新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野-旧内科学第三講座-

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当科で実施可能な医療

食道アカラシアに対する経口内視鏡的筋層切除術(POEM)

食道アカラシアとは

食道アカラシアは食道と胃のつなぎ目の部分がぎゅっと締まってしまい、広がることができなくなってしまう疾患です。食事は食道の出口を通ることができず、長く食道の中に停滞し、様々な症状を引き起こします。発生率は人口10万人あたり2~3人と比較的まれで、食道の神経の変性が原因として考えられています。

症状

嚥下困難感、嘔吐、胸痛、体重減少、咳、誤嚥といった症状が代表的です。またアカラシア患者さんでは食道癌の発生リスクが高いとされており、注意が必要です。

食道アカラシアに対する検査
・上部消化管内視鏡

食道胃接合部はきつくしまっており、胃カメラ通過の際に強い抵抗があります。食道内腔が拡張し、食事の残渣を伴っている場合もあります。初期の場合、内視鏡での診断が難しい場合もあるため注意が必要です

・食道透視

食道胃接合部の弛緩不全のため、バリウムが胃内へ流れず停滞しています。病期が進むと、食道の拡張や蛇行といった所見がみられます。

・食道内圧検査

食道胃接合部の弛緩の有無や蠕動波の消失をみることができ、アカラシアの診断に欠かせない検査です。当院では2013年9月から高解像度食道内圧検査(high resolution manometry)という装置を導入し、より精度の高い診断を行うことができるようになりました。

食道アカラシアの治療法

食道アカラシアに対しては従来から亜硝酸薬やCa拮抗薬等の内服治療、ボツリヌス毒素局注(日本では保険未収載)、内視鏡的バルーン拡張術、外科的な腹腔鏡手術(Heller-Dor手術)等が行われてきました。この中で外科的な手術が最も効果的と考えられていますが、その侵襲性(体への負担)が問題となります。

・新しい治療~POEMの誕生~

【1】食道の粘膜にトンネルの入り口を作成する。

【2】粘膜下層を胃の方へと掘り進み、筋層を露出させる。

【3】筋層を切開していく。

【4】トンネルの入り口をクリップで縫合し、終了。

POEM治療後の食道透視と食道内圧所見です。治療前と比較するとバリウムはスムーズに胃内へ通過しており、内圧検査でも明らかな改善がみてとれます。POEMは麻酔科医による全身麻酔管理下に行われるため、術中に痛みや苦しい思いをすることはありません。治療後数日で退院となり、退院後は日常生活に戻ることが可能です。

治療の効果について

当院では2013年10月にPOEMによるアカラシア治療を開始し、現在は保険診療にてPOEMを行っています。これまでのところ重篤な合併症なく、患者様からも高い満足度を得られています。 また、食道アカラシアに限らず、POEMが有効となる食道運動機能障害があることがわかってきています。

患者様、近隣の先生方へ

アカラシアを初めとした食道運動機能障害は内視鏡での診断が難しく、その診断までに長い時間を要する例が少なくありません。当院では従来の上部消化管内視鏡や食道透視に加えて高解像度食道内圧検査(下図)や24時間pHモニターの導入により、食道運動機能異常を高い精度で診断できるようになってきました。食事のつかえ感、逆流、胸の痛みなどの症状をお持ちの患者様で病院を受診するもなかなか原因が分からない方、また、そのような患者様をお持ちの先生方、是非当科へご相談ください。

同門会の皆様へ