新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野-旧内科学第三講座-

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Sun Ship通信

新潟県立がんセンター新潟病院 紹介

新潟県立がんセンター新潟病院 副院長, がん予防総合センター長 小林正明
2020年5月7日

当院の歴史

 昭和25年、性病の治療と予防を目的として、内科、性病科の2診療科20床で開院した県立新潟病院が前身です。昭和33年、県にがん対策推進委員会が設置され、昭和36年(1961年)、新潟県立ガンセンター新潟病院として新たにスタートしております。現在、国内には多数のがんセンターがありますが、「がんセンター」を称する先駆けの病院となりました。昭和62年(1987年)には、現在の病棟完成に伴い、名称を平仮名の「がんセンター新潟病院」と改めました。平成19年には、都道府県がん診療連携拠点病院の指定を受け、新潟県のがん診療において中心的な役割を担っています。現在、診療科は22、病床数は421(一般347床,地域包括ケア病棟53床,緩和ケア病棟21床)です。

病院外観検討会風景
上:病院外観 下:検討会風景

 当院の歴史は、内視鏡の歴史でもあります。昭和35年より、実用化されて間もない胃カメラ検査が行われていました。この胃カメラとは、現在使用されている電子スコープ、その前のファイバースコープより、さらに昔の時代に日本で使用されたガストロカメラと呼ばれた機械です。胃内を盲目的に撮影して、フィルムを現像するまでは何が写っているか分からないものでした。小越和栄先生(元副院長)は、指導医の原義雄先生と共に、内視鏡機器の開発や内視鏡診断に情熱を注がれ、昭和38年には、当院第1例目の早期胃癌が発見されました。当時の日本をリードする内視鏡診断や病理診断、外科治療が行われ、内視鏡検査成績を英文でも報告されています(Clinical experience with the gastrocamera. Ann Surg 159: 532-47, 1964)。小越先生は、十二指腸ファイバースコープやERCPの開発、研究でも世界的な業績を残され、海外からERCPを学ぶため多くの医師が当院を訪れました。その熱意は、若手医師にも伝わり、富所隆先生、須田陽子先生、秋山修宏先生、八木一芳先生、古川浩一先生、中村厚夫先生、竹内学先生、塩路和彦先生など、当院で研修された多くの先生が、内視鏡を志し、この分野で目覚ましい活躍をされています。また、小越先生は、平成2年からの7年間、日本消化器内視鏡学会甲信越支部の支部長を務め、内視鏡に対する情熱を甲信越の若い内視鏡医に伝授されました。今回、四半世紀の歳月を経て、再び甲信越支部事務局を当院に置き、私が支部長を務めることとなりました。寺井教授よりご指導をいただきながら、甲信越における内視鏡学のさらなる発展に向けて努力する所存です。

当院の特徴

1. 膵臓がんに対するEUS-FNA検査数が県内随一
 膵臓がんは、消化器がんの中で最も難治であり、さらに増加傾向を示しています。迅速で正確な診断が求められるため、病状に応じて、可能な限り短期間での外来受診や入院を手配しています。近隣の先生方から多数の症例をご紹介いただき、塩路和彦先生中心に、年間約100例の新規膵臓がん症例の診療を行っています。2019年のERCPは検査51件、治療160件、EUSは観察172件、FNA 91件でした。これら豊富な症例をもとに、膵臓がんの早期診断や治療効果予測を目的として、エクソソームプロテオーム解析によるバイオマーカーに関する研究を、寺井教授のご指導のもと、大学との共同研究で開始します。

2. 食道がん、胃がん、大腸がんに対する内視鏡治療件数が多い
 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、早期の消化管がんに対する標準治療です。2019年の治療数は、咽頭1件、食道65件、胃195件、大腸38件でした。術前診断や切除手技の難易度が高く敬遠される症例でも、しっかりと対応しています。長年、当院のESDを支えてきた佐々木俊哉先生が転勤となり、ESD診療レベルの低下が懸念されますが、これを転機にして、若手医師の実践トレーニングにつなげて行きたいと思います。現在、盛田景介先生と菅野智之先生が、大学からのローテーションで勤務しています。同期の二人が切磋琢磨して、ESDに関する診断能力と治療技術を身に付けることを期待しています。

3. 胃がん、大腸がんのがん精密検診(二次検診)を積極的に行っている
 当院には、新潟県のがん予防対策の拠点として、がん予防総合センターが1998年に設立されました。このセンターの役割の一つが、精密検診を主としたがんの二次検診であり、胃がんや大腸がんの精査のため、最新の内視鏡機器を取り揃えています。2019年の件数は、上部消化管内視鏡検査5850件、大腸内視鏡検査2,175件、大腸EMR他865件でした。ピロリ菌の治療後に発見された胃がんの診断は困難な場合がありますが、内視鏡検査前には除菌歴を問診し、豊富な経験をもとに正確な診断を心がけています。大腸内視鏡の挿入が難しい場合は、細径の小腸用スコープなどで対応し、大腸内視鏡検査を希望されない方には、大腸CTや大腸カプセル内視鏡などの選択肢も用意しています。

4. 進行食道がんの化学放射線治療件数が多い
 進行期で発見された消化器がんに対しても、本人や家族の気持に寄り添い、他の診療科と協力しながら、最も適切な治療を行っています。進行食道がんの紹介例が多く、当院全体で、食道がんの放射線治療件数は年間約60例です。栗田聡先生を中心に、併用化学療法やPEGでの栄養管理、食道ステント留置などを行っています。胃がん、大腸がんに比べて、食道がんに適応のある抗がん剤は限られていましたが、最近、免疫チェックポイント阻害薬が適応となり、効果が期待されます。当院では、2019年2月に緩和ケア病棟が開設され、専門的緩和ケアにも積極的に取り組んでいます。

5. 日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)に参加
 当院はJCOG参加施設であり、各グループで多くの症例を登録しています。当科では、肝胆膵グループと消化器内視鏡グループに参加し、新しい診断や治療の確立を目指して、臨床研究にも積極的に取り組んでいます。当院では、がんゲノム医療センターが開設され、パネル遺伝子検査を開始しました。がんゲノム医療連携病院として、患者さんの期待に応えられるように、将来に向けて、歩を進めていきます。さらに、2020年4月より、臨床検査部長として、小方則夫先生をお迎えすることができました。消化器がん患者の診療において、肝炎ウイルス学の専門家としてサポートいただくとともに、予防医学や基礎医学の研究者の視点から、貴重な助言をいただいています。

《学会認定》
日本内科学会教育病院
日本消化器病学会認定施設
日本消化器内視鏡学会指導施設
日本胆道学会認定指導医制度指導施設
日本超音波医学会研修施設
日本膵臓学会認定指導医制度指導施設
日本肝臓学会認定施設
日本大腸肛門病学会認定施設
日本臨床腫瘍学会認定研修施設
日本がん治療認定医機構認定研修施設

内科(消化器)スタッフ:菅野智之、盛田景介、青栁智也、栗田聡、塩路和彦、小林正明、小方則夫(2020年4月現在)

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