DK, Hanlon JT, Studenski SA. Effects of central nervous system polypharmacy on falls liability in community-dwelling elderly. Gerontol 1998; 44: 217-21.


    (文責 新潟大学医学部第3内科 須田剛士)

  2. DNAメチル化・ヒストン脱アセチル化を司るRb蛋白(March 16, 2001)

    DNAのメチル化と、ヒストンの脱アセチル化は、各々独立したDNA制御機構であり、共に遺伝子発現を負に制御する作用をもつ。
    DNAのメチル化とは、シトシン残基にメチル基が付加される状態の事である。ヒトゲノム上の遺伝子プロモーター領域には、"CpG island"と呼ばれるシトシン・グアニンの2塩基が高密度にくり返して配列している箇所が多く存在している。CpG islandの6-9割のシトシンはメチル基が付加されてDNAメチル化が起こっているが、転写活性化される遺伝子ではメチル化されていない。シトシンにメチル基を修飾する酵素はDNA methylatrnsferase (Dnmt)と呼ばれており、現在ではDnmt1 (維持型)、Dnmt3a/b(新規型)が発見されている。これら酵素の機能異常は、ゲノムDNAのメチル化状態を狂わせるので、当然癌を含めた種々の疾患の原因になる(最近、Dnmt3bはICF症候群の原因遺伝子であることが判明した)。
    ところで、ゲノムDNAは支持体であるヒストンに146bp毎に正確に巻き付いている。ヒストンは正電荷をもつリジン残基を多く持つために負電荷をもつDNAとタイトに結合してしまうが、リジン基にアセチル基が付加されることによって、ヒストンの正電荷が中和されて、ヒストンとDNAの親和性が低下し、ヌクレオソーム構造の弛緩を来し、種々転写因子のDNAへの結合を可能にさせている。HDAC1 (histone deacetylase)は、ヒストンのアセチル基を除去する酵素であり、結果的に遺伝子転写を不活化させる働きをもつ。
    多くの腫瘍において、がん抑制遺伝子がメチル化によって不活化されており、逆にゲノム全体はメチル化レベルの低下を来していることが知られている。一方、近年、癌細胞における、異常なヒストン脱アセチル化も多く報告されるようになった。今回、これら2つの独立したメカニズムが、実はRb蛋白によってひとつに束ねられているという衝撃的な報告がなされたので紹介する。
    FuksとBurgersらは、HDAC1-GST融合蛋白を作製することによって、HDAC1とDmnt1が結合していることを見い出した。またDnmt1と結合したGST画分はDNAメチル化機能を有している一方で、Hela細胞抽出液をDnmt1特異的抗体で免疫沈降した画分がヒストン脱アセチル化機能を有している事から、両酵素の結合が互いの作用を損なうものではないことが示唆された。
    さらにRobertsonとAit-Si-Aliらは、Hela細胞抽出液をFPLCで精製したところ、DNAメチル化を示す画分にDnmt1, Rb, E2F1, およびHDAC1が共存していることを見い出した。しかも、各々の蛋白に対する免疫沈降法を用いることにより、これら4因子が一塊となって結合していることも見い出した。RB蛋白は、6-8割の癌においてその機能が失活している。したがって彼等はRB変異体がDnmt1やHDAC1との結合能を失う知見と併せ考えると、癌におけるRb機能異常がDNAメチル化やヒストン脱アセチル化などの多岐にわたるエピジェネテック異常をも同時にひきおこすのであろう、と予測している。
    今回の2報告は、種々の独立した遺伝子機能制御機構が、互いに深く関連している可能性を提唱したものであり、今後の分子生物学研究の流れを大きく転換させ得るものになるであろう。

    文献

    1. Fuks F, Burgers WA, Brehm A, Hughes-Davies L, Kouzarides T. DNA methyltransferase Dnmt1 associates with histone deacetylase activity. Nature Gentics 2000; 24: 88 - 91.
    2. Robertson KD, Ait-Si-Ali S, Yokochi T, Wade PA, Jones PL, Wolffe AP. DNMT1 forms a complex with Rb, E2F1 and HDAC1 and represses transcription from E2F-responsive promoters. Nature Genetics 2000; 25: 338 - 342.


    (文責 新潟大学医学部第3内科 松田康伸)

  3. 慢性リンパ球性白血病における遺伝子異常と生命予後(February 27, 2001)

    背景)慢性リンパ球性白血病(CLL)の臨床経過は、症例により数ヶ月から20年以上とさまざまな経過をとる。従来から予後と相関するものとして、Binet stageが知られている。今回、筆者らは遺伝子異常の同定に有用である蛍光in situ hybridization(FISH)法を用いて検出したCLLの染色体欠損、重複とその予後に相関がみられるかについて検討した。
    方法)CLL患者325例から採取した単核球を用いてFISH法により6p21、11q22-23、13q14、17p13の染色体欠損、3q26、8q24、12q13のトリソミー、14q32の転座について検出し、これらの異常と臨床項目との相関について解析した。
    結果)染色体異常は268/325例(82%)で検出された。同定された異常は、頻度の高い順に13qの欠損(55%)、11qの欠損(18%)、12qのトリソミー(16%)、17qの欠損(7%)、6qの欠損(6%)であった。統計モデルとして17p欠損群、11q欠損群、12qトリソミー群、正常染色体群、13q欠損群の5つのカテゴリーに分類した。、これらの生存時間の中央値は、17p欠損群(32ヶ月)、11q欠損群(79ヶ月)、12qトリソミー群(114ヶ月)、正常染色体群(111ヶ月)、13q欠損群(133ヶ月)であった。17pと11qの欠損群は、他の群より病期が進行していた。無治療期間の比較では、17p欠損群(9ヶ月)、11q欠損群(13ヶ月)、12qトリソミー群(33ヶ月)、正常染色体群(49ヶ月)、13q欠損群(92ヶ月)で、13q欠損群が最長であった。多変量解析の結果から得られた、有意な予後規定因子は、17p欠損、11q欠損、年齢、Binet stage、血清LDH、白血球数の6つの因子であった。
    結論)CLL患者における遺伝子異常は病期の進行と生存予後を規定する重要な独立因子であり、これらの知見はリスクに適合した治療戦略をたてる上で重要である。
    コメント)悪性腫瘍の悪性度をはかる指標は各種あるが、遺伝子異常と予後との相関が明らかにされた報告は少ない。CLLはわが国では頻度が少なく、われわれ消化器内科医が主に臨床的に対応するのは固形癌である点を考えると、なじみの薄い領域の仕事ではあるが、きわめて意義のある報告と考えられる。肝細胞癌においても腫瘍細胞中の17pと11qの染色体異常について報告されており、また、症例ごとに経過が異なることは臨床の場では少なくない。今後、肝細胞癌においても同様の解析を試みる価値があると考えられる。

    文献

    Dohner H, Stilgenbauer S, Benner A, Leupolt E, Krober A, Bullinger L, Dohner K, Bentz M, Lichter P. Genomic aberrations and survival in chronic lymphatic leukemia. N Engl J Med 2000; 343: 1910-1916.

    (文責 新潟大学医学部第3内科 杉谷想一)

  4. 抗CD25モノクローナル抗体投与による腫瘍排除.(February 20, 2001)

    抄録:マウスにおけるある種の腫瘍の進行的増殖に免疫調節機構が関与していることが示されている.本研究において,抗CD25(インターロイキン2受容体アルファ鎖)抗体の0.125mg以下の量を一回投与することにより,進行的に増殖する腫瘍の排除が認められた.使用された腫瘍は,異なった系統のマウスにおいて認められた5つの白血病,1つの骨髄腫,2つの肉腫であった.抗CD25抗体はそれら8つの腫瘍のうち6つにおいて効果を示した.抗CD25抗体の投与は,末梢のリンパ組織におけるCD4陽性CD25陽性細胞数の減少をもたらした.それらの結果より,CD4陽性CD25陽性免疫調節細胞がそれらの腫瘍の増殖に関与していることが示唆された.腫瘍の接種後2日目以後に抗CD25抗体を投与した場合には,CD4陽性CD25陽性免疫調節細胞数の減少にも関わらず腫瘍の排除は認められなかった.抗CD25抗体投与が効果を示さなかった2つの白血病は,腫瘍細胞自体の抗原性が低いため接種されたマウスにおいて有効な拒絶反応が惹起されなかったと考えられた.

    解説:CD25(Interleukin-2 receptor alpha-chain)は活性化したT細胞やNK細胞において発現されるが,ナイーブな状態の正常マウスの末梢リンパ組織には5-10%程度のCD4+CD25+細胞が認められている.それらCD4+CD25+細胞を,抗CD25抗体1-2mgを隔日で2週間投与するというプロトコールで除去すると,ある種のマウスにおいて自己免疫疾患様の病態を呈する(2).従って,そのようなCD4+CD25+細胞が自己抗原に対して反応性を示すクローンの活性化を制御しているimmunoregulatory cellsであるということが示され,現在精力的に研究が進められている.
     それに加えて,そのようなCD4+CD25+ immunoregulatory cellsが腫瘍の排除を抑制するように機能し,腫瘍の進行的増殖に関与しているという報告がなされ,それら細胞の腫瘍免疫の調節への関与にも興味がもたれている.本論文では,腫瘍を接種したマウスに抗CD25抗体を1回前投与することにより,腫瘍の排除に成功している.この結果からは,抗CD25抗体1回投与によるCD4+CD25+ immunoregulatory cellsの除去により,自己免疫疾患を惹起することなく,抗腫瘍効果を増強することで腫瘍の排除が行われたと推測された.
     上述のような抗CD25抗体投与によってもすべての系統のマウスで自己免疫疾患が発症するわけではなく,遺伝的背景などによる疾患感受性の存在が疑われること,CD4+CD25+ immunoregulatory cells排除による抗腫瘍活性増強のメカニズムの解明,抗腫瘍活性のみを増強しうる抗CD25抗体の投与方法など,自己免疫と腫瘍免疫との関連を含めて今後も検討すべき課題は多い.しかしながら,抗CD25抗体は腎移植などの際にも使用され始めており,抗CD25抗体投与は少なくとも現在行われつつある腫瘍に対する免疫療法の補助療法としての適応が検討されるべき治療法と考えられる.

    文献

    1. Onizuka S, Tawara I, Shimizu J, Sakaguchi S, Fujita T, and Nakayama E. Tumor rejection by in vivo administration of anti-CD25 (Interleukin-2 receptor alpha) monoclonal antibody. Cancer Research 1999; 59: 3128-3133.
    2. Taguchi O. and Takahashi T. 1996. Administration of anti-interleukin-2 receptor alpha antibody in vivo induces localized autoimmune disease. Eur J Immnol 1996; 26: 1608-1612.


    (文責 新潟大学医学部第3内科 山際 訓)

  5. 生体内での腫瘍の排除を抑制するCD4陽性サプレッサーT細胞の存在.(January 16, 2001)

     1980年代の後半にTh1/Th2サイトカインによる免疫反応の制御理論が発表されて以来,免疫反応の制御には単にそれらTh1/Th2サイトカインのバランスが重要という考え方が広く普及している.しかしながら近年,主にマウスにおける自己免疫疾患の解析などにより,自己反応性のクローンを抑制するCD4陽性調節性T細胞の存在が注目されている.自己免疫疾患モデルマウスなどにおいて,自己反応性のクローンを抑制する調節性T細胞の存在は明らかであり,その抑制作用の機序などの解析も進んでいる.
     高知医科大学のFuら(1)は,腫瘍を接種されたマウスにおいても,その腫瘍の排除を行う免疫反応を抑制するようなCD4陽性サプレッサーT細胞が存在していることを報告している.
     A/JマウスにおいてMethylcholanthreneにより誘導・確立された肉腫の細胞株をA/Jマウスに接種すると,腫瘍は排除されることなく増大していく.しかしながら,腫瘍を接種後9日目に,抗CD4抗体を全身的に投与することによりCD4陽性T細胞を除去した場合,腫瘍はその後腫瘍径を縮小し排除されていく.この結果からは,腫瘍を接種されたマウスには腫瘍の排除を抑制しているようなCD4陽性T細胞が存在しており,そのような抑制性のCD4陽性T細胞を除去することにより,腫瘍の排除が行われたと推測された.著者らは更に,腫瘍を接種されたマウスから抑制性CD4陽性T細胞を分離しクローン化した上で,in vitroの実験系でその抑制作用について検討している.彼らはそのようなCD4陽性T細胞クローンが,接種された腫瘍に対するCD8陽性細胞による細胞障害活性を抑制することや,抗原特異的な増殖反応を抑制することを示している.また,それらはIL-4,IL-5,IL-6,IL-10などを分泌するのに対し,IL-2,IFN-gamma,TNF,TGF-betaなどは分泌しないTh2タイプのクローンであり,そのクローンの培養上清でも細胞障害活性の抑制が認められることを報告している.しかしながら,その培養上清による抑制は,抗IL-4抗体,抗IL-10抗体などの抗サイトカイン抗体を用いてもブロックされないことから,それらTh2サイトカイン以外のサイトカインまたは分子の関与を推測しているが,詳細は今後の検討が待たれるところである.
     彼らが示したように,担癌状態において,癌の排除を行うような生体の免疫反応を抑制するような抑制性T細胞が存在(出現)しているとしたら,その除去は抗腫瘍効果の増強へとつながることが期待される.CD4陽性T細胞にはヘルパーT細胞も含まれるので,CD4陽性細胞をすべて除去することは実際的ではないと考えられるが,岡山大学医学部のOnizukaら(2)が,抗CD25(IL-2レセプターalpha鎖)抗体投与により,CD4陽性CD25陽性T細胞を選択的に除去した場合も,同様な抗腫瘍効果の増強,ひいては腫瘍の排除が認められることを報告しており,今後も更に抑制性T細胞の詳細な解析が進むものと期待される.

    文献

    1. Tihui Fu, Yuan Shen and Shigeyoshi Fujimoto. Tumor-specific CD4+ suppressor T-cell clone capable of inhibiting rejection of syngeneic sarcoma in A/J mice. Int. J. Cancer, 87:680-687, 2000.
    2. Shozaburo Onizuka, Isao Tawara, Jun Shimizu, Shimon Sakaguchi, Teizo Fujita, and Eiichi Nakayama. Tumor rejection by in vivo administration of anti-CD25 (Interleukin-2 receptor ?) monoclonal antibody. Cancer Research, 59:3128-3133, 1999.


    (文責 新潟大学医学部第3内科 山際 訓)

  6. キトサン-DNA微小粒子の経口投与によるピーナッツアレルギーの予防.(October 12, 2000)

     食物アレルギーはありふれたものだが、アナフィラキシーショックを起こせば致命 的なものとなる。原因となる食物を食べなければ防げるのだが、加工食品が普及して いる現代では、意外なところに原料として使われていることがあり、完全な回避は容 易ではない。正常では経口免疫寛容が成立して食物に対する免疫反応は起こらないの だが、なんらかのメカニズムによりこれが破綻してアレルギー反応が起きてしまうの である。そこで、アレルゲンに対する免疫寛容を誘導して反応が起こらないようにで きれば根本的な解決なのだが、これも簡単なことではない。
     Johns Hopkins大学のLeongらは、この食物アレルギーの問題について新しい解決 方法を発表している。
     彼らは、マウスをピーナッツアレルゲンで免疫してアナフィラキシーを誘発させる モデルを用いて検討した。天然の生体適合多糖類であるキトサンとプラスミドDNAを 混合してキトサン-DNA微小粒子をつくり、これをマウスに経口投与すると、腸管上皮 に形質導入したプラスミドDNA遺伝子産物が発現される。この方法は、直接にアレル ゲンを投与したり、DNAのみを投与するよりも、効率的に腸管上皮にアレルゲン蛋白 が発現できるので、経口免疫寛容が誘導しやすいと考えられる。
     ピーナッツアレルゲン遺伝子を含むキトサン-DNA微小粒子を投与したマウスでは、 アナフィラキシーを起こすIgEの産生が減少し、他方アナフィラキシーを起こさない 分泌型IgAと血清IgG2aは増加していた。実際に、アナフィラキシーを誘発してみる と、無処置マウスやDNAのみを投与されていたマウスと比べ、前もってキトサン-DNA 微小粒子を投与されていたマウスではアナフィラキシーの原因物質となるIgEやヒス タミンのレベルは低下しており、血管透過性も亢進しなかった。全体として、アナ フィラキシー反応がかなり軽減していた。
     これらの実験結果から、キトサン-DNA微小粒子による経口アレルゲン遺伝子免疫 は、マウスでのアナフィラキシー反応に対する予防効果があるといえる。もちろん、 これが直ちに実際の医療現場に応用できるわけではない。予防のみならず治療に使え るかどうか、また、適切な投与方法の検討や副作用の予防など解決すべき問題が多々 ある。しかし、このLeongらの論文はアレルギー反応の制御における遺伝子治療の有 用性を示している。喘息やリウマチなど他の免疫疾患の治療にも応用できるかもしれ ない。

    文献

    Roy K, Mao HQ, Huang SK, Leong KW. Oral gene delivery with chitosan-DNA nanoparticles generates immunologic protection in a murine model of peanut allergy. Nature Medicine 1999; 5:387-391.

    (文責 新潟大学医学部第3内科 大塚和朗)




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