a.レシピエントの手術

肝移植の手術は全身麻酔下で行われ、手術時間は15?20時間またそれ以上かかることもあります(子供の場合はもう少し短い時間となります)。手術室に入ってから、手術が行われる前に麻酔の準備などで1〜2時間を要すため、実際に手術室に入ってから手術が終わり手術室を出るまでの時間は手術時間より長くなります。

肝移植の手術としては、元々の肝臓を全部取ってしまい、新しい肝臓を入れ、肝臓につながっている4本の主要な管をつなぎ合わせることが主となります。肝静脈、門脈、肝動脈とつなげた後、胆管を肝臓の入り口(肝門部)のところで腸と直接つなぎます。

肝移植を受ける時の患者さんは、肝臓を通らずに心臓へ戻る細い血管が多くあるために、とても出血しやすく、手術中大量の出血が予想されます。大量の出血を少しでも減らすために、足の付け根の血管から肝臓を通らないで、代わりに器械を通って脇の付け根の静脈から心臓に返す方法を行うことがあり、それによって出血は少なくすることが出来ます。患者さんの状態によってはこのような方法を行うことがあります。また、肝硬変が進んでいる患者さんは、もともと血が止まりにくい傾向にあるため、一般の手術より出血の危険性は高くなります。

また、患者さんの病気によっては、手術を開始してお腹を開け、検査した時点で移植を行うか最終的な判断を下すこともあります。移植をしても結果が思わしくないと分かった場合、特に生体肝移植ではドナーにただリスクを背負わせるだけになってしまうため、まれですがこの様な決断をする場合もあります。

手術中、家族の方は病院で待っていることになりますが、病棟には家族の控え室があります。ただ、部屋は1つしかないため、他の患者さんの家族がいる場合は、一緒に使っていただかなくてはなりません。手術中は医師またはコーディネーターが時々手術の進行状況をお知らせします。

手術を終えた患者さんはICU(集中治療室)へと移されます。

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b.生体ドナーの手術

生体肝移植のドナーの手術は、肝臓を移植する部分と残す部分とを切り離し、その後、血管と胆管を切り離します。肝臓をどの程度取るかは、前もってCTの画像写真で予測できますが、手術中に実際に肝臓を見て、超音波で直接肝臓の血管がどのように走っているかを確かめてから、2つに分ける部分を決めていきます。2つに分ける部分に胆のうがあるため、胆のうは取ってしまいます。胆のうは胆石があると取る手術をしますが、この手術は多くの人が受けられており、特に大きな問題にはなりません。胆のうは食物が腸に運ばれてきたときに胆汁を流して消化を助ける働きをします。胆のうが無くなったあとは、胆汁は常に流れている状態になりますが、食べ物の消化にはほとんど影響はありません。

ドナーの手術は6〜8時間程度ですが、麻酔にかかる時間と麻酔から覚める時間を合わせるともう少しかかるでしょう。またレシピエントの手術の進み具合で肝臓を取るタイミングを少し遅らせることもあり、そうなると手術時間も長くなります。

手術中の輸血は手術前にドナー本人から採取した血液を用いる、自己血輸血という方法をとります。しかし、自己血による輸血量が足りない場合や、手術後の回復していく状態で必要になる場合は、一般の輸血を行うことがあります。また、場合によっては自己血を採取する時間がなく、行えないこともあります。

手術を終えたドナーの方は7F第一外科病棟に移されます。

手術直後は麻酔が覚めた状態で病棟に戻ってきます。戻ってきてすぐに会話が出来る人もいれば、もうろうとしていたり、眠ってしまってなかなか起きない人いて、個人差があります。痛みも個人差があり、十分痛み止めが効く人と、痛み止めが効きにくい人がいます。しかし、手術直後は出来るだけ痛まないようなに処置をします。

手術後1〜2日で水分が取れるようになり、3〜4日で食事が開始されます。初めはスープなど消化の良いものから始まり、徐々に普通の食事に変わります。人によっては、肝臓を切った断面とそのすぐ横にある胃が癒着して、食べ物が胃から腸に流れにくくなることがあります。その場合は胃の動きがが良くなるまで、少しの間、絶食で様子を見ることがあります。

お腹に1〜2本の管が入っており、これらはお腹の中に貯まった血液等を外に出す役目をしています。手術後数日で管は抜きます。お腹の傷は、中は糸で縫ってありますが、表面はホッチキスの留め金のようなもので止めております。ホッチキスのような留め金は手術後1週間程度で取ってしまいます。それが取れれば、傷の突っ張りは和らぎます。

手術後は次の日から歩いてもらい、その日もしくはその次の日には、ほとんどの人が患者さんのいる集中治療室に会いに行きます。1週間もすれば普通に歩けます。ただ、お腹の筋肉を一度切っているため、腹筋力がなくなり、お腹に力が入りにくくなります。例えばベッドに寝ている姿勢から腹筋を使って起きあがるといったことはしにくくなります。また、傷が突っ張ったり又お腹に力が入らないため、初めはやや前屈みの姿勢での歩行になります。しかし、しばらくすれば、背筋を伸ばして歩くことが出来るようになりますし、腹筋も鍛えれば元に戻ります。手術後3ヶ月までは、お腹の傷の表面はくっついていますが、お腹の中が十分くっついていないことがあるため、重いものを持ったりしてお腹に無理な力を加えると、お腹の中で傷が開いてしまうことがあります。そのため、手術後3ヶ月間は重いものを持つなどの重労働は避ける必要があります。

肝臓は再生する臓器です。約1ヶ月もすれば、形は元の肝臓と同じというわけにはいきませんが、大きさはほぼ元の通りに戻ります。手術後2ヶ月もすれば、肝臓の機能も元通りになります。

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移植直後

患者さんは手術後、ICUに移って状態が落ち着けば、面会することができます。手術直後の患者さんの体は人工呼吸器や点滴、ドレーンと呼ばれる管など多くのチューブ類につながれています。人工呼吸器は普通3日間位ではずされます(状態によって変わります)。その他のチューブ類も状態が安定し必要なくなれば抜去されます。また、超音波検査が毎日行われ、肝生検という肝臓の組織を一部取り出して顕微鏡で調べる検査も毎日ではないにしろ、頻回に行われるでしょう。

ICUでは医師や看護婦等のスタッフが24時間体制でケアーを行います。手術後早い時期は患者さんの状態が不安定なため、採血や検査が毎日のように行われることになります。ICUのスタッフからその度説明されるでしょう。

患者さんの手術後の回復状態は、移植前の全身状態によって大きく違ってきます。肝移植を受けられた患者さんが全て同じような経過をたどる訳ではありません。移植手術が終わったからといって、すぐに元気は取り戻せないでしょう。状態が安定し体が回復するまでの期間は、手術前の状態によって差があります。ですからICUで過ごす期間も人によってまちまちで、1週間以内に病棟に移れる人もいれば、それ以上かかる人もいます。

ICUにいる間は状態が落ち着かず、様々な問題が出てくることも予想されます。例えば、血管や胆管をつなげたところが狭くなったり、詰まったりすることがあり、肝臓を切った部分からの出血も起こることがあります。そのため、再度手術が必要になることがあります。また、細菌やウイルス、真菌(カビ)の感染症にかかり、症状が重くなり、命に関わる可能性もあります。感染症を防ぐために心臓の近くに入っている点滴の管を時々入れ替えたりしなくてはなりませんが、そのために出血したりという合併症も起こる可能性もあります。拒絶反応が起こることもあるでしょう。もちろん患者さんによっては重大な問題が起きずに回復される方もいます。肝移植手術は大変な手術ですが、移植手術後も状態が安定するまでジェットコースターのように変化が大きく、移植後も1〜3ヶ月位までは大変な時期といえます。

患者さんにとっても家族にとっても、ICUで過ごしている期間は大きなストレスになると考えられます。私達はそのストレスが少しでも解消されるよう、あなた方の助けとなるよう援助します。もし分からないことがあれば何でも質問して下さい。ICUのスタッフ、医師、コーディネーターはいつでも相談にのります。

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一般病棟

ICUに移った患者さんは1週間程度で病棟に移ることになります(患者さんの状態によって変わります)。病棟は7F第一外科病棟です。病棟で過ごす期間は状態によって変わってきますが、およそ1〜3ヶ月となるでしょう。そして退院となります。

初めのうちは体力も回復しておらず、傷が痛んだり、薬の副作用で不眠や手が震えたりすることがあり、良くなっているとは感じられないかもしれません。しかし、一進一退はありますが、日に日に良くなっていくでしょう。患者さんにとってはこの時期が一番辛いかもしれませんが、患者さん自身に頑張ってもらわなければいけない時期でもあります。

病棟では退院に向けての準備が徐々に行われます。まず体力/筋力をつけることを勧められます。例えば食事をちゃんととるとか、歩行をしっかり行ってもらうなどです。次に退院後の薬や食事、生活についてパンフレットを使って病棟の看護婦から説明を受けるでしょう。これらは移植後の生活を送る上でとても大切なことで、特に薬に関することはよく知ってもらう必要があります。

移植後処方される薬の中で免疫抑制剤と呼ばれるものがあり、これは移植された肝臓が拒絶されないためのものです。拒絶反応とは移植された臓器が体内の免疫システムによって破壊され、機能しなくなることをいいます。拒絶反応を抑えるために、免疫抑制剤を一生飲み続けなければなりません。指示どおりに薬を飲んでいても拒絶反応はおこります(約半数の人が経験します)。特に最初の3ヶ月は拒絶反応が起こる危険性が高いのですが、移植された肝臓も段々患者さんの体になじんでくるため、徐々にその危険性も低くなっていきます。そうなると薬の量も減らせるでしょう。拒絶反応によっては移植された臓器が機能しなくなることもまれに起こりますが、多くは治療可能です。

また、移植後すぐは薬の種類も多く、様々な副作用が起こることが予想されます。そのために一時的に腎臓が悪くなったり、高血圧になったり、糖尿病になったりすることがあり、そのための治療や食事療法を行うことが必要になるかもしれません。それら全てを、退院後に自分で管理出来るよう、入院中に勉強して覚えてもらうことになります。

また免疫抑制剤は体の抵抗力を弱めてしまうため、ウイルスや細菌などの感染症にかかりやすい状態となります。感染症にかからないようにどういう予防が必要なのか、もしかかった場合どうすればよいかなども入院中に教えられます。

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