乳腺内分泌代謝チーム

診療

概要

乳がんは日本人の女性が最も多くかかるがんであり、大きな社会問題となっています。当科では特に乳がんの治療に重点をおいて診療を行っております。乳がんの治療は多岐に渡っており、様々な分野の医師、医療スタッフと協力し、「患者に寄り添い、一人一人に最適な治療を提供する」をモットーに一丸となって努力しています。年間約150例の乳がん手術を行っています。遺伝性乳がん卵巣がんへの取り組みも積極的に行っており、遺伝カウンリングやリスク低減手術の実績も積んでおります。また、患者さん向けの「乳がん診療パンフレット」作成や、医療者向けに「にいがた乳癌学校」を開校し、乳がん医療の知識のUpdateを行っています。

取り扱っている主な疾患

乳がん、遺伝性乳がん卵巣がん、乳腺良性疾患

特色ある治療

1:遺伝性乳がん卵巣がんに対する取り組み

遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)では、BRCA1やBRCA2という遺伝子の異常によって、家族性に乳がんや卵巣がんの発症リスクが高まります。当院では、遺伝医療支援センターとの協力体制のもと、HBOCが疑われる患者さんに遺伝カウンセリングや遺伝学的検査を提供しております。令和2年4月から、HBOCと診断された患者に対して、将来がんが発症する可能性の高い乳房および卵巣を予防的に切除する、リスク低減乳房切除術、リスク低減卵巣卵管摘出術が保険収載されました。当院は、日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構の認定施設として、婦人科や形成外科と連携し、リスク低減手術を積極的に行っております。また、手術を希望されない未発症のHBOCの患者を対象とした定期的な検診(サーベイランス)も実施しております。

2:乳房再建・整容性に向けた取り組み

乳房再建とは乳がんの手術により変形あるいは失われた乳房をできる限り取り戻すための手術です。乳房再建を行うことにより乳房の喪失感が軽減し、下着着用時の補正パットが不要になる等の日常生活の不都合が減少します。乳房再建術は乳がんに対する乳房切除後、および遺伝性乳がんに対するリスク低減乳房切除術後であれば保険診療として実施できます。当院は日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会より乳房再建用エキスパンダー/インプラント実施施設に認定されており、形成外科と協力して乳房再建を行っております。乳房再建の方法(人工物か自家組織か)や乳房再建の時期(乳がん手術と同時か別で行うか)は様々であり、患者1人1人の病状やご希望に合わせて相談していくことが必要となります。乳房再建について希望がある、考えてみたいという方には、形成外科と連携して、安全性と整容性のバランスに配慮した治療を提供いたします。

3:重篤な併存症等を抱えた患者に対する治療提供

超高齢社会となり、乳がんに併存する他の疾患(併存症)を有する患者が増えております。また、重複がんといって、乳がん以外のがんを同時に認めることもしばしばあります。乳がん診療では、がんの状態だけでなく、併存症や重複がんの状況を踏まえて治療方針を決めていく必要があります。当院は厚生労働省が指定する「特定機能病院」であり、高度な医療を提供できる複数の診療科が連携することで、重篤な併存症等で他院では治療が難しい患者に対して治療を行う体制が整っております。また、乳がんの治療では、手術治療のほか、薬物治療(抗がん剤治療やホルモン療法)、放射線治療など複数の治療法を組み合わせて行う集学的治療が求められます。当院では診療科の垣根を取り払い、関係各科が集まって議論するキャンサーボードといった体制により、重篤な併存症を有する患者の治療や集学的治療の方針を検討し最適な治療を提供しております。

教育

若手医師は外科専門医、乳腺認定医・専門医に必要な臨床経験をまんべんなく経験することが可能です。外科専門医取得に必要な外科の基本知識・技能を習得しながら、乳腺に関する専門的技能を学ぶことができます。当チームでの研修では、乳腺疾患の診断手技(診察、マンモグラフィー・エコー・MRIなどの画像読影、細胞診、針生検、切除生検、マンモトーム生検など)、治療手技(手術、薬物療法の適応決定と治療、放射線治療の適応など)を経験し、習得します。また、チーム内での臨床症例検討、臨床研究、学会発表、基礎研究を経験することで、学術も十分に学ぶことができます。早期から大学院へ進学するコースもあり、専門医と博士号を共に早期に取得することも可能です。国内外の学会参加や留学も積極的に行っており、1人1人のニーズに応じて様々な学びの場を提供しています。

取得可能な資格

  • 外科専門医(日本外科学会)
  • 乳腺認定医・乳腺専門医(日本乳癌学会)
  • マンモグラフィ読影認定医(日本乳がん検診精度管理中央機構)
  • がん治療認定医(日本がん治療認定医機構)
  • がん薬物療法専門医(日本臨床腫瘍学会)
  • 臨床遺伝専門医(日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会)
  • 家族性腫瘍専門医(家族性腫瘍学会)
  • 医学博士

主な参加学会

日本外科学会、日本乳癌学会、日本乳癌検診学会、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本内分泌外科学会、日本甲状腺外科学会、日本臨床外科学会、日本外科代謝栄養学会、日本静脈経腸栄養学会、日本癌学会、日本人類遺伝学会、日本家族性腫瘍学会、American Association for Cancer Research (AACR)、American College of Surgeons (ACS)、American Society of Clinical Oncology (ASCO)、Association for Academic Surgery (AAS)、International Society of Surgery (ISS)

など、国内外の様々な学会に積極的に参加しています。

研究

臨床研究と基礎研究:包括的がん遺伝子検査や乳がんのメカニズムの解明に関わる様々な研究を行っており、国内外で評価されています。より多くの患者さんを助けられるように日々精進しております。

若手勉強会(東北新潟若手勉強会)仙台にて
日本乳癌学会学術集会への参加 横浜にて
県内の乳腺外科の先生方と(第3回新潟消化管・乳腺外科研究会にて)

文責:乳腺チームチーフ 諸 和樹