新潟大学大学院医歯学総合研究科 小児外科学教室


今月の特集 (05年7月)

病名 先天性横隔膜ヘルニア
病態 横隔膜の先天的な欠損
発生頻度 出生4,000人に一人程度
死亡率 現在でも50%前後で、最も救命困難な新生児外科疾患である

病態

脱出した腹腔内臓器の為に患側肺は小さく低形成の状態であるが、対側肺も低形成のことが多く、重篤な換気不全の原因となる。

肺が未熟であるだけでなく、肺血管の構造異常があり、手術侵襲、低酸素やアシドーシス、周囲の音などのささいな刺激により突然高度の血管収縮が引き起こされ、重篤な肺高血圧症が惹起される。この状態はPPHN(Persistent Pulmonary Hypertension of the Newborn)と呼ばれる胎児循環に近い状態で、動脈管や卵円孔を介して血液が肺を経由しないで全身に流れるため酸素化がさらに悪くなり、悪循環を来す。

合併奇形の頻度は3割程度であるが、その半数が重症心奇形などの重篤な合併症である。

横隔膜の欠損は9割が左側に発生し、右側が1割弱で、数%が両側性である。典型的には左横隔膜の後側方部分欠損で、Bochdalek孔ヘルニアと呼ばれているタイプであるが、一側横隔膜の全欠損という重篤な病型も、3割程度存在する。

診断

出生前診断される症例が近年増加している。その割合は施設により2割から8割と差が見られるものの、全体として約半数は出生前診断されていると考えられる。出生前診断例は、人工流産率や胎児死亡率、さらに出生後の死亡率が高く、重篤例が多いのが特徴である。

治療方針

救命率をたかめるためいろんな治療戦略が用いられている。

  1. 出生前診断例の場合、帝王切開による計画出産、
  2. 胎児麻酔
    生下時のストレスを最小限とし自発呼吸による腸管拡張をなくすために、帝王切開時に経胎盤的に胎児を麻酔し、胎児に呼吸をさせないで人工呼吸管理を行う。
  3. HFO(High-frequency oscillation)を用いた呼吸管理
  4. NO(Nitric Oxide)
  5. サーファクタント
  6. 肺高血圧の薬物的治療
  7. ECMO

手術のタイミング

現在は患者の状態を落ち着かせ、肺高血圧がある場合は改善されるのを待って根治術を行うdelayed repairの方針をとっている施設が多い。

今後の課題

出生後の治療だけでは救命率の向上に限度があり、海外では胎児治療も試みられている。

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