Youはどうして臨床病理へ?


『そういえば病理のことあまり知らないなあ・・・。』

『病理医もありかも・・・?』

『病理ってどんな感じなのかな?』

初期臨床研修中、いや、もしかしたら学生のときに、
ふと「病理」が頭をよぎったあなた、または現在進行形で検討中のあなたへ、
ベールに包まれている(?)「病理」について、
現在当教室に在籍している先生たちに、

「なぜここにいるのか?」
「病理学教室はどんなところなのか?」

などなど、生の声を聞きました。

【バックナンバー】

 第7回 医学研究実習中の医学部3年生のKOさん、KAさんの場合(番外編)
 第6回 アレクセイ・アンネンコフ先生の場合
 第5回 加藤 卓先生の場合
 第4回 渡邉佳緒里先生の場合
 第3回 谷 優佑先生の場合
 第2回 福田 睦先生の場合
 第1回 近藤修平先生の場合

第8回 田口貴博(たぐちたかひろ)先生の場合


臨床実習の病院では病理医の先生は他の科の先生方から頼られている存在でした

2015年新潟大学医学部卒業後、長岡市の長岡赤十字病院で2年間の初期臨床研修を経て、今年4月より当教室に在籍。出身は新潟県長岡市。

田口貴博先生


-田口先生は学生の時から病理医になろうと思っていたのですか?

学生のときは腎臓や呼吸器を扱う内科に興味がありました。病理学については、病理学総論をまずは勉強するものの、その後は臓器別の講義の中の一部として病理学がある感覚で、あまり興味はなかったというか・・・(笑)。当時は病理医になろうとか全く考えていませんでした。


-それでは病理医に興味を持ったきっかけは何ですか?

卒業後の初期研修1年目にいろいろな臨床科を回っていて、多くの場面で病理医の診断が確定診断に不可欠であることがわかり、病理医の大切さを痛感しました。病院では病理の先生は他の科の先生方から頼られている存在でした。病理医ってすごいなあと思い、興味を持ちました。

研修2年目には病理部で数ヶ月研修しました。臨床医の場合は、特定の臓器を専門に診ることになりますが、病理医は一つの臓器にとらわれないことに魅力を感じました。大学でこれまで学んできたことが活かせる分野だと思いました。

それから病理医が全く足りていないことを知り、病理医になれば活躍できる場がさらに広がると思ったことも理由の一つです。


-長岡赤十字病院は新潟県中越地方で一番大きな病院ですが、病理医は何人ですか?

2人です。


-えっ?長岡の日赤で2人ですか?たった2人?

はい、他から来ている先生はいなかったと思いますが・・・。お1人は還暦をすぎていらっしゃいますが、バリバリ働いていらっしゃいます。


-田口先生、将来はぜひ長岡の病院で働いてください!
さて、今年の4月から当教室に在籍されていますが、ご自分のイメージと何か違った点はありますか?

これまで病理医は顕微鏡で標本を診るのが主たる仕事というイメージを持っていました。けれども、こちらに来てから、その標本を作る前の「切り出し」作業の重要さを実感しています。手術で切り取られた検体をみる能力も必要とされていて、色や形、質感など細かい部分の違いを見極め、どこに病気があるかを想像して、どの角度でどう切ればよいのかを考えます。とても論理的にやっていて少し驚きました。適当に切っていると思っていたわけではありませんが、自分の想像よりも精密で意味が通る作業工程でした。

臨床にいたときは、標本をこのように作っていたことは知りませんでした。実際にやってみると、切り出しがうまく出来ないと、よい標本ができないのでとても大切な作業です。そして簡単な作業ではありません。

それから初期研修で臨床科をまわっていたときは、扱うものは主に悪性疾患なので、良性疾患ならば大丈夫ということで済ませてしまい、特にその勉強はしませんでした。けれども病理診断の場合は、悪性と良性の違いを知らなければ診断ができません。こちらにきて悪性疾患と同じように良性疾患を勉強するようになりました。病理学を専攻しなければ、良性疾患を勉強する機会はあまりなかったのではないかと思います。


-どうもありがとうございました。

(インタビュー日:2017年8月1日)


【病理に来なければ知らない人がほとんどの切り出し作業】

切り出しの方向性が決まり作業中の田口先生

切り出し9

切断中。ナイフは大きい剃刀の刃みたいなものでとてもよく切れる。

切り出し1

カセット(白いプラスチックの小さな入れ物)にうまく入れるために何等分のブロックにするか思案中

切り出し7

切った部分を写真に記録

切り出し8

硯と墨がある。臓器に印をつけるために使う。

医師の作業はここまで。この後は医師の指示により臨床検査技師がカセットに入れた組織をパラフィンブロックにして、組織標本作成までを行う。臨床検査技師の役割も大きい。


インタビュー後記 聞き手 教室パート事務員 A子

田口先生が研修された長岡赤十字病院は親戚のお見舞いで何回も行ったことがあります。長岡赤十字病院は県央地域の中核病院で、広い地域から患者が集まっています。その病院に病理医が2人しかいないことに驚きました。新潟市内でも大学病院や新潟県立がんセンター新潟病院を除くと、病理医がいる病院では2~3人のところが多いようですが、大学もあるので合わせるとそれなりの数になります。東京に全国の病理医が集中しているように、数が少ない新潟県でも新潟市に集中しています。人口が違うので仕方が無い部分もありますが、田口先生に将来は中越地方で活躍して欲しいと長岡出身の私は願っています。



新潟大学医学部 臨床病理学分野は人材募集中です!見学を希望される医学部学生さんや研修医の先生は、総括医長の高村佳緒里までお気軽にご連絡ください。025-227-2096/メール takamura@med.niigata-u.ac.jp)

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