2002/04/15、教室検討会、八幡 哲郎
1. 症例呈示
【症例】 29 才、女性
【主訴】過多月経、月経不順
【家族歴】特記すべきことなし
【妊娠分娩歴】 0妊0産
【月経歴】初経 14才、不順
【既往歴】特記すべきことなし
【現病歴】 2000/12上記主訴にて、こばり病院受診。EM curettageにてendometrioid adenocarcinoma(G1)の診断。2000/12 当科紹介初診。既婚で挙児希望、妊孕性温存希望あり、MRIにて筋層浸潤はないと判断され、G1であることから高用量MPA療法を行う方針となる。
2001/01- MPA 400 mg、3ヶ月(biopsy: no malignancy)
2001/05 - MPA 400 mg、6ヶ月(total curettage: adenocarcinoma)
2001/12 - MPA 600 mg、3ヶ月(total curettage: adenocarcinoma)
2002/05 - MPA 600 mg、4ヶ月(total curettage: adenocarcinoma)
2002/10 - MPA 600 mg、5ヶ月(total curettage: adenocarcinoma)
2003/03 D&C 施行 → adenocarcinoma
2003/06 MRI 撮像 → 子宮内膜一部不整で筋層浸潤が疑われた
これ以上の保存的治療は病変の進行、転移の危険性が高いことを説明したが、妊孕性温存に対する強い希望があり、前例はないが子宮体癌に効果があるとされる化学療法( DJ)を行う方針となり2003/8入院。
2003/8 ? 12 DJ 療法 ( Docetaxel: 70 mg/m2、CBDCA: AUC=5) 4コース
【画像診断】
MRI
MPA治療前
MPA 2コース後
DJ 2コース後
【手術および摘出物肉眼所見】
04/02 手術(開腹)
術式:単純子宮全摘術、骨盤リンパ節生検、傍大動脈リンパ節生検
・腫瘍は子宮底から子宮体下部にわたりびまん性、外向性に発生していた
・子宮筋層への浸潤は肉眼的にはなし( depth a)と判断された
→ 腹水細胞診陰性であり卵巣温存の方針とした
・術前の MRIと一致して子宮体部全壁および後壁に境界明瞭、白色の結節性
病変が認められたが、肉眼的に筋腫と判断された
【病理組織所見】
Endometrioid adenocarcinom(G1)
Cervical glandへのinvasionあり
白色の結節性病変内に cancer成分を認めた
リンパ節転移なし、脈管侵襲なし
→ 以上より stageUa(G1, depth c)
2. 本症例の問題点
1)術前に深い筋層浸潤が指摘できなかった
筋層浸潤の正診率
MRI: 60 - 90 %
TVUS: 60 - 80 %
CT: 60 - 76 %
※ 1/2以上の筋層浸潤はMRI, TVUSともに90 % 以上の正診率とされている
A 文献的報告
・ Conservative therapy for adenocarcinoma and atypical endometrial hyperplasia of the endometrium in young women: central pathologic review and treatment outcome . Kaku et. al., Cancer Letters, 2001
体癌および異型増殖症に対する保存療法の報告
体癌 2例(29 %)が再発し、うち1例ではリンパ節転移を伴っていた
・ Progestin alone as primary treatment of endometrial carcinoma in premenopausal women . Kim YB et. al. Cancer, 1997
開腹時転移性病変が存在した(リンパ節転移)
The role of MRI in the conservative management of endometrial cancer. Ben-Shachar et.al. Gynec. Onc. 2004
MRIで筋層浸潤が疑われたが28才の症例 → 摘出物にcancer遺残なし
MRIによる筋層浸潤の診断には限界があり注意が必要
※ MRI で筋層浸潤の判定が困難となる要因
高齢者( JZが不明瞭となるため)
polypoid病変の存在
子宮筋腫の存在
子宮奇形
2)術中肉眼所見にて筋層浸潤ありと判断できなかった
子宮体癌の myometriumへの浸潤様式
@ endophytic growth pattern
A nodular growth
B scatterd(scirrhohus)growth
C diffuse, intra-lymphatic spread
atypicalな浸潤様式を示す腫瘍では肉眼的に判断できないcaseあり
3. 子宮体癌保存療法を行う場合の注意点
※ 原則的にはT a、G1症例に対する保存的治療はMPA 2コース(一年)を限度に行う
1)MRIによる筋層浸潤の評価
筋層浸潤の正診率は 60 ? 90 % であること
ポリープ様病変や筋腫様病変が存在する場合診断が困難になる場合がある
非連続性の浸潤様式を示す caseがあること
等を念頭において pat. にICを行い治療計画をたてる
本症例における MRI所見を放射線、加村Dr.にreviewしていただき以下のようにcommentをいただいた。
放射線科として子宮体癌の筋層浸潤を MRIにより診断する場合、内膜に存在する病変から連続性に進展する病変部をみて浸潤の深さを診断するため、今回のケースのように非連続性に存在する病変の診断は難しい。
術後病理で cancerが認められた結節性の病変は、T1でhighになっており、出血を疑わせるが、それのみで癌と診断するのは困難で、振り返ってみてみても内膜症などの良性病変として診断せざるを得ない。
2)術 中肉眼所見による筋層浸潤の評価
adenomyosis病巣への浸潤や本症例のような筋腫内への浸潤をきたすcaseがあり、術中疑わしい病変があれば迅速組織診断に提出する
【本症例の今後の方針】
温存卵巣の取扱いについて
卵巣転移の頻度
○ Clinical Gynecologic Oncology(DiSaia and Creasman))
stageT症例全体で7 % の卵巣転移
G1:6 %
G3:10 % ← Gradeとはあまり関連がない
筋層浸潤なし: 4 %
深い筋層浸潤( 1/3以上):24 %
子宮底部に限局: 5 %
子宮頸部に及ぶ: 33 %
当科症例
当科における手術症例 236例中卵巣転移をきたしたのは17例(7.2 %)
筋層浸潤 1/2以下:2.7 %
筋層浸潤 1/2以上:11.4 %
(閉経前の症例で、筋層浸潤が 1/2以下、腹水細胞診陰性症例では卵巣転移をきたした症例がなく、卵巣温存を考慮)
→ 卵巣転移の riskあり腹腔鏡下に付属器摘出予定
術後化学療法について
子宮頸管腺侵襲あり stageUa(depth c, LVSI(-))
筋層浸潤以外には risk factorがない
術前に化学療法を行っている
→ 術後補助化学療法は省略可能か