研究紹介

聴覚

聴覚研究班では、臨床研究として先天性・幼小児、急性、変動性、進行性感音難聴をきたした個々の症例について診断、治療、人工内耳の効果を検討し報告してきた。検討の手法も、新潟大学脳研究所・統合脳機能研究センターの超高磁場MRI(3テスラ、7テスラ)を用いたファンクショナルMRIや軸索画像を用いた解析から、新潟大学医学部第一生化学教室と共同での遺伝子解析にいたるまで多岐にわたり、臨床の現場と基礎的な解析を有機的に結びつけ、正確な診断と、的確な治療、新たなる治療への応用を目的として研究している。

基礎研究では、第一生化学教室と共同で難聴の原因遺伝子のひとつであるcdh23をポジショナルクローニングで単離成功に引き続き加齢性難聴の原因遺伝子である ahlを同定し、現在、単離を目指している。さらに音響感受性遺伝子の単離も計画している。音響感受性遺伝子は免疫応答やステロイドが関係する感音難聴との関与も想定される。また歯学部分化再生制御学講座で維持しているアルポート症候群のモデルマウスを用い難聴のメカニズムについてヒトでの聴力経過と対比させながら検討中である。さらに内耳免疫の解明についての研究も引き続き継続され、現在は中耳炎による内耳障害について炎症性サイトカイン、接着分子の発現から、難聴の病態解明を試みている。

(和田匡史)

平衡

平衡研究班では自律神経機能とめまい疾患との関連を解明するため、基礎的研究として自律神経機能が及ぼす内耳血流動態の変動についての研究、また臨床的研究では睡眠時無呼吸と眩暈との関連についての研究を行っている。その他の臨床的研究としては、耳石器機能検査(自覚的水平位・前庭誘発筋電位)の有用性を検討している。

(宮尾益道)

中耳炎症

中耳炎症研究班では、実験的中耳炎モデルを用いて細菌感染により生ずる局所の病態生理を解析している。教室で行った一連の実験では、モルモット中耳炎モデルを用いてインフルエンザ菌とモラクセラ・カタラーリスの炎症発現に関わる機序につき研究してきた。また、11年間にわたり計5人の留学者を派遣した米国ミネソタ大学中耳炎研究センターにおいては、チンチラ中耳炎モデルを用いて肺炎球菌の病原性の局在や感染早期に中耳内で起こる病態生理を経時的に解析した。現在は、両実験モデルで観察した急性中耳炎における炎症性サイトカイン動態の解析結果を、新しい細菌感染症の治療に応用すべく研究を継続している。

(佐藤克郎)

中耳真珠腫基礎

真珠腫性中耳炎の成因を組織学的および生化学的に研究している。これまでの研究成果は、デブリの堆積が真珠腫上皮の増殖とアポトーシスの亢進によって起こることに注目し、アポトーシスを促進させるCaspase-3とCaspase-8の発現が増強し、アポトーシスの抑制作用を持つ転写因子NF-κBが活性化されないことを報告した。

(佐藤邦広)

中耳蜂巣

中耳蜂巣班では中耳腔が持つ特徴的な構造である乳突蜂巣に関する形態学的研究を行い、正常耳における乳突蜂巣の発育様式、炎症が乳突蜂巣の発育におよぼす影響などを詳細に検討してきた。さらに最近では生理学的な手法を用いて研究を行い、乳突蜂巣が持つ機能的な役割を解明している。その結果、乳突蜂巣には気体交換作用があり中耳腔の調圧に関与していること、広い表面積を持つ乳突蜂巣は気体交換作用に適した構造であることが明らかになってきた。

(山本 裕)

中耳臨床

中耳臨床班では、滲出性中耳炎、慢性中耳炎中耳炎、真珠腫性中耳炎などの中耳炎症性疾患、ならびに耳硬化症、中耳奇形などの非炎症性疾患の診断、手術治療を積極的に行っている。さらに最近では錐体部真珠腫、顔面神経鞘腫、聴神経腫瘍などの側頭骨、小脳橋角部疾患にも積極的にアプローチしている。年間の総手術件数は160件を上回り、当科は質、量ともに全国有数の側頭骨疾患手術施設となっている。これらの豊富な臨床データをもとに病因の解明に努めると同時に、新しい治療法を常に模索し内外に積極的に発表している。

(山本 裕)

基礎的研究は嗅上皮における嗅細胞の再生をテーマに免疫組織化学および電子顕微鏡を用いて実験を行い、多数の研究成果を国内外の鼻科学会で発表している。また臨床においては薬物療法で改善を認めないアレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎に対しては積極的に手術治療を施行している。近年アスピリン喘息を合併した症例や好酸球性副鼻腔炎などの副鼻腔炎重症例が増加しており、昨年から最新鋭の手術用ナビゲーションシステムを導入し、内視鏡下副鼻腔手術を安全かつ的確に行っている。

(野村智幸)

いびき・睡眠時無呼吸症候群

鼻腔・口腔・咽喉頭の局所所見とセファログラムによる上気道の狭窄・閉塞部位診断、Polysomnography(PSG)による重症度の判定を行い、個々の症例に応じて最適な治療法を選択している。当科での治療は、咽頭拡大術や鼻閉の改善を目的とした鼻中隔矯正術・内視鏡下鼻内手術といった手術治療が主体となるが、こういった手術よりもCPAPや口腔内装置の方がより改善が見込まれる場合には、当院の内科や歯科へ診療を依頼している。また、小児症例でも積極的にPSGを行っており、豊富なデータから小児にみられる特徴を解析している。近年は、SASと夜尿との関連、そして術前に努力呼吸による胸郭変形がある児に手術を行った場合、胸郭変形も改善するかどうかに注目している。

(佐藤邦広)

音声

音声班では、1988年に音声外来を開設して以来、県内全域から集まる音声障害症例の音声機能の評価と音声治療を担当している。音声外来は毎週金曜日に耳鼻咽喉科外来で行い、光学診療部の内視鏡外来で行う喉頭ストロボスコピーと連動している。また、喉頭微細手術や甲状軟骨形成術などの音声改善を目的とする手術の適応を音声機能検査データから検討するとともに、術後の音声機能改善の評価と経過観察を行っている。さらに、十数年にわたり蓄積した音声機能検査データをもとに各種喉頭疾患の臨床研究を行っている。

(佐藤克郎)

頭頸部腫瘍

頭頸部腫瘍班では、例年約100例の悪性腫瘍症例と数十例の良性腫瘍症例の手術を中心とした集学的治療を行っている。重症例が多く、腫瘍症例が病床の多数を占めることもあるが、主治医の先生方のご協力をいただき患者さんの期待に答えられるよう努力している。また、毎週木曜日の腫瘍外来では腫瘍症例の長期にわたる確実な経過観察を目標としており、蓄積した臨床データの中から得られた知見を発表、報告してきた。さらに、癌研究会附属病院頭頸科に研修医を派遣し、新しい治療法や手術手技の導入を図っている。

(佐藤克郎)