- 排卵障害
- 卵管因子
- 男性因子
- 頚管粘液異常
- 子宮因子
- 黄体機能不全
- 原因不明
不育外来は、妊娠はするものの流産や死産をくり返す「不育症」の患者様のための外来です。
当科不育外来の特徴
- 長い歴史があり、多くの患者様の診療を行っています。
1983年に不育外来を開設し診療を行っています。受診される患者様は毎年増加し、最近では年に100組以上の不育症の患者様が初診されています。これまで、1500組以上の不育症の患者様の診療を行ってきています。 - 新しい検査、治療法を開発、応用し、国内のみならず、国際的にも情報を発信しています。
- 新しい検査、治療法を開発していますが、その成果を患者様に還元しています。
流産の種類

不育外来受診の手順
不育外来は毎週月曜日の午前中に行っており、原則として予約制となります。最初の受診は月曜日、火曜日、木曜日、金曜日に行われる新患外来を受診して下さい。受診を希望される方は、なるべく、それまで診察を受けていた先生からの紹介状を持参して下さい。
不育症の原因
不育症の原因として以下のようなものがあります。
- 感染症
- 染色体異常
- 子宮形態異常
- 内分泌代謝異常
- 免疫異常:自己免疫異常と同種免疫異常
不育症の原因別頻度
図に示しましたように、免疫療法の対象となる同種免疫異常(これについては後で詳しく述べます)が約20%、自己免疫異常が約38%ですが、このうち20%は抗リン脂質抗体が原因として考えられるものです。
染色体異常が5%程度、内分泌代謝異常が6%程度であり、子宮奇形、クラミジア陽性などが、2%程度認められます。
また、原因不明の症例が25%程度認められます。
当科における不育症の原因頻度(%)

当科不育外来では、不育症の免疫的原因についての検査、治療などを積極的に行っています。
同種免疫異常による習慣流産と免疫療法
- 免疫とは
- 体の中に異物が入って来たときにそれを排除し、体を一定に保つ防御反応

胎児のもとである、受精卵は母体にとって一種の異物とみなすことができます。
母体の免疫反応(免疫的拒絶反応)によって流産が起こる可能性があります。
では、多くの妊娠ではなぜ、このような免疫反応による流産が起こらないのでしょうか。
妊娠が免疫的にうまく継続するためには、よい免疫反応が起こることが必要
妊娠が免疫的にうまく継続するためには、「よい免疫反応」が生じることが必要と考えられています。
私たちは、この「よい免疫反応」の指標として、「遮断抗体」を測定しています。
- 遮断抗体は患者さん(奥様)とご主人の血液を同時に培養することにより測定します。
- 3回以上の流産を繰り返し、他の原因検査により原因不明である患者さんで、遮断抗体が陰性の方を対象として、「免疫療法」を行っています。
「免疫療法」は、奥様に、ご主人の血液から得られたリンパ球を、注射するという治療法です。
治療前に十分なご説明を行い、希望される患者さんに治療を行います。
また、一種の輸血療法ですので、治療前にご主人の感染症の検査を行います。
通常は、ご主人のリンパ球の注射を、1か月間隔で2回行い、遮断抗体が陽性となってから妊娠していただきます。
「免疫療法」は、奥様に、ご主人の血液から得られたリンパ球を、注射するという治療法です。
治療前に十分なご説明を行い、希望される患者さんに治療を行います。
また、一種の輸血療法ですので、治療前にご主人の感染症の検査を行います。
自己免疫異常と不育症
とくに抗リン脂質抗体が陽性の不育症の患者さんに対する治療
- 免疫は自分の体に対しては、作用しません
- 免疫が自分の体に対して作用する状態を自己免疫異常と呼びます。その時にできる抗体が自己抗体です。
自己抗体の中でも抗リン脂質抗体が不育症の原因として注目されています。 - 抗リン脂質抗体が陽性の場合
- 胎盤の中に血栓(血液の塊)ができやすくなる。
胎盤を障害する。
血管を障害する。
流産、死産、妊娠高血圧症候群などが起こる。
当科では抗リン脂質抗体として以下のような検査を行っています。
- 抗カルジオリピン抗体
- 抗フォスファチジールセリン抗
- 抗カルジオリピンβ2GPI抗体
- ループスアンチコアグラント
これらの抗リン脂質抗体が陽性の不育症の患者様に対して、内服薬による治療を行っています。
- 自己免疫反応を抑えるための治療
- 漢方薬(柴苓湯)
副腎皮質ステロイドホルモン - 血液の固まりやすい状態を改善する治療
- 低用量アスピリン
抗リン脂質抗体がそれほど強くない時には、漢方薬と低用量アスピリンの併用、抗リン脂質抗体が強い時には副腎皮質ステロイドホルモンの併用も行います。
当科では体外受精・胚移植、顕微授精(精巣内精子を用いた顕微授精)、凍結胚移植などの生殖補助医療技術を提供しております。
治療法を決める、あるいは治療法を変える場合は、十分に話し合い、納得のいく方法を選ばせていただいております。
不妊症の基礎知識
一般に2年間避妊せずに夫婦生活を送ったのに妊娠しない状態を不妊症といいます。だいたい10組に1組の夫婦があてはまると考えられています。
不妊症の原因は多岐にわたっており、半分は女性側に、もう半分は男性側にあるとされていますが、はっきりとした原因が分からない場合も多いです。
夫婦で協力し合ってあせらずに検査や治療を受けることが大切です。
日常生活の心がけ
- 全身の血行がよくなるように心がけましょう。
体を締め付ける衣装は避け、適度な運動をしましょう。 - 趣味や娯楽で積極的にストレス解消を心がけましょう
- 女性は冷えすぎ、男性は温めすぎに注意しましょう。
女性は血行障害、男性は精子を造る機能が低下する原因になります。 - 偏食をしないように心がけ、やせすぎや太りすぎに注意しましょう。
ホルモンバランスを崩し、卵巣機能低下の原因になります。 - 下着は清潔に、入浴は毎日心がけましょう
- 禁煙しましょう。
タバコに含まれるニコチンは血行障害を引き起こし、妊娠後の流産、早産、胎児発育障害の原因になります。また、男性では精子の異常や勃起障害の原因になります。
妊娠までのプロセス
- 卵子が排卵されます
- 排卵された卵子が卵管采から卵管に入ります
- 精液が膣内に射精されます
- 精子が子宮・卵管を通っていき卵子と受精します
- 受精卵が子宮内に着床します
- 妊娠を維持する黄体ホルモンが分泌されます
どこかのプロセスに問題があると妊娠しません。
不妊の原因

排卵障害
卵胞が卵巣内で発育しない、あるいは発育しても排卵しない状態です。
卵胞刺激ホルモン(FSH)・黄体ホルモン(LH)・プロラクチン(PRL)などのホルモン検査により原因を分別します。
高プロラクチン血症
プロラクチンという母乳を出す働きを持つホルモンが高いと排卵が抑制されてしまいます。
原因として下垂体腫瘍、薬の影響などがあります。
卵巣性無月経
卵巣そのものに問題があり排卵ができない状態です。
ホルモン療法を行いますが、治療効果は高くありません。
多嚢胞性卵巣症候群
多くの卵胞が卵巣に生じている状態で、卵巣の表面が硬くなり排卵が障害されます。生理不順の原因になります。
視床下部 下垂体性無月経
視床下部や下垂体の異常でFSH・LHが分泌されない状態です。
先天性のもの、ダイエットや精神的な悩みも原因になります。
無排卵周期症
月経に似た出血が周期的にありますが、うまく排卵していない状態です。
卵管因子
クラミジア等の感染症や子宮内膜症により卵管が癒着、狭窄、閉塞します。
子宮卵管造影で卵管の通過性や周囲との癒着の状態を検査します。

男性因子
精液検査で精子の数、運動率、奇形率を確認します。
- 精子を造る精巣の機能そのものの異常
- 原因不明のもの精巣静脈瘤などによるものがあります。
- 精子の通り道の異常
- 精子が通る管が炎症やヘルニアにより閉塞したり、または先天的に欠損している状態です。
- 精液の異常
- 精嚢、前立腺に炎症があると細菌により精子の運動が妨害されます。
- 性交障害・射精障害
- ストレス、アルコール、栄養障害、糖尿病などの様々な原因があります。
- 頚管粘液異常
- ホルモンバランスの乱れや膣炎などが原因となり、子宮頚管から分泌される粘液が少なくなると、精子が子宮内にうまく入れなくなります。
ヒューナーテスト(性交後試験)で頚管粘液の状態と精子との相性をみます。
子宮因子
子宮筋腫、子宮内膜ポリープなどによる子宮内腔の凸凹により、受精卵の着床が阻害されます。また、子宮奇形も原因になります。
経腟超音波、MRIにて子宮の状態をみます。

黄体機能不全
排卵後の黄体の働きが悪く、黄体ホルモンが十分に分泌されない状態です。
不妊症の検査
生理の周期にあわせて以下のような検査を行います。
- 基礎ホルモン検査(月経周期3~5日目)
- 採血して卵巣、下垂体、甲状腺ホルモン、血糖を測定し、排卵障害の有無を診断します。
- 子宮卵管造影検査(月経周期7~10日目)
- X線透視下に子宮に造影剤を注入し、子宮の形態や卵管の通過性を診断します。また、この検査で卵管の通過性がよくなる効果もあります。
- 卵胞測定・ヒューナーテスト(月経周期14日前後)
- 超音波検査で卵胞、子宮内膜の厚さを確認します。また、おりものと精子の相性をみます。
- 黄体機能検査(高温相5~7日目)
- 着床に重要な黄体ホルモンを採血して測定します。
- クラミジア抗体、抗核抗体検査、精液検査(いつでも)
不妊症の治療法
不妊検査の流れ

- 排卵誘発法
- 排卵誘発剤には内服薬と注射があります
副作用として多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群があります - タイミング法
- 超音波検査で卵胞を確認し、排卵日頃に夫婦生活をしていただく方法です。
- 人工授精(AIH)
- 超音波検査で卵胞を確認し、排卵日頃にご主人の精液から運動性の良好な精子を分離し、直接子宮内に注入する方法です。
男性因子(乏精子症・精子無力症)、頚管粘液の分泌が悪い場合などに行っています。
妊娠率は1回あたり5~10%で、児に先天異常が多くなることはありません。
排卵誘発剤を使用した場合、多胎率は約5%であると報告されています。 - 体外受精・胚移植(IVF-ET)
- 自費診療となります。
卵管が閉塞している場合、精子数が著しく少ない場合、他の治療法でなかなか妊娠しない場合に行います。
卵子を取り出して、男性から採取した精子と体外で受精させ、分割した胚を子宮内に戻す方法です。
日本では体外受精・胚移植は結婚しているご夫婦のみに認められています。
(確認のために住民票・戸籍抄本などを提出していただきます)
妊娠率は1回当たり約30%で、児に先天異常が多くなることはありません。
妊娠例の約20%が多胎妊娠になると報告されています。
合併症:卵巣過剰刺激症候群・腹腔内出血・骨盤腹膜炎などを起こすことがあります。 - 胚盤胞移植
- 受精後5日まで体外で培養してから子宮内に移植します。
- 凍結胚移植
- 受精卵を一旦凍結保存して内膜の状態のいいときに移植します。
- 顕微授精(ICSI)
- 自費診療となります。
体外受精・胚移植の応用技術です。運動精子の数が極端に少ない場合、受精障害がある場合に行う方法です。顕微鏡下で極めて細いピペットに使用し、一匹の精子を卵子内へ注入する方法です。
精液中に精子が確認されない無精子症の男性の場合、直接精巣や精巣上体から精子を採取して顕微授精を行います。

当科における治療実績
当科の治療成績を以下にまとめましたので、参考にして下さい。
年齢とともに妊娠率は低下するといわれています。
原因として、年齢とともに卵子も年をとる、着床しにくくなる、排卵しない周期が増えることなどが考えられています。
人工授精(2006~2007年)
577周期中 35周期妊娠(妊娠率6.3%)
体外受精・胚移植(2005~2007年)
体外受精
224周期中 53周期妊娠(妊娠率23.7%)
(全国2006年:移植29361周期中 8499周期妊娠 妊娠率28.9%)
顕微授精
144周期中 45周期妊娠(妊娠率31.3%)
(全国2006年:移植30493周期中 7411周期妊娠 妊娠率24.3%)
- 射出精子を用いた顕微授精:78周期中 23周期妊娠(妊娠率29.5%)
- 凍結精子を用いた顕微授精:12周期中 4周期妊娠(妊娠率33.3%)
- 精巣上体精子での顕微授精:13周期中 7周期妊娠(妊娠率53.8%)
- 精巣内精子での顕微授精:41周期中 11周期妊娠(妊娠率26.8%)
凍結胚移植
64周期中 12周期妊娠(妊娠率18.8%)
(全国2006年:移植35784周期中 11794周期妊娠 妊娠率33.0%)
体外受精・胚移植(年齢別の治療周期での妊娠率)(2001~2007年)
- 29歳以下
132周期中 59周期妊娠(妊娠率44.7%):17症例流産 - 30~34歳
334周期中 98周期妊娠(妊娠率29.3%):12症例流産 - 35歳
121周期中 22周期妊娠(妊娠率18.2%):4症例流産 - 36歳
108周期中 27周期妊娠(妊娠率25.0%):6症例流産 - 37歳
109周期中 21周期妊娠(妊娠率19.3%):3症例流産 - 38歳
108周期中 16周期妊娠(妊娠率14.8%):6症例流産 - 39歳
102周期中 23周期妊娠(妊娠率22.5%):9症例流産 - 40歳
96周期中 12周期妊娠(妊娠率12.5%):4症例流産 - 41歳
77周期中 9周期妊娠(妊娠率11.7%):2症例流産 - 42歳
48周期中 2周期妊娠(妊娠率4.2%) - 43歳
51周期中 6周期妊娠(妊娠率11.8%):3症例流産 - 44歳
31周期中 1周期妊娠(妊娠率3.2%) - 45歳
17周期中 2周期妊娠(妊娠率11.8%):1症例流産 - 46歳
以上21周期中 0周期妊娠(妊娠率0.0%)
妊娠症例の治療法の内訳(最近の230妊娠からのデータ)
- 自然妊娠 12.2%
- 排卵誘発/タイミング法 16.5%
- 人工授精 23.9%
- 体外受精・胚移植 47.4%
不妊治療にかかる費用
検査にかかる費用(3割負担の場合)
- ホルモン検査 約2,300円
- 子宮卵管造影 約1,900円
- ヒューナーテスト 約900円
- 黄体機能検査約1,700円
- クラミジア抗体 約1,300円
- 自己抗体 約1,300円
- 精液検査 約440円
- 超音波検査 約1,600円
排卵誘発剤(3割負担の場合)
- クロミッド(5日分) 約600円
- HMG注射(150単位) 約900円
人工授精
10,500円
体外受精・胚移植(全て自費診療)
- 体外受精前感染症検査 6,370円
- 体外受精前生化学検査 4,090円
- 採卵料 54,600円
- 卵培養料 25,800円
- 胚盤胞培養料 23,600円
- 胚移植料 26,300円
- 受精卵凍結・保管料(2年間) 41,600円
- 顕微授精料 41,800円
- 凍結胚融解料 30,200円
- 精子凍結・保管料(2年間) 24,300円
詳しくは、当科不妊内分泌外来を受診していただき、検査・治療についてのパンフレットをお渡ししてご説明いたします。




