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ミトコンドリアやオートファジーに興味のある方は、ぜひご連絡ください。
問い合わせ先:神吉(かんき)
kanki<at>med.niigata-u.ac.jp
025-227-2156












研究内容の紹介

1.はじめに(ミトコンドリアとオートファジーの紹介)
2.ミトコンドリアオートファジーと健康
3.私たちの研究成果(すこし専門的な内容)

私たちの研究成果

選択的なミトコンドリア分解って本当に存在するのか?~その分子機構は?~

 僅か7-8年前のことですが、マイトファジーの研究を開始した当時は、オートファジーがミトコンドリアを選択的に分解しているかどうかですら明らかではありませんでした。選択的にミトコンドリアを分解するためには、これがミトコンドリアだと識別するための「目印」がミトコンドリア上に必要ですし、細胞質には目印を識別し捕まえる為の因子も必要です。しかしながら、こうした因子は全く同定されていませんでした。私たちは、まず出芽酵母でマイトファジーを観察する方法を確立し、最初に目印を識別し捕まえる因子がAtg11であることを見いだしました(Kanki & Klionsky, JBC 2008)。次に、マイトファジー関連因子のスクリーニングを行い(Kanki et al. MBC 2009)、最終的にミトコンドリア上の目印に相当するAtg32を同定することに成功しました(Kanki et al. Dev. Cell 2009)。下図に示すように、ミトコンドリア上の目印であるAtg32が、細胞質のAtg11に識別され捕まえられる(結合する)ことによって、選択的なミトコンドリア分解が開始することが明らかとなったのです。

 さらにその後もAtg32を中心に研究を続け、Atg32の114番目のセリン残基のリン酸化がAtg32とAtg11の結合に必須であること(Aoki et al. MBC 2011)、Atg32のリン酸化はKasein Kinase 2が行っていること(Kanki et al. EMBO Rep. 2013)や、マイトファジーの制御、即ちAtg32のリン酸化にはHog1 MAPキナーゼシグナル経路が重要であること(Aoki et al. MBC 2011)、TORの下流でUme6-Sin3-Rpd3複合体がAtg32遺伝子発現を抑制していること(Aihara et al. JCS 2014)など(全て上図参照)を出芽酵母におけるマイトファジーの分子機構の多くの解明に成功しています。

出芽酵母におけるマイトファジーの意義

 「ミトコンドリアオートファジーと健康」の項目でも触れましたが、哺乳類ではマイトファジーは選択的に異常なミトコンドリアを分解することでミトコンドリア恒常性維持に貢献していると考えられています。しかしながら、出芽酵母ではマイトファジー遺伝子であるATG32を破壊することでマイトファジーを不能にした株でも、ほとんどミトコンドリアに異常は認められませんでした。出芽酵母は、ワインなどアルコールを作るのに利用されている生物です。糖類が十分存在する環境では解糖系のみでATPを産生し、ピルビン酸はエタノールに変換されます。哺乳類ならピルビン酸はアセチルCoAに変換されミトコンドリアでエネルギー源として利用されるのですが、出芽酵母ではこの反応がほとんどおきていません。即ち、ミトコンドリアはほとんど使われず、細胞内のミトコンドリアの量も非常に少なくなります。逆に、糖類が枯渇してくると、エタノールはピルビン酸に変換され、ミトコンドリアを使ってATPを産生するようになります。この時は、ミトコンドリア量も増加します。この様に、出芽酵母では、環境の栄養状態(炭素源の状態)によってミトコンドリアの量を変化させているのですが、ミトコンドリア量を減らすときにマイトファジーが大きく貢献しているようです。実際、マイトファジー不能なatg32破壊株では、ミトコンドリア量が減らないために、ストレス環境下ではミトコンドリアから出る活性酸素をうまく処理できずに、ミトコンドリア自体が酸化傷害を受けることが判りました(Kurihara et al. JBC 2012)。この様に、出芽酵母では、マイトファジーはミトコンドリア量の調整に大きく貢献しているようです。

哺乳類におけるマイトファジー

 出芽酵母では、Atg32を中心としたミトコンドリア選択的分解機構を明らかにしてきたのですが、哺乳類では、未だにどのようにしてオートファジーがミトコンドリアを分解しているのか明らかになっていません。残念なことに、Atg32のホモログは、哺乳類には存在しないようです。さらに、哺乳類ではマイトファジーを観察するのが困難なことが研究を更に難しくしています。
 私たちは、哺乳類におけるマイトファジー研究を進めていくために、高感度なマイトファジー観察法を確立しました。これは蛍光タンパク質Keimaを用いる方法で、理化学研究所の片山先生・宮脇先生らが開発された方法です(Katayama et al. Chem Biol. 2011)。この方法を用いてマイトファジーを観察した所(下図左)、まずは、哺乳類細胞でも出芽酵母と同様にp38とErk2のMAPキナーゼシグナル経路が関わっていることが判明しました(下図右、Hirota et al. Autophagy 2015)。p38は、出芽酵母のHog1に相当するMAPキナーゼですから、哺乳類にはAtg32ホモログが存在しないとしても、哺乳類と出芽酵母の間でマイトファジーの誘導シグナルは共有されていそうです。
 我々は、培養細胞系を用いてマイトファジーの研究を進めていますし、新たにマウスモデルも導入して、マイトファジーの生理的意義や疾患との関わりにまで踏み込んで研究を進めている所です。
   

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新潟大学大学院医歯学総合研究科