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2018/01/09 研究成果
階層的なカテゴリー認知のもととなる脳マップの仕組みを解明

・脳の側頭葉には入力信号と出力信号による様々なレベルのカテゴリーマップが存在する
・大きなカテゴリーの脳内マップほど色分けが明瞭で、時間的にも安定である
・親カテゴリーのマップは子カテゴリーのマップの単純な和としては説明できない
 
Ⅰ.研究の背景
ヒトは、『ブルドック』は『犬』という大きなカテゴリーの一部だと知っています。このようなカテゴリーの階層関係に関する知識は、脳の中にどのように表されているのでしょうか?
本研究では、大脳の側頭葉と呼ばれる部位の入力信号と出力信号によって定義されるカテゴリーマップを脳の深部と表面からの電気記録に基づいて一度に可視化する技術を開発し、上位のカテゴリーと下位のカテゴリーの脳マップの関係と、入出力レベルのマップの時間的安定性を検証しました。
 
Ⅱ.研究成果の概要
側頭葉において、顔に選択的に反応する神経活動は空間的にも時間的にも均質で明瞭な「顔領域」を形成し、入力と出力レベルのマップが似通っていました。これに対して顔の下位カテゴリー(例:『ヒトの顔』、『サルの顔』)の脳マップは色分けが不明瞭で、入力マップと出力マップの違いが大きく、出力マップでは一段と不明瞭さが増していました。さらに、顔領域の中のみならず外にも、顔の下位カテゴリーを識別するための信号が分布していることも突き止めました。
これらの結果から、カテゴリーレベルに応じてそれを表す脳のマップの安定性が異なること、また親カテゴリーを表す脳活動は子カテゴリーを表す脳活動の単なる和ではないことが明らかになりました。
今回の成果は、カテゴリーの階層的認知という高次の脳機能のメカニズムを明らかにした点、および、脳の信号から人が頭に思い描いていることを解読してコミュニケーションの支援に役立てようとする新しい医療技術の開発につながる点に、学術的価値と臨床応用上の意義が認められます。
 
Ⅲ.公表について
本研究は、新潟大学医学部・超域学術院の宮川直久元特任助教(現量子技術研究開発機構主任研究員)、長谷川功教授らの研究チームが、科学研究費補助金(日本学術振興会、文部科学省)、脳科学研究戦略推進プログラム(文部科学省)、武田科学振興財団、等の助成を受けて実施されました。
発表雑誌名:「Cerebral Cortex」(IMPACT FACTOR 6.559)
doi:10.1093/cercor/bhx342
発表日時:2018年1月5日23時(日本時間)
論文タイトル:
Heterogeneous redistribution of facial subcategory information within and outside the face-selective domain in primate inferior temporal cortex
著者:
Naohisa Miyakawa*, Kei Majima, Hirohito Sawahata, Keisuke Kawasaki, Takeshi Matsuo, Naoki Kotake, Takafumi Suzuki, Yukiyasu Kamitani, Isao Hasegawa* *: corresponding author
 
 
本件に関するお問い合わせ先
新潟大学医学部神経生理学分野
教授 長谷川 功
E-mail:isaohasegawa@med.niigata-u.ac.jp

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