新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野-旧内科学第三講座-

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渡航だより

米国研究室で思う

2022年5月8日

 2021年10月にメイヨークリニック(米国ミネソタ州)で研究を開始し、7か月が経ちました(2022年5月初旬執筆)。渡米前から聞いてはおりましたが、冬季は気温-10℃から-20℃で推移し、寒すぎて子供を外で遊ばせるのが難しく悩まされました。一方で、積雪量は新潟のほうが圧倒的に多く、こちらでは車のタイヤ交換は不要(オールシーズンタイヤ)だったのは意外でした。雪は解けないと滑らないようです。4月も朝方は氷点下で時々雪は降りましたが、5月に入り一気に春、今後、春は一瞬で過ぎ去り夏に突入するようです。

 私の所属する消化器グループのEnteric Neuroscience部門はPrincipal Investigator(PI)毎に4チームくらいに分かれ、総勢30人程度の研究者が所属する大所帯です。私はその中で主に過敏性腸症候群(IBS)の病態に関する研究を行っています。メイヨークリニックの特徴として、臨床データ・検体へのアクセスが非常にしやすいということがあり、もともとは臨床寄りの仕事をしてきた私は、ここで臨床-基礎研究を組み合わせるノウハウを勉強しています。  
 優秀なPhDが多く、基礎研究テクニックもそうですが研究の立案・遂行能力に自分と差があることに考えさせられています。現在、こちらでPhD取得までの期間が平均5年程度、我々と比較して論文執筆に難はない彼彼女たちでこれくらいかけます。妥協して論文をsubmitさせないという研究室の方針もあると思いますが、この期間、彼彼女らは集中してこれに取り組むわけであり、米国でScienceができる人間が多く生まれるのも理解できます。
 また、こちらに来てみて、日本からの留学のハードルが上がっているのであろうというのを感じます。現在、米国政府からの指導で、留学してくる者は、ある一定の給料の後ろ盾を示す必要があります。ラボからお給料がでない場合は何らかのfoundingを得る必要がありますが、当然それなりの競争率になります。私は幸いにも、科研費(国際共同研究加速基金)からfundingをいただき渡航させていただいております。日本のfoundingは単年のものが多く、2年目以降をどうするのかという問題が付きまといますし、ほとんどのfundingはこちらのポスドク賃金に満たないというのがリアルです。これは米国が日本と比較して相対的に賃金が上昇していることも影響しています。また、fundingやお給料があってもインフレで米国の生活は楽ではありません。PIは先に述べた通りPhDの現状がそうなので、焦って中途半端な仕事はしたくなく、渡航して、いい仕事をするにはある程度のまとまった期間が必要になりますが、我々には頭の痛い話になります。留学のための英語のスキルというのもアメリカ政府指導で、徐々にですが、明確に●●テストで△△点以上、と規定する病院も増えていると思います。留学を考える若い先生方、また、指導医の先生方、に知っておいてほしいリアルであり、新潟大学のように地域医療を充実させる使命をもつ地方大学において、そんな中でもどう若いPhDを育てていくべきなのか、私自身、一人の大学人として考えさせられます。

 最後にはなりますが、このような機会を与えてくださいました寺井教授はじめ医局の先生方に感謝申し上げます。広い視野・研究の幅を持ち、少しでも貢献できるよう引き続き頑張っていきたいと思います。

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