(一)、出典 (二)、原文
(三)、釈文
(四)、大意
賓客がはじめて席につく時には、或いは左へ向き、或いは右へ向き、客同士が互いに挨拶を交わすことは、次第あり、行儀作法が修まっている。●(竹で編んだ、果物などを盛る高坏)豆(木製の高坏)は座敷へずらりと並べられ、それに果物やいろいろの物を盛られて連なり並んでいる。酒の味はもとより旨く、酒を飲んでも乱れず、容貌威儀が甚だよくととのっている。鐘鼓を設けて音楽がはじまる。酒宴がすんでから、楽器をとり除いて、射弓にうつる。大きな侯を引き挙げ、弓矢もここに張る。射手は相手とならぴ組んで弓を射、その中心の的に中った手柄を奏上する。うまく的に射あて、相手に勝って酒を飲ませてやりたいと願い求めるのである。
籥(ふえ)を手に取って吹いて文舞を舞いはじめると、笙や鼓の音曲がこれに和してはじまる。その音楽か、調子がよく揃って和らいで奏される。徳行功業の盛んな先祖に、音楽をすすめて、楽しませる。百の諸礼が手落ちなく揃って、祖霊を祭るのである。諸礼はすべて備わらぬところは無く、其の礼は壮大であり且つ盛んである。かく先祖を祭る故に、先祖よりも大いなる福を子孫に賜ふのである。先祖の祭が終って、燕飲にうつる。子孫も祖霊より大なる福を受けて酣楽するし、各その長ずる技能をすすめて、或いは舞い或いは歌うて歓をつくす。賓客として此の祭に招かれている異姓の諸侯も、杯を取り酒を酌んで献酬する。先祖の子孫として祖霊を祭っている室中の同姓の諸侯も復たこの室に入って来て、共に互いに献酬して楽しむ。あの大きな爵に酒を酌んで、賓(爾)に良い時節の物を進める。
(五)、各章の内容
一章 燕射飲酒に社あることを叙ぶ。
二章 古の人君、祭祀して後に酒宴することを述ぶ。首章次章ともに古の
人君の君臣上下の礼が有って和楽することを云う。
(以下略)
三草 今の酒宴か荒廃して札が無く、ただ酒に洗面するさまを叙ぶ。
四章 小人酔興の狂態を描写す。
五章 酒乱を戒む。
(六)、有壬館
壬は音「ジン」又は「ニン」爾雅(古事書)に「壬ハ大也」とあり、「大きい」という意味。従って字面だけから見ればグランド・ホールでしょうが、建物の壮大だけをいうのでないことは出典によって明らかです。「百禮既至有壬有林」から「壬林(ジンリン)」という熟語もあります。「壬ハ大也」「林ハ盛也」と註し、「壬林」は「盛大」という意味になります。「有壬館」は「有林館」と名づけても、ほぼ同じ意味になりましょう。詩経の「賓之初筵」から「有壬」の二字をえらんで命名した意図は、賓客を迎え、礼を守って盛大に和楽燕飲する館の意味がと思われます。命名者は恐らく詩の後半の訓戒的意図は無かったと思われますが、当時の国手たちは漢学の素養があり、有壬館に出入する時、自然、詩の後段を想起し、礼を守って乱酔することはなかったのではないかと思います。