1.肝臓とは

肝臓は体の中で1番大きな臓器であり、500近い機能を持っています。ちょうど一番下の肋骨の裏側で、お腹の右側に位置しています。肝臓には左葉と右葉という2つの区域があり、血管や胆汁の流れる管(胆管)も二手に分かれています。左葉と右葉の大きさは個人差がありますが、一般的には左葉が40%で、右葉が60%となっています。生体肝移植では、こどもには左葉か左葉の一部を、おとなには右葉か左葉をドナーより提供してもらい、患者さんに移植します。肝臓に流れ込む血管は肝動脈と門脈がありますが、肝動脈を通って肝臓に酸素が供給され、門脈を通って腸などの消化管から吸収された栄養が肝臓でエネルギーとして蓄えられます。肝臓から出ていく血管に肝静脈があります。また、肝臓では、胆汁という消化液がつくられ、胆管という管から腸に流れるようになっています。胆嚢はその途中にあり、胆汁を一旦貯めておく働きをしており、食べ物が腸の中を通ると胆嚢が縮まり、腸に胆汁が流れ、脂肪の吸収を助けます。

肝臓の働きで大きなものは、A.栄養(エネルギー)の貯蔵、B.出血を止める、C.解毒(体の中で作られた有害なものを無害なものに変える)があり、これらの働きは、肝心かなめと言われるように、生きていく上で重要なものとなります。

肝臓はかなりの予備能力と変わった再生能力を持っています。肝臓は一部分切除して小さくなっても、2〜3ヶ月でその人の体に必要な大きさに戻ります。しかし、肝臓自体がある程度以上悪化するともう元に戻ることは出来ません。

悪くなった肝臓は様々な障害を引き起こします。肝臓で作られる胆汁が腸に流れず血液中に入り、黄疸や痒みを起こします。また、肝臓に流れ込む血液が肝臓の中を通過しにくくなるため、近くの細い血管を通って心臓へ戻ろうとする(側副血行路と言います)ために、食道静脈瘤や脾臓肥大、腹水が貯まったりします。栄養状態が悪くなり、血が止まりにくくなります。腸で作られるアンモニアが肝臓で分解されず、肝臓を通らない血管(側副血行路)を通って脳の方へいくと、意識がもうろうとしたり、訳が分からないことを口走ったり、時には意識を失ったりすることもあります(肝性脳症と言います)

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2.末期肝臓病の症状

末期肝臓病の症状は大きく5つに分けられます。

A 黄疸

黄疸の指標となるのはビリルビン値があります。ビリルビンは肝臓から腸へ排泄される胆汁の色素のことで、肝臓が働かなくなると胆汁は腸へ排泄できなくなるため血中に入っていき、皮膚や目が黄色くなったり痒みが出る原因となります。

B 腹水

肝臓が悪くなって硬くなると、血液が肝臓の中を通りにくくなり、肝臓の近くにある細い血管を通って心臓に戻ろうとします。しかし、肝臓に直接入る血管に無理がかかり、そこから血中の水分やタンパクなどの成分が血管の外に滲みだしてきます。その量が増えるとお腹に水が貯まり、お腹も大きく張ってきます。また、血中のタンパクが減少します。

C 食道静脈瘤

肝臓が硬くなってくると(肝硬変)、門脈からの血流は肝臓以外の経路を通って心臓に帰ろうとします。特に食道の細い血管を通って心臓に血が帰ろうとするときは無理がかかり、細い血管が風船のように一部ふくれるため、破れやすい状態になります(静脈瘤)。これが破けると大出血し命をおとすこともあります。静脈瘤は食道の他に胃にもできることがあります。肛門にできるといわゆる痔となります。

D 肝性脳症

腸で作られたアンモニアという有害な物質は、本来肝臓で分解され無害となりますが、肝臓が分解する力がないために、肝臓を通らないルートの血管を通って脳へいってしまいます。それで頭がもうろうとしたり、訳が分からないことを口走ったり、意識を失ったりということが起こります。

E 出血傾向

肝臓は血の成分の一つである、血を止める役割をする物質を作ったり、また、血を止める働きを助けたりしています。肝臓が働かなくなると血を止めるための物質が少なくなってしまいます。そこで、血が止まりにくくなったり、血が出やすくなします。少しぶつけただけでも青あざができたり、鼻血が出やすくなり、一度血が出ると止まりにくくなったりします。また、肝臓を通過出来ない血液が肝臓のそばにある脾臓に流れ込むため、脾臓が大きくなり、血液成分を壊すという本来の脾臓の働きが亢進します(脾機能亢進症)。脾機能亢進症も出血傾向の原因となります。

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3.末期肝臓病の治療

これらの治療には内科的治療と外科的治療があります。

A 黄疸と痒み

黄疸の治療には、体の中の血液を器械に通し、器械の中にある膜でろ過することでビリルビンを取り除く、ビリルビン吸着という方法があります。また、血液の成分である血しょうを交換しビリルビンを取り除く、血しょう交換の方法もあります。

痒みに対しては、薬で痒みをおさえる方法があります。

B 腹水

腹水の治療は、体の水分のコントロールをすることです。利尿剤を使って尿の量を調節したり、塩分をひかえて体の中に多く水分を取り込まないようにする方法をとります。また、お腹の中に水分と共にタンパクもしみ出すので浸透圧が高くなり、どんどんお腹の中に水分が貯まってしまいます。そのため点滴でタンパクを補充し、浸透圧を下げ、お腹の中に水分が貯まらないようにする方法もあります。時には直接お腹に針を刺して水を抜く方法もあります。

C 食道静脈瘤

静脈瘤が破れると出血します。特に食道の静脈瘤は破れると大出血を起こすことがあり、命をおとす原因にもなりかねません。静脈瘤が破れないようにするために、胃カメラ(内視鏡)をしながら静脈瘤を硬くする薬を注入し、出血を予防します。もしも出血した場合、食道に管を入れ、風船状に膨らませて出血を止める方法を用いることもあります。

他に、食道を一度切り離しまたつなぎ直すことにより、食道の血液の流れを止める食道離断術や、小さく短いチューブのようなものを血管の中に入れ、門脈と肝静脈の間をつなぎ肝臓のなかを血液が通るようにして、血液が胃や食道へのルート(静脈瘤)を通って帰ることを防ぐ方法などがあります。

D 肝性脳症

血液中のアンモニア値が高くなると、肝性脳症が起こりやすくなります。アンモニアは腸で作られるため、便を出さないとアンモニアは腸に貯まり、貯まったアンモニアは腸から血液の中に入り、脳に達して肝性脳症を起こします。そのため便秘をしないことが肝性脳症の予防となり、便を軟らかくする薬が出されます。便の回数や量が減ったり、脱水などで血の濃度が濃くなったりすると、アンモニア値が高くなり、肝性脳症の症状が現れます。そのような時には薬の量の調節や浣腸、点滴等によって、治療します。

E 出血傾向

出血傾向の治療は血しょう成分など補う、輸血が主となります。血しょう成分などの血液製剤で血液成分を補い、また減ってくれば補充していく方法をとります。

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