B型肝炎ワクチンならびにC型肝炎ワクチン
独立行政法人労働者健康安全機構燕労災病院
小方 則夫
Ⅰ. B型肝炎(HB)ワクチン
1. 劇症肝炎関連HBV変異株(Strain HT)
1) 臨床事件(水平感染):HBワクチン非接種でありB型劇症肝炎で死亡した医師
1980年代後半、日本において、HBe抗原陰性HBVキャリアである悪性腫瘍小児の診療を担当していた、いずもHBワクチン非接種者である2人の小児科医および1人の看護師がほぼ同時にB型劇症肝炎に罹患し、前2者が死亡するという事件が起きた1)。状況よりHBV感染源は上記小児と考えられた。
本小児に感染していたHBV株は、HBe抗原 encoding geneのpromoterであるprecore領域にstop codonをもち、したがってHBe抗原を産生しない。本変異株は、”precore-stop mutant”と呼称され、「HBe抗原陰性者の血液・体液の暴露により劇症肝炎が発症しやすい」という新しい概念が形成されつつあった。しかし、B型劇症肝炎outbreakの発端者(感染源)や散発性B型劇症肝炎例は血清HBe抗原陽性者が多いとされていたため違和感を持った。
2) Strain HTの微生物学的特性
上記患児血清が、NIH/NIAID/LID/HVS(肝炎ウイルス部)へ付託され、私が実験・研究に供した。
血清中HBV変異株(Strain HTと命名)の感染性・病原性(肝炎発症性)を調べる目的で、チンパンジー3頭へそれぞれ異なる濃度に希釈した血清を経静脈接種した。
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