新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野-旧内科学第三講座-

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留学だより

ハーバード大学留学記(1)

2019年7月19日

 2019年4月よりアメリカのハーバード大学School of Engineering and Applied Sciencesで留学をしております。こちらに来てから早3か月が経過しました。今はボストンの短い夏を楽しんでいます。留学生活について、いろいろと書いていきたいと思います。
 ハーバード大学はアメリカ北東部、マサチューセッツ州ボストン近郊のケンブリッジ市にあり、ボストン中心部からは地下鉄で15分程のところにあります。近くにはマサチューセッツ工科大学もあり、典型的な学術都市です。私が所属するThe Mitragotri Laboratory of Drug DeliveryはProf. Samir Mitragotriが主宰する、生体材料やドラッグデリバリーシステム(DDS)に関する研究室です。Mitragotri教授はインド出身で、まだ48歳の若さですが、2017年にハーバード大学に現研究室を開設しました。受賞数49 の内、名立たる賞も数々受賞しており、DDS 技術開発のパイオニアとも称されています。さらに無痛採血器具や超音波を利用した経皮吸収局所麻酔など、これまでに研究した技術を商品化した上で市場へと発信しています。現在商品化されている技術は10 を超え、特許は申請中のものを含めると160 にも上ります。まさにスーパースターです。

 4月4日、初めてMitragotri教授と会った日のことは忘れられません。あいさつを行った後、「So, what do you want to do?」と180km/hの豪速球が飛んできました。そこで私は初めて自分の置かれた状況に気づきました。それはつまり、研究室の材料や人脈は自由に活用してもよいから、自分でテーマを見つけ、研究を計画し、素材を作り、検証を重ねるということです。異国の地での力試しというにはあまりにもタフな状況でした。Mitragotri教授の質問は鋭く核心をつくものばかりで、極度の緊張もあいまって意識を失いかけました。
 そこからまず、ラボのメンバーがどのような素材を扱っており、どのような研究をしているのか、アポイントをとって話を聞き、自分がどのような研究を行いたいのかを話し、その内容に合いそうなメンバーを紹介してもらうという、昔の刑事のような活動が2~3週間続きました。研究室にはアメリカ、ドイツ、ブラジル、インド、中国、韓国、エジプトなど、さまざまな国・地域から、スタッフ、ポスドク、大学院生、学部生などのメンバー約40名で構成されています。それぞれが生体材料を用いた研究を行っており、どのテーマも非常に興味深いものでした。こうした活動を経て、Mitragotri教授と再度相談し、研究テーマを決定し研究を開始しました。全くの新参者が実験を開始するには無数のトレーニング、厳しいプロトコルの査読などを通過せねばならず、6月頃から組織接着性を持つ生体材料について実験などを行っています。実りある成果を得るため、日々頑張っております。

 みなさんも気になさっているであろう、プライベートのことについても少し書いてみます。まずは家族の事情から。私の場合は妻、3歳の娘と渡米しました。妻も同じラボで研究を開始しており、3歳の娘は月~金のフルタイムでpreschoolに通っています。こちらの相場は本当に高く、一週間で約37000円です。『一週間』で約37000円です!!家賃は書くと悲しくなるので察して下さい。娘は最初、毎日泣いていましたが、1か月を過ぎたころからは笑顔で今日どんなことがあったかを教えてくれるようになりました。今では英語の歌をよく口ずさんでおり、成長の早さに驚かされるばかりです。

 ボストンは日本人留学生が本当に多く、「ボストン消化器会」、「ロングウッドで朝食を」など、日本人コミュニティが多数存在します。多種多様な分野のすさまじい人々とお話をする機会があり、刺激を受け、しばしば自信を失い落ち込んでおります。留学先での日本人の存在は非常に心強く、この年になって爆発的に知り合いの数が増えるのも留学の大きな魅力の一つではないかと思います。

 仕事は基本的には9時~5時のため、日が長い現在はマンションの中庭でご飯を食べたり、日本人の集まりでバーベキューを楽しんだりしています。ボストンの人々は短い夏をとにかく濃い密度で楽しむのがスタイルのようで、ビーチ、プール、バーベキュー、野外コンサート、各種フェスティバルなど、毎週末最大限に楽しんでいます。(断じて仕事に支障は来たしておりません!)

 最後になりますが、このような素晴らしい機会を頂きまして、寺井教授をはじめとして髙村医局長、医局の先生方、および同門の先生方に感謝申し上げます。

中嶋 尚 記

Mitragotri教授宅にてラボのサマーパーティー。広くて素敵なお宅でした。
私のデスクがあるWyss Instituteでの一枚。すばらしい研究施設です。
Memorial Dayのボストンコモンの写真。戦没者約37,000人分の星条旗が掲げられます。
July 4th でのイベント。町中が星条旗を掲げ、この週末はお祭り騒ぎでした。
同門会の皆様へ