新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野-旧内科学第三講座-

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留学だより

シンシナティ留学記(2)

 元々は2020年3月に渡米、4月からの研究開始を予定していました。コロナの影響で遅れること数か月、8月からの研究開始の連絡を受けようやく7月中旬に渡米しました。現在、研究を開始して2カ月が経過し、執筆依頼をいただきましたので、渡米からアメリカでの生活のセットアップ、研究生活について少し記載したいと思います。

コロナ禍での渡米

 アメリカへの出発は午前便だったため、東京に前泊し、家族で大学時代の友人宅を訪れ、これからの留学生活に向け活力をもらいました。当日の羽田空港は、コロナの影響で予想以上に人が少なく、飛行機もガラガラでした。2歳の息子を連れての13時間のフライトは、苦労するだろうと覚悟していましたが、思いのほか快適に移動することができて助かりました。シカゴで国内線に乗り換えて1時間、シンシナティ空港へ移動し、空港からはレンタカーを借りて宿泊先のホテルへと向かいました。時差ぼけと、慣れない左ハンドル・右車線、そして家族を乗せてのハイウェイの運転は恐ろしく、細心の注意を払ってのドライブでした。留学記1のPPT版にも書きましたが、シンシナティはアメリカ中西部のオハイオ州に位置します。時刻はボストンと同じEastern Timeのため、7月中旬の日の入りは午後9時過ぎで、それが時差ぼけに拍車をかけました。

セットアップ

 前年度に偶然にも同じシンシナティに留学されていた、新潟大学の先輩のおかげで、アパートは渡米前に決めていました。また、1台目の車の準備もできていたので、取り急ぎ生活に必要なものを購入し、到着2日後にはアパートでの生活を開始できました。
 研究開始までの3週間で、家具や生活必需品の購入、米国の運転免許証の取得、車両ナンバーの登録、Social Security Numberの申請、子供のプレスクールの見学などを慌ただしく済ませました。少し余裕を持って渡米したつもりでしたが、ギリギリのセットアップ期間でした。米国の運転免許に関しては州によって異なりますが、オハイオ州は日本かドイツの免許証を持っていると筆記試験と路上での実技試験が免除されるので、とても簡単に手に入れることができます。私は直前までそのことを知らずに、筆記試験の勉強に半日を無駄にしてしまいました。


Fig.1 左:車両ナンバー登録が終わり、アパートの駐車場でナンバープレートを自分で付け替えているところです。右:橋を渡ったケンタッキー州側からみたオハイオ川とシンシナティのダウンタウン。心なしか新潟の信濃川と古町に似て見えます。

アメリカでの生活

アメリカは車社会で、ボストンやニューヨークのような大都市は別ですが、シンシナティでも車は必須です。私たちのアパートは、研究室のあるダウンタウンから車で25分、距離にすると約25キロ(ほとんどハイウェイ移動です)のMontgomeryという、治安もよく閑静できれいな街にあります。また、アパートの敷地は広く(東京ドームおよそ7個分)、徒歩で敷地外に出るのも一苦労です。敷地内には、プールやテニスコート、子供用の小さな公園などがあり、自然が多く、ホタルやリス、さらにはシカまで見かけます。同じアパートにはシンシナティ大学や同じChildren’s Hospitalで働く日本人も多く住んでいて、皆さんとても親切で非常に心強いです。
 シンシナティの家賃や物価は米国内でも比較的安く、家族を連れて留学するにはとても住み心地がいいです。また、シンシナティにはP&Gや花王などの日系企業が数多くあるため、アジア人も多く住んでいて、アジア系のスーパーや日本食レストランもあります。また、スーパーにはお米も何種類も売っていて、カリフォルニア産のコシヒカリは美味しく(新潟産には負けますが)、日本よりも安価です。
 コロナのため、オハイオ州でも公共の場でのマスクの着用が義務化されてはいますが、それほど不便を感じず生活ができています。MLBやNFLなどのスポーツ観戦はまだできませんが、飲食店や公共施設(動物園や遊園地など)は軒並み再開しており、週末は家族で行楽や外食などを楽しんでいます。コロナの影響で縮小されていた学校も9月の新学期から再開されており、息子も無事にプレスクールへ通園することが出来ています。


Fig 2 左:息子が通うプレスクールの写真です。social distanceをとって(?)の授業です。中央:近くのファームのfall eventの写真です。カボチャもsocial distanceをとっているようです。右:ケンタッキー州ルイビルにあるスラッガーミュージアム

研究生活の開始

 留学先のCenter for Stem Cell & Organoid Medicine (CuSTOM) in Cincinnati Children’s HospitalのJames labは多能性幹細胞(iPSCs)から食道、胃、小腸・大腸のオルガノイドを世界で初めて作成した研究室です。現在も消化管オルガノイドにおいて最先端の研究を行っています。James先生はうわさで聞いていた通り柔らかな印象の親切な先生で、渡米前から相談して決めていた「a project to develop organoids containing immune cells to study inflammatory bowel disease」という研究テーマを与えられました。
 研究初日から、research fellowやgraduate studentに張り付いて実験を習う日々です。自分の担当する小腸オルガノイドも初日から培養を開始し、徐々に育ってきて愛着が湧いてきています。この2ヶ月は研修医に戻ったような気分で毎日が新鮮で仕事終わりには心地よい疲れを感じています。コロナによる規制は多少ありますが、今のところそれほど支障なく毎日研究が行えています。ラボのメンバーも親切で面倒見が良く、とても有難く感じています。

Fig 3 左:Children’s hospitalの正面玄関にて。 右:Children’s hospitalの中庭にあるシンシナティ・レッズのマスコットです。このマスコットは街の至る所にあり広報活動をしています。

 渡米前は、渡米後の慣れない環境での生活を想像して、また、もしかしたら準備してきた留学が中止になるかもしれないなど不安ばかりでしたが、なんとか無事に素晴らしい環境で研究を開始できています。寺井先生はじめ医局の先生方、快諾いただいた武部先生、James先生に感謝して研究生活を頑張りたいと思います。研究内容についてはまだ始まったばかりですので、また次回以降に報告できればと考えています。

冨永顕太郎 記

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