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Achievements
当研究室の業績


2012年度

1.御挨拶


新潟大学大学院医歯学総合研究科・分子細胞医学・薬理学教室
樋口宗史

ここ15年間、新年の挨拶に研究の方針とそれに対する取り組み姿勢など研究面を重視した薬理学教室の内容について書いてきた。しかし、基礎医学教室としての薬理学分野の大きな業務には医学教育も存在している。
私が新潟大学医学部で薬理学教育をはじめた15年前、学生教育に対して他の大学には見られないユニークな試みを始めた。それは多くの他大学の薬理学分野教授に自分の研究分野を中心とした薬理学研究の重要性、面白さを医学生に伝えてもらう試みである。研究大学である東大、京大、阪大を中心に毎年10名を超える現役の教授陣を新潟大学医学部の薬理学特別講義として招聘し、学生に薬理学分野の重要性と各教授自らの研究分野を中心にした研究の必要性をセミナー形式で講義して頂いた。

これには多大な費用がかかったが、学生たちにはその薬理学研究の重要性・研究の面白さをその研究を実際行っている人から直接に教えられることになり、大変好評であった。また研究者の考え方が脇で拝聴している私達にも伝わってきて、教室員一同の研究へのリサーチマインドを高める効果があった。
これまでお呼びした教授の方々は思い出すだけで、(当時の所属で示すと)、三木直正(大阪大、神経薬理学、私の元ボス)、渡辺建彦(東北大、ヒスタミン学)、倉智嘉久(大阪大、心臓イオンチャネル)、渡辺康裕(防衛医大、GTP結合蛋白質)、前山一隆(愛媛大、肥満細胞とヒスタミン)、三品昌美(東京大、グルタミン酸受容体)、成宮 周(京都大、プロスタグランディン受容体)、東田陽博(金沢大、オキシトシンとcADPribose系)、野村靖幸(北大、脳細胞死)、審良静男(大阪大、Toll-like受容体)、中村祐輔(東京大、がん遺伝子とがん抑制遺伝子)、寒川賢治(循環器病センター、グレリンの発見)、中木敏夫(帝京大、NOとパーキンソン病)、吉田進昭(東京大、KOマウスと薬理学)、堀尾嘉幸(札幌医大、老化とSirt1)、平 英一(岩手医大、接着因子と薬理学)、山田充彦(信州大、心臓の不整脈薬)、貝渕弘三(名大、神経細胞の極性)、矢田充彦(自治医大、中枢摂食制御)などの諸氏が過去15年間、毎年10回(20コマ)以上、繰り返して新潟大学医学部の学生に研究を中心とした薬理学の講義をして頂いた。
新潟大学医学部の学生には他の大学には見られない薬理学研究分野へのアーリーイクスポージャー(early exposure)であり、教科書レベルを超えたリサーチマインドを与える強いインパクトになったと考えている。私たち薬理学の研究者にとっても、研究方法への考察や研究遂行へのモチベーションを高める上で、大きな影響を受けた。この期をかりて、講師の先生たちに御礼を申し上げるとともに、今後の学生の成長による新潟大学の将来の医学研究の発展を楽しみにしている。

平成25年1月1日

研究について ――― 「アゴラ」日薬理誌(2013年141号1-2頁)記載

「人の働ける時間は短い。若い人は最も重要なことにchallengeしなければいけない」
新潟大学大学院医歯学研究科・医学部・薬理学分野
樋口 宗史

 もっと多くの若い人が研究者を志向することは、科学立国のわが国にとっては重要な課題である。最近縮小傾向のある日本では研究者を目指すよりも安定した職を求める傾向がある。よしんば研究職を得ても研究成果のみに追われ、大学や研究室には科学者の独創性を育てて、真の研究の面白さを追求する雰囲気が失われているように感じる。若い優秀な研究者がもっともっと基礎医学・薬理学研究者として有意義な研究にチャレンジできるように、参考になるかどうかは判らないが、私が若いときに進路決定で悩んだこと・その時交流した研究者達について書いてみた。
昭和52年に大阪大学医学部を卒業した。その当時は脳の働きに興味があり、臨床技術を持つことも大事と思っていたので脳外科医になることを志望した。その前に臨床医学一般を修得することも大事と思い、当時は臨床研修制度もない時であったので、脳外科の医局に断って内科を1年、放射線科、外科を1年研修した。つまり現在の臨床研修を2年間行った。それが終わった時、臨床の何科に行ってもやっていけるような気がした。しかし、よく考えてみると、大脳の機能は人を人たらしめている記憶・情報処理・最終的には精神機能を生じさせているが、単純に神経細胞が何故その様な作用をもたらすのか何も知らない自分に気がついた。一度、基本的に神経機能を細胞・分子レベルから勉強してみようと考えた。進路の岐路において考えたのは基礎医学(理解不能の領域)の研究を経由しての“いわゆる狭き門より入れ”であった。
昭和54年に大阪大学大学院医学研究科神経薬理学(吉田 博先生)に入学した。神経機能を生化学的に研究している研究室で、当時多くの真に素晴らしい生化学テクニックを持った精鋭が居られた(影響を受けた年配の先生のみを挙げると松田友宏元名市大教授、斉藤喜八元阪大教授、渡辺康弘防衛医大教授、竹安邦夫京大教授が日夜切磋琢磨しておられた)。大学院時代には東大江橋節郎教授、阪大垣内史郎教授、ノーベル賞受賞者Murad教授らと討論したことが研究者としての良い経験になっている。その当時ムスカリン様アセチルコリン受容体の膜蛋白質として代謝回転(ダウンレギュレーション)の仕事をしていて垣内先生に褒められたのもいい思い出である。この時代から自分の仕事は基礎薬理学の中でも薬の作用の根底にある新しい作用機構を探索することを志向するようになった。臨床医への道から転向したが自信はなかった。
 昭和59年、世界の研究のレベルを知りたく、留学を希望した。ポスドクの応募書類を10通出した。最初にOKが来たCosta研(NIMH)に留学した。GABAをテーマにしていたこの研究室には片岡泰文福岡大教授、中木敏夫帝京大教授、藤本正文元千葉科学大学教授ら日本人研究者が活躍しており、同世代の研究者の交流から本当によい刺激を受けた。Costaの標榜する研究姿勢は“Burning motivation”で、燃え上がるような研究への熱意が研究を成功へと導くと教えていただいた。交感神経ペプチドNPYが重要な生理作用があることに気がついた。
1年でこの研究室がGeorgetown大学へ移動することになったので、留学を続けるためNIHで面接を受けて分子遺伝学のノーベル賞学者のNirenberg研に移動した。当時その研究室では吉川和明阪大教授、東田陽博金沢大教授らが最先端の研究を発表していた。Nirenberg研では交感神経コトランスミッターNPYの遺伝子クローニングを行い、神経特異的遺伝子発現の研究を開始した。Nirenbergはきわめて緻密なアイデアを出し、それを真摯な実験で具体化する研究者でgenetic codeの研究でノーベル賞を受賞している。60歳の年でも自分で試験管を振っていた(実際、82歳で亡くなるまで現役で体を動かしていた)。Nirenbergは私に、良い研究者というものはoriginality, reliability, productivity, good friendshipの4つが大切であると教えてくれた。“人は答えの解らないような大きな疑問にchallengeしなければいけない。答えの解っているようなことにtryしてはいけない。そのときにあなたは答えを得るかもしれないし、何も得ないかもしれない。しかし、もしそこから得られたとき、真に重要な結果を得ることができる。”“人の働ける時間は短い。若い人は考えられる最も重要なことにchallengeしなければいけない。”彼は本当に優れたmentorであった。ノーベル賞学者の研究室にはノーベル賞学者が育つ。GTP結合蛋白質の研究でノーベル賞を受賞したAlfred G. Gilmanは私の居た同じ研究部屋で14年前にリンパ球を使ったGTP蛋白質の最初の仕事を始めた(写真参照)。
 昭和62年に私は阪大医学部薬理学教室に帰国した。その後、吉田 博先生のあとを継いだ三木直正先生の助教授として仕えた後、平成9年に新潟大学医学部薬理学の教授となった。
一昨年にNirenbergが亡くなった今、ちょうど私も留学したときの師の歳を迎えようとしている。新潟で彼が言った言葉の重みを噛み締めている。


2.人事異動


薬理学講座 現教室員(平成25年1月1日現在)

教授
樋口宗史
准教授
村瀬真一
助教
椎谷友博
技術補(秘書)
荒川英子
大学院課程
坂井一明(D2)
廣井真(M1)
医学部基礎配属
新里 稔、飛田悠太朗、仲野晃司

非常勤講師
新井 信(東海大学)、伊藤正広(新潟県福祉保健部)
平 英一(岩手医科大学)、中木敏夫(帝京大学)
服部裕一(富山大学)、東田陽博(金沢大学)
平山篤志(日本大学)、堀尾嘉幸(札幌医科大学)
前山一隆(愛媛大学)、山田充彦(信州大学)
渡邊康裕(防衛医科大学校)


平成24年度教室内人事異動

平成24年 3月 合田光寛 退職
平成24年 4月 廣井 真 大学院修士課程入学


3.教育活動(平成24年4月〜平成25年3月)


  • 平成24年度講義(1年次)

  •  5月14日 医学序説I (脳に働く薬と毒) 樋口宗史

  • 平成24年度基礎薬理学講義(3年次)


  •  4月 2日 総論(1)(2)歴史、学問領域、概念、作用機序) 樋口宗史
     4月 9日 総論(3)(4)受容体の概念、シグナル伝達 樋口宗史
     4月16日 総論(5)(6)シグナル伝達、神経化学伝達総論 樋口宗史
     4月23日 受容体 樋口宗史
     5月 7日 総論(7)(8)薬物動態、薬物代謝、ADME 村瀬真一
     5月14日 特別講義-神経化学伝達の特異性 渡邊康裕
     5月21日 中枢神経薬理(1)(2) 樋口宗史
     5月28日 抗炎症薬、ステロイド 村瀬真一
     5月30日 自律神経(1)副交感神経作用薬 村瀬真一
     6月 4日 中枢神経薬理(3)(4) 樋口宗史
     6月 5日 特別講義-接着因子と薬理学 平 英一
     6月 6日 自律神経(2)交感神経作用薬 村瀬真一
     6月11日 循環器薬理学(1)(2) 樋口宗史
     6月12日 特別講義-老化の薬理学 堀尾嘉幸
     6月13日 筋弛緩薬、局所麻酔薬 村瀬真一
     6月13日 化学療法薬(1)抗生物質@ 村瀬真一
     6月18日 特別講義-一酸化窒素、パーキンソン病の薬理学 中木敏夫
     6月19日 循環器薬理学(3)(4) 樋口宗史
     6月20日 化学療法薬(1)抗生物質A 村瀬真一
     6月20日 特別講義-麻薬法規 伊藤正広
     6月27日 化学療法薬(2)免疫調節薬、抗癌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬 村瀬真一

  • 平成24年度臨床医学入門ユニット講義(3年次)

  •  7月10日 臨床薬理学(1) 樋口宗史 他
     7月11日 臨床薬理学(2) 樋口宗史 他

  • 平成24年度病態薬理学I講義(3年次)

  • 10月 2日 特別講義-高脂血症薬 服部裕一
    10月23日 特別講義-抗不整脈薬 山田充彦
    10月30日 造血・貧血の薬理学、循環器薬理学(3)(4) 樋口宗史
    11月20日 呼吸器系薬理学 村瀬真一
    12月 4日 特別講義-社会行動・自閉症の薬理学 東田陽博
    12月18日 向精神薬(1)(2) 樋口宗史
     1月15日 向精神薬(3) 樋口宗史
     1月22日 内分泌薬理(1)(2)糖尿病・肥満の薬理学 樋口宗史
     1月29日 内分泌薬理(3)(4)下垂体、性腺、副腎 村瀬真一
     2月 5日 内分泌薬理(5)(6)甲状腺、副甲状腺、骨薬理 樋口宗史

  • 平成24年度病態薬理学II講義(4年次)

  •  4月10日 皮膚・形成の薬理学 樋口宗史
     4月24日 消化器系薬理学 樋口宗史
     5月22日 泌尿器系薬理学 村瀬真一
     6月19日 生殖発達系薬理学 村瀬真一
     6月26日 視覚器系薬理学 樋口宗史
     7月24日 麻酔・救急蘇生の薬理学 村瀬真一

  • 平成24年度臨床医学講義(6年次)

  •  7月27日 特別講義-医学生のための漢方医学入門 新井 信

  • 平成24年度薬理学実習(3年次)

  •  6月25日 薬理学実習(1)(2) 樋口宗史 他
     6月26日 薬理学実習(3)(4) 樋口宗史 他
     7月 2日 薬理学実習(5)(6) 樋口宗史 他
     7月 3日 薬理学実習(7)(8) 樋口宗史 他
     7月 9日 薬理学実習(9)(10) 樋口宗史 他
     7月10日 薬理学実習(11)(12) 樋口宗史 他

  • 3年次実習項目

  • エタノールの中枢作用
    カフェインの中枢作用
    平滑筋I、II
    自律神経薬と血圧
    薬物の精神ストレス(カラーワードテスト)に対する作用

  • 大学院修士課程講義

  •  5月10日 神経細胞の移動・分化と脳の発達薬理学 村瀬真一
     7月17日 神経薬理学 樋口宗史

  • 大学院特別講義

  •  6月 1日 急性心不全の病態と治療 平山篤志
     9月13日 生体機能における細胞内カルシウムシグナルの重要性CRAC
           (Ca2+ release-activated Ca2+) チャネルの役割 前山一隆

  • 出張講義

  • 札幌医科大学(非常勤講師) 樋口宗史
    富山大学医学部(非常勤講師) 樋口宗史
    北海道大学医学部(非常勤講師) 樋口宗史
    岩手医科大学医学部(非常勤講師) 樋口宗史
    愛媛大学医学部(非常勤講師) 樋口宗史


    4. 研究活動


    T.神経遺伝子転写機構の研究
    A. Y1, Y5 mRNAノックダウンによる摂食抑制への代償機構
    Y1又はY5 siRNA発現ベクターを室傍核へ投与すると、Y1又はY5 mRNA発現がベクター投与3日以後まで持続的に抑制される。しかし、摂食抑制効果は6日たつと完全に無くなるので、代償的機構が働いていると考えられる。そこで視床下部での摂食関連ペプチド発現をRT-PCRにより検討した結果、siRNA発現ベクター投与6日後においてNPY, AgRP遺伝子発現が代償的に増加していた。このことがNPY受容体siRNAによる摂食抑制に対する代償機構の本態かもしれない。

    II. 循環調節に関わる生理活性物質と受容体・シグナル伝達の研究

    A. ラット大腿静脈に対するヒスタミンH3、H4受容体を介した弛緩反応の抑制
     ラット静脈(総頸静脈、上腕静脈、腹部下大静脈、大腿静脈)では、主にヒスタミンH2受容体を介した弛緩反応が報告されている。しかし、Thioperamide (H3 antagonist / H4 antagonist and inverse agonist)を用いた当研究室の予備実験で、この弛緩反応にはH3並びにH4受容体の関与も示唆された。そこで、H3及びH4受容体それぞれに対する特異的アンタゴニストを用いて弛緩反応への影響を調べた。その結果、大腿静脈において、H3、H4拮抗薬存在下で弛緩反応が有意に抑制された。現在、ヒスタミン弛緩反応曲線の変化を解析している。
     H4受容体は、主にマスト細胞等、骨髄系の細胞に発現している。H4受容体が血管平滑筋に存在し、血管収縮に影響を与えるという報告は無い。H4阻害剤を用いた場合の弛緩反応の抑制は、マスト細胞からのヒスタミン放出の抑制と思われるため、この仮説を裏付けられるような研究を行う予定である。

    B. 高濃度炭酸泉による血管の弛緩メカニズム
     新潟市で圧力封入式の高炭酸泉を製造するメーカーがあったので、その装置を利用し、下腿部での皮膚紅潮試験を行った。このメーカーでの高炭酸水の遊離炭酸濃度は1300 mg/l であった。この皮膚紅潮反応への影響は時間および濃度依存的であった。

    C. ニューロペプチドY受容体の分布様式の検討
     ニューロペプチドYは、摂食行動を促進する他、血圧調節にも関与する。マウスY5蛋白質の局在に関する情報は少ないため、Y5蛋白質のマウス脳における発現様式を検討した。検討に用いた抗Y5ポリクローナル抗体は、抗原ペプチドにより吸収されたが、Y5ノックアウトマウス(KO)脳切片と反応した。そこで抗Y5抗体をあらかじめY5KO脳切片で吸収して、この吸収抗体で野生型マウスにおけるY5蛋白質の局在を検討した。MAP2と吸収抗体による二重染色では、Y5蛋白質局在は主に神経細胞体にあった。Y5等のG蛋白質共役受容体に対する抗体の特異性に関しては、その非特異的反応等の問題点が指摘されている。KO組織を用いた吸収抗体の使用が抗体特異性を向上させ、Y5局在部位の詳細な解明に役立つことが解る。


    III. 漢方薬におけるストレス抑制効果について

     カラーワードテスト (CWT) による精神ストレスに対する心循環器系への影響について検討するため臨床治験を行った。柴胡は、自律神経安定化作用があるというので各種、柴胡製剤を試験した。柴胡桂枝乾姜湯は、抑制効果は昨年度と同様、有意差が無かった。柴朴湯を用いた時には、血圧は若干上昇した。柴胡剤の中でも血圧反応に関して昇圧抑制作用が低いものがあることがわかった。


    5.業績(英文原著-英文総説)


    1) Hiroki Fujiwara, Narumi Hashikawa-Hobara, Yoshihiro Wake, Shingo Takatori, Mitsuhiro Goda, Hiroshi Higuchi, Yoshito Zamami, Panot Tangsucharit, Yoshihisa Kitamura, Hiromu Kawasaki
    Neurogenic vascular responses in mouse mesenteric vascular beds.
    J Pharmacol Science, 119, 260-270, 2012

    2) Hiroshi Higuchi
    Molecular analysis of central feeding regulation by neuropeptide Y (NPY) neurons with NPY receptor small interfering RNAs (siRNAs).
    Neurochem Int, 61, 936-941, 2012


    6.業績(和文原著・和文総説)


    1) 樋口 宗史
      日薬理誌、141, 1-2, 2013
     「人の働ける時間は短い。若い人は最も重要なことにチャレンジしなければいけない」

    7.国内学会(研究会も含む)


    1) 合田光寛、村瀬真一、樋口宗史
    SHRの血管平滑筋におけるNPY Y1受容体分布変化と反応性
    第85回日本薬理学会年会 2012年 3月14−16日 京都

    2) 村瀬真一、樋口宗史
    ヘパラン硫酸による嗅球ニューロブラスト移動の調節
    第85回日本薬理学会年会 2012年 3月14−16日 京都

    3) 椎谷友博、樋口宗史
    Y1およびY5 siRNAの視床下部背内側核投与は絶食による摂食量増加を抑制する
    第85回日本薬理学会年会 2012年 3月14−16日 京都

    4) 村瀬真一、椎谷友博、樋口宗史
    マウス中枢神経系に置けるニューロペプチドY Y5受容体淡白質の発現様式の検討
    第 63 回日本薬理学会北部会 2012年 9月 14日 新潟

    5) 椎谷友博、村瀬真一、樋口宗史
    視床下部室傍核でのニューロペプチドY受容体サブタイプ(Y1, Y5)の共局在
    第 63 回日本薬理学会北部会 2012年 9月 14日 新潟

    6) 樋口宗史、椎谷友博、村瀬真一
    摂食中枢視床下部室傍核における NPY-Y1 および Y5 受容体サブクラスの協調作用
    第127回日本薬理学会関東部会 2012年 10月 20日 東京



    第63回日本薬理学会北部会開催特集



    A. 2012年 日本薬理学会市民公開講座(新潟)

    第63回日本薬理学会北部会 市民公開講座
    「がんペプチドワクチン療法;現状と課題」を開催して

    第63回日本薬理学会北部会 部会長 樋口宗史

    市民公開講座を2012年9月14日(金)開催の第63回日本薬理学会北部会(新潟市)に合わせて、部会会場の新潟コンベンションセンター朱鷺メッセ4階の国際会議室マリンホールにて同日午後1時から2時半まで開催した。今回の演者はシカゴ大学医学部教授の中村祐輔先生で、中村教授は長く東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター長、国立がんセンター研究所長、内閣官房参与・内閣官房医療イノベーション推進室室長などの要職を今年3月まで務められ、日本のヒトゲノムプロジェクトやファルマコゲノミクスの分野をリードしてきた世界的な研究者としてよく知られている。
    この4月から、がんに関する外科療法・放射線療法・化学療法に続く第4の治療法として期待される免疫療法の一つがんペプチドワクチン療法の臨床応用のため、シカゴ大学医学部教授に移られ研究を進めている。がんワクチン療法に関しては米国医薬食品局(FDA)は2011年10月に治療用企業向けガイダンスを策定し、アメリカのそれは、臨床応用に向け日本よりも5年も先を進んでいると話された。日本の医薬品開発の政策的取り組みの遅れについての懸念を表明された。次いで我々日本薬理学会員を含む新潟市市民の聴衆に、解りやすく、がんペプチドワクチン療法の科学的有効性のメカニズムを説明された。さらに日本国内の臨床研究の現状としてがんペプチドワクチン臨床研究ネットワーク(Captivation Network)の構築の状況と種々のがんへの臨床的有効性の現状につき話された。
    がんペプチドワクチンは、個体の免疫力を高める従来の免疫療法とは異なり特定の免疫力だけを高める特異的免疫療法である点に特徴があり、がん細胞を攻撃目標とする細胞障害性Tリンパ球を増やすことを目的としている。9‐10個アミノ酸から成るペプチドをワクチンとして用いる利点としては、ペプチドワクチン特異的に反応しているリンパ球の増加を患者さんの血液検査により確認できる点、患者さんの体内で増加したペプチド特異的リンパ球が実際にがん細胞に障害を与えることが出来るかどうかを科学的に検証出来る点が挙げられる。このような有効性の科学的検証は、従来のがん免疫療法ではおろそかにされていたが、がんペプチドワクチン療法ではワクチン特異的リンパ球の増加している患者さんではそうでない患者さんに比較して生存期間が延長している例があることを紹介され、ペプチドワクチン療法の将来性が科学的にも充分に感じられた。
     がんの基礎的研究だけでなくがんペプチドワクチン療法においても世界をリードする中村教授の講演に市民および薬理学会員は深い感銘を受けた。本講座を聴講した市民からのアンケートにも、「がん治療の最前線が良く理解出来た」「新しいがん治療法に期待している」などの感想が多数寄せられた。盛会のうちに市民公開講座を終えることができた。
    中村教授、座長を務められた日比野浩教授(新潟大学医学部 基礎応用器官生理学分野)、御参加頂いた市民、北部会員、ならびに準備等に御協力頂いたスタッフ各位に厚く御礼を申し上げる。
    (樋口宗史 Hiroshi Higuchi)



    B. 第63回日本薬理学会北部会(新潟)

    第63回日本薬理学会北部会
    会期:2012年9月14日(金)会場:朱鷺メッセコンベンションセンター(新潟市)
    部会長:新潟大学大学院医歯学総合研究科 分子細胞医学薬理学分野(医学部薬理学教室)樋口宗史

     第63回日本薬理学会北部会を9月14日(金)朱鷺メッセコンベンションセンター(新潟市)において107名の参加者をお迎えし開催しました。会の準備運営には、当分野スタッフに加え新潟大基礎応用器官生理学分野、日本歯科大新潟生命歯学部ならびに新潟薬科大の25名の御協力を頂き、52題の発表を3会場で行いました。
     学術評議員会が、樋口宗史教授(新潟大)を議長として開催され、第65回北部会長候補に木村純子教授(福島県立医大)を選出し、岩尾洋理事長による理事会報告、常置委員会報告が行われました。次年度第86回年会について井上和秀年会長(九州大)より、次回第64回北部会について牛首文隆部会長(旭川医大)より、それぞれ準備状況と開催概要を御説明頂きました。その後、中村祐輔教授(シカゴ大)による「がんペプチドワクチン療法;現状と課題」の講演が市民公開講座として行われ、北部会員並びに多数の新潟市民に多大な感銘を与えました。
     懇親会(ホテルオークラ新潟)には、90名を超える方々に御参加頂きました。来賓の三木直正 大阪大名誉教授、中村祐輔 シカゴ大教授、渡邉建彦 東北大名誉教授より御挨拶を頂き、利き酒大会と万代太鼓を楽しみながらの賑やかな会となりました。
     最後に、北部会に御参加頂きました諸先生、本会運営に御助力を頂いたスタッフの皆様、御協力頂きました団体・企業の皆様に厚く御礼申し上げます。
    (村瀬 真一 Shin-ichi Murase)



    8.教室近況


     諸先生方におかれましては、益々御活躍のことと御慶び申し上げます。
     平成24年(2012年)1月から12月における薬理学教室の一年間を御報告させて頂きます。
     人事面では合田光寛助教が摂南大学に転出し、修士課程に廣井 真君が入学しました。 現在の教室員は、樋口宗史教授、村瀬真一准教授、椎谷友博助教、荒川英子技術補(秘書)、大学院生の坂井一明、廣井 真の6名となります。
     教育面では4月から7月までは基礎薬理学および病態薬理学IIの講義、6月から7月にかけて薬理学実習、9月からは病態薬理学Iの講義を当教室スタッフが行ないました。学部の特別講義では、例年学外の先生をお招きして最先端の薬理学研究をふまえた講義をして頂くことになっています。平 英一教授(岩手医科大学)の「接着因子と薬理学」、渡邊康裕教授(防衛医科大学校)の「神経化学伝達の特異性」、服部裕一教授(富山大学医学系大学院)の「高脂血症薬」、中木敏夫教授(帝京大学医学部)の「一酸化窒素、パーキンソン病の薬理学」、新井 信准教授(東海大学医学部)の「漢方医学」、堀尾嘉幸教授(札幌医科大学大学院)の「老化の薬理学」、山田充彦教授(信州大学医学系大学院)の「抗不整脈薬」、東田陽博教授(金沢大学大学院医学研究科)の「社会行動・自閉症の薬理学」の講義をそれぞれ充実した内容で行なって頂きました。「麻薬法規」の特別講義は、伊藤正広係長(新潟県福祉保健部医務薬事課)により、大学院特別講義は平山篤志教授(日本大学医学部)の「急性心不全の病態と治療」、前山一隆教授(愛媛大学大学院)の「生体機能における細胞内カルシウムシグナルの重要性CRAC (Ca2+ release-activated Ca2+) チャネルの役割」が行われました。医学研究実習として医学科四年次生を3名受け入れて、当教室スタッフがマンツーマン指導を行いました。
     研究活動ですが、循環器薬理学領域では「血管平滑筋を用いてのヒスタミン誘導性弛緩反応のメカニズム」および「高濃度炭酸泉による血管の弛緩メカニズムの解明」の2つのテーマが追求されています。それぞれ廣井君と坂井君が担当し活発な研究活動が続いています。神経薬理学領域では、「摂食関連神経ペプチドとその受容体分子が摂食におよぼす機能的役割と分子メカニズム」に対して分子生物学的手法と実験動物の薬理学的行動解析により検討しています(椎谷と村瀬)。神経新生・移動・分化のメカニズムの研究も行われています(村瀬)。以上の教育・研究面をはじめ薬理学教室の諸活動は、荒川英子秘書の多くの貢献に支えられていることは言うまでもありません。研究以外にも教室行事として4月に西大畑公園の花見、12月には月岡温泉での忘年会が企画されました。最後に当教室が主催した第63回日本薬理学会北部会について記します。
     平成24年9月14日(金)に、朱鷺メッセコンベンションセンターにおいて樋口宗史会長により第63回日本薬理学会北部会が、107名の参加者を迎えて開催されました。会の準備運営には、当教室スタッフに加え新潟大基礎応用器官生理学分野、日本歯科大新潟生命歯学部ならびに新潟薬科大の25名の御協力を頂き、52題の発表が3会場で行われ、それぞれの演題について活発な討論がなされました。本学会に併せて中村祐輔教授(シカゴ大)による「がんペプチドワクチン療法;現状と課題」の講演が市民公開講座として行われ(朱鷺メッセコンベンションセンター)、会員並びに多数の新潟市民に多大な感銘を与えました。市民公開講座の最終的な聴講者は200名でした。懇親会(ホテルオークラ新潟)には、90名を超える方々に参加頂きました。来賓の三木直正 大阪大名誉教授、中村祐輔 シカゴ大教授、渡邉建彦 東北大名誉教授より御挨拶を頂き、利き酒大会と万代太鼓を楽しみながらの賑やかな会となりました。北部会に御参加頂いた諸先生、本会運営に御助力を頂いたスタッフの皆様、御協力を頂いた団体・企業の皆様に厚く感謝の意を表します。(本学会および市民公開講座についての記事は、日薬理誌141巻1号(2013年1月号)に掲載されました。)
     昨今 教育、研究の両面において内外から厳しく評価される状況ですが、教室員一同一層の努力を積み重ねてそれらの評価や期待に応えていきたいと考えております。今後とも薬理学教室への暖かい御支援をお願いするとともに、諸先輩、先生方の御健勝を心からお祈り申し上げまして、本稿を終わらせて頂きます。
    (文責 村瀬真一)



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