新潟大学腎・膠原病内科

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研究について

高血圧・腎研究グループ

当科では「高血圧・腎研究グループ」として、腎班・膠原病班のうち、高血圧に興味のあるものが参加して、主に臨床的な研究を行っています。学内外の多くの先生方の御協力により、いくつかの論文を発表することができました。この場をお借りしてお礼申し上げ、最近の私共の研究の一部を紹介させて頂きます。

ACE遺伝子I/D多型と腎疾患

血奨のアンジオテンシン変換酵素(ACE)の活性は、遺伝的な(生まれつきの体質)の影響を大きく受けることが知られています。特に、1990年Rigatらにより、ACE遺伝子イントロン16に存在するI/D多型でACE活性の50%が決定されると報告されて以来、主に心血管疾患の発症・進行に、ACE遺伝子の多型が関連する可能性は、数多く報告されてきました。腎疾患においても、特に糖尿病性腎症やIgA腎症の発症と進行に関連が報告されていますが、否定的な報告も多く、一定の結論が得られていません。ACE阻害薬やアンジオテンシン受容体括抗薬(ARB)などのRAS阻害薬の腎疾患に対する臨床的な治療効果は確立されています。このRAS阻害薬の治療効果にも個人差があり、ACE遺伝子多型が関連している可能性が指摘されています。もし、これらの薬剤の効果を予測することができれば、より積極的な使用や、逆に他の治療法を選択するなど、いわゆるオーダーメイド医療に一歩近づくことができます。この点に関しては、1995年Yoshidaらは、IgA腎症ではDD型の方が進行が早く、かつACE阻害薬の治療効果が著しいと報告しましたが、糖尿病性腎症では相反する結果が複数報告されています。

他のACE遺伝子多型

以上のように、ACE遺伝子I/D多型と糖尿病性腎症やIgA腎症の発症・進展、およびRAS阻害薬の治療効果との関連は、一定の結論が得られておらず、その理由として、症例数や研究デザイン、あるいは人種の相違により、異なる結果を見ている可能性が高いと考えられます。もう一つ考慮しなければならないことは、そのような違いがあっても、少なくとも一定の傾向が見られるほどには、このI/D多型自体と疾患との関連がないということです。近年、ACE遺伝子全領域について多型が検索され、それぞれの多型と血漿ACE活性への関連が調べられ、その結果、最も血漿ACE活性に関連する多型は、エクソン17に存在するSNP、A2350Gであり、この多型で補正するとI/D多型は有意では無いという報告がなされました。

私達は、この結果に注目し、IgA腎症267症例について、A-240T、I/D、A2350Gの三カ所の多型と腎機能の予後、RAS阻害薬の効果との関連を解析しました。その結果、尿蛋白、高血圧、RAS阻害薬非使用といった臨床的な危険因子に比較して、関与は薄いものの、A2350GのAA型は、腎機能低下の有意な危険因子として同定され、かつAA型ではRAS阻害薬の治療効果が他の遺伝子型の群よりも顕著に認められました(Narita I. et al, J Med Genet, 2003)。

この結果を臨床に活用するには、更なる前向き研究で確認する必要があります。特にRAS阻害薬を含む治療内容をそろえた臨床研究が必須です。また、腎におけるRASは、例えばアンジオテンシンノゲンの発現調節や、ACE2を介したアンジオテンシン1-7の役割など、未だ未解明の部分もあり、これらを含むRASに関わる他の遺伝子群の関与も、今後の課題と思われます。