新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野-旧内科学第三講座-

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留学だより

ロンドン留学記(3)

 渡英してから早いものですでに1年以上が経過し、ロンドン留学も折り返しを迎えました。まさかこんな状況になるとは予想だにしませんでしたが、COVID19によるLockdownの中、何とか留学を継続しています。現地での生活についてご報告致します。

2020年 年明けからLockdownまで

 今年の年明けから、中国、日本、韓国でのCOVID19の流行がこちらでも頻繁に報道されていました。しかしながら、イギリスの人々はどこか対岸の火事といった雰囲気で、3月の初旬頃までは危機感を持っている人は少なかったように感じます。この頃までTubeに乗っても、マスクをしている人はほとんどみかけませんでした。マスクをしたアジア人が襲われた、というような話を耳にし、この時はウイルスよりもアジア人に対する人種差別の方を恐怖に感じていました。

 状況が急変したのが、3月の中旬でしょうか。感染者が急速に増加し、イギリス政府も集団免疫路線からLockdownへと方針を転換しました。我々の研究室もごく一部の例外を除いてすべて閉鎖が決まり、今まで行っていた臨床研究もすべてストップせざるを得ない状況になりました。最寄りの駅前では転売屋がどこからか仕入れてきたマスクのたたき売りをしており、人々が列をなしていました。スーパーにも長い行列ができ、食料品は品切れ状態、カオスな状況でした。急速に状況が悪化し、人々が混乱する中で異様な緊張を感じました。

Lockdown開始

 数日の猶予期間を経て、3月23日からLockdownが開始されました。1日1回の運動、生活必需品の買い出し以外の外出を制限され、非常に息苦しい生活が始まりました。そして我が家ではLockdownが始まったまさにその日に娘が発熱し、我々のself isolation生活も始まりました。40℃近い高熱と咳嗽が1週間近く続き、COVID19の可能性が頭をよぎりました。私と妻が体調を崩したらどうやって生活していけばよいかと戦々恐々しながら日々を過ごしました。幸い2週間後に娘は全快しましたが、それと入れ替わるように息子が同様の症状を発症しました。公共交通機関しか移動手段がないので、検査に連れていくわけにもいかず、約1か月只々じっとこらえる日々が続きました。買い物すら行けず、大変ストレスフルな生活でしたが、こちらで知り合った日本人のご家族が食料品の買い出し等、いろいろと助けてくださり、何とか生き延びることができました。息子も2週間程度で全快し、私と妻は無症状のままで事なきを得ています。Lockdown開始時に一時帰国も頭をよぎりましたが、そうこうしているうちに日本でも緊急事態宣言が発表され、帰国するタイミングを失い、今に至ります。現在は人々の混乱も落ち着き、自宅にいる分には特に問題なく過ごしています。近所の公園への散歩が1日のハイライトです。

Clappingとrainbow

 イギリスではNHSに対する信頼度が高いようで、特にこの状況下でNHSの職員は英雄視されています。毎週木曜日午後8時になると、人々が家の外にでてNHSの職員たちに感謝と励ましを込めて、clappingを行います。楽器を鳴らしてみたり、車のクラクションを鳴らしてみたり、暗い話題が多い中clappingを行いながら自分達も少し明るい気持ちになれます。(やりすぎる人もいて、賛否あるようですが)。

 また子供のいる家庭では子供たちが虹の絵を描き、窓に貼ってNHSをはじめとしたessential worker達を讃えています。なかなかこういったことは日本では起こらないだろうなぁと思いながら、我が家でも虹の絵を貼り、毎週木曜日にはclappingを行っています。

仕事について

 留学から1年が経過し、すべてが上手く回り始めた矢先のLockdownだったので、当初は途方に暮れ、何も手につかない状態が続きました。研究室が閉まってからは週1回のオンラインミーティングを行っていますが、Prof Azizはこのような状況下でも可能な限り生産性を高め、仕事の質を落とさぬようにと励ましてくださっています。Bossの励ましや提言もあり、今では気持ちを切り替え、ZoomやSkypeを利用してリモートで臨床研究を行うとともに、余った時間を利用して新しい知識・技術の習得に努めています。このようにまとまった時間を取れることは今後のキャリアの中でなかなかないと思うので、ピンチをチャンスに変えて有効活用したいところです。

Lockdown緩和の方向へ

 ロックダウンから2か月が経過した5月末時点、COVID19によるイギリスでの死者数は38,000人を越えており、欧州で最悪の数字です。幸い、感染者数・死者数ともに徐々に減ってきてはいますが、素人目にみてもまだまだ楽観視できる状況ではなさそうです。Lockdown解除にむけて、徐々に規制が弱まってきてはいますが、この状況で緩めて大丈夫かと若干不安になります。来週からは学校も再開するようです。

追伸

 今後イギリスへの留学に興味のある方、検討している方がいたらぜひご一報ください。このような状況下では現地の情報は非常に重要かと思います。

 日本の皆様と来年元気に再開できるよう、注意を払いながら残りの期間を過ごしたいと思います。皆様もくれぐれもお気をつけて。

高橋一也 記

同門会の皆様へ