新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野-旧内科学第三講座-

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留学だより

NIH留学記 (5)

 2021年4月からアメリカ、メリーランド州にあるN I HのImmunology section, Liver disease branch, NIDDKに留学させていただいています。留学に来てはや1年が経ちました。昨年見たときよりもワシントンの桜がより日本を懐かしく感じさせます。
 今のところ(2022年4月初め)コロナも大分落ち着いており、比較的自由に過ごせています。メリーランド州は日本ではあまり馴染みのない州ですが、私の住んでいるBethesda近辺はN I Hの研究者含め、他にも多数の日本からの駐在員や大使館職員の方がいます。日本人の特徴でしょうか、同じアパートやコミュニティーに集まる傾向にあり、私のアパートにはおそらく30世帯ほどの家族が住んでいて、子供の通学バスの半数以上は日本人で占められています。またこの近辺は物価が高いこともあり安全で、環境としては申し分ありません。ただせっかくアメリカにいるのだからアメリカらしい環境で過ごしたいという方には少し物足りないかもしれません。留学後から初めての近況報告となりますので、研究内容と生活状況についてご報告させていただきたいと思います。

 昨年4月に渡米しましたが、日本はコロナ真只中で空港は閑散としていました。ちなみに私たち家族は空輸便を利用することなく、段ボール3つとスーツケース4つに全ての荷物を詰め込み渡米しました(Fig.1)。 渡米後は聞けもしない、話しもできない英語でなんとかライフラインを整え、1ヶ月ほどでようやく生活に慣れてきました。後述の通り今は実験に明け暮れていますが、渡米直後は実験が進むことがなく、どちらかというと英語の勉強がメインだったような気がします。少しずつ英語で伝えられることが増え、聞けることが多くなってきましたが、未だに英語は苦手です。特に電話は難しく、先ほども車の点検の連絡をしていたら、途中で見積もりが聞き取れず、何度も聞き直していたらスタッフが呆れたのか電話を切られました。非常に腹立ちましたが、これもアメリカかと気分を変えて留学記を書いています。


Fig.1
Fig.1 左-閑散とした羽田空港
Fig.1 右-渡米時の荷物

 徐々にアメリカでの生活、英語にも慣れてきた留学3ヶ月後ほどから短い旅行等にも行くことができました。昨年のJuly 4th(独立記念日)にはシンシナティに留学中の冨永先生とピッツバーグ でお会いすることができました(Fig2-左)。またこの3月末にはMayo clinic留学中の佐藤先生がワシントンD.C.に来てくださり、一緒にワシントンの桜を見ることができました(Fig2-右)。また2月にいったフロリダ旅行は特に思い出深いものとなりました。N I Hでは2週間の休暇を取れるようになっていますが、なかなかその機会がなく、この2月にようやく1週間の休みをいただき家族でフロリダ旅行に行きました。ご存知かと思いますが、アメリカは物価が非常に高く、飛行機代等も馬鹿になりません。そのためフロリダまでは車で行きました。一回の移動が5時間ほどの旅程で9日ほど旅行だったので、もちろん非常に大変でしたが、逆に家族とだけでこれほど長く過ごしたことがなく、非常に新鮮でした。そして旅行中もずっと楽しく過ごすことができ、改めて家族のつながりや大切さに気づきました。もちろんフロリダではディズニーワールドやケネディー宇宙センター、キーウェスト島への7 mile bridge等観光も非常に楽しかったです (Fig.3)。


Fig.2-左;冨永先生とピッツバーグ 大学の前で
Fig.2-右;佐藤先生とワシントンD.C.のワシントン記念塔の前で桜と


Fig.3-左;ケネディー宇宙センター
Fig.3-中;ディズニーワールドのミッキーのアトラクション前
Fig.3-右;キーウェスト等近くのBahia Honda State Parkの海で

 さて研究内容ですが、私の所属するBarbara Labは元々人の検体を用いて肝臓、特に肝炎における免疫細胞を中心に研究し、非常にProductivityの高いLabです。近年、‘Wildling’という実験用マウスの遺伝背景を持ちながらも野生のマウスが有する細菌叢を移植したマウスを作成し、CellやScienceに掲載されました。現在ラボのマウスチームはこのマウスを使って研究しており、私もこのマウスを用いて研究を進めています。留学当初は敗血症や肝再生ににおけるmicrobiotaの役割を研究する予定でしたが、アニマルプロトコールが通るまでに非常に時間を有しました。その間にアニマルプロトコールなしでもできる実験を模索し、そこで面白い結果が得られたことから、現在はその結果を元に2型免疫と細菌叢の関わりについて研究しています。
 Barbara labでは自前のフローサイトメトリー の機器があり、それを用いて研究を主にしています。同僚の韓国からのポスドクは20色ほどで300サンプルほどを一気にやってしまう凄腕で、彼に研究の基礎を教えてもらい、自分でも徐々に15-6色, 3パネル、100サンプルほどのF A C Sができるようになりました。一気に結果が出るのである意味ワクワクしながら実験を行うことができますが、その際は徹夜になってしまうので実験前は非常に憂鬱です。まさかアメリカに来て当直のようなことをするとは思いもしませんでした。まだ投稿するには実験が足りず、1−2週間に1回は泊まりがけで研究をせざるを得ない状況ですが、せっかく与えて頂いた機会ですので、今後も精一杯実験に取り組んでいこうと思います。

留学してすでに1年以上が経過し、日本では中々経験できないことを沢山経験できています。このような機会を与えていただいた寺井教授、医局の方々へ少しでも帰国後にフィードバック出来る様にこれからも帰国後をイメージしながら研究を進めていこうと思います。

同門会の皆様へ