北部DMRで実施したシークエンスセミナーの概要

 

1)9月24日 午前

シークエンス採取の(1)目的として、@PCRで陽性となったものが目的とした遺伝子かの確認、A型別、B薬剤耐性変異の確認などがあること、(2)ダイターミネーター法とサイクルシークエンス反応の原理、(3)シークエンス採取のためのプライマー設計について説明した。

次に、3130シークエンサーについて、(4)運転前のメンテナンスと管理について説明した。

特に、ポリマーを2ボトルとして、1本をラン用に、1本をキャピラリーの保存用にわけ、ラン用のポリマーボトルは使用時以外には冷蔵保存して変質をさけること、3130の電源を入れる前に交換することを説明した。ポリマーラインの洗浄は、通常月1回実施することとした。

 しばらく使用しない場合が想定され、その場合は一度ランをしてみてうまくいかなければポリマーラインの洗浄とポリマーの交換を実施することとした。

 プライマーは日本でオーダーすると2日程度で送られてくると説明したところ、マンダレー医科大学の先生は、ミャンマーではタイのメーカーにオーダーを出すため、1ヶ月はかかるとのことだった。

 

2)9月24日 午後

 3130シークエンサーは、4本キャピラリーで36cmが装着されていた(使用していない50cmのキャピラリーもあった。)。

持参したサンプルはBigDye3.1のスタンダード試薬と、インフルエンザのM2遺伝子のサイクルシークエンス後のサンプルである。これらのランを実施したが、初回のランでは、その最中にUPSの電源供給がされていなかったことから停止し、再充電を待つこととなった。スタンダードのサンプルのデータが600ベース程度しか読めず、その後の波形の幅の拡幅が確認された。

しかし、36cmのキャピラリーでは通常700塩基は読めるが充分でなかったため、ポリマーの変質が疑われた。そこで、充電の間に、ポリマーラインの洗浄を実施し、持参したポリマーを充填した。またポリマーラインの洗浄方法を教示した。

 

3)9月25日 午前

新しいポリマー環境でランを実施して、結果を確認したが、スタンダードのシグナルレベルは160程度、インフルエンザのサンプルは50から100程度といずれも低く、サンプルの変質が疑われた(保環研の3130で、新品のBigDye3.1のスタンダードの泳動時のシグナルレベルは570から980)。シグナルレベルが低いものの、スタンダードサンプルは、700ベースまで読むことができ、充分使用可能と思われた(36cmキャピラリーなので、600ベースがカタログ上の解読長)。

 

MEGAの使用法の説明は、ミーティングルームでPC画面をプロジェクターに映しての説明のみで、実際に各スタッフがPC操作しながらの研修ではなかったため、充分習得することは難しいと思われた。

持参したCDの中のインフルエンザM2遺伝子のシークエンスサンプルデータのトリミングとF及びRデータの結合を実施した。このデータをBLAST検索して、データをalignment explorerにダウンロードし、ClastalWalignmentを実施してMEGAファイルを保存し、nj法による系統樹を作るところまで実施した。時間が短かったので、充分な理解は難しかったかもしれない。

セントラルのDMRでシークエンスを実施した際は、インターネットの接続PCがラボになかったため、BLAST検索はできなかった。BLAST検索がDMRで実施できたことは大きな進歩である。

インターネット環境について聞いてみたところ、各部署の事務室にはインターネットに接続したPC1台ずつあるとのことで、MEGAを使用した解析ができると思われた。

 

4)感想と反省点

・シークエンスができるようになるには、@PCR、A陽性バンドを確認、Bそれを精製してCサイクルシークエンスを実施して、D精製後、E3130にセッティングして、データを得るながれを実際にやってみることが必要と思いました。

・高速冷却微量遠心機を抽出用として使用することから、コンタミ防止のためにPCR産物専用の卓上ミニ遠心機を使用するか(通しで実施していないので、産物からのコンタミ防止の説明ができていません。)、遠心機を使用しないベックマンコールターの精製キット:Agencourt Ampure XP, Agencourt Clean SEQが良いと思われました。

・キャピラリーの交換のメンテナンス、データのメンテナンスなども必要で、これらの説明ができませんでした。

・準備に時間がなく、短時間で説明するにはもう少ししっかりと準備が必要でした。

 

今回は、本当に基礎技術のセミナーでした。ラボも実際の稼働はこれからという状況でした。

ここには若くて多くの人材と広い施設があり、とりあえずの機器と材料や課題も豊富なことから、本格的に稼働するととても良いラボになると思います。ただ、DMRが具体的に何を課題にしてどう動いてミャンマーの人々の健康・医療に役立っていくのか、その構図が見えると良いのですが。そうすると、もう少し踏み込んだ支援ができるかと思います。

この写真をみると機器は日本のラボと変わりありません。ABI7500FASTのリアルタイムPCR31304本キャピラリーシークエンサーです。このほかにも同じシークエンサーがもう1台、リアルタイムPCRRotor-GeneQがあります。実験台が古風ですが、木製の新品でした。

あとは試薬と消耗品に、サンプルがあればいろいろできそうです。

 

新潟県保健環境科学研究所ウイルス科 田村 務