***模範解答***

4年生試験ー2002年度

問1 ある疾患について、新しい定量的な検査方法が開発された。
1) 疾患の有無を判断するためのカットオフ値の設定方法について説明しなさい。
*解答例*
カットオフ値とは、疾患の有無を決定するための値のことで、これを境に治療方針を変えたりする。非疾患群と疾患群の分布が全く異なればその境の値をカットオフ値とできるが、普通、2つはオーバーラップしているので感度と特異度は、トレードオフの関係にある。カットオフ値を変えて、それぞれのカットオフ値に対する感度と特異度を求めて、最も両者の値が高くなる値に設定するとよい。確定診断を行う検査ならばカットオフ値を除外値を上げて特異度を高くすればいいし、診断を行う検査ならばカットオフ下げて感度を高めると良い。
2) 新しい検査法のこの疾患の診断に関する有用性を従来の検査法と比較する手順について説明しなさい。
*解答例*
ROC曲線を相方の検査法について作成する。ROC曲線とは縦軸に感度を、横軸に(1-特異度)をとってプロットしてできる曲線である。ROC曲線において左上方にある曲線ほど有用であるといえる。言い換えれば曲線下面積の広い方の検査の方が有用である。

問2 46歳の女性が健康診断で異常を指摘され病院受診を勧められた。このときの検査所見は下記の通りである。(括 弧内は基準範囲)。
RBC138 万/μ1(366〜494) Hb 5.3g/dl(10,7〜14.8) Ht 12.5%(32.8〜44.7)
MCV90.6 fl (82.0〜98.7) MCH 38.4 pg (26.1〜32.4) MCHC 42.4 % (30.8〜34.3)
WBC 23,100/μ1(3,500〜8,600) PL(血小板) 36.5 万 /μ1(16.4〜35.4)
T-Bil 4.0 mg/dl(0.3〜0.9) D-Bil 0.4 mg/dl(0〜0.2)
AST 60 IU/1(8〜25) ALT 45 IU/1(3〜23) LDH 1,653 IU/1(228〜448)
ALP 155 IU/1(80〜180)  γ-GTP 20 IU/1(5〜25) Fe 218μ g/dl (70〜160)
1) AST,LDHなどの酵素活性の上昇はどのような病態を反映していると考えられるか。他の検査所見も参考にして、考えを述べなさい。
*解答例*
Hbの所見から貧血があるといえる。MCV,MCHCから正球性正色素性貧血である。再生不良性貧血が赤芽球瘍、骨髄無形成を疑う。
WBCの増加、血小板もやや増加している。つまり汎血球減少はみられていない。骨髄無形成はやや否定的に思える。
AST、ALTはともに増加しているが、ASTは全身の細胞(肝、筋など)に広く見られるのに対してALTは比較的肝に特異的である。
AST>ALTであるので、肝疾患の他、筋疾患・心筋梗塞など、他の臓器の疾患の恐れもあり、これだけでは、疾患を特定できない。
ALPが上昇していないので、肝疾患の可能性はやや低いと思える。γ-GTP も上昇しておらず、胆道系疾患の可能性は低い。LDHが上昇しているので、溶血性貧血が疑われる。血中ビリルビン上昇もこれを支持する。
2) 次に実施すべき検査を2つ挙げ、その目的(検査を行う意義)を説明しなさい。
*解答例*
末梢血塗抹標本の検鏡により、網赤血球数を調べる。増加していればクームス試験により、自己抗体を確認できれば溶血性貧血になる。増加していなければ、骨髄生検によりMDSなどの異常がないか調べる。

問3 設問を読み以下の問いに答えよ。
症例:72歳、男性 主訴:意識消失発作 家族歴、既往歴:特記すべきことなし。 現病歴:60代より尿糖を指摘されていたが放置。昨年冬、右踵部に潰瘍ができ、糖尿病性壊疸と診断された。糖尿病の治療を開始したが不規則にしか受診せず、結局壊疸は、改善せず右足関節から切断手術をおこなった。数ヶ月前より、ときどき軽いめまい発作が出現するようになった。本日午前中、畑で農作業をしていたところ突然に転倒。家人がかけつけたところ、顔面蒼白で意識はなかった。すぐに救急車を呼んだが、救急隊員が到着した時には意識は回復していた。    入院後の心電図では不整脈が認められた。脳外科を受診したが、CTや脳波には異常は認められず、脳血管障害や脳腫瘍、てんかん発作は否定された。不整脈による失神が疑われ、循環器内科に転科となった。
1)この症例で失神発作の原因と考えられる不整脈には、どのようなものがあるか? 除脈性、頻脈性の不整脈名前をそれぞれ一つあげ、心電図所見の特徴を図示して簡潔に説明せよ。
*解答例*
徐脈性… U度房室ブロック(MobitzU型) PR間隔に関係なく、突然QRS波が欠落。
頻脈性… 心房細動 f波が出現し、QRS波は、不規則に現れる。 ただ、f波は、病態によって見られないことも多くQRS波の不規則出現によって心房細動と分かることが多い。
2)この患者で異常を示す可能性が高いと思われる検査項目(検体検査に限る)を5つあげ、検査値の異常が何 を意味するのかについて述べよ。 
*解答例*
血糖値…糖尿病によるインスリンの作用の低下によって高値を示す
中性脂肪(TG)…インスリン低下による高脂血症で高値を示す
インスリン値…I型糖尿病で低値を示す
CK…心筋梗塞によって逸脱し、上昇する
GOT…心筋梗塞によってCKに続き上昇する

問4 近医の紹介を受け、慢性骨髄性白血病(CML)の疑いのある患者が本院に来院した
1) 初診時のCML確定診断のために行うべき遺伝子検査はどのようなものか?その検索対象遺伝子と検査方法,及びCML陽性の場合の検査データの所見を簡単に述べよ。
*解答例*
CMCでは異常染色体Phl染色体が見られる。この染色体中に融合遺伝子であるabl-bcr遺伝子が発現していれば確定診断できる。 融合遺伝子の検索には,RT-PCRを用いる。これは遺伝子が発現している場合にだけそれを検出出来る特徴がある。abl-bcrのmRNAを逆転写し、CDNAを作成しPCRにかけて増幅するが、PCRのプライマーを1つはablに、もう1つにはbclに特異的な配列にすれば、abl-bcr融合遺伝子が発現しているときにPCRが成功することになる。できた産物をサザンブロットで調べればabl-bcrの検出ができる。
2) 本患者には適合するドナーがいたため、骨髄移植を施行することになった。移植前後においてドナー骨髄の生着あるいは再発等を効率よくモニターするための遺伝子検査にはどのような方法があるか?その原理について 説明せよ。
*解答例*
血糖値…糖尿病によるインスリンの作用の低下によって高値を示す
中性脂肪(TG)…インスリン低下による高脂血症で高値を示す
インスリン値…T型糖尿病で低値を示す
CK…心筋梗塞によって逸脱し、上昇する
GOT…心筋梗塞によってCKに続き上昇する
LDH…心筋梗塞によってCK、GOTに続き上昇する

4年生試験ー2001年度

問1.以下の設問に答えよ。
1) 疾患の診断において、感度の高い検査と特異度の高い検査とが、それぞれどのような診断的意義を有するかを簡単に説明しなさい。
*解答例*
感度はある疾患の有病者群(疾患群)において検査結果が陽性となる割合を表し、特異度は非疾患群(健常者とは限らない)において検査結果が陰性となる割合を表す。ある検査で、その疾患に対する感度、特異度がともに高い(100%に近い)場合には、検査の陽性、陰性は疾患の有無とよく対応し(偽陽性、偽陰性が少なく)、その検査を行うだけで疾患の有無を確定できることになる。しかし一般に、疾患群と非疾患群の検査値分布はオーバーラップするため、感度と特異度は互いにトレードオフの関係にあり、カットオフ値の設定により、感度あるいは特異度のいずれかが高いという検査の特性が生ずることになる。   感度が高い検査では、疾患群において偽陰性率が低くなるため「もしその疾患に罹患していれば検査結果は陽性になる」ということがいえる。しかし特異度が低ければ、検査陽性者のなかには多くの偽陽性者が含まれる可能性がある。逆に「もし検査が陰性であればその疾患には罹患していない」ということが高い確率でいえる。従って感度が高い検査は、候補となる疾患群を篩い分け、絞り込んでゆくときのスクリーニング検査、または疾患を否定するための除外診断(検査陰性の場合)のために有用である。 一方特異度が高い検査では、その疾患に罹患していないときに検査陽性となることが少ないわけだから、「もしその検査が陽性ならばその疾患に罹患している」ということが高い確率でいえることになる。従って検査陽性の場合に、確定診断を行ううえで有用である。しかし感度が低ければ、検査陰性の場合にはなにもいえない。
2) 23歳女性の症例。健康診断において、下記のような所見が認められた。鑑別すべき主な疾患を挙げ、検査の進め方について簡単に説明せよ。(括弧内は基準範囲)
WBC 4000/μl  (3500〜8600)      RBC 318×104/μl (366〜494) 
Hb 4.9 g/dl (10.7〜14.8)         Ht 17.1% (32.8〜44.7)
Platelet 34.6×104/μl (16.4〜35.4)
*解答例*
まずRBC、Hb、Htの値が低く、特にHb濃度が著しく低いことから貧血であると判断できる。しかしWBCやPlateletの値が基準範囲内であることから、白血病や再生不良性貧血などは当面考慮しない。次に赤血球恒数を計算して、貧血の原因を絞り込む。この例ではMCVが54flと著明に小さくなっているから、小球性(低色素性)貧血である。   小球性貧血で頻度が高いのは(1)鉄欠乏性貧血や(2)慢性疾患に伴う貧血(anemia of chronic disease)の一部であるが、その他に(3)鉄芽球性貧血、(4)無トランスフェリン血症、(5)サラセミアなどを考慮しなければならない。これらをさらに絞り込むために血清鉄、UIBC、フェリチンを測定する。血清鉄減少、UIBC増加、フェリチン減少となっていれば(1)の鉄欠乏性貧血であり、血清鉄減少、UIBC減少、 フェリチン増加であれば(2)、(4)を考慮する。また血清鉄増加、UIBC減少、フェリチン増加であれば(3)または(5)である。(2)については病歴や身体所見から検索を進め、(4)が疑われるときはトランスフェリンを測定しその欠乏を証明する。(3)は末梢血で小球性と正球性または大球性の赤血球が混在するdimorphismが認められ、骨髄穿刺によりringed sideroblastを証明する。(5)は末梢血で奇形赤血球やtarget cellを認め、ヘモグロビン電気泳動、ヘモグロビン鎖の合成速度の測定や遺伝子解析により診断する。 なお最も頻度の高い鉄欠乏性貧血は、鉄摂取の不足、慢性出血や吸収不良が原因となるため、婦人科疾患、消化器疾患などの原因の探索と治療も必要である。
3) DICにおける主な検査所見について、その意義を、病態と関連付けながら簡単に説明せよ。
*解答例*
DICは悪性腫瘍、感染症、産科疾患、火傷などのさまざまな基礎疾患を背景として凝固能が亢進し、播種性に血管内微小血栓が生じ、反応性の線溶亢進を伴って、強い出血傾向と多臓器不全をきたす重篤な病態である。その診断には、凝固の亢進に伴う血小板や凝固因子の枯渇あるいは減少傾向と、線溶の亢進によるフィブリン分解産物の増加を証明する必要がある。   診断上特に重視されるのは、血小板の減少(血栓形成による消費や網内系での破壊)、フィブリノーゲンの減少(消費性枯渇。感染症や癌では目立たないことがある。)とFDPの増加(フィブリンの線溶による分解)である。トロンビンが活性化されると、これと結合して不活性化するATIII(AntiThrombin III)も消費されて減少し、これらの複合体であるTAT(Thrombin/Antithrombin III complex)が血管内凝固反応を反映して増加する。また活性化されたプラスミンと、 その不活化因子α2PI(α2 Plasmin Inhibitor)との複合体であるPIC(Plasmin/α2 plasmin Inhibitor Complex)も、線溶の亢進を反映して増加する。なおFDPの検査はフィブリノーゲンの分解により生成されるFgDPをも一緒に測り込んでしまうため、フィブリンに特異的なD-dimerの増加を確認することも重要となる。   血小板の減少により出血時間は延長し、凝固因子の消費性欠乏(特にV、VIII因子、ついでプロトロンビン、フィブリノーゲン)によりPT、APTTが延長する。また、線溶亢進の結果、プラスミノーゲンやそのインヒビターであるα2PIも消費されて減少する。

問2.設問を読み以下の問いに答えよ。
63才の女性。10年前より高血圧で薬物治療をしているほかは健康で、特に自覚症状もなかった。主治医のすすめもあって数ヶ月前からウォーキングを始め、体重が6kg減少し血圧も130/60mmHg前後とやや低下した。一週間ほど前からサークル活動が忙しくなり、生活が不規則となってやや睡眠不足であった。今朝はいつものようにウォーキングをしたが、朝食後よりしだいに胸部不快感を伴う動悸を感じるようになった。脈はまったく不整で自動血圧計で測定した血圧は110/60〜160/76mmHg、脈拍は毎分120〜180であった。
1)この症例で最も考えられる不整脈は何か。その心電図所見の特徴を図示して説明せよ。
*解答例*
脈がまったく不整であることから、(頻脈性の)心房細動が最も考えられる。高血圧合併例には時々認められ、ストレスや睡眠不足などが誘因となることが多い。心房細動では、基線が不規則に細かくゆれ(f波)、R-R間隔が全く不整となる。QRS幅は、 通常は正常範囲である(変行伝導を伴う場合、脚ブロックを伴う場合、WPW症候群に伴う場合はwide QRSとなる)。高度の肥満者や肺気腫ぎみの患者ではf波がはっきり しないことも少なく無いため、R-R間隔が全く不整になる所見が心房細動の診断に最も重要である。 心房粗動、心室頻拍、発作性上室性頻拍などでも頻脈はおきるが、この場合は通常は脈は整である。心房粗動であっても伝導比が変動する場合や房室ブロックを伴う場合、心室頻拍でも非持続性の発作がくり返し起きる場合、発作性上室性頻拍がくり返 し発作と停止をくり返す場合、心室性または心房性の期外収縮が頻発する場合には、 脈が不整の頻脈をおこしうる。
(図は省略)
2)この患者の経過観察を行ううえで、冠動脈疾患の発症リスクを評価するのに重要な血液検査は何か。項目をあげて説明せよ。
*解答例*
冠動脈疾患の危険因子には、高血圧、脂質代謝異常、喫煙、糖代謝異常、冠動脈疾 患の家族歴、加齢(女性の場合には閉経)などがあげられる。   血液検査で評価できる項目には、脂質代謝異常に関しては血清脂質(総コレステロー ル、中性脂肪、LDL-コレステロール、HDL-コレステロール)、アポ蛋白、Lp(a)、 RLP-Cや電気泳動によるリポ蛋白分析などがある。総コレステロール、中性脂肪、 LDL-コレステロール、Lp(a)、RLP-Cは高いほど、HDL-コレステロールは低いほど冠動 脈疾患発症リスクが大きい。超遠心法でリポ蛋白分画を分取して脂質濃度を測定する ことも可能である。; 糖代謝異常では、血糖、インスリン値、HbA1c、75g-OGTTなどの検査により糖尿病 を診断することができる。最近は、インスリン抵抗性症候群が冠動脈疾患のハイリス ク群として注目されている。その他、血中のフィブリノーゲン、ホモシステイン濃度、高感度CRP、SAAなども冠 動脈疾患の予知マーカーとして注目されている。これらはいずれも高値の場合に冠動 脈疾患のリスクが高くなる。

問3.次の変異に関する語句について知るところを説明せよ。
*解答例*
1) 遺伝子のコード領域の塩基配列に起こった変異で、変異前と変異後においてアミノ酸の置換を伴わない変異をいう。これはそのアミノ酸のコドンが縮重しており、変異が起こっても同じアミノ酸をコードしているからで、何ら正常と変わりない蛋白質が合成される。コドンの縮重はゲノムを変異から防御するための機構の一つと考えることもできる。
2) 遺伝子のコード領域において、3の倍数以外の数塩基・数百塩基の挿入や欠失が起こったためにコドンの読み枠の「ずれ」が生じ、その結果全くアミノ酸配列の異なる蛋白質が合成されたり、ストップコドンが出現したりして正常な蛋白合成が行われなくなる変異。
3) 染色体転座のことで、異なる染色体同士の一部が入れ替わる相互転座と同じ染色体内で一部の入れ替わりが起こる単純転座の2種類があるが、相互転座の方が圧倒的に多く見られる。多くのガン細胞でよく見られ、慢性骨髄性白血病の9:22転座とそれに伴うPh1染色体の出現や、急性前骨髄球性白血病の15:17転座が有名。転座に伴って新たな融合遺伝子の発現が見られる。
4) nonsense mutation遺伝子のコード領域において、置換や欠失、挿入などの変異の結果、ナンセンスコドン(ストップコドン)が生じるような遺伝子変異のこと。通常は短い蛋白質が合成されることになり、それは不活性な蛋白質となる。
5) trisomy染色体異数性の一つで、ある染色体の一部又は全体が2nではなくて3nの状態になっていること。一部が3nの場合は部分トリソミーという。トリソミーは致死的な場合も多いが、異常を伴っても生存できる場合があり、知能低下や心臓奇形を伴うダウン症候群の場合の21番染色体のトリソミーが有名。
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6年生試験ー2011年度

問1 脂質異常症の患者に対して、定期的に行うべき検査項目名を5つあげ(たとえば空腹時血糖値、脳波、・・・など)、その理由を説明せよ。

*解答例*
LDLコレステロール・・・LDLコレステロールが酸化されると動脈に沈着し動脈硬化を引き起こすのでその程度をすることができるので。
HDLコレステロール・・・HDLコレステロールは、肝臓にコレステロールを運び動脈硬化を防ぐ働きがあり心血管障害の発症を予測する基準となるので。
中性脂肪・・・TGはインスリン抵抗性の一因となり、高値となれば動脈硬化の発症につながるので。
心電図・・・初期の虚血状態の発作時にはSTの低下が認められ心筋梗塞の早期発見につながるので。
眼底検査・・・動脈硬化を示すものとして交叉血管、白線化、 口径不同があり、これらを見て動脈硬化の程度を判定できるので。

問2 血圧の高い患者に対し、血管障害を予防するために使用すべき薬剤を3つあげ、利点と欠点を説明せよ。

*解答例*
・Ca拮抗薬:糖尿病患者や高齢者にも使える。顔のほてり、浮腫、動悸などの副作用がある。房室ブロックには禁忌。
・βブロッカー:心収縮力を低下させ、心拍数を低下させることで心筋の酸素需要を減らす。心筋保護作用も有する。喘息、房室ブロックには禁忌。
・アンギオテンシン変換酵素阻害薬:比較的新しい薬剤であるためエビデンスが乏しいが、交感神経β遮断薬やサイアザイド系利尿薬が使用できない患者に対しても投与可能である。腎保護効果があるとされ糖尿病性腎症合併患者に対しては第一選択となる。高K血症や妊婦への投与は禁忌。

問3 「初期の心筋虚血」と「心筋梗塞」の心電図変化をそれぞれ図示し、メカニズムの違いについて述べよ。

*解答例*

心臓の血管は外から内に向かって走行しているため、初期の心筋虚血は心内膜で生じやすい。虚血部位では周囲に比べて電位が上昇するため、心内膜から心外膜の方向へ電流が流れる。電気刺激よりも先に虚血部位ではイオンが漏出するため、基線が上昇する。その結果、STが低下する。心筋梗塞直後はT波増高が認められ、次にST上昇→異常Q波→冠性T波が出現する。心筋梗塞では虚血部位が貫壁性であり、その部位では電気刺激よりも先に部分的な脱分極が生じるため、電流は電極から遠ざかるように流れる。そのため基線は低下し、結果的にST上昇する。心内膜〜心外膜まで虚血に陥ると、異常Q波が出現する。これは梗塞部位の指標となる。心筋梗塞後1週間以降では、上昇したSTが基線に戻っていく。また、左右対称な陰性のT波が生じる。


問4 以下の症例に対する食事指導箋を書いてほしい。
『症例:年齢52歳の女性。身長160cm、体重64kg(BMI:25)。早朝空腹時血糖値125mg/dL、LDLコレステロール値180mg/dL、中性脂肪値148mg/dL、そのほか特記すべきことなし。』

*解答例*

本症例の診断は、#1肥満症、 #2脂質異常症、 #3境界型糖尿病となる。まず標準体重は、56Kg(22×(1.6)²) となる。総消費カロリーは、生活習慣によるが、52歳の女性であることから軽度と判断し、56〔kg〕×25〜30〔kcal/kg〕=1400〜1680〔kcal/日〕となるが、境界型糖尿病であるため、1400〔kcal/日〕がよいと考える。なお、栄養素のバランスは、炭水化物:蛋白質:脂質=55:20:25がよい。また本症例に記載はないが肥満症の患者は高血圧をきたしやすい。したがって予防的意味で食塩摂取量は10g/日に指導したい。したがって食事指導箋は、
総摂取エネルギー: 1400〔kcal/日〕
炭水化物:蛋白質: 脂質=50:20:25
食塩摂取量: 10kg/日以下
コレステロール摂取量: 300mg以下
となる。

6年生試験ー2010年度

問1 血液をサンプルとする5項目の臨床検査だけで、可能な限り全身状態のチェックを行いたい。どのような検査を選ぶべきか。検査項目名とその根拠を述べよ。
*解答例*
赤血球数・・・貧血のチェック
白血球数・・・感染微候、免疫機構のチェック
AST   ・・・肝機能チェック
クレアチン・・・腎機能チェック
空腹時血糖・・・耐糖能チェック
貧血や感染兆候は、急性期疾患の有無や現在の全身状態、感染リスクを知る上で大切である。肝機能、腎機能は悪化が見られる場合、急性ないし慢性疾患が背後にあり放置すると生命予後に関わる場合も多く、スクリーニングが必要である。耐糖能異常は放置すると将来的に腎や網膜や末梢神経などの細血管障害、心筋虚血や脳梗塞などの大血管障害のリスクが高まるのでチェックの必要がある。但しこれらは一見健康な人の場合で全身状態が悪ければ、電解質などの他項目の優先度が高まる。


問2 「肥満」によって生ずる病的変化を3つ挙げ、そのスクリーニングに有効な検査について説明せよ。
*解答例*
肥満によって生ずる病的変化として、高血圧、2型糖尿病、高脂血症がある。
肥満だと血中の遊離脂肪酸が上昇することや脂肪細胞からアディポサイトカインが分泌されることで肝・筋肉のインスリン受容体がdown regulationを起こし、インスリン抵抗性の状態となる。すると膵からのインスリン分泌が上昇する。この状態が長く続くとインスリンが枯渇してしまい、これにより2型糖尿病にとなり、高血糖となったり、LPLの活性が抑制されてVLDLの代謝が停滞することでVLDLの大半を占める中性脂肪が増加し高脂血症となり、再び肥満が増悪することとなる。
また肥満は、交感神経の過緊張を起こすことにより血管を収縮させ、高血圧を引き起こす。
高血圧のスクリーニングには、血圧測定があり、収縮期血圧≧130mHg, 拡張期血圧≧85mHgを超えたら注意する。
2型糖尿病のスクリーニングには、血糖測定があり、随時血糖≧200mg/dl、空腹時血糖≧126mg/dl,、75gOGTT 2時間値≧200mg/dlの場合、糖尿病型として精査を行う。HbAlc測定も有効である。
高脂血症は、血液検査にてHDLコレステロール<40mg/dl かつ/または LDLコレステロール≧140mg/dl かつ/または TG≧150mg/dlの場合、高脂血症であると判断する。


問3 初期の心筋虚血で認められる心電図変化を図示し、そのメカニズムについて述べよ。
*解答例*
初期の心筋虚血では、ST低下、ST上昇が代表的な心電図変化である。まず、狭心症や心内膜下梗塞といった状態ではST低下を認める。
冠動脈は、心臓の表面と走行し、心臓の中へは外から内へと走行する。つまり、初期の心筋虚血は、心臓の内側に生ずる。そのため梗塞がおきると心内膜側の基準電位は、心外膜側の基準電位よりも高くなる。つまりは、その梗塞部位に電極を置いた場合、心内膜側から心外膜側に向かって電流が流れる。そのため
その電極においては基準が上昇する。結果としてST低下を認めることになる。
初期の心筋虚血であってもその梗塞が貫壁性の梗塞であった場合はSTが上昇する。この場合は、貫壁性の梗塞であるため梗塞部位での基準電位は、梗塞部位周囲の基準よりも高くなり
梗塞部位に電極を置いた場合、梗塞部位から遠ざかる方向に電流が流れる。その結果、その電極においては、基準が低下する。結果としてST上昇を認めることになる。



問4 臨床医学では大規模調査の結果に基づくエビデンスが重視されている。その分析法として、特に「メタアナリシス」が重視されるようになってきたが、これはいかなる方法か。また、この方法で得られた結果を解釈するに当たり注意すべ点は何か、合わせて述べよ。
*解答例*
「メタアナリシス」は最もエビデンスレベルの高い分析法である。これはいくつかの大規模臨床試験の結果を複合して分析して結果を出すものである。すでにある程度エビデンスのある大規模臨床試験を組み合わせているのだから、それだけ当然エビデンスレベルが上がると考えてよい。そこで注意すべき点はいくつかあるが、まず、大切なのは元となった大規模臨床試験が妥当であるかという点である。その評価のポイントは、以下の点である。
@人数: 人数が少ないと個人差の影響が大きくなってしまうため2000人〜3000人規模以上であることが望ましい。
A対照群の妥当性: 年齢、性別、疾患の程度などが調整群と同じであるランダム化された対照群であるかどうかが重要である。この対照群をしっかり選ばないと研究者に都合の良い結果となるようなバイアスが生じる可能性がある。
B長期間: 期間は長くないとその効果が真のものであるか判別することができない。最低でも4〜5年は必要だと考えられる。
C死亡率: 総死亡率を求めることが肝要である。調査の対象である薬や検査などの副作用によって総死亡率があがってしまうことも考えられるしその調査にも重要である。
以上の@〜Cがそろった大規模臨床試験を複数個集めることは難しいかもしれない。しかし、例えば人数の規模が小さい臨床試験をある程度の数集めることができ、それを「メタアナリシス」したのならば1個1個のエビデンスレベルは低くても「メタアナリシス」後に得られた結果はその前のものよりもエビデンスレベルが上がっているといえ有用性はあるといえ
る。      

6年生試験ー2009年度

問1 脂質異常症の診断するためにもっとも有効な検査(採血によるもの)を3つ挙げ、それぞれの臨床的意義、判定法、および予防的治療法を述べよ。
*解答例*
・LDL-コレステロール>130mg/dl かつ/または、HDL-コレステロール<40mg/dl かつ
/または、 TG>150mg/dlのいずれかを満たすとき、脂質代謝異常と判定する。
・早期に診断し予防的治療を行うことによって、動脈硬化の進展を防ぎ、動脈硬化によって起きうる疾患、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症) 脳血管疾患(脳出血、脳梗塞)の発症を未然に防ぐ意義がある。
・運動療法:1日に2時間程度の運動により、HDL-コレステロール上昇、LDL-コレステロール低下、TG低下、血糖低下、血圧低下作用がある。
・食事療法:総摂取カロリーを運動程度(軽・重・中)によって設定し、摂取比率を糖質:蛋白質:脂質=55:20:25として、バランス良く摂取する。なお、総摂取カロリーは標準体重あたり、軽運動量者で25〜30kcal/kg, 重運動量者で35〜40kcal/kgとする。また、コレステロールは300mg/日以下、カルシウムは700mg/日以上が望ましい。
・薬物療法:LDL-コレステロール高値、HDL-コレステロール低値に対して、スタチン系を用い、TG高値に対して、フィブラート系を用いる。


問2 動脈硬化症の初期変化を見るための非侵襲的検査法(採血によらないもの)を3つ挙げ、特徴的な所見について説明せよ。
 *解答例*
・眼底検査

 交叉現象:動脈が静脈を圧迫する。  
  白線化現象:コレステロールの沈着により、動脈が白く見える 
                                          
  口径不同:血管の太さが場所により異なる 
                                

・頚動脈エコー
  内膜中膜厚(Intimal medial thckness)が通常は0.8mm以下でsるが動脈硬化があると0.8mm以下であるが動脈硬化があると0.8mm以上になる。また、血管壁にプラークがたまり、肥厚する。
・心電図
  虚血性変化として、ST低下がみられる。 
                         
問3 75gOGTT(血糖負荷試験)の方法、判定基準、および欠点を述べよ。
 *解答例*
まず、何もない空腹の状態で一度血糖を測る。そして、75gグルコースを患者さんに飲んでもらい、2時間後に再度血糖値を測定する。空腹時血糖≧126mg/dl or 75gOGTT後血糖≧200mg/dl があると、糖尿病型とし、精査を進める。欠点としては、侵襲が強いということである。75gのグルコースを飲ませるということは患者にとって苦痛であり、またこの試験自体で糖尿病の危険が高まるということが考えられる。


問4 アスピリン(抗血小板薬)の脳梗塞予防効果を調べるために、以下の調査が行われた。まずアンケート調査で過去1年間以上アスピリンを服用していた50人を1年間追跡し、脳梗塞の発症、および同症による死亡率を調べた(服薬群)。また対照とするため、同薬を服用したことがない150人(年齢と性別が一致している)についても同様に調べた(非服薬群)。その結果、服薬群は非服薬群に比べ、脳梗塞の発症、および同症による死亡が有意に少なかったことから、アスピリンは予防効果があると判定された。この調査に問題があるとすれば、どのようなものか説明してほしい。
*解答例*
まず、この調査の人数においてだが、服薬群の50人、対照群の150人というのは有意な結果を出すには少ないと考えられる。また、服薬群と非服薬群の間に等価性があったかに関しては、年齢と性に関してはそれぞれ一致しており、よいと考えられる。しかし、アスピリンを服用した人はもともと健康に対して関心があり、その他の生活においても注意していた可能性があり、バイアスがあったかもしれない。また、追跡した期間が1年間であり、長期間の観察という点に関しては短い。少なくとも4〜5年はフォローしていく必要がある。最後に死亡率に関してだが、この調査では脳梗塞による死亡に対してしか調査をしていない。もしかしたら、副作用による死亡などがあった可能性は否定できない。よって、総死亡率も出す必要があったと考えられる。

6年生試験ー2008年度

問1 インスリン抵抗性とはどのような病態か、関係する臨床検査名をまじえて説明せよ。
*解答例*
インスリン抵抗性は、インスリンによる血糖降下作用が弱まった状態を指す。肝臓や筋肉におけるインスリン受容体のdown regulation や抗インスリン物質の存在が原因と考えられている。インスリン抵抗性を測定する検査にはHOMA-Rがある。インスリン抵抗性は特に肥満において重要な病態といえる。カロリーの過剰摂取は中性脂肪や遊離脂肪酸の増加をもたらし、これにより肝・筋肉でのインスリン受容体のdown regulation が生じる。その結果インスリン抵抗性が生じ、膵でのインスリン分泌が高まり、高インスリン血症を生じる。この状態が続くとやがてインスリンは枯渇し2型糖尿病を発症する。又、インスリンの枯渇はLPLの活性を低下させ、血中でのVLDL代謝を停滞させる。これにより中性脂肪が増加し、高脂血症が発生、増悪する。肥満の場合、交感神経緊張が高まっているため高血圧症が生じやすい。これら高血圧、高脂血症、糖尿病により動脈硬化が進展し、血管性病変が生じることになる。なお、脂肪細胞からはアディポサイトカインが分泌されていて、これもインスリン抵抗性に関与する。肥満ではこのうち、TNF-αの増加、アディポネクチンの低下、レプチンの低下などが生じておりこれらもインスリン抵抗性を増大させる。

問2 冠動脈疾患で認められる心電図上の変化を4つ上げ、図とともに説明せよ。
*解答例*

労作性狭心症など一過性の虚血性変化でみられる。非発作時には認められない。



急性心筋梗塞急性期(発症から6時間後位)に現れる。超急性期(発症から6時間位まで)では、まずT波の増高がみられ次にST部分が上昇してくる。



SR上昇に次いで現れる変化。幅広く深いQ波が出現する。虚血部の部位診断に最も有用でありその後も残存する。



異常Q波に次いで現れる変化。陰性で左右対称の広いT波である。

問3 眼底で認められる動脈硬化性の血管変化を3つ上げ、図とともに説明せよ。
*解答例*
   
@<
交差現象> 動脈により静脈が押しつぶされている。   A<白線化> 動脈が白く光ってみえる。          B<口径不同> spasmによる。

これらはともに動脈硬化、特に高脂血症の眼底で認められる変化である。他にも動脈硬化の原因となる高血圧では、乳頭浮腫や眼底出血、網膜毛細血管の狭細化などが認められる。糖尿病も動脈硬化の原因となるが、糖尿病性網膜症の初期では点状小出血や小硬性白斑が、前増殖性では軟性白斑、静脈異常が、増殖性では新生血管や硝子体出血、牽引網膜剥離などがそれぞれ認められる。

問4 日本人のBMIの理想値は22」と言われている。逆算すると、たとえば身長が160センチメートルの人の理想値は、56キログラムほどになる。いろいろなBMI値について日本人の健康状態を調べたところ、これくらいで一番良かったから、というデータが根拠になったとされている。その調査では、3,000人をこえる男女を対象にBMIとともに血圧、尿、血液、胸部レントゲン、胃のレントゲン、心電図などの検査が行われた。血液検査では肝臓病、腎臓病、高脂血症、糖尿病、痛風などの分析が行われ、これら項目の一つ一つについて、異常があれば1ポイントを加算する、という方式で各人の健康状態が点数化され、最終的に総合ポイントがBMIと比較された。その結果、男女ともBMIが22くらいで、もっとも良かった(ポイントが低かった)のだという。   
このような調査の方法に問題はないか、考察してほしい。
*解答例*

6年生試験ー2007年度

問1 血糖値の高い状態を放置した場合に生じうる病態(いわゆる合併症)を4つあげ、それぞれを早期に発見するための検査(各1〜2つ)について詳しく述べよ(検査の意義、正常像または正常値、異常パターンなど)。
*解答例*
糖尿病網膜症
       ・眼底検査…糖尿病性網膜症の初期の単純型では、点状出血や硬性白斑などが認められる。
糖尿病性腎症
       ・尿中微量アルブミン…試験紙法では陰性となる微量な尿蛋白を検出できる。30mg/gCrを超えると陽性とみなす。
末梢神経障害
       ・深部感覚…音叉によって深部感覚の異常を検出する。下肢優位に発症することが多い。神経障害の比較的早期から認められる。
       ・心電図…呼吸性変動の消失は神経障害の早期から認められる。
虚血性心疾患
       ・心電図…心臓の虚血性変化が検出できる。ST低下などが認められる。

問2 肥満の程度を定量的に評価する方法を3つあげ、臨床的有用性(エビテンスなど)について述べよ。
*解答例*
@BMI
体重kg÷(身長m)2で計算されるもので、25以上を肥満とする。次に述べるウエスト周囲長や体脂肪率よりも容易に求められる上、心血管病変などの相関が高く、臨床上最も有用と考えられる。
Aウエスト周囲長
メタボリックシンドロームの診断基準に採用されているもので、男性では85cm以上、女性では90cm以上がメタボリックシンドローム診断の必須条件となっている。ウエスト周囲長は、心血管病変と相関の高い内臓脂肪を反映するとされている。住民検診の項目として用いられる動きがある。
B体脂肪率
体脂肪kg÷体重kg×100%で計算されるもので、18%以上を肥満とする。体脂肪率を求めるのは、BMIやウエスト周囲長を求めることに比べるとはるかに時間と労力を要するものであり、また皮下脂肪と内臓脂肪を分けて評価してないこともあり、臨床的有用性は低いと思われる。

問3 有酸素運動を行うことによって、健康上どのような効果が期待できるか。検査名などをあげて具体的に述べよ。
*解答例*
@インスリン抵抗性の改善:血液検査で血糖値の低下、HbAICの低下が認められる。
A高脂血症の改善:同じく血液検査でLDLコレステロール、中性脂肪の低下、HDLコレステロールの上昇が期待できる。
B高血圧の改善:有酸素運動により、血圧の低下が期待できる。
C肥満の改善:肥満を改善することは、上記3つの効果にもつながり、糖尿病、高血圧、高脂血症、ひいては動脈硬化の予防も期待できる。

問4 前立腺癌の腫瘍マーカーPSAの有用性を示したとして、以下の研究が知られている。この研究の問題点は何か?
『前立腺癌で死亡した44人を調べたところ、29人(66%)がPSA検査を過去5年間に1回以上受けていた。一方、年齢構成が同じになるように選んだ健常者645人について調べたところ、532人(82%)が同検査を受けていることが分かった。この結果から、PSAの定期的な検査によって前立腺癌死亡を明らかに減らせると結論した』
*解答例*
@PSAの検査後、長期にわたって追跡しなければ、ほんとうに前立腺癌を減らす効果があるかわからない。また、長期にわたって繰り返しSA検査を受けることによる副作用(マイナス効果)についての検討がなされていない。
A死亡した人が44人ということで、母集団としては少ない可能性がある
BPSA検査を受けた人は、ふだんから健康に関心があり、摂生をしている可能性が高い。逆に検査を受けなかった人は、あまり健康に関心がなく、前立腺癌のリスクファクターをいくつかもっていた可能性が高い。そうすると、ここでバイアスが生じていることになる。
C後ろ向き研究ということで、選んだ健常者については、研究者の仮定に沿う結果になるような人たちを選んでしまった可能性もある。

6年生試験ー2006年度

問1 メタボリックシンドロームとは、どのような疾患概念か。病態、診断基準、およびこれを放置した場合に起こりうる臓器障害について説明せよ。
*解答例*
日本人を含め、現代の医療において特に血管性病変(虚血性心疾患、脳血管障害など)の予後に与える影響は大きく、これに対する予防と早期発見・治療に力が注がれるようになってきた。多くの臨床研究から、高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙などがこれらの血管性疾患の危険因子として指摘されてきたが、1つ1つの因子の程度が軽度であっても、同一の人間にこれらの因子が複数集積することにより血管性疾患の発症頻度が蓄積することから、早期にこのような患者を拾い上げ、単一因子に対してではなく統合的に治療を進めるために構築されてきたのがメタボリックシンドロームである。
2005年4月に日本内科医会を始め8団体の委員による協議のもと使われた診断基準は≪表1≫のようになる。
 病態の上流に内臓脂肪蓄積を位置づけ、脂肪細胞から放出される遊離脂肪酸や中性脂肪がインスリン抵抗性をもたらし、インスリンの枯褐から糖尿病、LPL活性の低下や肝でのVLDL産生・放出の促進によって高脂血症、また肥満体という高負荷を動かすために交感神経が刺激され、腎での水再吸収も加わって高血圧がもたらされると考えられている。アディポサイトカインなども加えて概念の理解は未だ変化を続けているが最終的には動脈硬化をもたらすという点に終着する。
≪表1≫
@内臓脂肪蓄積(ウエスト周囲長)
  男性  85cm以上
  女性  90cm以上
A@を満にし、かつ下の2項目以上を満たす
 (1)収縮期血圧 130mmHg以上かつ/または
   拡張期血圧 85mmHg以上
 (2)高中性脂肪血症 150mg/dl以上かつ/または
   低HDLコレステロール血症 40mg/dl未満
 (3)空腹時血糖 110mg/dl以上

問2 境界型糖尿病と診断され、病院を受診している患者に実施すべき臨床検査はどのようなものか。具体的な検査名、判定基準、検査を行う理由について述べよ。
*解答例*
糖尿病の病型がたとえ境界型であったとしても、糖代謝異常とそれに起因する様々な病態が常に進行していると考え、治療的介入が必要である。    
@血糖値測定: 空腹時血糖 110mg/dl, HbAlc 5.8% を目安にそれ以下であることを定期的に確認する。
           糖尿病の進行を抑えるためのみならず、網膜症、腎症などの重症な合併症の発症を
           予防するために非常に有用である。    
A眼底検査: 早期の網膜症網膜症の所見(出血、硬性的など)の発見のために行う。より確実に行う。
         より確実に診断するためには網膜意図、蛍光網膜血管造影検査が有用である。
B尿中β2ミクログロブリン、NAGの上昇、GFRの上昇、微量アルブミン尿の検出: 罹患5年以上で網膜症や神経障害
                                                   など他の合併症がある場合において、
                                                   腎症の発症の発見に有用である。
C心電図: 呼吸性変動の消失は、神経障害の最も早期に現れる所見である。
D深部感覚: 音叉による振動覚の滅弱・消失は、比較的早期に現れる。

問3 生来健康な40歳の男性(事務職、身長168cm、体重74kg)が、健康診断で次のような検査結果となった。食事指導のための処方箋を書いてほしい。LDLコレステロール 180mg/dl、HDLコレステロール 30mg/dl, 中性脂肪250mg/dl、空腹時血糖120mg/dl、血圧160-98mmHg、尿酸8.5mg/dl、γ-GTP110IU/l
*解答例*
この患者さんは高LDL高コレステロール血症・低HDLコレステロール血症・高中性脂肪血症・境界型糖尿病・高血圧・高尿酸血症であり、γーGTPも上昇しています。また、BMIは26であり肥満である。
 まず、カロリー制限が大切で事務職という軽労働なので25〜30kcal/標準体重kg/dayとする。カロリー比は糖質:蛋白質:脂質=55:20:25の割合で摂取する。また、高血圧があるので塩分摂取を6g/day(JSH204ガイドライン)に設定する。また、高コレステロール血症があるので、コレステロール摂取を
300mg/dayに制限する。
γーGTPの上昇からは、アルコール過剰摂取がうかがえるので高血圧予防のためにもできるだけ制限し多くてもエタノールで男性20〜30ml/day・女性10〜20ml/daytosuru.高尿酸血症による痛風・尿路結石の予防にはビール・肉類などを控える事と尿をアルカリ化する食品(海藻など)を多めに摂取するように指導する。

問4 日本人の男女別の喫煙率と、最近の傾向(増えているか減っているかなど)、および受動喫煙の害に関する具体的なエビデンスを1つ以上あげて説明せよ。
*解答例*
現在の日本での喫煙率は、男性が約50%、女性が約20%である。近年、喫煙者の数は減少してきている。受動喫煙は副流煙による健康被害である。その害を示す具体的なエビデンスとして喫煙者がいる家庭ではその子供の気管支炎や気管支喘息の罹患が有意に高くまた、妊婦の流産・早産や未熟児出生の割合も有意に高い事が挙げられている。近年では受動喫煙防止のための分煙対策が進んでいる。

6年生試験ー2005年度

問1 糖尿病の発症を促進する因子を5つ挙げ、それぞれに対する生活指導あるいは予防的治療法について記せ。
*解答例*  
・肥満・・・BMI≧25 ならば摂取カロリー指導をする。デスクワークなど軽度作業であれば標準体重× 25kcal/日で、糖質:蛋白質:脂質=55:25:20の割合にし、有酸素運動(1日に2時間の速歩など)なども勧める。  
・高血圧・・・血圧は、130/85mmHg以下になるように指導する。まず、食塩の摂取量を摂取量を10g/日以下になるようにする。それで、コントロール不良なら、アニギオテニシン転換酵素阻害剤やカリシウム培抗薬などの薬物療法を考える。  
・高脂血症・・・トリグリセリド≧150mg/dlまたは、HDL<40mg/dl の場合食事療法や運動療法によって正常化をはかる。コントロール不良の場合、スタンチン製剤などで薬物治療を考える。  
・運動不足・・・インスリン抵抗性の改善をはかるために、有酸素運動を勧める。負荷は、心拍数100〜120回/分程度(楽〜ややきつい)で、1日に30〜60分を2セット程度、ただし、心機能、眼底に出血がないかなど、十分な検査が必要である。  
・喫煙・・・喫煙指導をねばり強く行う。

問2 肥満を放置することによって生じる病態を5つ挙げ、そのメカニズムを説明せよ。
*解答例*
生じる病態・・・高脂血症、高血圧、糖尿病、動脈硬化、痛風
単純性肥満の場合、摂取カロリーが消費カロリーを上回っており、血中の遊離脂肪酸が増加する(高脂血症)。すると肺のインスリ ン受容体のdown regulationが起こり、インスリン抵抗性が増すため、インスリンは分泌過剰となる。高インスリン血症は肝でのTG合成促進とVLDLの産生、放出を促すため、更に高脂血症となる。また高インスリン血症は、腎での水再吸収促進作用もあり、肥満では交感神経系の過緊張による血管収縮が起きていることと合わせて高血圧となる。そして、長期に及ぶインスリン分泌過剰状態はやがてインスリンの枯渇を招き、2型糖尿病となる。肥満を放置すると前述のような状態に陥りやすいため血管内皮細胞が障害されたり、血管壁にプラークが形成され、動脈硬化となる。また肥満者は高脂肪食、高プリン塩基食といったぜいたく食を好む傾向にあるため、高尿酸血症となり痛風や尿路結石を発症しやすい。

問3 軽度な心筋虚血および急性心筋梗塞のそれぞれにおける心電図波形を具体的に描き、診断のポイントを述べよ。
*解答例*
軽度な心筋虚血の場合、虚血は一過性の場合が多く、心電図変化も発作時のときにのみ認める。
狭心症を例にとって考えるとST低下が特徴的である。
右図のように基線よりST部分が低下した状態になる。
次に心筋梗塞では、心電図変化は時間が経過していくたびに、変化していく、順にT波増高、ST上昇、異常Q波、冠性T波となる。T波増高は最も早く現れる。次に異常Q波は、Q波が深く幅広くなる。又異常Q波は、消えることはなく、心筋梗塞の既往を表す。12誘導心電図で異常Q波を見ることでどの部位の梗塞かも知ることが出来る。ST上昇は、基線よりST部分が上昇したものである。異型狭心症でも見られる。冠性T波は、左右対称の陰性T波で数ヶ月から数年で元にもどるとされている。

問4 生来健康な40歳の男性(事務職、身長168cm、体重74kg)が、健康診断で次のような検査結果となった。問診すべき事項を5つ挙げて説明せよ。
LDLコレステロール180mg/dl,HDLコレステロール30mg/dl,中性脂肪250mg/dl,空腹時血糖120mg/dl, 血圧160−98mmHg,尿酸8.5mg/dl γ-GTP 110IU/l
解答例*
この男性は、高LDL血症、低HDL血症、高TG血症、境界型糖尿病、高血圧、高尿酸血症、高γ-GTP血症である。さらに、標準体重は、(168-100)×0.9=61.2であるので肥満も認める。これらは、心筋梗塞、脳卒中などの疾患の危険因子であるため、多くの問診を行い検査治療をすべきである。以下では問診の内容を挙げる。
・家族歴:家族に高脂血症、高血圧、糖尿病、突然死、心筋梗塞などがいるかを聞く必要がある
・既往歴:今まで、心疾患や脳疾患の経験があるか、又は胸痛や頭痛、歩きにくいなどの症状がないか、薬物を服用しているか
・食事内容:この男性の1日の摂取すべき総カロリーは、61.2×25=1530kcalである。それを越えての摂取なのか、ビールや肉を好んで摂取するかなど
・アルコール歴:高尿酸血症なのでビールを多く飲むか、又、高γ-GTP血症であるため、これがあるかどうか。
・喫煙歴:上記の病態から心疾患や脳疾患などの危険性高いためさらに喫煙によって危険性が高くなるため。

6年生試験ー2004年度

問1 動脈硬化症の危険因子を5つ挙げ、その生活指導あるいは予防的治療法について記せ。
*解答例*
危険因子は、高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満、加齢が挙げられる。
生活指導、予防的治療法について。
まず、食事指導、食事療法について。1日の総摂取カロリーを、標準体重、すなわち(身長m)2×22、に、標準体重1Kgあたり、軽労働者は25〜30kcal、中等度労働者は30〜35kcal、重労働者は35〜40kcalをかけて求める。さらに、糖質、蛋白質、脂質のバランスをそれぞれ55%, 20%, 25% とする。また、塩分の過剰摂取は高血圧と関連するので、1日あたり10g以下となるようにする。これらによって、高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満の改善をはかる。  次に運動、運動療法について。適度な運動をすることで、肥満の改善、インスリン抵抗性の改善などが期待でき、高血圧、高脂血症にも有効である。 1日2時間ほどの歩行が良いとされている。逆に、ゴルフ、登山などは脱水の危険もあり、あまり勧められない。その他、喫煙、過度の飲酒、ストレスは高血圧に関与するので、禁煙、適量の飲酒をするよう指導し、ストレスの軽減についても指導する。 薬物治療について。高血圧に対して、カルシウム拮抗薬、アンギオテンシン交換酵素阻害薬の投与が有効である。糖尿病には、スルフォニル尿素剤、α-グルコンダーゼ阻害薬が有効である。高脂血症には、HMG− CoA阻害薬が有効である。
問2 眼底から分かる内科的疾患を3つ挙げ、具体的な(眼底の)所見を図説せよ。
*解答例*

問3 生来健康な40歳の男性 (事務職、身長168cm, 体重74kg) が、人間ドッグで次のような検査結果となった。具体的な食事処方箋とその根拠について述べよ。    [ LDL コレステロール 190mg/dl, HDLコレステロール 30mg/dl, 中性脂肪250mg/dl, 空腹時血糖120mg/dl, 血圧160-98mmHg, 尿酸8.5mg/dl]
*解答例*
高LDL血症、低HDL血症、高TG血症、境界型糖尿病、高血圧、高尿酸血症を呈している。標準体重は(168-100)×0,9=61.2kgである。BMIは74÷1.68÷1.68≒26で肥満である。事務職なので軽労働である。  61.2×25=1530kcalを1日総カロリーとし、高脂血症のため糖質55%,蛋白質20%,脂質25%の内分けとする。そのうちコレステロールは300mg/日を限度とする。不飽和脂肪酸/脂肪酸の比は1.2〜2.0程度がのぞましい。高血圧なので塩分摂取量を10g/日を限度とする。高尿酸血症であるので、ビール・肉を控える。

問4 ある血圧治療薬について、一次予防で長期投与することの効果を検証したい。調査計画をデザインせよ。
*解答例*
まず薬を投与する群と投与しない若しくはプラセボ投与のコントロール群の高血圧患者の被験者を選ぶ。重症例のコントロール群は生命の危険もあるため軽〜中症者がよい。これは、十分な人数がいないと効果判定ができないためだ。ともに2000人以上いるのがよい。年令、性別等がランダム化されてよく調整されていればまったくの同数でなくてもよい。又、二重盲検を行うのがよい。(患者、医師共にどれがプラセボかが分からない。バイアスがわかりにくい)これを追跡、研究していくのは長期間でなくてはいけない。最低でも4、5年が必要である。 又、投与群とコントロール群の総死亡率も出すことが必須である。これは、薬投与により効果が現れ死亡率が低いのか、はたまた薬による副作用等で別の疾患症状表れ死亡率が上がったのかなどを検討するのにも必要となるためである。

6年生試験ー2003年度

問1 高血圧症の危険因子を5つ挙げ、その生活指導あるいは予防的治療法について記せ。
*解答例*
危険因子 加齢、肥満、遺伝的素因、塩分の過剰摂取、ストレス 生活指導としては食事療法や運動療法がある。食事療法としては、まず塩分制限が挙げられる塩分過剰摂取は高血圧の原因となるため、1日の摂取量を10g以下におさえる。また、肥満は交感神経の過緊張を引きおこし、高血圧の原因となるため、カロリー制限を行う。1日のカロリー量は軽労働者なら標準体重の1Kgあたり25〜35kcal、中労働者なら30〜35kcal、重労働者なら35kcal〜40kcal を目安とする。糖質、蛋白、脂質の割合は各々、55%, 20%, 25% とする。高脂血症の予防として、コレステロールは1日300mg以下に抑える。 運動療法は血圧を下げる効果があり、また肥満の予防、改善にも良い。1日2時間ほど歩くことが最も良い。またストレスも血圧を上げる要因であり、ストレスを避ける生活も重要である。薬物療法としてはアンギオテ二シン交換酵素阻害薬と、カルシウム拮抗薬が一時予防に有効である。
問2 肥満がなぜ起こるのか、その結果、生体内で生ずる変化はどのようなものか説明せよ。ただし「自律神経」、「インスリン」、 「中性脂肪」、「LPL」の各用語を必ず使うこと。
*解答例*
血中で遊離脂肪酸が増加すると、肺のインスリン受容体のdawn regulationが起こる。これによりインスリン抵抗性が増すため、それに対しインスリンは過剰に分泌されるようになる。このインスリン過剰分泌はやがてインスリンの枯渇を起こし、糖尿病を引き起こす。また一方インスリンが枯渇するとLPL活性が低下するため、VLDLは上昇し、VLDLの大部分を占める中性脂肪も上昇する。これにより肥満が起こる。肥満はまた、自律神経にも作用し、特に交感神経の過緊張をひきおこし、これにより血管は収縮し、高血圧が起こる。
問3 虚血性心疾患で認められる心電図変化を4つ以上挙げよ。(図と文章で説明のこと)
*解答例*
・ST低下 主に労作性の狭心症でみられる変化であり、心電図のST部分が基準線に比べて下の方に下がっている。
・T波の増高 心筋梗塞に陥るとまずみられる変化であり、T波の高さが高くなる。
・異常Q波 心筋梗塞で次にみられるとされる変化である。Q波が深く、幅広くなる。このQ波が存在する心電図の誘導から、心筋梗塞の部位を特定するのに有用であるといわれる。
・ST上昇 心筋梗塞で次にみられるとされる変化である。(安静狭心症でもみられる。)ST部分が基準線に比べて上昇してくる。
・冠性T波 やがて心筋梗塞のT波は下向き左右対称な冠性T波になる時期がくる。
(図は省略)
問4 頚動脈エコーの正常像と、動脈硬化症に際して認められる所見を図解せよ。
*解答例*
頚動脈エコーで内膜と中膜の複合体の厚さIMT(intimal-medial-thickness)は通常0.8mm以下であるが、これが0.8mmを越えるようになると動脈硬化が進んできていると考えられる。さらに動脈硬化症では、血管壁にプラークが存在することもある。
(図は省略)
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6年生試験ー2002年度

問1生来健康な50歳の男性(身長170cm,体重72kg)が、人間ドッグで次のような検査結果となった。食事指導の具体的な方法について説明せよ。
[  LDLコレステロール180mg/dl,HDLコレステロール 30mg/dl, 中性脂肪 250mg/dl,HbAlc 6.0%,血圧160-98mmHg,尿酸8.9mg/dl]
*解答例*
LDLコレステロールは、180mg/dlと高く、HDLコレステロールは低く、TG高い。高脂血症といえる。HbAlcは、糖尿病ではないが、予防の対象となるだけ高く(5.8%<HbAlc)、血圧も高血圧、尿酸値も高尿酸血症といえる。 体重もみてみると(170−100)×0.9=63kgより体重も重い。食事指導では、まずカロリーについて50歳男性ということで不明ではあるが、中労働として考えると63×25=1575kcalとなる。3大栄養素の配分では糖50%、 蛋白25%、脂肪20%とする。中労働者として考えたが、もし、漁師のように重労働の場合は63×30、事務のような軽労働なら63×20とする。他には高脂血症を考え、1日のコレステロール摂取量<300mg/dlとする。血圧も高いため、 塩分の摂取量を抑える必要もある。日本人は10〜12g1日に消費するが7gくらいまでに抑えるのが良い。また高尿酸血症であるため、酒,特にビールや肉類の摂取は控えたほうが良い。もう一度高脂血症について考えれば、肉(牛肉、豚肉)、 タマゴ、牛乳といったものはコレステロールを上昇させるため避けたい。 最後に多価不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸について。1.2〜2.0という話もあるがEPA・オレイン酸・リノール酸などの 不飽和脂肪酸はLDL↓ VLDL↓などの作用があるが酸化LDL↑という話もあり多価不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸については、値を定めないほうがよいのかもしれない。
問2眼底から分かる内科的疾患を3つ挙げ、具体的な(眼底の)所見を述べよ。
*解答例*
高脂血症 白線化(動脈が白く光って見える)、口径不同(動静脈で血管径の大きな違い) 静脈の挟小化(動脈による圧排、動脈からのfactorによるspasm) 糖尿病(糖尿病性細胞症)硬性白斑(出血のあと)、 軟性白斑(出血のあと)、点状出血(点状に赤くみえる出血班)、しみ状出血(赤い出血班)、新生血管の増生(虚血に陥った領域に新生血管の増生がおこってくる)など。 高血圧 細胞の微小血管、ご蛇行したりなど走行の異常がみられる。動脈壁の壁の不整、血管径の挟小化、高血圧による微小動脈瘤、出血、乳頭浮腫など。
問3 脳血管障害に有用な検査法を3つ挙げ、その意義について説明せよ。
*解答例*
脳血管障害の原因としては高血圧、動脈硬化、塞栓症が重要であり、これらの早期発見、早期治療が脳血管障害の発症予防に重要だと思われる。高血圧に関しては血圧測定が有用であり、140/90mmHg以上を高血圧とし、これ以下に保てるよう食事療法、運動療法、棄物療法を行う。動脈硬化に関しては血管エコーが血管の挟窄の把握に有用である。これは内頚動脈のIMT(internal medial thickness)を測定することで動脈硬化の程度をしるもので正常ではIMTは0.8mm以下であり、0.8mmを超えるようであれば基礎にある高脂血症の治療を行う。 塞栓症の原因としては心房由来のものが最も多く、基礎疾患にAfがあることが多いので心電図でAfの有無を確認することが有用と思われる。Afが指摘されればワーファリンによる抗凝固療法、アスビリン等による抗血小板療法が必要となる。
問4大規模臨床試験を行う場合の要件を4つ以上挙げ、それぞれ説明せよ。
*解答例*
@数が多い:症例数を多くする事で個人差の影響を少なくする事が出来る
A観察期間が長い:5〜10年は観察する事で長期的な効果が分かる
B対象と比較している:患者と医師の二重盲検化を行い薬効に関するアドバイスを無くす
C総死亡率を求めている:薬効の他に未知なる副作用の存在を把握する
D対象群はランダムに分ける:年齢、性別、症状の程度などをなるべく同じにしてランダムに振り分ける事が重要
E観察期間中のfollow up:定期的に医師が診察し、症状の悪化などがあればいつでも十分な試験を中止し、十分な治療を保証する。また、途中不参加の意志も尊重する。
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6年生試験ー2000年度
 
問1 生来健康な48歳の女性が健康診断を受けたところ、身長160cm、体重65kg、早朝空腹時血糖120mg/dl、HbA1c6.1%で、他の異常は認められなかった。この人の生活指導(食事処方も含む)について具体的に記せ。
*解答例*
HbA1cが6.0%以上であり、空腹時血糖が110mg/dl以上であるので、糖尿病の1次スクリーニングとしては異常と考え、予防治療的な生活指導を行う。
1)食事療法
標準体重=(160−100)×0.9=54kg  (65kgはobesityであり、減量を指導する)
職業は不明だが主婦であると仮定すると必要なエネルギーは、54×30=1620kcalとなる。
処方としては、総カロリー:1620kcal、糖質:55%、蛋白質:20%、脂質:25%が適応であり、これを指導する。
2)運動療法
1日当り2時間位のwalkingなど適度な運動をすることによって、血糖絵緒低下させると共にインスリン抵抗性を下げる働きがある。良い運動としては、テニス、水泳などがあり、悪い運動としては、剣道、ゴルフ、登山などがある。
3)ストレスの除去
精神的なストレスを除き、規則正しい生活をするように指導する。
[解説:解答としては満点であり、追加すべき事柄はない。]

問2 食塩の望ましい一日摂取量と過剰な塩分摂取がもたらす障害について記せ。
*解答例*
食塩の望ましい一日摂取量は7g/dayとされている。過剰な塩分摂取がもたらす障害として、循環血液量の増加による高血圧がある。高血圧により、血管内皮障害が起こり、脳出血、虚血性心疾患が引き起こされる。長年にわたる高血圧により、心不全を呈する。腎機能障害も起こりうる。また、塩分の多い食事は胃癌の原因になるという指摘もある。

[解説:過剰な塩分摂取では、血管障害のみならず発ガンも重要な問題となる。この点について触れた解答が少なかったのは残念である。]

問3 ある高脂血症治療薬について、一次予防で長期投与することの効果を検証したい。調査計画をデザインせよ。
*解答例*
@母集団の形成 
 LDLコレステロール>130mg/dl、HDLコレステロール<40mg/dl、トリグリセリド>150mg/dlを満たす対象者を集める。このうち、基礎疾患のある二次性高脂血症患者、および他疾患にて治療を行っている者を除外する。なお現在、高脂血症の治療を行っている者も除外する。対象者を年齢、性別、高脂血症の程度に差が生じないように2群に分ける。
A服薬
 2群のうち、1群には対象とする薬剤、もう1群にはプラセボを投与する。この際、患者および投薬を行う医師がどちらを服用しているのか分からないようにする。医師は定期的に患者を診察し、薬のコンプライアンスが保たれているか、副作用がみられないかチェックする。
B評価
 一定期間(この場合5〜10年程度が望ましい)患者を追跡調査する。一定期間の後、2群のLDLコレステロール値、HDLコレステロール値、トリグリセリド値の変化、および虚血性心疾患、脳血管障害の発生率、総死亡率を求め、2群間で比較を行い、有意差があるかを検討する。このことにより、対象とする薬剤を一次予防で長期投与することの効果を評価することができる。
[解説:大規模臨床試験では、対象群をランダムに設定すること、例数が多いこと、長期に渡り追跡すること、対象疾患の発生率などと共に総死亡についても調査すること、などが重要である。本解答例はこれらの諸点が盛り込まれており満点である。]
問4 健康診断として血液を用いた検査を10項目行いたい。最適な検査の組合せについて、具体名とその根拠を述べよ。
*解答例*

具体名

根拠

赤血球値 貧血の有無、貧血があるとすればどのような性質のものか調べることができる
ヘモグロビン値
へマトクリット値
LDLコレステロール値 高脂血症のスクリーニングとなる
トリグリセリド値
AST(GOT) 肝機能障害の指標になる。ただし上昇しているからといって、必ずしも肝機能異常があるとは限らない
γーGTP 胆道系障害、アルコール性肝障害の検出に有効
アミラーゼ値 膵機能の指標になるが特異性は高くない
BUN値 腎障害の指標になる。ただし軽度の腎障害では異常は認められないことがある
血糖値 糖尿病のスクリーニングとして有効

上記のように、具体名と根拠をまとめることができる。健康診断として行う検査であるので、できるだけ頻度が高く、自覚症状の少ない疾患をスクリーニングできるようにすることが重要と考える。
[解説:解答例の中には血算、生化学検査、尿検査、腫瘍マーカーのように10項目挙げたものがあった。しかし、明らかに題意に反しており、かつこれではすべての検査を含むことになって解答としては不適切。]

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