研究トピックス

革新的抗膵がん薬開発のためのエーザイ(株)(Esai Inc.)との技術移転・共同研究契約に関するプレスリリース
2019年5月17日 科学新聞、 5月23日 Yahoo News

科学新聞近藤先生

膵がん Yahoo News 20190523QLifePro

プレスリリース用ポンチ絵 こんどうえいさく最終版

 

プレスリリース用ポンチ絵 こんどうえいさく最終版2

大腸癌転移機構に関するInt J Cancer掲載の論文が2018-2019 IJC Top 10% most downloaded paperとなりました。

がん転移の仕組み解明
2020年4月5日 新潟日報

 

上記の研究成果は以下の学術誌に掲載されました。
iScience. 2020 Feb 21;23(2):100850. doi: 10.1016/j.isci.2020.100850. Epub 2020 Jan 18

胎児発達期に必須の遺伝子 大腸がんの転移促進
2019年5月21日 新潟日報

20190521新潟日報

細胞膜透過型人工ペプチドを応用した次世代の制がん医療技術
の開発
「腫瘍組織に吸収されるペプチド~がんの新しい医療技術」

近藤英作、斎藤憲 他
わたしたちの進めているがんの医療技術に関する開発の成果が2012年、世界的なレベルの先端研究を掲載する総合科学誌の一つ”Nature Communications “に掲載されました。
ペプチドはヒトの身体にとって吸収効率が高く、また代謝も良好な「からだにやさしい」低分子アミノ酸連続体です。現在、特定保健用食品や飲料などの成分として、われわれの日常の食生活の中にも多く取り入れられ人気を博しています。私たちはこのペプチドの大きな長所を活かしつつ、負担の多いがん患者の方々にやさしく、かつ有用な新たな医療技術の創成に応用可能な「がん細胞に浸透する人工ペプチド」をはじめとする次世代医療に向けたバイオツールの開発を行っています。
論文では、当部が開発したヒトのさまざまながんに選択的に吸収される短い配列のアミノ酸(ペプチド)を用いて、からだに大きな負担をかけることなく腫瘍の検出・診断や腫瘍に医薬を効率よく届けることができる技術を構築できる可能性を報告しています。近藤らはこれらの特殊な機能を持つペプチドを、遠くの目標を探知して捉えるミサイルのシステムになぞらえて「腫瘍ホーミングペプチド」と命名しています。この「腫瘍ホーミングペプチド」は、現在まで世界で報告はなく、画像診断用薬品や内視鏡用色素で標識して、からだにやさしい微小がんの高効率探知技術(イメージング技術)に利用したり、また、これらのペプチドをキャリアーに利用してがんの増殖や転移を抑えるさまざまな治療用医薬を目的組織(がん組織)に効率よく十分に届けることのできる、ペプチドをベースとしたからだにやさしい新しい医療技術の開発が期待できると考えられます。

詳細については、下記のとおりです。
〜研究の概要〜
今から20年ほど前より、ウイルスやショウジョウバエなどの持つある種のタンパク質には、細胞の外に存在していても細胞膜を通過して細胞内に吸収される特殊な性質を持つものが存在することが報告されていました。このような性質のタンパク質の一部を切り取って短いペプチドの形にしたもの(細胞膜透過ペプチドと呼ばれる)はその後ろに輸送目的とする物質をつなげれば、細胞やその集合体である組織への分子輸送技術を作ることができると考えられ、次世代医療技術への新しい可能性を持つツールとして現在まで大きな注目を集めてきました。しかし、これら既知のペプチドは正常とがんとの区別なく非選択的にさまざまな組織に取り込まれる性質を持つために、がんへの応用を考えたときにはからだに副作用を引き起こす危険性のある点で不適切でした。そのような問題から、ペプチドがヒトのからだには傷害の少ない優れた生物学的道具となる大きな利点がありながら、これらの細胞膜透過ペプチドをがんの医療技術に活かすことは難しいとされていました。

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わたしたちは、琉球大学医学部(松下正之教授)および三菱化学と協力して、数千億から一兆種類ほどの不規則なアミノ酸配列の組み合わせからなる特殊なランダムペプチドライブラリー(mRNAディスプレイライブラリー)の中から、標的とするヒトがん細胞に選択的に高い吸収性を発揮するペプチドを分離・同定しました。現在までに開発した腫瘍ホーミングペプチドは、ヒト白血病・肝細胞がん透過性ペプチド、大腸がん透過性ペプチド、胃がん透過性ペプチドなど約10種類前後で、正常細胞系への取り込みを低く抑えながら、目的のがん細胞に高吸収性を示すことが確認されています。これらを応用した制がん医療への基本的応用技術についても検討を加えて発表しました。

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イレッサ耐性肺がんの特徴と抗腫瘍ペプチドによる標的
分子病理基盤にもとづく癌抑制遺伝子p14ARFの機能回復型ペプチドの開発

近年、製薬企業が中心となり開発の進んでいる代表的先端医薬として、EGFRに対する分子標的医薬“イレッサ(gefitinib)”が知られ、実際の肺がん患者さんを対象として医療の現場に用いられています。しかし、これら分子標的薬(EGFR-TKIという)の処方を受けた患者さんでは、薬剤に耐性を獲得するEGFRの遺伝子変異が必発であり、新たな効果的EGFR-TKIの開発が必要となるという薬剤開発の「いたちごっこ」が繰り返されているのが現状です。わたしたちはこの現状から、新たに薬の作用点を細胞表面分子でなく、実際にこれらの医薬による細胞内効果の出口として、肺がん細胞を殺傷する実行分子を探索しました。この結果、イレッサ感受性の肺がんでは誘導される癌抑制遺伝子p14ARF が、耐性肺がんにおいてはその誘導反応を欠如していることが大きな特徴であることがわかりました。また、p14ARFタンパクのどの部分が機能的なコアであるかを同定し、この情報に基づいて、耐性肺がんを効果的に標的するペプチドの開発に成功しました。この研究は、アメリカ癌学会学術誌のひとつである“がん分子標的治療雑誌”Molecular Cancer Therapeuticsに掲載され、その号のハイライト記事して採り上げられています。

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アデノウイルスレセプターは扁平上皮癌の増殖をコントロール
している!
CARはROCKの新規ネガティブレギュレーターである。

当講座の進めているがんの基礎分子病理学的研究の成果が、”Oncogene ”, Mar 6;33(10):1274-86, 2014に掲載されました。
この研究では、ウイルスの感染の成立に重要なコクサッキー/アデノウイルスレセプターとして知られているCAR(CXADR)が、じつは細胞内で細胞骨格制御に重要な役割を果たすROCK (Rho-associated coiled-coil-forming kinase; Rho-associated kinase)とタンパク-タンパク相互結合を通じて、その酵素活性を抑えることによって口腔・頭頸部扁平上皮癌の増殖を促進していることを見出しました。このようなタンパクレベルでの特異的反応によるROCKのネガティブレギュレーターの発見は世界ではじめてです。今後はこの基盤的な分子知見をもとに、さらに一歩進んで扁平上皮癌の増殖・転移抑制のための分子標的学的な研究に発展させていきたいと考えています。

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