新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野-旧内科学第三講座-

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Sun Ship通信

DMAT活動報告 -北海道胆振東部地震への派遣-

新潟大学大学院医歯学総合研究科
丹羽 佑輔 先生

1.派遣までの経緯
 2018年9月6日未明に北海道胆振東部地震が発生しました。この地震は、胆振地方における大規模な山崩れ、札幌市清田区を中心とした一部地域の液状化、そして全道にわたって長期間の大規模停電が特徴的でした。
 6日午後2時過ぎに厚生労働省DMAT事務局より新潟県を含む東北ブロックのDMATにも出動を要請され、新潟県からは新潟大学医歯学総合病院(以下当院)を含む7病院よりDMATが派遣されました。当院のチームは医師2名、看護師2名、業務調整員3名の7名が救急車1台と乗用車1台で出動し、航路で北海道へと向かいました。私個人としては、初めての災害派遣となりました。

2.船内での準備
 当院は札幌医科大学内に設置された札幌医療圏DMAT活動拠点本部に所属することとなりました。船内で被災状況などの状況を確認し、他の県内DMATとも連携をとりました。訓練などで普段から県内各病院のDMAT隊員と顔見知りの関係になる重要性を感じました。7日小樽港に到着すると、小樽でも一部の信号は消えており、コンビニエンスストアなどは営業していても食料品などの欠品が多く、ガソリンスタンドも給油制限があり車が列をなしていました。

3.7日の活動(1日目)
 札幌医科大学に到着すると、多くのDMATが集合していました。当院DMATは本部の活動支援を行いました。その頃、患者搬送は概ね終了しつつある状況でした。しかし、各医療機関の被災状況を把握しきれておらず、緊急の支援が必要な医療機関があるかもしれない、という状況でした。DMATや医療機関が使用する、「EMIS」という専用のインターネットサイトを通じて、各医療機関の被災状況と支援の必要性について情報収集することが最優先のミッションとなりました。その時点で調査が未着手であった医療機関の調査を各DMATと共に行いました。この調査により、EMISでも電話でも連絡の取れない少数の医療機関の存在が明らかになり、DMATがこれらの医療機関に直接訪問して確認を取ることとなりました。この日の夜間帯の業務について、当院DMATに要請があり、7名中3名が夜勤にあたりました。私を含む4名は郊外のホテルで休むことができました。

4.8日の活動(2日目)
 8日も引き続き本部活動の支援を行いました。この日の活動としては、札幌医療圏の避難所に医療が必要な被災者がいないかどうか、スクリーニング調査を行うこととなりました。当院DMATはこれらの業務の調整を行いました。この日も夜間の業務を要請され、私を含む3名が夜勤にあたりました。私はDMAT運用・搬送担当の副本部長を拝命しました。この頃はDMATの活動も収束に向かい、今後の保健所等への引き継ぎに向けて業務調整が必要な状況でした。夜間帯の活動としては、引き継ぎに必要な項目のピックアップと、DMAT各隊の活動可能期間を調べて翌日の業務への割り振りの素案を作ることでした。夜間に緊急の連絡が入ることもなく、無事にミッションを終えました。

5.9日の活動(3日目)
 9日は、前日のスクリーニング調査をもとに、医療ニーズの詳細な把握が必要な避難所へ調査をすることとなりました。同時に、撤収に向けて各業務を引き継ぐための準備を行いました。当院DMATは本部活動を支援し、最後までこれらの情報の整理を行い、夕方の札幌医療圏DMAT活動拠点本部が解散した後もこれらの業務に従事しました。夜になって本部長にこれらの資料を提出し、活動を終えました

6.10日の行動
10日は、フェリーの出航が夕方だったため、それまでの時間を利用して厚真町役場を訪問しました。山崩れの被害が大きかったこの地域は、このころも断水が続いており、役場に多くの被災者が避難し、自衛隊車両、報道各社の車両、各支援隊など多くの車両と人員・物資が集結していました。この後、道庁のDMAT調整本部を表敬訪問し、小樽港よりフェリーにて帰路につきました。翌朝に新潟に到着し、鈴木病院長・寺井教授はじめ院内から支援してくださった皆様への報告会を行い、解散となりました。

7.活動を終えて
 派遣にあたって、寺井教授はじめ始め高村先生、上村先生、医局の皆様に大変ご心配とご迷惑をおかけいたしました。温かい応援をいただき、感謝申し上げます。 DMATの医師は救急科や外科系等の医師がやるイメージをお持ちの方も多いと思いますし、実際ある程度事実です。しかし、実は災害の現場でそういった診療科の専門性が重要になる場面は多くないと思います。もちろん災害の状況により、救護所や災害拠点病院などで救急的な処置を行う場合もありえますので最低限度の病院前救護や外傷に対する知識・技術は必要ですが、それ以上に「災害」に対しての知識と訓練が重要ですので、どの診療科の医師でもDMATの活動に参加することができます。実際に今回の業務は本部業務やロジスティックスが中心でした。これから専門を決める研修医の先生や学生さんで、「消化器に興味はあるけれど、災害医療もやりたくて、災害のことをやるなら外科系や救急かな・・・」と思っている方がいましたら、私のこの報告で「消化器内科で災害医療にも参加できる」ことをお伝えできれば幸いです。
 また、このように他の地域に出かけて行って災害時の医療活動をすることは、DMATやJMATなどの活動をしない限り経験しませんが、自分の住んでいる地域・勤めている病院が被災してしまうことはあり得ることです。実際に新潟県は、中越地震・中越沖地震を経験しています。私地震、国内の様々な災害に対して自分にできることをしたいと思うのと同時に、自分が勤めている病院が被災した時に力になりたいと思っています。
 今後も来るべき災害に対して、少しでも多くのことができるように準備・訓練をしていきたいと思います。最後になりましたが、今回の派遣に医局の皆様から多大なご支援をいただいたことに改めて感謝申し上げます。

1 船内でのミーティング(9/6)

2 EMISを用いた医療機関の被災状況の調査(9/7)

3 チーム内のミーティング(9/7)

夜勤に向けて引き継ぎを受ける(9/8)

(9/8)

(9/8)

夜間、他県のDMATと一緒に翌日の準備(9/8)

引き継ぎ・報告資料の作成(9/9)

活動拠点本部本部長より解散の挨拶(9/9)

解散時の集合写真 ピークにはもっと多くの隊員が活動していた(9/9)

大学に帰着した当チーム(9/10)

同門会の皆様へ