肝疾患トピックス(January 27, 2000 - October 10, 2000)


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*肝疾患トピックス(January 27, 2000 - October 10, 2000)

  1. 血液悪性疾患に対し、化学療法を行った場合、HBVキャリアーの人は高率に重症肝炎を発症する.(October 10, 2000)

    背景:悪性疾患に対し化学療法を行うことにより、B型肝炎ウイルスによる感染はしばしば再燃し、さらに重症肝炎から死に至ることがあります。しかしその様な合併症の事実はよく検討されていないため、著者らは病院間におけるこの様な合併症を調査し、今後これらを予防するための臨床的パラメーターを確立しようと試みました。

    方法: Japanese Society of Clinical Hematologyに所属する250の病院に対し、1987~1991年の5年間に血液悪性疾患に対する化学療法後に重症肝炎となった慢性肝炎患者あるいは無症候性のウイルス肝炎患者がいるかどうかのアンケートが送られました。さらにそのアンケートに回答のあった117の病院に対し、同様の治療にもかかわらず重症肝炎とはならなかったHBVキャリアーがいるかどうかの追加調査も行いました。

    結果:化学療法後に重症肝炎となった患者のうち約半数がHBVキャリアーでした(他HCV、drug等)。HBVキャリアーの患者だけで見てみると重症肝炎の発症率(52.7%)、死亡率(23.6%)はともに高率で、中でも無症候性に比べもともと慢性肝炎の状態であったり、また化学療法の際コルチコステロイドを使用した群での重症肝炎の発症率が高率でした。死亡率はHBe抗原陽性かつHBe抗体陰性の群でその逆(HBe抗原陰性かつHBe抗体陽性)に比べて低率でした。

    結論:化学療法後に起こる重症肝炎の原因として、日本ではHBV感染が重要となります。HBVキャリアーの患者において血液悪性疾患に対しコルチコステロイドを含んだ化学療法を行うことは高率に重症肝炎を引き起こす可能性があり、特にもともと慢性肝炎の状態で、HBe抗原陰性かつHBe抗体陽性の人は注意が必要です。

    コメント
    HBV感染率の高い日本において、化学療法後に発症する重症肝炎はとても重要な問題と思われます。著者らはその発症を予防するための臨床的パラメーターを確立しようと試みています。
    “化学療法の際のステロイド使用は高危険群”
    ステロイドにより宿主の免疫反応が低下し、ウイルスが増殖しやすい環境になるとともに、ステロイド自身がHBVウイルスの複製を促進させると言われています。そうなったところで宿主の免疫反応が回復したとき広範な肝細胞破壊が生じることにより重症肝炎が発症するため、ステロイドの使用は高危険群となります。一方、ステロイドは悪性疾患に対する化学療法としてだけではなく多くの疾患に対し使用される頻度が高く、実際に重症肝炎を予防するためにステロイドを使用しないことにより原疾患に対する治療効果はどの程度低下するのか、あるいは同様の効果を持つ別の薬剤があるのか等の検討も必要になってくると思われました。
    ”HBe抗原陰性、HBe抗体陽性は高危険群”
    日本では劇症肝炎や慢性肝炎の再増悪など致命的なB型肝炎において、特殊なウイルス、いわゆる変異株の関与が言われています。この変異株ウイルスはHBe抗原を産生できないことから化学療法後に生じる劇症肝炎にもこのウイルスが関与していると考えられ、実際に各病院からのアンケートの結果、HBe抗原陰性の群のほうが明らかにHBe抗原陽性の群に比して化学療法後の重症肝炎による死亡率が高いのです。

    今後も第三内科として多くのウイルス性肝炎患者にかかわっていかなければならないことからとても興味深い文献であると思われました。

    文献

    Nakamura Y, et al. Severe hepatitis related to chemotherapy in hepatitis B virus carriers with hematologic malignancies. Survey in Japan, 1987-1991. Cancer 1996; 78: 2210-5.

    (文責 新潟大学医学部第3内科 栗田 聡)

  2. 非アルコール性脂肪性肝炎(Nonalcoholic steatohepatitis: NASH)小児例に対する経口的ビタミンEによる治療.(October 4, 2000)

    背景: 小児領域でも非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)はここ20年もの間に増加傾向にあるが、治療に関しては体重減少が唯一と言われてきた。UDCAは成人で若干の有効という経験があるが、小児では無効だったとの報告がある。そこで、NASHの病因が酸化ストレスによる障害との仮説から、抗酸化剤としのビタミンEが注目された。
    目的: 肥満によるNASH小児例において、経口的なビタミンE補給が血清aminotransferaseやalkaline phosphataseを低下させるのに有効かどうかを検討した。
    方法: 16歳以下で、他疾患を否定された肝機能異常が3ヶ月以上持続し、超音波検査で高輝度肝の所見がみられ、他の肝疾患の可能性を除外された11例が対象となった。ビタミンE経口投与は400 IUを1日1回から開始し、1ヶ月毎の検査で肝機能が正常化しなければ随時400 IUずつ増量した(Max 1200 IU)。なお患児は適切な栄養指導、運動療法の指導を受けた。
    結果: 11名(男8、女3)は平均12.4歳で観察期間は4から10ヶ月であった。Body mass indexは治療前後で不変であった(32.8± 3.8kg/m2 vs 32.6± 4.4kg/m2)。治療により肝機能検査は有意に改善した。ALTは175±106 IU/lから40±26 IU/lへ(p<0.001)、ASTは104±61 IU/lから33±11 IU/lへ(P<0.002)、ALPは279±42 IU/lから202±66 IU/lへ(p<0.003)と低下した。治療中、aminotransferaseは正常化したままだったが、内服を中止した2例において中止後再上昇した。血清中ビタミンE濃度は投与により上昇した。肝機能正常化した3人の患児で超音波検査を反復したが、高輝度肝の所見は不変であった。
    考察: NASHの病因論としてTwo Hitsセオリーがある。1番目のHitは大滴性の脂肪化であり、2番目のHitは過剰な脂質を過酸化脂質にする活性酸素、ハイドロキシラジカルやスーパーオキサイドを発生させる酸化ストレスである。脂質の過酸化は細胞膜機能を損なうことで細胞を直接傷害したり、肝臓の伊東細胞を刺激し線維化を促す。酸化ストレス増加の要因は食事、環境、感染、遺伝的素因、薬剤や毒物などがあるが、その他に食餌性や内因性の抗酸化物質の欠乏が挙げられている。
    結論: 経口的ビタミンEはNASH小児の肝機能検査を正常化した。NASHを有する肥満小児は体重減少とともに、経口的ビタミンE投与が推奨される。
    コメント:本論文では小児ということもあり、肝生検を治療前に施行されているのは2例のみで、全員が真のNASHに当たるかは不明である。今後ビタミンEの有用性をいう場合、プロスペクティブな、治療前、中の肝生検を用いた検討が必要であろう。今回、肝機能が正常化したが、超音波所見が不変であるという事実から、ビタミンEの治療では脂肪化は不変だが、炎症がとれるのではと推測している。

    文献

    Levine JE. Vitamin E treatment of nonalcoholic steatohepatitis in children: A pilot study. J pediatr 136: 734-8, 2000

    (文責 新潟大学医学部第3内科 和栗暢生)

  3. C型慢性肝炎のインターフェロン無効例に対するインターフェロン、リバビリン、アマンタジンの三剤併用療法.(September 27, 2000)

    目的:インターフェロン無効例に対してのインターフェロンα2b、リバビリン、アマンタジンの三剤併用療法とインターフェロンα2b、リバビリンの二剤併用療法を比較し、併用療法におけるアマンタジンの抗ウイルス効果を明らかにすること。
    方法:94人のインターフェロン無効例のうち、除外規定に基づいて残った60例が治療に参加した。三剤療法群40例と二剤療法群20例で、12ヶ月の治療と6ヶ月のフォローアップを行った。治療前のALT値は二剤群133 IU/l, 三剤群124.5 IU/l、ウイルス量は平均500kcopy/mlで群間に差はなかった。三剤群にはインターフェロンα2b 5MUを一日おき、リバビリン800〜1000連日とアマンタジン 200mg連日の治療を12ヶ月行い、二剤群はこのうちアマンタジンを除いた治療を行い、ALTおよびHCV RNA量(定量的PCR法:第二世代アンプリコアモニタ法)を測定した。
    結果:治療期間に有害事象等によりドロップアウトした症例はなかった。投与終了後6ヶ月後の時点で、ALTの正常化は三剤群では23/40人(57%)に得られたのに比べ、二剤群では2/20(10%)にしか得られなかった(p<0.01)。また、血清HCV RNAの消失はそれぞれ19/40(48%)と1/20(5%)であった(p<0.01)。安全性は両群とも同程度で重篤な副作用は認めなかった。投与終了時二剤群ではウイルス量には有意な変化は見られなかったのとは対照的に、三剤群では、平均8kcopyに減少した。治療6ヶ月後のGenotype別ウイルス消失率は、Genotype1で32%に対してそれ以外では73%であった。
    結論:インターフェロン初回治療無効のC型慢性肝炎において、1年間のインターフェロンα2b、リバビリン、アマンタジンの3剤併用療法はインターフェロンα2b、リバビリンの二剤併用療法に比し、高いBiochemical responseとVirological responseが得られた。
    コメント:C型慢性肝炎に対するインターフェロン療法の再投与はウイルス量の多い症例には有効率は低く、その有効率をいかに高めるかがここ数年の課題となっている。投与する量や期間の工夫、併用薬を用いた報告がなされているが、いまなお画期的な治療法は見いだされていない。
    1997年、Smithらが初回インターフェロン療法無効22例の治療6ヶ月後より6ヶ月間にアマンタジン200mg/dayを用い、6例(27%)でALTが正常化し、そのうち4例(18%)でウイルスの消失がみられたと報告した(2)。その後複数の施設よりアマンタジンを用いた報告がみられたが、よい成績は得られていなかった。その1つとしてKhaliliらは インターフェロンα2b 3MU を週3回とリバビリン1000mg内服を6ヶ月行った群14例とリバビリンの代わりにアマンタジン200mg内服を行った群15例を比較検討したが、インターフェロン+リバビリン群のALT正常化は8例57%、ウイルス消失は5例36%であったのに対し、アマンタジン群ではALT正常化が2例13%、ウイルス消失は0で、インターフェロンとの併用ではリバビリンの方が効果が高いと報告した(3)。
    今回Brilantiらはインターフェロン無効例に対するインターフェロン、リバビリン、アマンタジンの三剤併用療法を行い、高い有効率が得られた(1)。アマンタジンは単独の抗ウイルス作用としてはリバビリンより弱いようであるが、三剤併用で高い有効率を示している。これはアマンタジン単独の作用というよりはインターフェロンあるいはリバビリンとの相互作用や相乗効果によるものと考えられる。アマンタジンは副作用も少なく安価な薬剤であり、インターフェロン初回抵抗例に対する治療のoptionとして期待できると思われる。

    文献

    1. Brillanti S, Levantesi F, Masi L, Foli M, Bolondi L. Triple Antiviral Thrapy as a New Option for Patients With Interferon Nonresponsive Chronic Hepatitis C. Hepatology 2000;32:630-634
    2. Smith JP. Treatment of chronic hepatitis C with amantadine. Dig Dis Sci 1997;42:1681-7
    3. Khalili M, Denhan C, Perrillo R. Interferon and ribavirin versus interferon and amantadine in interferon nonresponders with chronic hepatitis C. Am J Gastroenterol 2000;95:1284-9


    (文責 新潟大学医学部第3内科 武田康男)

  4. アジア人のB型慢性肝炎に対するラミブジンの長期効果.(September 7, 2000)

    背景と目的: 1年間にわたるラミブジン投与はHBVの増殖を有意に抑制し、肝の壊死炎症像を改善させ、線維化の進行を防いだ.しかしながら、長期投与の効果は確立していない.
    方法: ラミブジンの1年間にわたる投与を受けた334人の台湾、香港、シンガポールに在住する中国人のB型慢性肝炎患者を対象として、もう1年ラミブジン(100mgか、25mg)かプラセーボを投与する群として、無作為割付した.HBV DNAに対する抑制効果、ALT正常化、e抗原のセロコンバージョンに対する効果を検討した.YMDD変異を有するHBVの出現状況についても検討を加えた.
    結果: 100mgのラミブジン投与を2年間受けた患者ではHBV DNAの抑制と、ALT正常化という点で、1年目にラミブジン、2年目にプラセーボ投与を受けた患者に対し、有意にまさっていた(P<0.001).2年間にわたる連日のラミブジン投与は安全であり、e抗原のセロコンバージョン率は52週で17%、104週で27%であった.連日ラミブジン投与によるe抗原のセロコンバージョンは治療前のALTレベルと直線的に比例した(p<0.001).YMDD変異株は38%に出現したが、e抗原は消失し続け、HBV DNAレベルとALTレベルは結局治療開始前よりより低下した.対照的に、ALTレベルはラミブジンからプラセーボへの変更後8-12週に上昇したが、ラミブジン治療を再開することにより、正常に復した.
    結論: 2年間にわたるラミブジン治療はB型慢性肝炎患者に対し、容易に継続可能で、効果的だった.ラミブジン投与量は25mg/日よりも、100mg/日の方がすべての面において優れていた.
    コメント: 全世界には約3億5千万人のB型肝炎ウイルス感染者がいる.この人達にとって、ラミブジン治療は大きな福音となる.1日100mg以上のラミブジンを投与すると、治療中のHBV DNA抑制率の平均は98%以上である.しかしいったん治療を中止すると、HBV DNAレベルは治療前の値に復するといわれる.ラミブジンのフェイズ3スタディーにおける100mgの1年間投与はHBV DBAレベルの低下、ALTの正常化、肝の壊死炎症所見の改善、肝線維化進展の抑制、プラセーボに比べて有意なe抗原のセロコンバージョン率(16%対4%、p<0.02)をもたらし、また極めて安全であった.しかし、kinetic studyによると、大部分の患者にとっては、12ヶ月以上の治療がHBV感染を終わらせるには必要であると推定された。今回のスタディーの目標は長期のラミブジン治療(2年以上)が安全に施行できるかどうか、B型慢性肝炎の治療に有益であるかどうかを検討することである。 その結果、2年間ラミブジンを100mg/日継続投与することが、HBV DNAの抑制、ALTレベルの正常化、e抗原からe抗体へのセロコンバージョンの促進のすべての点において有益であることがわかった.副作用は少なく、比較的安全な薬剤といえる.心配されたラミブジン抵抗株であるYMDD変異を有するHBVの出現は比較的高頻度(2年間で38%)であったが、ラミブジン投与を継続することで、HBV DNAの増加、ALTのフレアーアップも一過性の経過をとり、e抗原のセロコンバージョンも引き続き起こっていたことから、このことがラミブジンの投与を躊躇させる要因にはならないと結論している.我が国においても、2000年12月より一般に使用可能になる機運にあり、今後の展開が期待される.


    文献:

    1. Liaw Y-F, Leung NWY, Chang T-T, Guan R, Tai D-I, Ng K-Y, Chien R-N, Dent J, Roman L, Edmundson S, Jai C-L, for the ASIA HEPATITIS LAMIVUDINE STUDY GROUP: Effects of extended lamivudine therapy in Asian patients with chronic hepatitis B. Gastroenterology 2000; 119: 172-180.
    2. Lai C-L, Chien R-N, Leung NWY, Chang T-T, Guan R, Tai D-I, Ng K-Y, Wu P-C, Dent JC, Barber J, Stephenson SL, Gray DF, for the ASIA HEPATITIS LAMIVUDINE STUDY GROUP: A one-year trial of lamivudine for chronic hepatitis B. New Eng J Med 1998; 339: 61-68.


    (文責 新潟大学医学部第3内科 高橋 達)

  5. 肝細胞癌におけるMAGE遺伝子の発現とその臨床応用の可能性について。(August 4, 2000)

    背景:MAGE(melanoma antigen)遺伝子はメラノーマ細胞より分離され、細胞表面に発現され、HLA class I拘束下に細胞障害性Tリンパ球(CTL)によって認識され、腫瘍拒絶抗原として働く。12種のMAGE遺伝子が存在し、MAGE遺伝子はメラノーマのみならず、他の悪性腫瘍でも発現されている。しかしながら、肝細胞癌ではそれらの発現に関してはあまり知られていない。このため、ヒト肝細胞癌でのMAGE遺伝子の発現を調べ,MAGE蛋白を使用した特異的な免疫療法の可能性について考察した。
    方法:22人の肝細胞癌患者の腫瘍組織と非腫瘍部および肝細胞癌cell lineを検体として使用した。RNA抽出後にcDNAを合成し、それぞれのMAGE遺伝子特異的プライマーを用いてPCRを行い、MAGE遺伝子の発現を検討した。肝細胞癌のMAGE-3遺伝子蛋白の発現を確認するために免疫ブロットおよび免疫組織染色による解析を行った。
    結果:ヒト肝細胞癌でのそれぞれのMAGE遺伝子の発現頻度はMAGE-1および MAGE-3が約68%、MAGE-8は46%、そしてMAGE-2、-6、-10、-11、-12は約30%であった。22肝細胞癌組織中19例(86%)で少なくともMAGE遺伝子1種を発現していた。一方、非腫瘍組織では発現は認められなかった。肝細胞癌cell line では75%でMAGE-1遺伝子を発現していた。MAGE-3遺伝子蛋白の発現は50%で認められた。MAGE遺伝子陽性および陰性例で臨床病理像を比較すると、MAGE遺伝子発現陽性例で高年齢、腫瘍径大、AFP低値、手術後再発低率で有意差が認められたが、腫瘍の分化度なども含めてさらに詳しく相関性を検討することが必要である。
    結論:肝細胞癌でMAGE遺伝子が高頻度に発現していることが確認され,MAGE蛋白をターゲットとして使用した特異的免疫療法の可能性が示唆された。
    コメント:これまでに肝細胞癌では腫瘍特異抗原の発現が認められず、さまざまな免疫療法(LAK療法など)が行われてきたが,十分な治療成績が得られなかった。これらの論文では特異拒絶抗原の存在がmRNAおよび蛋白レベルで確認された。今後、MAGE蛋白をターゲットとして使用する免疫療法が発展し、進行肝癌症例の治療体系に組み込まれ、予後改善に貢献できることを期待したい。

    文献:

    1. Yamashita N., Ishibashi H., Hayashida K., et.al.: High frequency of the MAGE-1 gene expression in hepatocellular carcinoma. Hepatology 24: 1437-1440, 1996
    2. Tahara K., Mori M., Sadanaga N., et. al.: Expression of the MAGE gene family in human hepatocellular carcinoma. Cancer 85: 1234-1240, 85,1999
    3. Suzuki K., Tsujitani S., Konishi I., et. al.: Expression of the MAGE genes and survival in patients with hepatocellular carcinoma. Int. J. Oncology 15: 1227-1232, 1999


    (文責 新潟大学医学部第3内科 菅原 聡)

  6. 単一の汚染源によるC型肝炎の多発発生の20年後の回復期において細胞性免疫反応は存続し液性免疫反応は減弱する。(July 31, 2000)

    C型の急性肝炎は臨床的に不顕性であることが多いため、回復期での免疫学的な特性は明らかではない。細胞性免疫反応がHCVの感染細胞の排除に関与すると考えられており、急性肝炎よりの回復に関しては、強い、HCVに特異的なヘルパーT細胞の反応が関与すると考えられている。しかしながら、回復した肝炎の診断は現時点では、HCV特異的な抗体の検出とHCVRNAが検出できないことに基づいており、患者の性質とウイルス株が多様であること、感染後の急性期、及び長期予後の追跡ができないことが、液性及び細胞性免疫の詳細な比較検討を妨げている。我々は塩基配列の明らかな同じHCVの株に偶然感染した女性たちを対象とし、HCV特異的な抗体は感染後18−20年後に検出されなくなっているが、インターフェロンγを産生する性質を持った、HCVに特異的なヘルパー及び細胞障害性T細胞の反応は存続することを見出した。この結果はHCVに特異的なCD4及びCD8陽性の細胞は、以前のHCVの感染と回復のBiomarkerであることを示す。HCVに対する抗体は検出されなくなるため、慢性化しないHCVの急性感染と治癒は一般にもっと多いのではないか?
    コメント:HCVが治癒しても、T細胞の反応がずっと存在し続けるという知見が新しいと思われる。この免疫反応は、まだ肝臓などに微量のウイルスが存在しているために誘発され ている可能性もあると考えられる。

    文献

    Takaki A, et al. Cellular immune responses persist and humoral responses decrease two decades after recovery from a single-source outbreak of hepatitis C. Nature Med 6(5): 578-582, 2000

    (文責 新潟大学医学部第3内科 大越章吾)

  7. 自己免疫性肝疾患のspectumのなかにおける自己免疫性胆管炎(July 18, 2000)

     自己免疫性胆管炎(AIC)は肝細胞障害及び胆汁うっ滞所見を呈する原因不明の疾患である。今までのAICに関する報告は概ねretrospectiveな検討でbiasがあったので、今回はAICをprospectiveに診断した。AICの診断基準としては、1)抗核抗体あるいは抗平滑筋抗体陽性、あるいは高γ-グロブリン血症を認める、2)蛍光抗体法で抗ミトコンドリア抗体陰性、3)活動性の肝炎の所見に加え胆汁うっ滞の所見を認める等として、20例をAICと診断し、自己免疫性肝炎(AIH)167例、原発性胆汁性肝硬変(PBC)44例、原発性硬化性胆管炎(PSC)31例と比較検討した。AICではAIHに比し、GOT、γ-グロブリン、IgGが低値、ALPが高値、自己抗体の出現率が低いことで区別された。またPBCに比し、GOTやビリルビンが低値、IgMが低値、自己抗体の出現率が高いことで区別された。さらにPSCとは、女性の比率が高い、ALPが低値、自己抗体の出現率が高い、炎症性腸疾患を認めないことで区別された。しかしそれらの臨床データはばらつきがあり、個々の症例を特徴づけるものではなかった。HLAのリスクファクターに関してはAIHやPBCと同様で、PSCとは差異がみられた。コルチコステロイドやウルソデオキシコール酸に対する治療反応性は悪かった。その組織は主にPBCやPSCに似た像を呈していた。今回prospectiveに診断・検討したAICは従来よりある単一の疾患のカテゴリーには入らなかった。そしてこのAICはもともとの疾患(PBCやPSC等)のvariant formであるか、あるいは1つの疾患から他の疾患への移行期の状態であるか、さらには時に様々な組織像を呈する別個の疾患であるのかもしれない。
    コメント;1993年にBen-Ariらが、臨床生化学的、組織学的にPBCの像を呈し、AMA陰性でANA、ASMA陽性の4症例をAICと報告し、ステロイドが著効したことで注目を浴びた。しかしその後、必ずしもステロイドは効果なく、またAMA陰性のPBCとの臨床病理学的な差異も認められず、その疾患概念の独立性は認め難い状況となりつつある。今回著者らは独自の診断基準を設け、AICをprospectiveに診断し検討したが、やはりその疾患の独立性は見出せ得なかった。今後更なる検討は必要であろうが、現時点では独立した疾患としては扱わないほうがよいと思われる。

    文献

    Czaja AJ, et al. Autoimmune cholangitis within the spectrum of autoimmune liver disease. Hepatology 2000; 31: 1231-1238.

    (文責 新潟大学第3内科 見田有作)

  8. ヘモクロマトーシスの遺伝子解析と形質に関する研究(May 25, 2,000)

    背景
    1996年、Federらにより遺伝性ヘモクロマトーシスの原因遺伝子としてHFE遺伝子が単離され、2つの遺伝子変異(C282Y、H63D)が報告された。HFE遺伝子がコードするHFE蛋白は、トランスフェリン受容体と結合して血中の鉄の輸送をコントロールしており、機能異常が生じると生体に鉄沈着症を引き起こすと考えられている。上述の変異を検出することで分子生物学的診断が可能となっているが、今回、臨床診断と遺伝子型との対比に関する報告を紹介する。
    方法
    従来の診断基準でヘモクロマトーシスと診断された217例を対象に、生化学的あるいは組織学的解析を行い、さらにHFE遺伝子のC282YとH63DについてRFLP解析を行った。これらの結果と臨床的プロフィールをあわせて検討した。
    結果
    HFEの遺伝子型は217例中209例でC282Y+/+のhomozygous異常を示し、8例ではhomozygousを示さなかったが、そのうちの6例でC282Y+/-を示し、さらに、6例中4例ではH63D+/-を示した。C282Y-/-の2例については1例でH63D+/+、残りの1例でH63D+/-を示した。また、33例で同じ遺伝子型をもつ同胞の存在が確認され、そのうちの29例でC282Y+/+のhomozygous変異を示したが、うち2例では臨床的にも生化学的なデーター上もヘモクロマトーシスの所見を認めなかった。これらの例ではいずれも共通して鉄の負荷が軽度であった。
    結論
    従来の、ヘモクロマトーシスの臨床診断とC282Y+/+のhomozygous変異の陽性は96.3%にみられ、きわめて高頻度で一致した。その他の異常はまれであるが、発症にはある程度の鉄の負荷が持続することが必要である。
    コメント
    HFE遺伝子の変異は臨床的に有用であるが、わが国において同変異の報告はまだない。人種による違いは多くの報告で指摘されており、さらに別の変異あるいは発症機構が存在している可能性も十分あり、今後の研究課題である。また、これらの研究過程で、糖尿病、皮膚色素沈着、肝腫大からなる古典的3徴よりもむしろ関節症状、易疲労感、不整脈の合併が高頻度に報告されていることも興味深く、われわれ臨床医が知っておく必要があると思われる。

    文献

    Brissot P, et al: A genotypic study of 217 unrelated probands diagnosed as "genetic hemochromatosis" on "classical" phenotypic criteria. J Hepatol 30: 588-593, 1999

    (文責 新潟大学医学部第3内科 杉谷想一)

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  9. ラクトフェリンは培養ヒト肝細胞においてC型肝炎ウイルスの感染を抑制する(March 16, 2000)

    我々は鉄輸送ファミリーに属するミルクプロテインである牛ラクトフェリン(bLF)が、培養ヒト肝細胞(PH5CH8)へのC型肝炎ウイルス(HCV)の感染を効果的に抑制することを認めた。
    あらかじめbLFとHCVをインキュベートしたものを肝細胞に加えて培養するとHCVの肝細胞への感染は抑制されるが、bLFと肝細胞をインキュベートしたものにHCVを加えて培養してもHCVの肝細胞への感染は抑制されなかった。このことからbLFの抗HCV活性はbLFとHCVの相互作用によるものであり、bLFと肝細胞の相互作用によるものではないと考えられる。
    さらにヒトのラクトフェリンも同様に抗HCV活性を示したが、牛のトランスフェリンや他の鉄輸送ファミリーは抗HCV活性を示さなかった。
    以上の結果より、ラクトフェリンはC型慢性肝炎の効果的な治療薬となる可能性があると考えられる。
    コメント;同グループによるその後のパイロットスタデイで、11例のC型慢性肝炎に対し牛ラクトフェリンを経口投与したところ、投与前のウイルス量の少ない3例について効果を認めたとの報告があった。今後の検討が必要であるがラクトフェリンは副作用もなく、高齢者や副作用によりインターフェロン治療の適応とならない症例に対し、インターフェロンに代わる有効な治療薬となり得る可能性があると考えられる。

    文献

    Ikeda M, et al. Lactoferrin markedly inhibits hepatitis C virus infection in cultured human hepatocytes. Biochem Biophys Res Commun 1998; 245: 549-553.

    (文責 新潟大学医学部第3内科 山田尚志)

  10. 高感度酵素免疫分析キットによる肝細胞癌患者の血清Des-γ-Carboxy Prothrombin値の測定(February 14, 2000)

    「背景」
     肝細胞癌(HCC)の早期発見は、慢性肝疾患患者の追跡調査に非常に重要である。  LiebmanらがHCCの腫瘍マーカーとしてdes-γ-carboxyprothrombin(DCP)(=PIVKA-II)の有用性を最初に報告して以来、α-fetoprotein(AFP)と共にHCCの診断として広く用いられてきた。
     しかし、これまでAFPやDCP値の陽性により、進行したHCCは発見することが出来たが、小さなHCCは稀にしか発見することが出来なかった。  従来のDCPの酵素免疫分析(EIA)キット(Eitest MONO P-II)は小さなHCCを発見するための感受性が不足していたため、近年高感度EIAキット(Eitest PIVKA-II)が開発された。  著者らは高感度EIAキットを使用し、DCPのHCCの腫瘍マーカーとしての有用性を評価した。
    「方法」
     対象はHCC患者60名(B型肝炎表面抗原陽性7名:C型肝炎ウイルス抗体陽性50名:ウイルス陰性者3名?大酒家1名)、HCCを合併しない肝硬変患者60名と慢性肝炎患者57名、そして正常被験者273名で、それぞれ血清DCPとAFP値を測定した。  DCPの高感度EIAキットで特異度が90%以上かつ正診率が80%以上で最も高い感受性を示したカットオフ値が40mAU/mLであったため、カットオフ値を40mAU/mLとした。  また従来のEIAキットでは1OOmAU/mL(0.1 AU/mL)、AFPでは20ng/mLをカットオフ値とした。
    「結果」
     HCC患者の71.7%は、AFP値陽性であった。  DCPの平均値は正常被検者で17.5mAU/mLであり、検出限界は高感度キットでlOmAU/mLであった。  HCC患者のDCP陽性率は、従来のキットの40%に対して、高感度キットでは60%であった。 った。  また従来のキットでDCP陽性者の全ては、高感度キットでも陽性であった。  患者全体の5.0%のDCP値は1OmAU/mLの検出限度以下であった。  感受性、特異度と正診率は高感度キットではそれぞれ60%、92.3%、81.4%であり、従来のキットではそれぞれ40%、98.3%、78.5%であった。  HCCの腫瘍径2cm未満の35%と3cm以上の78.1%は、高感度キットで陽性だった。  対応する値は、従来のキットでは20%と56.3%であった。  従来のキットで陰性であったHCC患者36名中12名(33.3 %)は、高感度キットでは陽性だった。  高感度キットとAFPを組み合わせて使用された場合、HCC患者の86.7%と単発のHCC患者の78.3%は、少くともこれらのマーカーのうちの1つは陽性だった。
    「結論」
    DCPの高感度EIAキットは、HCCのための腫瘍マーカーとして従来のキットより有用で、AFPと共に用いられるべきである。

    文献

    Hiroaki Okuda et.al., Measurement of Serum Levels of Des-γ-Carboxy Prothrombin In Patients with Hepatocellular Carcinoma by a Revised Enzyme Immunoassay Kit with Increased sensitivity, Cancer 1999; 85: 812-8

    (文責 新潟大学医学部第3内科 五十嵐広隆)

  11. 肝移植後のB型肝炎ウイルス感染に対するガンシクロビル長期投与療法(January 27, 2000)

    肝移植後のB型肝炎ウイルス感染に対して、ガンシクロビルの長期投与療法が安全 かつ有効であるとの報告がなされているので紹介する。
    「背景と目的」 肝移植片におけるB型肝炎ウイルス(HBV)感染症は、急速なウイル ス複製やgraft failureに関連している。本研究は、肝移植患者のB型肝炎ウイルス 感染に対する、経静脈的ガンシクロビル長期投与療法の安全性と効果を調査する目 的で、1992年から1995年にかけて実施された。
    「方法」 対象はHBV再感染患者12人と、新規感染患者4人である。HBV DNAは全 例で陽性(平均437.5pg/ml)で、HBe抗原は7例で陽性であった。ガンシクロビルの経 静脈投与はHBs抗原陽性から平均14.5ヶ月後に開始され、平均10ヶ月継続され た。
    「結果」 complete response(CR)すなわちHBV DNAの陰転をみたものは10例、 partial response(PR)すなわちHBV DNAが50%以下に減少したのは4例、no response(NR)は2例であった。全体的に副作用は軽微であった。CR 10例中、2例で HBs, HBe、1例でHBs単独のセロコンバージョンを認めた。この10例の中で、3例は 肝不全のため再移植を受け、そのうち2例は現在も生存している。また10例中3例 は治療中にウイルスの急増を認めた。残りの4例はHBV DNA陰性のままであった が2例は生存、2例は死亡した。PR及びNR症例は他の抗ウイルス剤で治療され、3 例は再移植を受け、2例は生存している。全体を通して16例中12例(75%)が平均経 過観察期間46ヶ月間生存している。
    「結論」 経静脈的ガンシクロビル長期投与量は、肝移植患者のHBV DNA複製を長 期に渡って抑制し、副作用は軽微であった。今後、とくに初期治療後のHBV再発例 で更なる検討が必要である。

    文献

    Roche B, et al. Long-term ganciclovir therapy for hepatitis B virus infection after liver transplantation. J Hepatol 1999; 31: 584-592

    (文責 新潟大学医学部第3内科 五十嵐正人)

  12. B型肝炎ウイルス感染マーカーがC型慢性肝疾患における発癌因子となりうるか(Junuary 27, 2000)

    肝細胞癌の発癌因子としてB型およびC型肝炎ウイルスの存在があ げられる。しかしながら、両者の重複感染による発癌については 強い発癌因子となるのか、議論のわかれるところである。この点について本邦から 対照的な2つの論文があるので紹介する。 ひとつはC型慢性肝疾患におけるB型肝炎マーカーの高発現率に ついてである。C型肝炎マーカー陽性の肝細胞癌患者にB型肝炎ウ イルスマーカー陽性例がしばしば認められること、また、HBsAg陰 性でanti-HBc陽性のドナーにHBVゲノムの存在が認められること を背景としてC型肝炎マーカー陽性患者におけるB型肝炎マーカー の出現が発癌に関連するかどうかが検討されている。 対象は肝疾患のない314例のControl群とC型慢性肝疾患で HBVmarkerを解析しえた2014例である。C型慢性肝疾患のなかで anti-HBc陽性は49.9%に認められ、その陽性率は肝疾患の進行度に 相関しており、慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌と進行するに従い、 anti-HBc陽性率が高まった.また、これらの病期は年齢に も相関し、年齢が交絡因子の可能性があるためにAge-matchingを おこなって検討したが、慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌と進行する に従い、anti-HBc陽性率が高かった.この結果からanti-HBc陽性 であることはC型慢性肝疾患の発癌因子と考えられた(1). 一方はB型およびC型肝炎ウイルスの重複感染が有意な発癌因子と なるか否かを検討した論文である。 対象は368例の肝細胞癌患者である。内訳はB型肝炎ウイルス陽 性例37例(10%)、C型肝炎ウイルス陽性例305例(83%)、重複感染 は6例(2%)、B型肝炎ウイルスC型肝炎ウイルスマーカーとも陰性20例(5%) であった。重複感染の6例において5例のHBV-DNA陰性患者ではHCV- RNAはHigh-Titerであるが、1例のHBV-DNA陽性患者ではHCV-RNAが Low titerであることから、重複感染は相互にウイルス干渉がお こり、有意な発癌因子とはならないと結論している。また、C型肝 炎ウイルス陽性肝細胞癌患者305例のうち、192例のanti-HBcを調べ、 111例の陽性患者と81例の患者について検討したが、背景因子、発 癌には有意差を認めず、anti-HBc陽性のHBV既感染もHCVの有意な発癌 因子とも考えられなかった。(2) これら意見のわかれるところであるが、いずれの論文も定点観察で あり、今後、prospectiveな経時的観察も必要であろう。

    文献

    1. Marusawa H, Osaki Y, Kimura T, Ito K, Yamashita Y, Eguchi T, Kudo M, Yamamoto Y, Kojima H, Seno H, Moriyasu F, Chiba T. High prevalence of anti-hepatitis B virus serological markers in patients with hepatitis C virus related chronic liver disease in Japan. Gut 1999;45 :284-288.
    2. Shiratori Y, Shiina S, Zhang PY, Ohno E, Okudaira T, Payawal DA,Ono-Nita S, Imamura M, Kato N, Omata M. Does dual infection by hepatitis B and C viruses play an important role in the pathogenesis of hepatocellular carcinoma in Japan? Cancer 1997;80:2060-2067.


    (文責 新潟大学医学部第3内科 石川 達)


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