新潟大学医歯学総合病院では、教授、准教授、および2名の指導教官を中心に12-15人の医師が、婦人科良性疾患および悪性疾患の診療にあたっています。
婦人科良性疾患に対しては、身体への負担が少ない「内視鏡手術(腹腔鏡手術、子宮鏡手術)」を積極的に取り入れています。婦人科悪性疾患に対しては、子宮を切除しない「妊よう性温存治療(妊娠する能力を保つ治療)」、「子宮頸がんに対する神経温存手術」、「抗がん剤治療と放射線治療を組み合わせた集学的治療」などに加えて 、分子標的薬などを使用した臨床試験も行っており、患者さんにとってベストの治療が提供できるよう心がけています。

婦人科で診察・治療を行っている主な病気は、以下のようなものがあります。
- 良性疾患:
- 子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫
- 悪性疾患:
- 子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん
子宮筋腫
- Q:どんな病気?
- A:20才から40才くらいまでの女性の4-5人にひとりが持つと言われる、頻度の高い病気です。子宮の筋層にコブができて大きくなる病気です。原因はよく分かっていませんが、何らかの原因で生じた小さな筋腫の芽が大きくなってコブをつくると考えられています。子宮筋腫は、卵巣から分泌される女性ホルモン(エストロゲン)によって増殖し、大きくなると考えられています。
- Q:症状は?
- A:筋腫が小さいうちは、自覚症状が見れらないことが多いのですが、筋腫の発生する場所や大きさにより、月経多過や月経痛、不正出血、貧血、動悸、息切れなどが現れます。不妊症の原因にもなる場合もあります。
- Q:治療は?
- A:筋腫による症状が軽いものは、対症療法といって症状を軽くする治療が行われます。月経痛に対する鎮痛剤の投与や貧血に対する鉄剤の内服が行われます。
筋腫が大きく、月経過多や貧血がひどい場合には、月経を止める薬物療法が行われます。GnRH agonist療法といって一月に一回お腹の皮膚に注射をして、半年間月経を止める方法により、筋腫の縮小をはかります。ただし、この治療のみで筋腫を完全になくすことはできません。治療中は月経がとまるため、症状は軽減しますが、治療をやめると症状が再度出現することがあります。また、人工的に閉経の状態にするために顔面のほてりやいらいらなどの更年期障害のような症状が出たり、骨量が減少したりすることもあります。
薬物療法で症状がとれない場合や、筋腫が不妊症の原因となっている場合には筋腫を取り除く手術が行われます。
子宮筋腫に対する内視鏡下手術
子宮筋腫の治療法とてして、上記のように薬物により症状を軽くしたり、月経を止めて一時的に筋腫を縮小させる方法がありますが、
- 症状が強い場合
- 大きな筋腫
- 筋腫が不妊症の原因となっている場合
には手術が必要になります。
当科では筋腫の手術として、内視鏡下手術(腹腔鏡下手術、子宮鏡下手術)を積極的に行っています。筋腫に対する内視鏡下手術としては以下のようなものがあります。
腹腔鏡下手術

1)腹腔鏡下筋腫核出術
おへその下に2cm程の傷をつけて、そこから腹腔鏡というカメラをいれて筋腫をくりぬく手術(核出術)を行っています。他に2~3箇所の1cmほどの小さな傷から、電気メスやはさみなどを入れて筋腫をくりぬきます。筋腫のくりぬきから子宮の縫合まですべて腹腔内で行います。くりぬいた筋腫はモルセレーターという特殊な機械でリンゴの皮をむく様に細く削りながら、1cmの傷から体外へ取り出します。筋腫だけをくりぬき、正常な子宮は残りますから、その後の妊娠も可能です。7cmくらいまでの大きさの筋腫ならこの方法で手術が可能です。ただしすべて体内で手術を行うため、筋腫の大きさが大きい場合や、筋腫の数が多い場合は、出血量が多くなったり、手術時間が長くなったりするため、腹腔鏡下補助下筋腫核出術が行われます。
2)腹腔鏡補助下筋腫核出術
上記の手術の傷に、2~3cmの傷を加えてその傷から筋腫をくりぬきます。筋腫をくりぬいた後の子宮の縫合もその傷から行うことが可能です。傷はやや大きくなりますが、ほとんど目立たず、身体への負担も腹腔鏡下筋腫核出術とほぼ変わりありません。7cmから10cmくらいまでの筋腫に行われる手術です。
→腹腔鏡下手術は、手術後4日くらいで退院が可能です。退院後も傷が小さいため、退院後数日で日常生活に戻ることが可能です。
腹腔鏡/補助下子宮筋腫核出術

腹腔鏡下筋腫核出術

3)子宮鏡下筋腫切除術
子宮の内側に飛び出した筋腫を粘膜下筋腫とよびますが、この粘膜下筋腫は子宮鏡という内視鏡を膣の方から子宮内に挿入して筋腫を削り取る手術が可能です。この手術は、お腹はもちろんどこにも傷をつけずに手術が可能です。また通常は全身麻酔は必要とせず、腰椎麻酔といって、背中から針をさして下半身の痛みをとる局所麻酔にて手術が可能で、腹腔鏡下手術と比較しても術後の回復はさらに早まります。子宮の筋肉の中にできている筋腫には行うことができません。通常は3cmくらいまでの筋腫に対して手術が行われます。粘膜下筋腫でも5~6cm以上になると、一回では取りきれず数回にわけて切除が必要になることがあります。
→子宮鏡下手術は、手術の翌日には退院が可能です。退院後数日で日常生活に戻ることが可能です。
子宮鏡下筋腫切除術件数

子宮鏡下筋腫切除術

4)開腹手術
筋腫の大きさが10cmを超えるようなものや、数が多いものは内視鏡での手術が難しいため、お腹を切る手術(開腹手術)が行われます。
開腹手術でも筋腫核出術が可能ですが、もうお子さんをもうける予定がない場合には子宮を全てとる手術(子宮全摘術)が行われることもあります。
開腹手術の場合には、術後8から9日間の入院が必要になり、退院後も日常生活に戻るまでには1~2週間を要します。
5)その他の治療法
子宮筋腫に対する、上記以外の治療法として、子宮動脈塞栓療法や収束超音波療法などが試みられています。いずれも現時点では、保険適応がないため自費診療になります。当科では希望がある患者さんに対しては、下記の子宮動脈塞栓法を行っています。
子宮動脈塞栓療法
子宮動脈塞栓療法といって、手術を行わずに筋腫の治療を行う方法があります。この治療は、足の付け根にある動脈(大腿動脈)から細い管(カテーテル)を挿入し、子宮動脈まで管を進めます。そこから筋腫を栄養している動脈(子宮動脈)をつめる「ゼラチンスポンジ」を注入し、筋腫への血流を一時的に遮断することにより、筋腫を縮小させ症状を取り除く治療法です。80%以上の症例で月経量の減少や、貧血の改善、月経痛の改善が期待できます。子宮筋腫の小さくなる程度については、画像でほとんど判らなくなるほど小さくなる筋腫もあれば、あまり小さくならない筋腫もあります。この治療法は保険で認められていないため、実費(およそ30万円)負担が必要になります。
子宮内膜症
子宮内膜症は、子宮内膜が本来あるべき場所(子宮の内側)以外の場所で増えてしまう病気です。卵巣に子宮内膜症が起こると卵巣内に血液がたまり腫瘍となります。これをチョコレート嚢腫と呼びます。子宮の筋層内に子宮内膜症が起こると、子宮筋層が厚く肥厚し、子宮が腫れ上がった状態になります。これを子宮腺筋症と呼びます。いずれも、病状が進むと激しい月経痛がおこります。月経の時以外でも腹痛がおこったり、排便痛や性交時痛の原因となります。
これらの痛みに対しては、症状が軽い場合は鎮痛薬を使用した対症療法が行われますが、症状が強い場合には排卵を止める薬物を使用した内分泌療法がより効果的です。
子宮内膜症(卵巣チョコレート嚢腫と子宮腺筋症)

子宮内膜症の薬物療法
1)低用量ピル
微量のエストロゲンとプロゲステロンが一錠になったものを内服して、排卵を止めます。月経は毎月ありますが、子宮内膜が薄くなるため、出血量が少なく、出血時の痛みも軽くなります。子宮内膜症の症状コントロールや再発予防に有効で、これまでの中用量ピルよりも副作用が少ないことから注目されています。長期間の内服が可能ですが、子宮内膜症自体を治療するものではないため、内服を行っていても病変が進行する場合もあります。
2008年には、低用量ピルのうちのひとつと同一成分の薬剤が子宮内膜症に伴う月経困難症の治療薬として保険適応となりました。
2)プロゲスチン
合成プロゲステロンを内服して、排卵を止めます。月経も止まりますが、やや不正出血の頻度が高いといわれています。痛みを抑える効果と内膜症病変の縮小効果があるといわれています。この薬も長期間の内服が可能です。
2008年には新しい黄体ホルモン剤が保険適応となりました。
3)GnRH作動薬
GnRHという頭の中の視床下部というところから分泌されるホルモンを月に一回お腹の皮下に注射します。治療開始後、2ヶ月目にはほとんどの方の排卵が止まり、月経も止まります。痛みを抑える効果があります。内膜症病変の縮小効果が最も高い薬剤ですが、更年期症状や骨の量の減少をきたすことがあり、通常半年以上は使用されません。
→子宮内膜症により生じる痛みに対する効果は、どの薬剤を使用しても8割から9割の方が痛みが軽くなるといわれています。しかし、薬物の効果は使用をやめるとなくなってしまうため、内膜症を根本的に治すには手術が必要です。
子宮内膜症の腹腔鏡下手術
チョコレート嚢腫核出 〜 癒着剥離 〜 内膜症病変焼灼
卵巣に子宮内膜症が起こると卵巣内に血液がたまり腫瘍となります。これをチョコレート嚢腫と呼びます。お腹の中を覆っている膜(腹膜)に内膜症が起こると、お腹の中で癒着がおこります。チョコレート嚢腫が6~7cm以上に大きくなったり、癒着がひどくなると、痛みの程度も強くなります。また不妊症の原因になることもしばしばです。
このような患者様には、腹腔鏡による手術を行っています。
手術は、腹腔鏡により嚢腫だけを切除する嚢腫核出術、癒着を剥離する癒着剥離術、腹膜の病変を電気メスやレーザーメスで焼いてしまう焼灼術があり、患者様のお腹の中の状態により、こられを組み合わせて手術を行っています。
腹腔鏡下手術をした場合、手術後4日くらいで退院ができます。退院後数日で日常生活に戻ることが可能です
子宮腺筋症に対する手術
子宮腺筋症核出術
子宮腺筋症に対する手術療法は、子宮を全摘出するという方法が一般的でした。ですがこの方法では、子宮を摘出してしまうため、手術後に妊娠することは不可能になります。最近では、子宮腺筋症も子宮筋腫と同じように、腺筋症の部位のみ切除して子宮を残し、手術後に妊娠が可能にする治療法が行われるようになりました。それが「子宮腺筋症核出術」です。ただし、この手術はすべての子宮腺筋症に行えるわけではありません。子宮腺筋症は子宮全体が腫大するため、子宮筋腫のように筋腫と正常子宮との境界がはっきりしないからです。子宮腺筋症の発症部位や大きさ、周囲組織との癒着の有無などにより、手術が行える場合と行えない場合があります。詳しくは、担当医にご相談下さい。
卵巣嚢腫
卵巣嚢腫に対する腹腔鏡下手術
卵巣嚢腫(良性の卵巣腫瘍)のほとんどは(かなり大きなものでも)腹腔鏡での腫瘍をとることが可能です。手術の方法も卵巣を全部取ってしまうのではなく、腫瘍の部分だけを取って、正常卵巣の部分は残すことができますから手術後も卵巣は正常に機能します。
→腹腔鏡下手術をした場合、手術後4日くらいで退院ができます。退院後数日で日常生活に戻ることが可能です。
新潟大学産婦人科では1993年から内視鏡下手術を積極的に採用し、良性卵巣腫瘍はほぼ全例で腹腔鏡を使った手術を行っています。
最近5年間の当科での内視鏡下手術件数は、一年間で腹腔鏡下の卵巣嚢腫手術30〜41件、子宮鏡下手術が10〜15件で年々増加傾向にあります。
小さな創で、術後の痛みも少なく、短期間で日常生活に戻れる、患者さんにとって非常に優しい手術法です。
腹腔鏡下卵巣嚢腫手術件数

卵巣誌嚢腫およびチョコレート嚢腫手術件数
腹腔鏡下手術の合併症について
腹腔鏡下手術は、婦人科良性疾患に対して広く行われるようになり、安全性も確立しつつありますが、カメラで見える範囲が限られていること、止血や縫合の操作が開腹手術に比べて難しく時間がかかることから、手術合併症の発生率は開腹手術と比較するとやや多いといわれています。当科でのこれまでの腹腔鏡下手術における合併症は以下の通りです。
腹腔鏡下手術の合併症(過去423例中)

腹腔鏡下手術を行うにあたっては、このような合併症が生じないよう細心の注意をはらって行っていますが、一定の確率で開腹手術への移行や、再手術などの可能性があることをご理解ください。
TOPICS!! より傷の少ない腹腔鏡下手術:単孔式腹腔鏡下手術
最近になり、今までの腹腔鏡下手術よりも、さらに傷が少ない新しい腹腔鏡下手術が行われるようになりました。今までの腹腔鏡下手術は、1-2cmの傷を3-4ヶ所加えて手術を行う方法でしたが、これをひとつの傷のみで行う方法で、単孔式腹腔鏡下手術(Tanko)と呼ばれている手術です。

この方法では、お臍の中を2.5cmほど切開して、下のようなポートを挿入して、カメラと二本の鉗子を挿入して手術を行います。

通常の腹腔鏡下手術よりも、より傷は目立たなくなります。傷はお臍の中のみですので、手術をしたかどうかもほとんどわからなくなるほどです。
ただし、この方法は、鉗子が二本しか入れられないことや、鉗子の動く範囲に限りがあることから、癒着のない卵巣嚢腫などに限って行っています。
増えている子宮がん
子宮がんは、子宮の入り口にできる「子宮頚がん」と子宮の奥にできる「子宮体がん」の二種類があります。
両者とも増加傾向にありますが、特に子宮頚がんでは、20〜30才台の若い女性に増えているのが特徴です。子宮頚がんになる前には、前癌病変として「子宮頸部上皮内がん」(がんと名前がついていますが子宮頚がんとは分類せず、癌になる前の状態です)がみつかります。この「上皮内がん」はここ20年間で急激に増加しています。「上皮内がん」の状態でみつけることができれば、ほぼ100%治癒させることが可能です。現在、20才以上の女性には2年に1回の子宮がん検診が勧められていますが、特に子宮頚がんの発生が多い20~30代の女性は必ずがん検診を受けるようにしましょう。
子宮体がんはここ20年間で約3倍に増えています。好発年齢は50才以上の閉経後の女性ですが、最近では若い女性でも増加してきています。閉経後で不正出血がある場合や、閉経前でも月経が不順であったり、月経以外に不正出血がある場合には、子宮体がんの可能性を考えて検査が必要になりますので、医療機関を受診してください。また、子宮体がんは太り気味の方におきやすいことがわかっていますので、そのような方は特に注意が必要です。
子宮がんの年度別発生頻度の推移

増えている卵巣がん
卵巣がんは、ここ20~30年、日本人女性において増加しているがんです。新潟県でもおよそ2倍に増加しています。閉経後の女性に多いがんであることが特徴ですが、閉経前の女性でも発症します。体の奥にある臓器なので、子宮がんのような検診ができないため、発見が遅れることがあります。お腹のはりや、下腹痛などがある場合は卵巣がんの可能性がありますので医療機関を受診してください。卵巣がんは特に家族歴がある(父母や親戚に卵巣がんや乳がんの方がいる)場合に発症の危険性が上昇しますので、そのような方は特に注意が必要です。
卵巣がんの年度別発生頻度の推移

子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんの治療症例数

子宮頸がんの治療
子宮頸がんの治療方法
子宮頚がんの好発年齢は約50才ですが、原因であるヒトパピローマウイルス(HPV)感染の若年化により、20~30才代の若年者に患者が急増しています。
当科ではリプロダクティブヘルスの観点から、将来的な妊娠の可能性を考慮した妊孕能温存手術や、治療後の患者さまの生活の質(Quality of Life)の向上を目指した治療を行っています。
子宮頸がんの進行期(ステージ)

進行期別の標準的な治療法
- 0期(上皮内がん)
- 子宮頚部円錐切除術
- 単純子宮全摘術(閉経後の方や妊娠を希望しない方に行います)
- 腔内照射(高齢・合併症のある方などで手術が困難な方に行います)
- Ia期
- 単純子宮全摘術(+両側附属器摘出術:閉経後の方)
- 円錐切除術:妊娠を希望される方
- 準広汎あるいは広汎子宮全摘術
- 腔内照射
- Ib期
- 広汎子宮全摘術(+術後放射線)
- 放射線療法(外照射+腔内照射)
- 化学放射線同時療法
- Ⅱ期
- 広汎子宮全摘術(+術後放射線)
- 放射線療法(外照射+腔内照射)
- 化学放射線同時療法
- Ⅲ期
- 放射線療法(外照射+腔内照射)
- 化学放射線同時療法
- Ⅳ期
- 放射線治療(出血や痛みのコントロールなど症状の緩和を目的に行います)
- 化学療法
実際の治療方法
患者さまのがんの進行期、年令、全身状態などを判断して、患者さまのご希望にそった最も良い治療法を検討します。ひとつだけの治療法ではなく、個々の患者さまによっていくつかの方法を組み合わせて治療を行うこともあります。
- (1)手術療法
- (a)円錐切除術
レーザーを用いて、子宮頚部を円錐型に切り取る手術です。2泊3日の入院、腰椎麻酔で手術が可能です。手術翌日に退院が可能です。がんをすべて取りきるための治療であることはもちろん、がんがどれくらいすすんでいるかを調べるための診断に用いることもあります。 - (b)単純子宮全摘術
子宮のみ(周囲の靱帯やリンパ節などの組織を大きくとらずに)を摘出します。お腹を切って行う方法(腹式単純子宮全摘術)や、膣からの方法(腟式子宮全摘術)、また腹腔鏡を使って腹腔を観察しながら膣から摘出する方法(腹腔鏡下腟式子宮全摘術)もあります。通常の入院期間は約10日間です。 - (c)広汎子宮全摘術
子宮本体だけではなく,子宮の周囲の組織(周囲の靱帯やリンパ節)を骨盤壁の近くまで広く切除します。卵巣については、患者さまの年齢、がんの進行度によっては温存が図れる場合もあります。通常の入院期間は3-4週間ですが、術後に放射線療法を追加する場合もあります。合併症として、排尿・排便障害、リンパ嚢腫、リンパ浮腫などが問題となることがあり、当科では60才以上の高齢の方にはお勧めしていません。
- (a)円錐切除術
- (2)放射線療法
放射線を照射することにより,子宮頸部あるいはリンパ節などに転移したがん細胞を殺す治療法です。
通常身体の外部から骨盤にあてる外照射と,子宮頸部に線源を入れて行う腔内照射とがあり,この2つを組み合わせて治療します。通常の入院期間は7~8週間です。治療後の晩期に起こってくる障害として、腸閉塞、性生活に与える影響、膣と膀胱・直腸の瘻孔形成などが挙げられます。 - (3)化学療法
抗がん剤を投与して、現在あるがん細胞を殺し、遠隔転移を予防する治療法です。効果のある薬剤を一種類から数種類併用して投与します。投与方法は薬の種類によって異なり,内服や,注射での投与が一般的です。最も効果が期待できる注射剤として、シスプラチンという薬が使われることが多いです。 - (4)化学放射線同時療法
近年行われ始めた治療法で、放射線療法と同時にシスプラチンという抗がん剤を週一回点滴投与するものです。シスプラチンを投与することで、遠隔転移を予防するだけでなく、放射線の効果を高める効果もあると言われています。実際に放射線単独で行うよりシスプラチンを併用することによって治療成績が改善することが報告されており、米国では放射線療法に化学療法を併用することが広く推奨されています。
子宮頸がんの予後
| 進行期 | 患者数(人) | 5年生存率(%) |
|---|---|---|
| I期 | 172 | 89.5 |
| Ⅱ期 | 44 | 68.3 |
| Ⅲ期 | 27 | 61.9 |
| Ⅳ期 | 21 | 27.2 |
新潟大学(2000~2008)
子宮頸がんの生存曲線(進行期別)

若い女性の子宮頸がんに対する保存的(子宮をとらない)治療方法
広汎子宮頸部摘出術
子宮頚がんは若い女性に多い病気です。子宮頚がんでも数ミリ程度のごく初期の場合は、円錐切除といって子宮の入り口のみを切除して子宮を残す手術が可能な場合がありますが、ほとんどの場合は子宮の摘出が必要になります。子宮を摘出してしまうと、当然ですが赤ちゃんを産めなくなってしまうからです。
このような若い女性の子宮頸がんに対して、子宮頸部の病変部のみを摘出し、残った子宮体部と膣をつなぎ合わせる手術「広汎子宮頸部摘出術」を行うことにより、2cmまでのがん(Ⅰb期までのがん)の場合は、将来赤ちゃんが産める希望を残すことができます。当科でも、今後妊娠を希望する子宮頚がんの患者さんに「広汎子宮頸部摘出術」を行っています。
子宮体がんの治療
子宮体がんの治療方法
子宮体がんの初回治療は、手術が標準治療です。手術により病巣の摘出を行うとともに、正確な進行期の判定が行われます。
手術では、子宮全摘し、両側の卵巣と卵管を摘出、さらに骨盤内や大動脈の周囲のリンパ節を切除します。手術の結果、再発の危険が高い(ハイリスク群)と判定された場合には、術後補助療法が行われます。
進行期が1c期以上と判定された場合に、術後補助療法が行われますが、腫瘍の分化度(顔つき)やリンパ節転移の有無などを考慮して、治療内容を決定します。日本の場合、術後補助療法は抗がん剤による化学療法が標準です。
子宮体がんの進行期(ステージ)

子宮体がんの予後
| 進行期 | 患者数(人) | 5年生存率(%) |
|---|---|---|
| I期 | 176 | 94.4 |
| Ⅱ期 | 14 | 85.7 |
| Ⅲ期 | 60 | 73.3 |
| Ⅳ期 | 35 | 14. |
新潟大学(2000~2008)
子宮体がんの生存曲線(進行期別)

若い女性の子宮体がんに対する保存的(子宮をとらない)治療方法
<黄体ホルモン療法>
若い女性に子宮体がんが発生した場合、その治療方法を決めるのに大変頭を悩ませることがあります。子宮体がんの標準的な治療法は手術で子宮を摘出する方法ですが、まだお子さんがいない女性の場合、この治療法だと赤ちゃんを産めなくなってしまうからです。
このような若い女性の子宮体がんに対して、ホルモン療法により治療をすることが可能で、子宮をとらずに将来赤ちゃんが産める希望を残すことができます。
ホルモン療法は、がんが子宮の内側にだけにとどまって子宮の筋肉の中に入り込んでいない場合、高分化型のがん(がんの顔つきが比較的穏やかながん)の場合に限って行うことが可能です。
この治療法は高濃度の黄体ホルモン(プロゲステロン)という薬を4〜6ヶ月間内服する方法です。当科では20人以上の若い女性にこの方法を行い、そのうち70%でがんが消失しました。この後、妊娠を希望した女性のうち75%が妊娠しました。
黄体ホルモンによる治療法は、子宮を残すことができる反面、薬が効かなかった場合、病気が進んでしまう可能性があることや、一度がんが消えてもまた出てきてしまう(再発)リスクがあることを十分に理解して治療を受けていただくことが必要です。
先進医療 初期子宮体がんに対する腹腔鏡下手術
新潟大学産婦人科では、初期の子宮体がん(がんがまだ子宮をこえて拡がっていない)に対して、腹腔鏡を使って子宮を摘出し、リンパ節を切除する手術(腹腔鏡補助下子宮体がん根治手術)を行っています。がんに対する手術はお腹を大きく切って子宮やリンパ節を摘出する方法(開腹手術)が主流ですが、初期のがんに対しては腹腔鏡を使って開腹手術と同じ手術を行うことが可能で、治療効果も劣ることはありません。現時点ではこの治療法は保険適応ではないのですが、2008年7月に腹腔鏡補助下子宮体がん根治手術は厚生労働省の先進医療として初めて認められ、新潟大学産婦人科でこの先進医療を行うことができるようになりました。
これまで25例以上の手術を行っていますが、現在まで再発症例は一例もなく、すべての患者さんで腹腔鏡下での手術が可能でした。
卵巣がんの治療
卵巣がんの治療方法
卵巣がんの一番の問題点は、早期発見が難しく、およそ半数が進行した状態(Ⅲ、Ⅳ期)で発見されることです。卵巣は体の奥にあり、有効な検診の方法がないことがその理由です。
卵巣がんの初回治療は、手術が標準治療です。手術により病巣の摘出を行うとともに、正確な進行期の判定が行われます。
卵巣がんの進行期(ステージ)

手術では、両側卵巣・卵管摘出+子宮全摘+骨盤/傍大動脈リンパ節切除+大網切除術を基本術式とし、腹腔内に広がっている腫瘍(播種)がある場合には、播種巣を切除します。子宮頸がんや子宮体がんと比較すると、抗がん剤治療の効果が高いのが特徴で、手術で腫瘍がすべて摘出されなかった場合でも、残存腫瘍が1cm以下であれば、抗がん剤による効果が期待できます。
Ia、Ib期の高分化型のがん以外は、再発予防のため術後補助療法が追加されます。
卵巣癌の広がりが広範囲な場合や、合併症などにより手術が難しい場合には、抗がん剤治療を行って腫瘍を縮小させてから手術を行う方法もあります。この場合も、手術後に術後補助療法が追加されます。
卵巣がんの予後
| 進行期 | 患者数(人) | 5年生存率(%) |
|---|---|---|
| I期 | 153 | 90.4 |
| Ⅱ期 | 23 | 67.0 |
| Ⅲ期 | 125 | 42.0 |
| Ⅳ期 | 28 | 28.1 |
新潟大学(2000~2008)
卵巣がんの生存曲線

卵巣癌にはたくさんの種類の組織型が存在します。もっとも多いのは漿液性腺がんと呼ばれるタイプのがんですが、その他にも表に示したような種類のがんが存在します。がんの組織型によって抗がん剤に対する反応性が異なることがわかっており、特に、明細胞腺がんや粘液性腺がんは、従来の抗がん剤による効果が期待しにくいため、より効果的な治療法の開発が望まれています。特に、明細胞腺がんは増加傾向にあり、新たな治療法の開発を目的とした臨床試験なども行われています。
卵巣がんの組織型と頻度

外来化学療法(通院治療センター)
抗がん剤の投与は一ヶ月に一回行われ、約半年間くらい続けなければならないことが多いのですが、当院では副作用対策を十分にとった上で、外来通院で抗がん剤の投与が行えるような体制をとっています。
通院治療センターは、外来通院で化学療法の点滴治療を受けられる方にご利用いただく施設です。これまで入院で治療を行っていた子宮腫瘍、卵巣腫瘍など婦人科腫瘍の患者様にもご利用頂けるようになりました。通院での治療を続けられる患者様に、安全な治療を安心して受けていただくために専門のスタッフが対応し、採血などの検査・副作用の対策など、きめ細かな医療を目指しています。
- 対象となる患者さま
婦人科悪性腫瘍(主に卵巣がん、子宮体がん)で、以下の化学療法をお受けになる患者さま。
※ドセタキセル・カルボプラチン療法(3週ごと、点滴約2.5時間)
※パクリタキセル・カルボプラチン療法(3週ごと、点滴約4.5時間)
※CPT-11(イリノテカン)療法(1週ごと、点滴約2.0時間)
※パクリタキセル(タキソール)療法(1週あるいは3週ごと、点滴約3時間) - スタッフ
担当医師1名、専任看護師3名、専任薬剤師1名 - 設備
ベッド10台(テレビ付)、リクライニングチェア6台(テレビ付)、冷蔵庫1台、電子レンジ1台、電気ポット1台、鍵付きロッカー18個
※できるだけリラックスして治療を受けていただけるよう環境整備に努めています。各ベッドに設置されたテレビを見ながら、ゆったりとした気持ちで治療にかかる時間をお過ごしください。
※がん治療に関連する雑誌、物品を展示しています。診察までの待ち時間や点滴中にご覧下さい。
通院治療センター

外来における副作用対策
抗がん剤にはがん細胞を攻撃するとともに正常な細胞までも傷つけてしまう作用があり、これを副作用と呼びます。理想的な抗がん剤とはがん細胞だけに作用して正常な細胞には作用しない薬剤ですが、残念ながらそのような抗がん剤はいまのところ存在しません。副作用の内容や程度は、抗がん剤の種類や投与量によって異なりますが、薬物療法を安全に行うためには副作用を最小限に抑える工夫が必要となります。
化学療法を受ける患者さまには、事前に投与スケジュールや副作用について専用のパンフレットを活用し充分説明するように心がけています。また、緊急時の連絡方法を明確にし、必要な場合は速やかに入院治療に切り替えさせていただきます。
遠方の患者さまなどで大学病院への通院が困難な方には、近くのかかりつけ医の担当医に血液検査などの管理をお願いし、緊密に連絡をとりあって、副作用の対処を致します。
また次回治療前には、自宅での副作用について、いつから、どのような症状(副作用)が出現したのか、何日くらい続いて、どのくらいの程度だったのかなどを詳細に確認し、治療施行の決定や薬剤減量の判定に役立てています。
若い女性の卵巣がんに対する保存的(子宮をとらない)治療方法
卵巣癌と診断された場合には、通常両側の卵巣・卵管と子宮の摘出が必要になります。若い女性に卵巣癌が発生した場合には、将来赤ちゃんをどうしても産みたいという強い希望がある場合には、卵巣癌がごく初期の場合には、腫瘍のみを切除して、一方の卵巣と子宮を温存する妊よう性温存手術が行われることがあります。
妊よう性温存手術が可能な条件は、一般的には
- 進行期がⅠa期であること(片方の卵巣にがんがとどまる)
- 高分化型腺がんであること
とされています
悪性腫瘍に対する臨床試験
悪性腫瘍に対する治療は日々進歩しています。新しい抗がん剤や、抗がん剤の投与方法の工夫など、より効果的な治療法をみつけてゆくことで、より多くの患者さんの病気が良くなるように様々な臨床試験が行われています。また、乳がんや大腸がんでは既に保険適応となって使用されていますが、「分子標的薬」というがん細胞をピンポイントに攻撃して治療する新しい薬剤も出現しています。
新潟大学産婦人科では、こういった新しい治療法の開発に力を入れており、国内のみならず、国際的な臨床試験に参加しており、希望する患者さんには上記のような新しい治療法を受けていただくことも可能です。
現時点で進行中の臨床試験は、「再発卵巣がんに対する分子標的治療(二種類)」、「再発卵巣がんに対する抗がん剤治療」、「卵巣がんに対する腹腔内化学療法」などです。
臨床試験の内容
1.特定非営利活動法人「婦人科悪性腫瘍化学療法研究機構(JGOG)」による臨床試験
- JGOG2042試験
- 子宮平滑筋肉腫に対する塩酸イリノテカン単剤療法の臨床第Ⅱ相試験(登録終了)
- JGOG2043試験
- 子宮体がん再発高危険群に対する術後化学療法としてAP(Doxorubicin+Cisplatin)療法、DP(Docetaxel+Cisplatin)療法、TC(Paclitaxel+Carboplatin)療法のランダム化第Ⅲ相試験(登録終了)
- JGOG3016試験
- Stage II-IV Mullerian carcinoma(上皮性卵巣がん、卵管がん、腹膜がん)に対する Conventional TJ(Paclitaxel+Carboplatin)とDose-Dense TJ(weekly Paclitaxel+Carboplatin)のランダム化比較試験(第Ⅲ相試験)(登録終了)
- GCIG/JGOG3017試験
- 卵巣明細胞腺がんに対する術後初回化学療法としてのPaclitaxel + Carboplatin 療法とIrinotecan +Cisplatin療法のランダム化比較試験 (第Ⅲ相試験) (登録終了)
- 再発卵巣がんに対する抗がん剤治療
- JGOG3018試験
プラチナ抵抗性再発・再燃Mullerian carcinoma(上皮性卵巣がん、原発性卵管がん、腹膜がん)におけるリポソーム化ドキソルビシン(PLD)50mg/m2に対するPLD 40mg/m2のランダム化第Ⅲ相比較試験(登録中) - 卵巣癌・卵管癌・腹膜癌に対する腹腔内化学療法
- 上皮性卵巣癌・卵管癌・腹膜原発癌
JGOG3019試験
上皮性卵巣癌・卵管癌・腹膜原発癌に対するPaclitaxel毎週点滴静注+Carboplatin 3週毎点滴静注投与 対 Paclitaxel毎週点滴静注+Carboplatin 3週毎腹腔内投与のランダム化第II / III相試験(2010年5月から登録開始予定)
2.新規薬剤による臨床試験
- 再発卵巣がん対する分子標的療法(血管新生阻害薬)
- プラチナ製剤部分的感受性又はプラチナ製剤抵抗性の再発上皮性卵巣がん患者、原発性腹膜がん患者又は卵管がん患者を対象としたAMG 386とパクリタキセル週1回投与との併用によるランダム化二重盲検プラセボ対照第III相試験
薬剤開発組織名:武田バイオ開発センター株式会社 , 米国アムジェン社(登録中) - 再発卵巣がん対する分子標的療法(抗体療法)
- 白金製剤感受性の初回再発卵巣がん患者を対象としたカルボプラチン及びタキサン系抗がん剤併用時のFarletuzumab(MORAb-003)週1 回投与の有効性及び安全性を評価する無作為割付け二重盲検プラセボ対照第III相試験
薬剤開発組織名:エーザイ株式会社(登録中)
緩和ケア外来:毎週金曜日午前
「緩和ケア」は、身体的症状のコントロールだけでなく、心のケアも同時に行い、患者さまとご家族の生活の質を高めることを目的としています。がんに対して、手術や、強い抗がん剤を使う治療は行いませんが、痛み、吐き気、食欲不振、不眠、息苦しさなどの不快な症状に対して早期に対処を行います。治療困難ながんを抱えた状態でも、生き生きとその人にあった時間が送れるようにお手伝いします。
緩和ケアは末期だけでなく、早い病期の患者さまに対してもがんの治療と並行して心身のケアを行うことを目指しています。様々な症状の緩和が必要な患者さまに対して、近くのかかりつけ医や、他の診療科と協力して緩和ケアを提供します。




