北部DMRで実施したPCRセミナーの概要
2014年9月24日と25日午前までの1日半、北部医科学研究所の14名の医師と技術員に対して、インフルエンザウイルスのゲノム検出のセミナーを実施しました。このセミナーは、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)と遺伝子シークエンスによりインフルエンザウイルスを検出する基本的な技術と知識を学ぶことを目的として行いました。PCRのセミナーは、齋藤教授と大学院生の近藤が担当し、シーエンスセミナーは、田村先生と長谷川先生が担当しました。PCRの技術セミナーでは、@インフルエンザウイルスのRNA抽出、AcDNA合成、BコンベンショナルPCRを用いたA型インフルエンザの検出とCB型インフルエンザウイルスの検出の実技指導をしました。
9月24日午前、ミャンマーでは、実験を学べる機会が少ないので、初めて実験室検査を行う参加者が大半を占めていました。そのため、初めにピペット操作方法を説明してから、インフルエンザウイルスのRNA抽出の実験に取り掛かりました。2014年7月からの1ヵ月間、新潟大学国際保健学教室で実験トレーニングを受けたKhin Moe Aung先生にもサポートしてもらいました(写真1)。Haung NawさんとThant Sin Winさんが代表して、12サンプルのRNA抽出をしました(写真2)。
写真1 ミーティング中のKhin Moe Aung先生(中央)とセミナー参加者
写真2 抽出の実験を行っているHangnawさん
9月24日午後、午前中に抽出したサンプルを用いてcDNAの合成を行いました。操作をする前に、ノートへサンプル名やマスターmixの記載をしてもらっていたので、順調に実験が進みました。この実験では、特に、酵素の取り扱いについて説明し、クラッシュアイスの準備を忘れないように伝えました。
この日の最後は、PCRを用いたA型インフルエンザの検出を行いました(写真3)。
この実験では、A型インフルエンザウイルスのM2遺伝子をターゲットにしていること、PCRのステップ(1.熱変性, 2.アニーリング, 3.伸長反応)について説明をしました。PCRのランが終わったのが17時を過ぎていたため、ゲルの作成まで行い、結果の確認は翌日にしました。このセミナーでは、使用したことがないメーカーの機器で実験していたため、きちんと結果が出るかどうか正直心配でした。初日は遅い時間までセミナーをしましたが、参加者の集中が切れていなかったことに驚きました(写真4)。
写真3 使用したPCR Thermal cycler
写真4 翌日の実験(電気泳動)に使用するバッファー調整中のHaung NawさんとThant Sin Winさん
9月25日午前、昨日行ったPCRの結果を確認しました。A型インフルエンザのバンドが確認できて、実験は成功していました(写真5)。張りつめていた緊張感が少し和らぎました。確認後は、B型インフルエンザを検出しました。この実験では、B型のHA遺伝子をターゲットにしていることを説明しました。最後の実験では、Haung NawさんとThant Sin Winさんのピペット操作も安心して見ることができました。B型インフルエンザのバンドも確認でき、PCRセミナーの実験は無事に成功して終わることができました。セミナー参加者の方に基本的な技術を伝えることが出来たと思います。
写真5 A型インフルエンザのPCRの結果
セミナーの準備をサポートして頂きました国際保健学教室の皆様には、大変感謝いたします。今回の経験を次に生かして頑張りたいと思います。
(2014.10.9 文責:近藤大貴)