新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野-旧内科学第三講座-

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留学だより

シンシナティ留学記(3)

 研究開始からおよそ半年が経過し、留学記の執筆の依頼をいただきましたので、前半は研究について、後半に日常生活について少し記載したいと思います。

研究内容

Aim 1. To Generate HIOs Containing Resident Macrophages (Year 1)

 当研究室(James Wells Lab)のオルガノイド技術は、消化管の全ての領域に及んでいますが、クローン病などの炎症性疾患の研究に不可欠な免疫細胞が不足しています。しかし、最近の当研究室の予備的なデータで、細菌の誘因に対して炎症反応を起こし、常在菌と病原菌を区別することができる組織常在型マクロファージを含むヒト大腸オルガノイド(HCO)を生成できることが明らかになりました。そこで、私たちは、組織内に常在するマクロファージを含むヒト小腸オルガノイド(HIO)の作製を目指しています。(Fig. 1)
 現在、免疫細胞であるマクロファージを小腸オルガノイドに導入する方法として、大腸オルガノイドの間葉系細胞を用いた方法を試みている段階です。間葉系細胞の剥離・再結合の技術を確立させている同研究所のHelmrath Labともコラボレーションをして研究を進めています。

Aim 2. To Identify the Impact of VEO-IBD Mutations on HIO (and HCO) Function and Disease Progression (Year 2)

 今後は、クローン病の遺伝的素因を持つ患者(VEO-IBD)の病気の発生をモデル化するためにこれらを使用する予定です。炎症性腸疾患の研究にあたっては、Children’s Hospitalの消化器内科炎症性腸疾患教授のDr. Lee Densonともコラボレーションしながら研究を進めています。
 またこの度、Crohn's & Colitis Foundationのresearch fellowshipへ応募する機会をいただきました。履歴書やResearch Experience書類の作成、10数ページにわたる研究計画書の準備はとても大変でしたが、James先生のsupportもあり、貴重な経験をさせていただきました。倍率は高く獲得は難しいかとは思いますが、これまでの研究内容を英語でまとめ、これからの研究目標を明確にし、それをJames先生と共有できたことはとても大きな収穫であったと思っています。


Fig.1

アメリカでの生活・行事

 コロナウィルスの影響でなかなか思うように出かけられない中、規制もそれほど厳しくなかった昨秋に、自家用車でナイアガラへ行ってきました。(Fig. 2左)アメリカは法律による罰則規定があるため、規定に従っての行動であれば、比較的皆自由に行動をしている印象です。州間の移動制限は毎週更新されますので、うっかり規制の確認を怠ると、宿泊先のホテルで罰金を科されるので要注意です。
 ニューヨーク州のナイアガラはオハイオ州のシンシナティからおよそ750km北東に位置し、途中のコロンバスやクリーブランドなどの都市に寄りつつ7-8時間のドライブでした。都市間を繋ぐハイウェイは、日本の高速道路に比べると、ほとんど曲がりくねることもなく真っすぐで、道幅も広く(広いところでは片道6車線あり)、比較的ストレスなく走ることができます。そのため、長距離のドライブでしたが、そこまで苦にならずに移動することができました。また、ハイウェイはごく一部を除いて基本は無料で、ガソリン価格も日本の半値なので助かります。
 また、シンシナティ周辺のアメリカ中西部には、世界遺産のMammoth Cave National ParkやHocking Hills State Park(Fig. 2中央)などのスポットが車で行ける範囲に多数あり、大自然を満喫できます。
 また、4大メジャースポーツの一つアメリカンフットボール(NFL)は人数制限(座席数の約2割程度まで)の中、再開されたため、地元のベンガルズを応援してきました(Fig. 2右)。前後2-3列、左右4-5席以上は間隔がとられていたため快適に観戦できました。


Fig.2 左:Niagara Falls 向かい側の建物はカナダの高層ホテル群。中央:Hocking Hills State Parkの美しい地層。右:NFL観戦 接戦で残り10秒で地元ベンガルズが逆転負けした試合でした。

 アメリカでは秋から冬にかけて、ハロウィン、サンクスギビング、クリスマス、ニューイヤーとホリデーイベントが続きます。しかし、昨年末は、コロナの影響で大規模なイベント(集まり)は中止でしたので、規制の範囲内で、少人数で楽しみました。
 ハロウィンでは、お菓子をいただきに回る際もソーシャルディスタンスをとってでしたが、本場アメリカのハロウィンを味わうことができました。サンクスギビングには友人宅で、巨大なターキーをふるまっていただきました(Fig. 3左)。また、クリスマスには街の至る所に大きなクリスマスツリーが飾られ(Fig. 3中央)、夜にはライトアップが行われとても綺麗です。


Fig.3 左:重さ10㎏超えのターキー。中央:ニューポートに飾られた高さ10メートルを超えるクリスマスツリー。右:この日はプレスクールのパジャマデーでしたが、息子だけは頑なに拒否しパジャマを着ませんでした・・・。

 新年を迎え、2月現在、アメリカではコロナのワクチン接種も進み、感染者数は少しずつ落ち着いてきています。2歳の息子もプレスクールにだいぶ慣れてきたようで(Fig. 3右)、今のところ家族皆にとって充実した生活が送れています。
 また、コロナによる規制は未だありますが、研究に関しては大きな支障なく毎日行えています。改めまして、寺井先生はじめ医局の先生方、武部先生、James先生に感謝し、引き続き研究生活を頑張りたいと思います。

冨永顕太郎 記

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