新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野-旧内科学第三講座-

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Sun Ship通信

新潟市民病院 紹介

和栗 暢生(消化器内科・教育研修部)

 新潟市民病院は、1973年10月、病床数18診療科300床で中央区紫竹山に開院しました。徐々に増築増床(全714床)して救急医療・集中治療機能を拡充していきましたが、施設老朽化のため2007年11月に現在の中央区鐘木に32診療科、660床で新築移転いたしました。救命救急・循環器病・脳卒中センター、総合周産期母子医療センター、救急ステーションによるドクターカー稼働、及びヘリポートが設置され高度急性期・急性期機能に特化した病院となりました。これを機に病院は完全電子化が行われ、医局では全医師のデスクに1人1台の電子カルテが用意されました。2013年には南棟が増設され、精神科が開設され33診療科676床となると同時に、光学医療室が南棟へ拡張移転しました。現在は、36診療科となり、新潟市民の応援をいただきながら、重症・専門・救急を中心として質の高い医療を追及しております。今後の展望としては、いよいよハイブリッド手術室の建設が予定されております。
 当院は新潟医療圏で三次救急医療を担当する高度急性期・急性期病院です。救命救急センター・循環器病・脳卒中センターは50床で、2021年1月から12月までの救急車搬入数は5,260台、ドクターカーの出動は663回でした。重篤患者数は953人で、県内有数の患者数を治療しています。ゴールデンタイムのある救急として循環器病・脳卒中が最重点領域ではありますが、その疾患の頻度から消化器内科の救急診療におけるニーズは当然非常に多いため、当科スタッフは常に救急への対応を確保する診療体制となっています。
 また2020年から世界中を席巻しているCOVID-19に関しては、重症・中等症への対応が当院に求められるものになります。2022年3月までに358例が入院し、重症52、中等症Ⅱ91、中等症Ⅰ26例、うち人工呼吸器使用などの呼吸管理は41例でした。これだけのCOVID-19感染症例を受け入れつつも、職員クラスター・病棟クラスターなどの発生なく(2022年5月18日現在)、病院機能を縮小せずに診療できていることは誇りでもあります。今後もCOVID-19感染症診療を行いつつも、三次救急医療を抑制せずに両立させて参ります。

 診療は2007年からスタッフ7名(2020・2021年度は6名)+専攻医で行っています(写真:2022年度メンバー)。拘束勤務、ルーチン検査(上下部内視鏡検査)は全員で行っております。
 肝臓・IVR分野の診療は、大﨑・和栗を中心に行っています。腹部アンギオは、肝細胞癌症例の減少と全身治療の進歩に伴うIVRへの依存度の低下から件数が減少傾向です。しかし、消化管や腹腔内出血などに対する緊急アンギオのニーズはむしろ増加しています。内臓動脈瘤の血管内治療は100病変(6割以上が破裂緊急例)を優に超え、その95%以上で治療に成功しています。当科が引き受けてきた重症例の緊急アンギオのノウハウを少しずつ伝承して新潟県広域での救急医療に貢献していきたいと思います。また、県内では多忙を極めて消化器内科が手を放しがちなエコー検査も当科ではきっちり専攻医に習得してもらうべく検査枠を死守しています。エコーガイドの穿刺手技にもつながる大事な基本と考えています。
 胆道・膵疾患は佐藤・河久を指導者として、ほぼ全員で取り組んでいます(火・木曜を中心に朝から晩まで行っています)。経乳頭的手技に加えて、最近はEUS下穿刺の手技を用いた胆膵インターベンションが盛んになり、隔世の感があります。2室の内視鏡TV室のX線透視システムも全て最新のものとなり、親子胆道鏡のSpyGrass DSも2021年度に導入され、巨大胆管結石のEHL砕石や胆管癌の胆管内進展度診断の精度をあげることが可能となりました。専攻医にとっても現在最も緊急の多い胆道疾患への対応を多数経験できるだけでなく、現時点でほぼ最高に近い環境でこうした先進的手技を学ぶことができると思います。
 上下部消化管腫瘍の内視鏡治療(ESDなど)は田覚・河久を中心に安住・熊谷・専攻医で行っています。当院での内視鏡治療症例は、全身合併症が多いハイリスク症例が集まっているため、慎重に管理することが求められます。その上で、病変の大きさや部位などの難易度と、施行医の手技習熟度を考慮して専攻医にも術者として段階を踏んで技術を習得できるようバックアップしています。
 またIBD診療は、田覚、安住を中心に佐藤、河久、熊谷も担当しています。長期罹患で高齢になっている症例も多いですが、逆に小児科や小児外科からも新規症例、移行症例も多くバラエティに富んでいます。生物学的製剤を含めて治療選択肢が増し、外来診療で乗り切れる症例も多いので以前より入院加療を要する状態は限られますが、長年IBDを専門に診療していたエキスパートが居ない分、皆で検討・相談しながら診療しています。カプセル小腸内視鏡(ギブン社製)、ダブルバルーン小腸内視鏡システム(富士フィルム社製)も2022年度に更新されることが決定し、全消化管に対応した診療が切れ目なく可能となっています。

 ここ2年間、当院の内科専門研修プログラムで消化器内科をサブスペシャリティとする専攻医の希望はありませんでした。現在当院プログラムの3年目(卒5)の山﨑(横山)華子が2021年度後期を新潟大学で、2022年度前期を新潟南病院でご指導いただいており、着々と力をつけていると思います。この秋に当科に戻られることを大変楽しみにしております。連携病院指導医の先生方には大変お世話になり、感謝申し上げます。
 現在は新潟大学ALL NIIGATAプログラムの専攻医3年目(卒5)の登内、古山と、初年度(卒3)の福島が4月から当科で専門研修を行っておりますが、接遇も申し分なく、自身の診療技術の向上に非常に貪欲な先生方で、我々も非常に助かっておりますし、彼らの前途をとても期待しております。
 私どもとしては、新潟大学のプログラム以外にもきちんと整備されたプログラムを当院のようなところで走らせることも新潟県内の人材確保に寄与するものと考え、今後もしっかりリクルート、そして教育に力を注いでいきたいと考えています。

 当科では、豊富な症例に恵まれて、忙しく、また楽しく、日々診療させていただいております。若い仲間により良い職場環境を提供し、またその仲間を増やしていけるよう、努めることが私に課せられたミッションです。これからも寺井教授をはじめ、大学の皆さま、近隣の同門諸兄にご指導いただき、お世話になりながら、精進していく所存ですので、何卒よろしくお願い申し上げます。  
 長文・駄文を掲載いただき、感謝申し上げ、終わりとさせていただきます。
 最後に、重症の消化管出血・腹腔内出血、急性閉塞性化膿性胆管炎、重症急性膵炎など、緊急・重症例の診療は当院の責務であり、今後も他院からの受け入れをこれまで通りしっかり行っていく所存です。もちろん、これまで通り緊急以外のご紹介もお待ちしております。今後とも当科をよろしくお願い申し上げます。

【当院の画像診断機器】
MRI 2台
CT(一般2台、救急外来用1台、放射線治療計画用1台)
血管撮影装置(心血管用2台、脳血管用1台、腹部汎用1台)
X線TV室(放射線科2室、内視鏡室2室)
内視鏡ファイリングシステム(オリンパス社製 ソレミオ)
一般内視鏡(上部、下部、ERCP:オリンパス)
超音波内視鏡(オリンパス)
ダブルバルーン小腸内視鏡(富士フィルム)
カプセル小腸内視鏡(ギブン)
親子胆道鏡システム(Boston SpyGrass DS)
超音波診断装置(Canon Aprio i800:超音波エラストグラフィー、ほか)

【2021年度診療実績】


上部消化管内視鏡検査 3193
 上部ESD 食道:12、胃:119
 十二指腸EMR 3
 十二指腸乳頭切除 2
食道静脈瘤結紮術(EVL) 35
上部内視鏡的消化管止血術 116
大腸内視鏡検査 1929
 大腸ポリペクトミー、EMR 725
 大腸ESD 31
小腸カプセル内視鏡検査 25
小腸バルーン内視鏡検査(ERCP除く) 経口:7、経肛門:39
消化管ステント留置 食道:5、胃十二指腸:21、大腸:13
ERCP (うちバルーン内視鏡使用)総件数 440 (17)
総胆管結石:悪性疾患:良性疾患 204:155:81
内視鏡的乳頭切開術(EST) 120
乳頭バルーン拡張術(EPBD, EPLBD) 68
内視鏡的胆道ドレナージ ENBD:48、EBS(PS):206
胆道ステント(SEMS) 49
膵管ステント(ERPD) 膵炎予防は除く 13
SpyGrass DS (EHL砕石:胆管癌診断など) 11:13
超音波内視鏡(EUS)観察のみ 131
EUS-FNA 78
EUS-intervention BD:24, CD:10
経皮的穿刺治療
 PTBD:PTGBD:PTGBA:PTAD:PTAA 12:40:47:5:8
 RFA:MWA:PEIT 21:02:03
 エコー下肝生検 40
腹部血管造影総件数 116
 肝細胞癌など治療(TACEなど) 58
 門脈圧亢進症IVR BRTO:6、PTO:2、PSE:7
 内臓動脈瘤治療、緊急出血例治療 16 (検査のみ3)

【写真】 2022年春時点の当科スタッフ集合写真

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