小児心臓血管外科グループについて
手術写真
スタッフ写真

新潟大学の小児心臓外科は、1960年代前半の小児心臓外科黎明期から続く日本国内でも有数の長い歴史と手術経験数を持ち、それに裏付けられた手術実績があります。

「心室中隔欠損症」「心房中隔欠損症」などの、比較的頻度が高い疾患から、「ファロー四徴症」「両大血管右室起始症」「単心室症」などのチアノーゼ性心疾患、更に新生児期に緊急手術を要する「大血管転位症」「総肺静脈還流異常症」「左心低形成症候群」「大動脈弓離断症」などに代表される心疾患まで、全ての年代の生まれつきの心臓病(先天性心疾患)の手術治療を対象としています。また、非常に手術治療の歴史の長い施設であるため、小児期に手術を受けられた患者様が成人した後のフォローも数多く行っており、必要に応じて再手術を行うことも近年では増えてきました(成人先天性心疾患)。

先天性心疾患手術症例数の推移
手術時年齢内訳
主要疾患の手術症例数(手術死亡数)

主な取り組み

当科では、「新潟で日本最高レベルの小児心臓病の治療を」を合言葉に、以下に述べるような様々な取り組みを通じて、先天性心疾患の心臓手術の成績向上に努めています。

新生児の複雑先天性心疾患への取り組み

先天性心疾患の中でも、以前は救命が難しかった新生児の複雑な先天性心疾患(左心低形成症候群・完全大血管転位症・大動脈縮窄/離断複合など)の治療に積極的に取り組み、近年治療成績が向上しています。小児科、NICU(新生児集中治療室)、ICU(集中治療室)と協力し、365日24時間体制で新潟県全域に限らず、近県からも心疾患新生児の緊急搬送、ヘリコプター搬送を受け入れ、小児心臓病センターとして機能しています。また、出生前診断による母体搬送例も多く、赤ちゃんが出生する前から十分な治療の準備が出来るため非常に安定した状態での手術治療も可能となり、治療成績の向上に貢献しています。

単心室型の先天性心疾患への取り組み

先天性心疾患の中には、チアノーゼの改善と心臓への負担を軽減する目的で複数回の段階的手術治療(両方向性グレン手術・フォンタン型手術など)が必要な単心室型疾患(三尖弁閉鎖症・純型肺動脈閉鎖・左心低形成症候群・無脾症候群など)があります。これらの病気の治療に対しても、小児科のカテーテル治療と連携しより良いフォンタン循環を目指してお子様の心臓や全身状態に応じた最適な治療を行っています。

成人先天性心疾患への取り組み

当院の小児心臓外科の歴史は古く1960年代まで遡ります。このため、小児期に手術を行い成人された患者様も多く当院の外来でフォローを行っています。成人期に達した先天性心疾患術後の患者様の中には、不整脈や心臓弁機能不全などの術後特有の問題をお持ちの方もおられます。これらの問題に対しても循環器内科・放射線科・小児科・成人心臓外科・産婦人科などと共同して治療に当たり、先天性心疾患の患者様の小児期のみならず成人期も一貫してサポートできる診療体制を作っています 。

こどもを守るためのチーム医療

先天性心疾患の治療には外科医のみならず、数多くの小児医療に精通した専門家たちによる診療体制が必要です。当院では”save the children”を合言葉に経験の豊富な小児科・小児集中治療科・麻酔科・放射線科・看護師・臨床工学技士のみんなと一緒に、心臓病のこどもたちを守るため全力で頑張っています。

小児循環器グループ:心臓血管外科・小児科・小児集中治療科

ICU 看護師による緊急開胸シミュレーション写真
ICU 看護師による緊急開胸シミュレーション
病棟看護師主催 小児心肺蘇生法勉強会写真
病棟看護師主催 小児心肺蘇生法勉強会

小さな傷・目立たない傷を目指して

胸骨部分切開(小切開)手術
心臓外科手術は、一般的に胸の真ん中を縦に切開し、胸骨も縦に2つに分けて胸を開く「胸骨正中切開」アプローチで行われます。年齢や身長、体重、疾患の重症度などにより、可能なお子様には通常より小さな皮膚切開から、胸骨の下半分だけを切開する「胸骨部分切開」アプローチでの手術を選択し、丸首シャツを着ても手術創が目立たないよう配慮しています。
胸骨変形防止プロテクター
胸骨正中切開による心臓外科手術後に、胸骨の変形・膨隆を認めることがあります。個人に合わせて作られた胸骨変形防止プロテクターの装着により、効果に個人差はありますが、胸骨変形の程度をゆっくり改善できます。当科では、創部を含めた術後経過が安定しプロテクター装着を希望される患者さまに対して、適切なプロテクターのオーダー、装着後のフォローアップを外来にて適宜おこなっています。
胸骨変形防止プロテクター写真

全国の主要施設との情報交換と人材交流

非常に希な心臓病や、複雑・重症な心臓病をもって生まれてくる赤ちゃんの場合、治療方針の決定が困難な場合があります。当院では、日本全国の小児心臓病の専門施設と連携をとりながら、客観性が高くより良い治療法の選択を心がけています。また、積極的に小児心臓外科スタッフが国内・国外留学を行うことにより、新潟県でも最高レベルの治療を実践することを目標にしています。

先天性心疾患に関する研究活動

最近行われた主な研究内容は下記などが挙げられます。

  • 小児心臓手術後の急性腎不全を予測するバイオマーカーの開発
  • フォンタン術後又は成人先天性心疾患における肝鬱血・線維化の肝硬度測定
  • 放射光位相差X線CT法による血管退縮関連疾患群の異常血管の構造解析
  • ファロー四徴症術後遠隔期の心室性不整脈の予測因子の検討
  • 位相差X線CTと数値流体解析による小児肺静脈狭窄病変の病態解明
  • 右室心筋病理組織と、各心不全の重症度・可逆性についての検討

長い小児心臓外科の歴史と重症心疾患に対する治療経験から、心臓病のお子さんの治療に役立つ研究を行っています。

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