現在、末期肝臓病を治すには、悪くなった肝臓を健康な肝臓に置き換える肝臓移植しかありません。

人間には免疫作用があります。これは自分の体にないものが体の中に入ってくると、攻撃しようとする働きのことです。例えばウイルスや細菌等が体内に入ってくると、免疫作用でそれらを攻撃するので自然に治ります。このように免疫とは人間の体を守る重要な働きなのですが、移植にとってはこのことが大きな問題となります。

移植された新しい臓器は自分のものではないので、免疫作用が働いて新しい臓器を攻撃しようとします。これを拒絶反応といいます。新しい臓器が攻撃され破壊されないように、免疫作用を抑えなければいけません。そのため免疫を抑える薬(免疫抑制剤)を一生飲み続ける必要があります。免疫抑制剤は、免疫作用を抑えることで新しい臓器の破壊を防ぎます。しかし、ウイルスや細菌、真菌(カビ)等に対しても、攻撃する働きを弱めることにもなります。

移植手術を受ける前の問題は、肝臓病末期の患者さんは体の状態が悪くなっているため、移植のような大きな手術に耐えうることができるかどうかということです。そのため、移植前には手術に耐えられるかどうか、様々な検査をします。また、移植前に感染症にかかっていると、移植後免疫反応を抑えるため、感染症が全身に広がり、命を落とすことになります。また、病気によっては移植しても再発することがあります。病気によっても違いますが、再発すると新しい肝臓が短い期間で悪くなることもあります。そのようなことが起こる可能性が高ければ、せっかく移植してもうまくいきません。そのため、移植前には入念な検査がなされます。

たとえ移植手術が無事に終わったとしても、全員が健康を取り戻すことは出来ません。拒絶反応や感染症、免疫抑制剤の副作用などの問題があります。移植後、特に感染症に気をつける必要があります。移植後に命を落とす原因の多くは感染症です。拒絶反応を抑えようとすると感染が起こりやすくなります。移植後は拒絶反応と感染症をどのようにコントロールするかが大きなカギとなります。

肝移植には脳死肝移植と生体肝移植、脳死肝移植ではすべての肝をいただくことが可能ですが、生体肝移植では、肝臓の一部分をいただく事になります。いただく肝臓が小さすぎる場合(過小グラフとと言います)その成績に大きく影響することがあります。一般的には手術を受ける際の病気や状態によって違いはありますが、十分な大きさの肝臓を頂いて移植を受けた場合、約7割の方が5年以上生きられますが、全員が助かるわけではありません(患者さんにとっては0%か100%です)。症状があまりなく、生活に支障のない人に移植は勧めません。移植そのものが100%助かるというものではないからです。症状が重くなり、生活にも支障が出てきた時点で移植を考える必要があります。

移植手術後も、様々な問題があります。感染症や拒絶反応、血管や胆管の問題等、次から次にいろんな問題が起こるでしょう。移植後3ヶ月は多くの患者さんにとって、試練の時期といえます(もちろん患者さんによっては大きな問題も起こらず、回復される方もいます)。しかし、移植後1年、特に最初の3ヶ月を乗り切ることができれば、これらの問題は少なくなっていきます。「こんなに手術後が大変だとは思わなかった。」と移植を受けられた患者さんがよく言われます。思っていた以上に筋力は落ちてしまい、すぐには歩けなかったり、移植手術後もまた、お腹を開けることになったりということがあるからです。しかし、それを乗り切れば「移植前と違って、すっかり元気になった。」と皆さん言われます。

退院後は、免疫抑制剤をきちんと決められた指示通りに服用し感染予防を日頃から行えば、普通の生活が送れるようになります。そして移植から時間が経つにつれて薬の量も減っていくため、薬の副作用や感染症の心配は少なくなっていきます。一生免疫抑制剤を飲まなければなりませんが、後は、普通の人と同じ生活が送れます。手術前の状態に戻るというよりも、もっと元気になるでしょう。お腹の傷を見せなければ、移植を受けたことすら誰も分からないほど、普通の生活が送れます。

ただ、一生薬を飲み続けなければなりません。そのため、患者本人が薬の名前や量、副作用を覚え、薬を自分で管理をしていかなければなりません。子供の場合は親がそれを代行するわけですが、子供が大きくなった時には自分自身で管理できるようにしなければなりません。これが出来ないと、肝臓がダメになってしまいます。また、日常生活の中で、感染に気を付けなければなりませんし、薬の副作用で、食事療法をしなければならないこともあります。肝臓を守るためにお酒は一生飲めません。移植後これらが守れないと肝臓がダメになるイコール命を縮めることになります。せっかくの新しい命が与えられても、それを保っていけるかどうかは患者自身にかかっているのです。移植後は、自分の体は自分できちんと管理するという心構えが大切です。患者自身が自己管理を行えない場合は、家族が協力して患者の健康を保つことが必要です。

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