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Achievements
当研究室の業績


2007年度

1. 御挨拶


新潟大学大学院医歯学総合研究科・分子細胞医学・薬理学教室
教授 樋口宗史

 教授就任後、前半の10年が過ぎようとしています。私が教授就任当初には新しい分子生物学手法を用いて神経遺伝子の転写機構を追求し、転写レベルにおいて新しい薬物作用点を発見すれば必ずや神経系の持つ記憶あるいは神経系形成のメカニズム発見のブレークスルーになると考えていました。実際、神経系にとどまらず、これまでの分子生物学の発展は遺伝子コードに依らないエピジェネティックな遺伝子制御機構を明らかにし、遺伝子転写制御のヒストンアセチル化、メチル化制御機構の発見とその生物学での重要性と意義が明らかになり、大きな進展が分子生物学領域の中に生まれてきました。遺伝子転写に働く酵素と老化、記憶、中枢神経可塑性の関係、またそのメカニズムの解明に伴って発見されてきたそれを制御する各種薬物は今後さらに興味深い知見を私たちにもたらしてくれると私は興奮しています。しかし、残念ながら、これらの進歩に私達の研究はほとんど貢献できなかったのが実情です。
 これからの教授時代の後半10年間は、摂食・生活習慣病・肥満に対する薬理学的な機能実験とともに、これまでこの薬理学教室で行われていた循環器疾患の薬物療法の研究を分子生物学的に分子レベルで解明しさらに発展すべく最大限努力したいと思っています。
 私達研究者は、大学にいる存在の意味を常に考え、この新潟大学医学部での研究が自分に対して何の利益があるのかということよりも、自分が薬理学研究の分野でどのような目に見える研究を成し遂げることができるのか、あるいは、一般の社会に対して明確で有意義なアウトプットを常に発信しているかを心しておかねばなりません。
 教室の図書室にM.Nirenbergがいつも言っていた研究者にはoriginality, productivity, reliability, friendshipが大事であるということを肝に銘じながら当初の研究への情熱と常に心に抱きながら、後半の10年をより一層素晴らしい研究活動の成果を得られるように一層邁進したいと思います。


2.人事異動


薬理学講座 現教室員(平成20年1月1日現在)

教授
樋口宗史
准教授
村瀬真一
技官
三冨明夫
技術補(秘書)
荒川英子
大学院課程
椎谷友博 (D1)、佐野峻子 (M2)
非常勤講師
新井 信 (東海大学)、岩尾 洋 (大阪市立大学)
貝渕弘三 (名古屋大学)、倉智嘉久 (大阪大学)
五嶋良郎 (横浜市立大学)、中木敏夫 (帝京大学)
長友孝文 (新潟薬科大学)、平 英一 (岩手医科大学)
服部裕一 (富山大学)、東田陽博 (金沢大学)
堀尾嘉幸 (札幌医科大学)、前山一隆 (愛媛大学)
渡邊康裕 (防衛医科大学校)、丹治敏英 (県医薬国保課)

平成19年度教室内人事異動
平成19年 3月 長井慎吾  大学院博士課程修了
                    賀川公美子 大学院修士課程修了
                    椎谷友博  大学院修士課程修了
                    弦巻 立  退職
平成19年 4月 椎谷友博  大学院博士課程入学
平成19年 6月 村瀬真一  入局
平成19年12月 仁木剛史  退職 (留学)


3.教育活動(平成19年4月〜平成20年3月)


  • 平成19年度基礎薬理学講義(3年次)

  •  4月 2日 総論(1)(2):歴史、概念、作用機序 樋口宗史
     4月 9日 総論(3)(4):受容体の概念、シグナル伝達 樋口宗史
     4月16日 総論(5)(6):シグナル伝達、神経化学伝達総論 樋口宗史
     4月23日 総論(7)(8):薬物動態 仁木剛史
     5月 8日 交感神経と薬物(1) 仁木剛史
     5月17日 特別講義-薬理学の特異性の概念 渡邊康裕
     5月24日 交感神経と薬物(2)(3) 仁木剛史
     5月31日 副交感神経と薬物(1) 樋口宗史
     5月31日 特別講義-麻薬法規 飯浜 宏
     6月 7日 特別講義-接着因子の薬理学 平 英一
     6月11日 副交感神経と薬物(2)(3) 村瀬真一
     6月14日 中枢神経作用薬(1)(2) 樋口宗史
     6月20日 特別講義-受容体 長友孝文
     6月27日 特別講義-抗炎症薬o抗高脂血症薬 服部裕一
     7月 2日 臨床医学入門(1) 樋口宗史 他
     7月 3日 臨床医学入門(2) 樋口宗史 他
     7月 4日 中枢神経作用薬(3)(4) 樋口宗史
     7月 9日 特別講義-老化の薬理学 堀尾嘉幸
     7月10日 抗生物質 仁木剛史
     7月11日 循環器系薬物(1)(2) 樋口宗史
     7月17日 循環器系薬物(3)(4) 樋口宗史
     7月18日 抗癌薬 仁木剛史

  • 平成19年度病態薬理学T講義(3年次)

  • 10月 2日 血液系の薬理学 村瀬真一
    10月16日 特別講義-NOの薬理学 中木敏夫
    10月23日 向精神薬(1)(2) 樋口宗史
    11月 6日 呼吸器系の薬理学 村瀬真一
    11月27日 特別講義-化学伝達の薬理学 五嶋良郎
    12月 4日 向精神薬(3)(4) 樋口宗史
     1月 8日 精神神経系 樋口宗史
     1月15日 特別講義-ヒスタミンの薬理学 前山一隆
     1月22日 糖尿病薬 樋口宗史
     1月29日 甲状腺薬o内分泌薬理学 村瀬真一

  • 平成19年度病態薬理学U講義(4年次)

  •  4月10日 皮膚o形成の薬理学 樋口宗史
     5月 1日 消化器系薬物 樋口宗史
     5月22日 特別講義-泌尿器系 岩尾 洋
     6月12日 生殖発達系薬物 仁木剛史
     7月 3日 視覚器系薬物 樋口宗史
     7月24日 麻酔o救急蘇生系薬理学 村瀬真一

  • 平成19年度薬理学実習(3年次)

  •  6月18日 薬理学実習(1)(2) 樋口宗史 他
     6月19日 薬理学実習(3)(4) 樋口宗史 他
     6月25日 薬理学実習(5)(6) 樋口宗史 他
     6月26日 薬理学実習(7)(8) 樋口宗史 他
     7月 2日 薬理学実習(9)(10) 樋口宗史 他
     7月 3日 薬理学実習(11)(12) 樋口宗史 他
     7月18日 薬理学実習の総括(13) 樋口宗史 他

  • 3年次実習項目

  •  エタノールの中枢作用
     カフェインの中枢作用
     平滑筋T、U
     自律神経薬と血圧
     臨床薬理学(ヘルシンキ宣言)

  • 高校生のためのオープンキャンパス

  •  8月 6日 医学部医学科薬理学研究室体験プログラム
            循環器系薬理学実験のデモンストレーション 樋口宗史 他

  • 大学院修士課程講義

  •  5月31日 神経薬理学 樋口宗史

  • 大学院特別講義

  •  9月21日 神経細胞の極性形成と軸索伸長機構 貝渕弘三

  • 出張講義

  • 愛媛大学医学部(非常勤講師) 樋口宗史
    大阪市立大学医学部(非常勤講師) 樋口宗史
    新潟薬科大学(非常勤講師) 樋口宗史
    新潟青陵大学看護福祉心理学部(非常勤講師) 樋口宗史
    新潟医療福祉大学医療技術学部(非常勤講師) 樋口宗史
    防衛医科大学校医学部(非常勤講師) 樋口宗史
    岩手医科大学医学部(非常勤講師) 樋口宗史
    富山大学医学部(非常勤講師) 樋口宗史
    東邦大学薬学部(非常勤講師) 樋口宗史


    4.研究活動


    T.神経遺伝子転写機構の研究
    A.マウス血管運動中枢における神経ペプチド遺伝子発現の加齢による変化
     延髄血管運動中枢での血圧調節にはneuropeptide Y (NPY)とgalaninの遺伝子発現を介する機構が存在する。これらの神経ペプチド遺伝子発現と血圧の加齢性変化の関与を調べるため、RT-PCRにより、延髄・橋における神経ペプチドmRNA発現を検討した。その結果、40週齢マウスでは10週齢マウスに比べてNPY及びgalanin mRNA発現が有意に増加した。in situ hybridizationによりNPY及びgalanin mRNA発現細胞の分布を検討したところ、NPY mRNAはlocus coeruleus (LC)、dorsal motor nucleus of vagus (10N)で発現が観察され、加齢により10Nでの発現が増加した。galanin mRNAはLC、10N、nucleus of the solitary tract (NTS)で発現が観察され、10N、NTSでの発現が増加した。以上より、加齢による血圧調節には中枢10N、NTSでのNPYおよびgalaninの遺伝子発現が関わることが示唆された。
    B.siRNAによる脳内神経ペプチドY受容体発現抑制の影響
     脳内視床下部での弓状核(ARC)および室傍核(PVN)には、摂食調節に関係した神経ペプチドや受容体が発現し、摂食調節に重要な役割を果たしている。また、摂食促進作用を示す神経ペプチドY(NPY)は主にARCで産生され、そのNPYニューロンの一部はPVNへ投射している。さらに、PVN、ARCにはNPY受容体サブタイプのうちY1及びY5受容体が発現している。このことを踏まえて以下のことを行った。
     ARC、PVNでのNPY Y1、Y5受容体発現を各々のsiRNAによりノックダウンし摂食行動への影響を検討した。その結果、PVNでNPY Y1受容体をノックダウンさせることで、摂食量が有意に減少した。それに伴い体重も著しく減少した。ARCでのNPY Y1受容体をノックダウンさせた場合はPVNの時のような著しい体重減少は認められなかった。一方、NPY Y5受容体をPVNでノックダウンさせた場合は、体重減少する傾向が認められたが、ARCでのNPY Y5受容体ノックダウンでは体重減少は認められなかった。以上、NPY Y1およびY5受容体は視床下部PVNで強い摂食誘導に働いていることが示された。
    C. NPY siRNAによる弓状核NPY遺伝子発現の抑制と摂食抑制
     摂食促進性神経ペプチドであるNPYの受容体Y1-RおよびY5-Rの生まれながらのノックアウトマウスは予想に反して摂食の亢進と肥満を引き起こす。この原因としては代償性機構が考えられているが、未だ解明されていない。そこで、RNA干渉法を用いて成熟マウスのNPYを弓状核でのみノックダウンさせることを目的として、NPY siRNA発現ベクターを作製した。このベクターはRNA polymerase V系プロモーターであるU6プロモーターの制御でshort hairpin RNAを発現させることができる。ICRマウスの弓状核にlipofectamine2000を使用し導入した。その結果、NPY siRNAによって摂食量の減少とそれに伴う体重減少が観察された。特に摂食は暗期でのみ減少することが示された。このことから夜行性動物であるマウスにおいて、NPYは特に暗期の摂食を調節していることが示唆された。

    U.Langendorff法を用いた灌流心臓の心機能評価
    A.Langendorff法を用いたシルニジピンの虚血心機能評価
     心臓の虚血/再灌流後の心機能低下には、冠血管平滑筋収縮に関わるカルシウムイオンの細胞内流入が関係している。今回、カルシウムチャネルブロッカーであるシルニジピンが虚血/再灌流後の心機能低下を軽減できるか評価した。その結果、シルニジピン10-6M存在下では、虚血/再灌流後の心機能回復がコントロールよりも低下する傾向がみられ、冠血流量の減少、左心室dP/dtの減少、左心室拡張末期圧の増加が観察された。今後はシルニジピン濃度の検討および心電図計測もあわせて行う予定である。

    V. 循環調節に関わる生理活性物質と受容体oシグナル伝達の研究
    A. ラット血管におけるニューロペプチドY受容体の発現
     これまでの私達の研究で、生体内で位置的に伴行する同名動静脈であってもNPYに対する収縮反応性が動脈と静脈で異なり、NPY存在下では静脈がより強い収縮性を示す事が明らかになっている(Tsurumaki et al., 2002)。この現象の基盤としてNPY Y1受容体の発現量が動脈と静脈では異なる事が考えられる。この点を検討するためにラットの動静脈を固定して抗NPY Y1受容体抗体による免疫組織化学を行ない、静脈壁の免疫反応が動脈壁のそれよりも強いことを示した。今後は、NPY Y1受容体免疫反応が血管壁の平滑筋層に局在しているかを検討する必要がある。
    B. ラット静脈におけるヒスタミン誘導性弛緩反応のメカニズム
    ラット総頚静脈、上腕静脈、大腿静脈、腹部下大静脈でのヒスタミン弛緩反応のシグナル伝達を調べている。具体的にはTXA2 アゴニストであるU-46619 で前収縮させたラット総頚静脈、上腕静脈、大腿静脈、腹部下大静脈の各標品でのヒスタミンH2受容体誘導性弛緩に対する各種阻害薬の効果を検討した。P450モノオキシゲナーゼ阻害薬の17-ODYA を投与した時には大腿静脈の弛緩を一部抑制した。非選択的Ca2+ 活性化Kチャネル阻害薬の tetraethylammonium (TEA) を投与した時は総頸静脈、大腿静脈、腹部下大静脈で弛緩の部分抑制を示した。高伝導性Ca2+活性化Kチャネル(BKCa) 阻害薬のiberiotoxin (IbTX) 投与は上腕、大腿静脈で、高・中伝導性Ca2+ 活性化Kチャネル阻害薬のcharybdotoxin (ChTX) 投与は腹部下大静脈でヒスタミン弛緩の部分抑制を示した。低伝導性Kチャネル(SKCa) 阻害薬のapamin を投与した時、有意に大腿静脈では弛緩が抑制された。ChTX はKv チャネル阻害作用があるが、ラット静脈におけるヒスタミン誘導性弛緩反応の一部はCa2+ 活性化K チャネルが関与している。恐らくBKCaまたはSKCa を介して弛緩反応を調節していると思われる。

    W. 神経前駆細胞の増殖o分化を伴う脳の形態形成
    A. ニューロペプチドYが中枢神経系の形態形成に及ぼす影響
     ニューロペプチドY(NPY)は、摂食促進作用を有する神経ペプチドであり、その受容体は、脳内に広く分布することが知られている。NPY受容体の発現が、海馬や小脳などの生後においても神経細胞の移動が起こる場所に多いことから、私達はNPYおよびNPY受容体が側脳室周囲から嗅球へと移動するニューロブラストの挙動にも何らかの役割を果たしていると考えて、NPYとその受容体の蛋白質の脳における発現を免疫組織化学的手法により調査した。これまでに得られた結果では、嗅球においてNPYが僧帽細胞に発現している事が示された。また、NPY Y1受容体ノックアウトマウスの小脳において、顆粒細胞の移動障害によると思われる「異所性顆粒細胞」が小脳表面に多数存在していることを見出した。嗅球におけるNPY Y1受容体蛋白質の発現やNPY Y1受容体ノックアウトマウスの嗅球の組織構築については現在検討中であるが、少なくとも小脳においてはNPY Y1受容体が、小脳の正常な組織構築に関与することが示唆された。


    5.業績(英文原著・英文総説)


    1) Piao H, Nagai S, Tsurumaki T, Niki T, Higuchi H.
    Potentiation by neuropeptide Y of histamine H1 receptor-mediated contraction in rat blood vessels.
    Vascul. Pharmacol. 46, 260-270, 2007.

    2) Nagai S, Tsurumaki T, Abe H, Higuchi H.
    Functional serotonin and histamine receptor subtypes in porcine ciliary artery in comparison with middle cerebral artery.
    Eur. J. Pharmacol. 570,159-166, 2007.


    6.業績(和文原著・和文総説)


    1) 賀川公美子
    Neuropeptide Y-Y1およびY5受容体ノックアウトマウスの心機能評価と加齢の影響
    平成十八年度新潟大学学位論文. -- 新潟大学大学院医, 2007 -- (新潟大学学位論文 ; 新大院修(医) ; 第35号-第44号)

    2) 椎谷友博
    摂食調節に関するgalaninとneuropeptide Yの相互作用
    平成十八年度新潟大学学位論文. -- 新潟大学大学院医, 2007 -- (新潟大学学位論文 ; 新大院修(医) ; 第45号-第54号)

    3) 長井慎吾
    Functional serotonin and histamine receptor subtypes in ciliary artery in comparison with middle cerebral artery.
    (毛様体動脈における機能的セロトニン及びヒスタミン受容体サブタイプの中大脳動脈との比較)
    平成十八年度新潟大学学位論文. -- 新潟大学大学院医, 2007 -- (新潟大学学位論文 ; 新大院医歯博 ; 印刷中)


    7.国内学会


    1) 賀川公美子、三冨明夫、樋口宗史
    NPY受容体ノックアウトマウスのLangendorff法による心機能評価 加齢と性差
    第80回日本薬理学会年会 2007年3月14日―16日 名古屋

    2) 長井慎吾、弦巻 立、樋口宗史
    ブタ中大脳動脈と毛様体動脈のヒスタミンおよびセロトニン収縮に関与するレセプターサブタイプの検討
    第80回日本薬理学会年会 2007年3月14日―16日 名古屋

    3) 佐野峻子、弦巻 立、朴 紅蘭、樋口宗史
    ラット静脈でのヒスタミン誘導性弛緩反応のメカニズム
    第80回日本薬理学会年会 2007年3月14日―16日 名古屋

    4) 仁木剛史、椎谷友博、樋口宗史
    siRNAベクターを用いた視床下部弓状核での摂食ペプチドNPY 遺伝子発現の調節と摂食行動
    第80回日本薬理学会年会 2007年3月14日―16日 名古屋

    5) 椎谷友博、仁木剛史、樋口宗史
    マウス延髄血管運動中枢におけるgalanin遺伝子発現の加齢による変化
    第80回日本薬理学会年会 2007年3月14日―16日 名古屋

    6) 仁木剛史、椎谷友博、樋口宗史
    siRNAを用いた視床下部弓状核NPY mRNAノックダウンによる摂食行動の減少
    Neuro2007 第30回日本神経科学大会o第50回日本神経化学会大会o第17回日本神経回路学会大会合同学会 2007年9月10日―12日 横浜

    7) 村瀬真一, Chunghee Cho, Judith M. White, Alan F. Horwitz
    嗅球へ向かうニューロブラストの移動は、ADAM2により制御される
    第58回日本薬理学会北部会 2007年9月29日 札幌

    8) 椎谷友博、仁木剛史、樋口宗史
    マウス血管運動中枢における神経ペプチド遺伝子発現の加齢による変化
    第58回日本薬理学会北部会 2007年9月29日 札幌

    9) 仁木剛史、椎谷友博、樋口宗史
    siRNAによるマウス視床下部弓状核ニューロペプチドY遺伝子発現の抑制による体重、摂食行動の変化
    第58回日本薬理学会北部会 2007年9月29日 札幌

    10) 樋口宗史、弦巻 立、長井慎吾
    ブタ眼毛様体動脈のヒスタミンおよびセロトニン血管反応の特異性―脳動脈との比較
    第11回日本ヒスタミン学会 2007年12月14、15日 富山


    8.教室近況


     諸先生方におかれましては、益々御活躍のことと御慶び申し上げます。平成19年(2007年)1月から12月における薬理学教室の一年間を御報告させて頂きます。
     人事面では3月に賀川公美子さんが修士課程(医科学専攻)を修了し就職しました。長井慎吾君は、大学院博士課程を終了し眼科学教室へ戻りました。椎谷友博君は修士課程を修了後、大学院博士課程に進学し引き続き当教室で研究を続けています。弦巻 立助手は3月末日を以て退職し歯科麻酔の臨床へ戻ることになりました。6月には村瀬真一が米国バージニア大学から准教授として赴任しました。村瀬は金沢大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部助手時代には神経細胞接着因子の研究を、その後バージニア大学医学部のHorwitz教授の下で神経芽細胞(neuroblast)の分化o発生o移動の研究を行なってきました。僭越ながら薬理学教室に新風を入れたいと考えております。従って現在の教室員は樋口宗史教授、村瀬真一准教授、仁木剛史助教、三冨明夫技術職員、荒川英子技術補(秘書)、大学院生の椎谷友博、佐野峻子の7名となります。尚、仁木剛史助教は、フィンランドへの留学のため12月15日をもって退職し、来年度は、北海道大学薬学部助教を経てヘルシンキ大学の方へ留学する予定になっています。今後の彼の一層の研究の発展を考えて期待しています。
     教育面では4月から7月までは基礎薬理学および病態薬理学Uの講義、6月から7月にかけて薬理学実習、9月からは病態薬理学Tの講義を当教室スタッフが行ないました。また、大学院特別講義(新潟分子薬理学フォーラム15)では樋口教授がホストとして貝渕弘三教授(名古屋大学大学院)を招き「神経細胞の極性形成と軸索伸長機構」というタイトルの大変に内容が充実した講演を行なって頂きました。学部の特別講義では、例年学外の先生方をお招きして最先端の薬理学研究をふまえての講義をして頂くことになっていますが、前山一隆教授(愛媛大学大学院)の「ヒスタミンの薬理学」、東田陽博教授(金沢大学大学院)の「アセチルコリン誘導性M電流の薬理学」、中木敏夫教授(帝京大学医学部)の「一酸化窒素(NO)の基礎と臨床」、岩尾 洋教授(大阪市立大学大学院)の「泌尿器系の薬理学」、渡邊康裕教授(防衛医科大学校)の「薬物受容体とシグナル伝達」、長友孝文教授(新潟薬科大学)の「薬物受容体(レセプター)」、服部裕一教授(富山大学大学院)の「高脂血症治療薬」、平 英一教授(岩手医科大学)の「接着因子の薬理学」、堀尾嘉幸教授(札幌医科大学大学院)の「老化の薬理学」、新井 信准教授(東海大学医学部)の「医学生のための漢方医学入門」、五嶋良郎教授(横浜市立大学大学院)の「脳神経系の薬理学」、倉智嘉久教授(大阪大学大学院)の「イオンチャネルの薬理学」の講義をそれぞれ充実した内容で行なって頂きました。10月から11月にかけての医学研究実習配属では、2名の4年次学生を受け入れ血管平滑筋収縮と摂食調節という当教室の二大テーマを通じて実験からデータ解析に至るまでのすべてを実施してもらい、単なる研究室体験にとどまることなく有意義な成果を生み出すことが出来ました。8月に全学的に企画されたオープンキャンパスは、高校生の皆さん(対象は主に2o3年生)に大学生活や研究活動の実際を知ってもらうために行なわれました。当教室では、循環器薬理学の心臓ランゲンドルフ標本と血管収縮のデモを行ない、それら標本からデータが記録されていく様子を見学してもらい、非常に好評でした。
     研究活動ですが、循環器薬理学領域では「血管平滑筋を用いてのヒスタミン誘導性弛緩反応のメカニズム」および「心臓ランゲンドルフ標本を用いての虚血負荷時の神経ペプチドの役割」の二つのテーマが追求されています。それぞれ佐野さん、椎谷君が実験を担当し活発な研究活動が続いています。神経薬理学領域では、「神経ペプチドとその関連分子が摂食におよぼす生理学的機能」を分子生物学的手法と実験動物の行動解析により検討しています(仁木助教)。椎谷君は、加齢に伴う血圧変化に種々の神経活性物質が関与している可能性を検討してユニークな結果を得ています。神経薬理学領域の上記二つのテーマに関しては、ほぼデータも出揃いましたので、研究の完成に向けて大詰めの段階にあります。さらに、当教室が強いバックグラウンドを持つ神経ペプチドに関する種々のツールと神経ペプチド受容体の遺伝子改変動物を利用して、神経細胞の移動や分化を調節するメカニズム解明の試みも行なわれています(村瀬准教授)。以上の教育o研究面をはじめ薬理学教室の諸活動は、三冨、荒川両氏の多くの貢献に支えられていることは言うまでもありません。
     教育、研究の両面において内外から厳しく評価される状況ですが、教室員一同一層の努力を積み重ねてそれらの評価や期待に応えていきたいと考えております。 今後とも薬理学教室への暖かい御支援をお願いするとともに、諸先輩、先生方の御健勝を心からお祈り申し上げまして、本稿を終わらせて頂きます。
    (文責 村瀬真一)



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