Division of International Health (Public Health)
GISを用いた研究
GIS(Geographic Information System):地理情報システム
 
1.GISとは?

様々に定義されますが、GISとは空間的位置情報を視覚化する地図と、空間が持つあらゆる情報(データ)を結びつけるシステムと定義することができると思います。GISの応用範囲はとても広く、医療のみならず、経済、商業、環境、教育、軍事などあらゆる世界で活用されています。保健医療への応用は19世紀にJohn Snowが作ったコレラマップがよく知られていますが、広く応用されるようになってきたのは最近で、比較的新しい分野です。GISは地理的発想を行うためのツールとも言え、単に数字やグラフだけの疫学データを空間的に視覚化することで新たな発見や発想につながることがあります。当教室では感染症疫学のGISをはじめ、様々な分野への応用を試みています。

What is GIS?
What GIS means is various. As one of the difnition of GIS, we can say GIS is a system which can combine between geographical map and any of the data in real world. GIS is really useful tool not only for area of health or medicine, but also any and all areas such as; economy, market, environment, educaion, military, and so on. In 19th century, Dr. John Snow made famous "Cholera Map" which is the first application of GIS to Health. However, only recently this tool has been generalized in the field of medicine. In the other words, we can say GIS is a tool for thinking geographically. For instance, visualization of simple epidemiological data by using GIS tool sometimes makes us realized how simple data has various means and novel ideas! GIS is fascionating tool if you use it effectively. We have experience of application of GIS to health especially in control of infectious diseases, and are trying to apply GIS method for various area.

 2.保健医療とGIS

1854年にロンドンでコレラのアウトブレイクがあった際、John Snow (1813-1858, 内科医)がコレラによる死者を地図上にプロットし、一方で井戸の場所をプロットしたところ、ある井戸の周辺には死者が多いことに気づき、この井戸がコレラアウトブレイクの原因であることを突き止めたとされています。これが、保健医療分野におけるGIS応用の最初とされており、GISは保健医療分野における有用なツール・オプションであるという位置づけは現在に至ってますます重要なものとなっています。現在ではHealth Mapをはじめ、WHO(世界保健機構)もGISを積極的に活用し、世界中で新しい病気が流行した時、いちはやく感知するシステムを活用する試みを行っています。
 
 3.当教室のGISを用いた研究テーマ

1)インフルエンザ
a. Kriging法
日本におけるインフルエンザ様疾患の空間的時間的伝播状況を空間的補間手法の一つであるKrigingを用いて視覚化した。(Emerging Infectious Diseases Journal, 2004掲載)
b. ジオデモ(Geodemographic profiling)の活用
長崎県諫早市におけるインフルエンザサーベイランスデータと地域の特性(特徴)をデータ化したGeodemographicデータを用いて、地域の社会経済的背景とインフルエンザの罹患が一定の相関関係にあることを示した。(BMC Infectious diseases, 2010掲載)
c. Weighted Standard Distance (加重標準距離)を用いたインフルエンザ流行のタイミング予測
日本におけるインフルエンザ様疾患(Influenza Like Illness: ILI)サーベイランスデータの過去10年の結果を基に、Weighted Standard Distanceという空間指標を用いてインフルエンザ流行のタイミングとインフルエンザ流行の空間的拡大に一定の関係があることを見出した。(ESRI User Conference 2011発表、論文投稿中)
2)サーベイランス情報の視覚化
主にインフルエンザサーベイランス情報をいち早く地図上に表示することで地域での流行に注意を喚起し予防に役立てています。
a. 長崎県諫早市:医師会の先生方の御協力のもとサーベイランスと地図作製を行っています。
b. 新潟県佐渡市:佐渡市内のほぼ全ての医院・病院の先生方のご理解とご協力をいただき、新潟大学医学部保健学科(関奈緒教授)が主体となってマップを作成しWeb上で公開しています。
3)医療受給解析
新潟市消防局との連携の下、GISを用いた救急搬送に関する分析を行っています。
救急医療については近年、救急車による搬送時間の延長が問題となっています。その原因は多岐にわたり、救急医療に関わる人員(医師、救急救命士など)、設備(救急車、救急ステーションや医療機関など)の不足や偏在、高齢化などによる出動要請の増加、さらに交通量増大や道路状況、高層建築物の増加、天候などの地理的要因も影響していると考えられています。
当教室ではGISの手法を用いて搬送時間の地域間比較を行い、その要因を分析しています。また道路ネットワークデータを用いて救急車や医療機関の適正配置シミュレーションを行い、より良い救急医療計画の立案に役立てています。

4)東日本大震災に対するレスポンス
震災に対する迅速な対応、震災後復興に関わる情報の提供等のためにGISを応用できる部分については最大限の努力を行っております。
a. 新潟県内避難所・避難者数の状況
※震災後、新潟県庁からの発表情報に基づいて新潟県内の避難所データ(避難可能人数、住所、電話番号等)をgoogle mapに連日アップしてきました(実際のサイトはこちらです)。このサイトはハーバード大学が作る災害ポータルサイトJapan Sendai Earthquake Data Portal Site上にも公開されています。4/26からは避難所別ではなく、市町村別の避難者人数のみ情報公開されるようになったため、市町村別の避難者数を週1回別サイトにアップしています。
5)ザンビア国ルサカ市におけるコレラ流行に対するGIS解析