新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野-旧内科学第三講座-

HOME > Master's Perspective

Master's Perspective

肝癌の腫瘍マーカー”アルファフェトプロテイン”,その量から質への評価の変遷

新潟大学名誉教授 新潟医療センター
青柳豊

はじめに

アルファフェトプロテイン(AFP)はAbelevによりラットの移植腹水肝細胞癌系において見いだされ(1),この報告を契機に,肝細胞癌(HCC)の血清免疫学的診断法として広く普及するに至った(2-4).発見当初,Micro-Ouchterlony法を主体とするゲル内沈降反応がアッセイ系として用いられていた時代ではその検出感度は低く(検出限界,10,000~1,000ng/ml),陽性者のHCC特異性は非常に高いとされていた.しかしながら,Radioimmunoassay, Enzyme-immunoassayの開発により高感度化(検出限界,6~20 ng/ml)が計られると肝硬変(LC),慢性肝炎などの慢性肝疾患においても20~30%の陽性例が認められ,特異性の低下が問題となっていた(5, 6)

著者らはこの問題点を解決するため“HCCで産生されるAFPと慢性肝疾患で上昇を示すAFPとの間には蛋白化学的違いが存在する”という仮説の基,これらの差を見いだす研究を開始した.約40年間にわたるtranslational researchであり,レビューとは異なり,主に著者らの研究の紹介とさせていただきたい.

同門会の皆様へ