我が国において、腎臓病が進行し、腎臓の機能が不可逆的に失われる末期慢性腎不全で血液透析療法などをうけている慢性透析患者数は、腎研究施設が設立された昭和48年(1973年)頃は6000人ほどであったが、現在では30万人に増えている。 近年、毎年約1万人づつ増加していることになる。 この増加は腎臓病を患う人の数が増加したためではなく、透析医療の進歩により慢性透析患者がより長く生存できるようになったためである。 透析医療の進歩とそれに替わる腎移植の技術的成熟は末期慢性腎不全患者の大きな福音となった。 一方そのため、慢性透析に要する医療費も増えることになり、現在その総額は年1兆円を超え、国民総医療費の3%程度を占め、今後もさらに増加すると推定されることから医療経済問題として認識されている。
この状況は他の先進国においても同様で、世界的にも緊急に解決すべき重点課題と認識されている。 このような慢性透析患者数の増加を抑制するには末期慢性腎不全に進行する腎臓病の進行を阻止したり、予防する方法を開発することが必要である。 しかし、残念ながら、慢性に進行する腎臓病に対する有効な治療法は未だ見出されていないのが現状である。 その原因はこれまでの腎臓病の基礎的研究と臨床研究が個別に行われてきたため、互いにその接点を見出すことができず、ヒト腎臓病の病因や病態を把握し、その治療法を開発する研究が遅れたことによると考えられる。
新潟大学大学院医歯学総合研究科の附属腎研究施設は腎臓に関連する臨床講座、機能分子医学寄附講座等と協力して、腎臓病の基礎的研究に臨床研究を融合した研究を行っている。 新潟大学医歯学総合研究科の腎臓病研究体制において、腎研究施設はその中核としてヒト腎臓病の病因や病態を把握し、その治療法を開発するという社会的要請に応えることを目指している。
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