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小児泌尿器科疾患
はじめに

お子様における腎・尿路系疾患や女児を含めた外陰部・生殖器疾患などを専門とする領域です。 特殊な検査を要することもあり、当院では小児泌尿器科専門医が小児科腎疾患専門医や内分泌疾患専門医と連携して検査・治療にあたります。代表的な疾患には次のようなものがあります。

停留精巣

男の子の精巣は、胎児期にお腹の中から鼠径管というトンネルを通って陰嚢内へ降りてきます。停留精巣とは生まれた時に、片側または両側の精巣が陰嚢内にまで降りてきていない状態です。低出生体重児では多く見られます(2500g以下:約30%、1800g以下:約60%)。出生時の停留精巣のうち約60%は出生後3ヶ月以内に自然下降しますが、低出生体重児や早産児ではその時期が遅くなる傾向があります。生後6ヶ月まで待っても精巣が陰嚢内にまで降りてこない場合には、将来的に精子を作る機能が低下する可能性があるため、精巣を陰嚢内に固定する手術を考えます。また、正常の精巣に比べて停留精巣は悪性化しやすいとされますが、実際にはめったに悪性化することはありません。もし悪性化したとしても、手術後に精巣は陰嚢内にあるわけですから早期発見が可能になります。精巣を体表から触れることができない非触知精巣の場合は、腹腔鏡検査を用いて精巣の位置を同定して、それぞれの患者さんに適した方法で精巣を陰嚢内に固定します。

陰嚢水腫(陰嚢水瘤、精索水瘤)

精巣の周りに水がたまることです。鼠径ヘルニア(脱腸)と同じく、腹膜(おなかを包む膜)と精巣鞘膜(精巣を包む膜)とのあいだの連絡路(鞘状突起)が閉じないことが原因です。ヘルニアを合併していなければ、連絡する道は自然に閉じて、水腫は消えていく場合が多いので、乳児期は自然経過をみます。鼠径ヘルニアや停留精巣に合併する水腫や、成長してもなお大きな水腫が残る場合は手術を考えます。

尿道下裂

男の子の陰茎の形の異常です。尿道の出口が陰茎の先端よりも下側に開いており、陰茎そのものが下側へ曲っているのが特徴です。通常、亀頭部は露出しており、陰茎背側(亀頭部の上)には余剰な包皮が存在します。外尿道口の位置によって、亀頭部、陰茎部、陰茎陰嚢移行部、陰嚢部、会陰部尿道下裂に分類されます。このような形態の異常は、立って排尿する際や、将来的には性交渉に支障をきたす可能性があります。治療には尿道形成手術が必要です。手術に際しては、陰茎の前屈を矯正した後に、外尿道口がどの部位に存在するかによって手術方法が異なります。亀頭部から陰茎陰嚢移行部に外尿道口がある場合は一期的に尿道形成を行います。陰嚢部や会陰部に外尿道口がある、いわゆる高度尿道下裂といわれる状態のお子様の場合は二期的に尿道形成を行う場合もあります。

腎盂尿管移行部狭窄症

尿が腎臓から尿管に流れ出す部分を腎盂尿管移行部といいます。この腎盂尿管移行部が生まれつき狭かったり、血管が外から圧迫している場合は、尿の通過が悪いために腎臓に尿がたまって腫れてしまう、いわゆる水腎症という状態となり、発熱を伴う尿路感染症を発症したり腎臓の機能が障害されたりします。軽度から中等度の場合は自然に改善することが期待できることから、超音波検査や腎シンチグラフィー(アイソトープ検査)を定期的に行って経過観察をします。たびたび尿路感染症を発症する場合や尿の通過障害が悪化し、腎臓に負担がかかるようであれば、腎盂と尿管を吻合し、尿を流れやすくする腎盂形成術を考えます。

膀胱尿管逆流症

腎臓でつくられた尿は尿管を通って膀胱にためられます。正常な尿路では、尿管から膀胱に入るところ(尿管膀胱移行部)で膀胱の尿が尿管へ逆流しないような構造になっていますが、この構造が弱く膀胱の尿が尿管や腎臓まで逆流する状態です。発熱を伴う尿路感染症で発見されることが多く、炎症を繰り返すと腎臓の働きが悪くなります。 自然治癒が期待できるので、通常はまず感染予防の抗生剤を内服しながら様子をみます。逆流の程度、尿路感染、腎機能の状態により逆流根治手術を考えます。

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