新潟大学大学院医歯学総合研究科

ロゴ

ヒト腎臓病の病因や病態を解明し、新たな治療法を開発し、
次世代の研究者と医療人を育成に取り組みます

腎分子病態学分野
Department of Cell Biology

腎構造病理学分野
Department of Structural Pathology

腎の基礎研究の拠点として
腎糸球体疾患の発症・進行機序の解明、新規治療法の開発

河内裕教授

腎分子病態学分野 教授


河内 裕

 1973(昭和48)年に設立された腎研究施設は、今回の組織改編、腎研究センターの発足にあたり、腎研究センター基礎部門に移行致しました。腎研究施設は、設立以来43年間、全国で唯一の腎に関する特別研究施設として、研究、教育面での役割を果たしてまいりました。研究面では、病態形成機序の解明や薬剤開発に貢献してきた多くの病態モデルの開発、腎糸球体のバリア構造の解明、腎のプロテオミクスデータベースの構築などの実績を挙げ、現在の腎臓学の発展に貢献してまいりました。教育面では、国内はもとより中国、韓国をはじめとするアジア諸地域、オーストリア、米国などから大学院生、研究生を受け入れ、人材育成に努めてまいりました。若い日に腎研究施設で学んだ人材が、現在の腎臓病学の中核を担うキーパーソン、国内外の腎関連施設の指導者として活躍されています。これまでに形成してきた人的ネットワークは、研究を進める上での貴重な財産となっています。

 現在、腎研究センター基礎部門は、腎糸球体疾患の発症、進行機序の解明、腎不全への進行を阻止するための新規治療法の開発に向けた研究に取り組んでおります。その中でも最重点課題としているのは、「蛋白尿発症機序の解明、ネフローゼ症候群の治療法の改良、新規治療法の開発」です。この目的にむけて、腎分子病態学分野、腎構造病理学分野はそれぞれ、分子機能の解析、糸球体構造の解析という側面から取り組んでいます。蛋白尿は、腎疾患の最も重要な症候であるだけでなく、腎障害を進行させる悪化因子でもあります。蛋白尿陽性者は、心、脳血管疾患の発症率が3倍であるとする疫学データも示されており、この課題は腎領域だけでなく関連する多くの領域においても重要な研究課題と位置づけられています。本課題の解決にむけて、関連領域の研究施設、関連企業との共同研究も進めています。5年以内に、現在検討中の蛋白尿抑制のための治療法の改良を臨床応用につなげることを目標としております。

 当部門は、新潟大学医歯学総合研究科附属の唯一の研究センターの基礎部門として、学内他領域の研究の推進、研究者育成にも貢献していきたいと考えております。今回の組織改編、腎研究センターの発足で、臨床部門、トランスレーショナルリサーチ部門との連携体制、腎泌尿器病態学分野、小児科学分野との協力体制がこれまで以上に強固になりました。基礎部門は、国内、アジアにおける腎研究の拠点としての役割をさらに充実させ、本センターのミッションである「すべての腎疾患の克服」の実現に向け、基礎研究の側面から、その役割を果たしていきたいと考えております。

河内 裕 教授プロフィール
1987年 新潟大学医学部医学科 卒業
1991年 新潟大大学院医学研究科 修了(医学博士)
1992年-95年 米国ボストン大学医療センター 研究員
1995年 新潟大学腎研究施設 助手
1997年 新潟大学腎研究施設 助教授(※2007年から「准教授」に改称)
2008年 新潟大学腎研究施設 教授
2015年 新潟大学腎研究施設 施設長
主な学会活動
日本腎臓学会(評議員)、日本病理学会(刊行委員)
国際腎臓学会、アメリカ腎臓学会 など

腎分子病態学分野

蛋白尿の発症機序、心・脳血管疾患との因果関係の解明

基礎部門集合写真

 腎の最も重要な機能は尿の生成です。尿は、生体の水分、電解質を調節し、代謝でできた老廃物を体外に排泄する役目をしています。腎には、尿生成の過程で体に必要な成分である蛋白質が尿として排泄されないようにするバリア装置がありますが、このバリア機能の障害が蛋白尿です。腎分子病態学分野は、腎糸球体の毛細血管の最外層に位置する糸球体上皮細胞(ポドサイト)の細胞間接着装置であるスリット膜と呼ばれる構造が、蛋白尿の発症を防ぐ最終バリアとしての役割を果たしていること、日常臨床で診られる多くの腎疾患の蛋白尿は、スリット膜の機能障害により発症することを明らかにし、世界に先駆けて報告してきました。しかし、このスリット膜の分子構造、バリア障害の発症機序はまだ十分に解明されていないため、蛋白尿に対する有効な治療法開発の壁となっています。私たちは、バリア機能維持に関わる分子群を同定してきました(下図)。現在、これらの分子を標的とした新規治療法の開発に向けた研究を進めています。同定された分子群には他臓器疾患での役割は検討されていながら、腎では重要な分子として捉えられていなかった分子群も含まれています。これらの分子に対して保護作用を持つ薬剤の適応拡大などにより、近い将来に、より有効な治療法を開発することができると考えています。

 これまでの研究で、血液脳関門や、胎盤バリアに共通する機能分子も同定しています。蛋白尿陽性者は心、脳など他臓器の疾患の発症率、死亡リスクが高いという統計データが報告されています。蛋白尿は、生体各所のバリア機能の障害を示す症候と捉えることができます。腎分子病態学分野は、蛋白尿抑制という切り口で腎疾患、関連疾患の克服に挑みます。

スリット膜の分子構造
スリット膜の分子構造図

腎不全への進行阻止:糸球体硬化の発症・進行機序の解明

 腎糸球体メサンギウム領域の拡大、硬化により糸球体毛細血管腔が狭小化、閉塞し、糸球体の濾過機能が損なわれます。慢性腎炎の主要疾患であるIgA腎症では、約40%の患者が腎不全に進行します。どのような患者さんが腎不全にいたるのか、進行させる因子は何なのかについて、未だ十分な答えは得られていません。私たちは、独自に開発した進行性のモデル、可逆性のモデルの病態を丹念に比較することにより、腎不全に進行させる因子を同定してきました。その中で、IP-10,Fractalkineなどのケモカインが、糸球体硬化への進展に重要な役割を果たしていることを明らかにしました。現在、 Fractalkineの機能を修飾する治療法の開発に取り組んでいます。

スタッフ
福住 好恭 准教授
2008年 金沢大学大学院博士課程 修了
2008年 ドイツホルムヘルツ研究所 研究員
2011年 新潟大学腎研究施設 助教
2015年 新潟大学腎研究施設 准教授
張 瑩 助教
2008年 新潟大学大学院博士課程 修了
2008年 新潟大学腎研究施設 研究員
2015年 新潟大学腎研究施設 助教

腎構造病理学分野

 傷害マーカーの研究から、腎臓は、程度の差はありますが、生理的状態でも病的状態でも常に傷害と修復を繰り返していることが明らかになっています。この傷害と修復のアンバランスは、腎臓を壊し慢性腎不全に陥る主要な原因の一つとなっています。傷害の機序は多岐にわたり調べられていますが、修復し構造を一定に保つ機序はほとんどわかっていません。腎構造病理学分野では、この構造維持の機序を探るため、腎糸球体を中心に二つの手法を使って挑戦しています。一つ目はプロテオミクス的手法で、構造維持に重要な細胞間の膜タンパク質を網羅的に同定し、その役割を明らかにしようとしています。二つ目は分化形質を失いがちな培養細胞を使い、生体と同じ特異的形態を再現することによって、機序解明の突破口を開こうとしています。

矢尾板永信准教授
矢尾板 永信 准教授プロフィール
1981年 新潟大学医学部医学科 卒業
1982年 新潟大学腎研究施設 助手
1991年 ドイツ癌研究センター 研究員
1999年 新潟大学腎研究施設 助教授
トップへ戻る