山梨大学消化器内科の紹介・近況報告
山梨大学大学院総合研究部
医学域内科学講座
消化器内科学教室
教授 土屋淳紀
この度は、新潟大学消化器内科のホームページで、山梨大学消化器内科の紹介の機会をいただきありがとうございます。2024年10月まで新潟大学消化器内科に育てていただき、大変お世話になりました。改めましてこの場をお借りし、厚く御礼申し上げます。11月より山梨大学に赴任いたしましたの約7か月がたち、大変やりがいを感じ元気にやっております。この7か月の生活を織り交ぜつつ、山梨大学消化器内科を紹介したいと思います。

山梨大学消化器内科(旧第一内科)は、昭和55年4月に鈴木宏初代教授(後に山梨医科大学 学長)のもと、消化器病学を中心に担当する山梨医科大学内科学講座第一教室として開設されました。鈴木宏先生は肝臓病学の権威であり、日本住血吸虫症の浸淫地でもあり、かつ、C型肝炎ウイルスに関連した肝疾患が極めて多い山梨県において、当科を肝疾患診療の拠点に育てあげられました。市田文弘新潟大学第三内科初代教授と親交があり、お二人の力で日本消化器病学会の甲信越支部ができたと聞いております。平成4年4月には藤野雅之先生が第二代教授に就任されました。消化器内視鏡及び内視鏡画像デジタル管理システムの開発、消化管運動、ヘリコバクター・ピロリ感染症の研究などの領域で大きな功績を残されました。藤野教授は、私の高校の大先輩でもあり、かつて先輩が同じ教授室で働いていたと考えると感慨深いものがあります。さらに平成15年9月に榎本信幸先生が第三代教授(後に山梨大学医学部付属病院 病院長)として着任され「患者さんに親身、仲間と団結、自分を切磋、 常に挑戦」をモットーに、消化管、胆道・膵臓、肝臓を3つの柱として、それぞれを専門とするチームを発展へと導かれ今日に至っております。
山梨大学消化器内科に赴任しての第一印象は、臨床を非常に頑張っているなという事です。山梨大学では消化管、肝臓、胆膵のそれぞれのグループに分かれて、診療を行っていますが、いずれのレベルも非常に高く、多くの患者を抱えているのが印象的です。私の肌感覚では、この“臨床を頑張る”という姿勢はもしかしたら新潟以上かもしれません。しっかり継続していきたいと考えています。また、同門の先生方は、地域で院長先生を多く輩出するなど、山梨の医療を支える中核であることをしっかり自覚して、人材育成をしていかなければいけないことも強く感じています。加えて、私は、日本消化器病学会・日本肝臓学会の【肝硬変診療ガイドライン】の作成委員長も2024年11月に拝命しており、大変名誉なことと感じている一方、非常に大きなプレッシャーも感じながら日々過ごしております。私自身この分野の問題には、一層力を入れて学んでいるところです。


山梨に赴任してからまず、考えたことは“教育”です。「人は城、人は石垣、人は堀」という武田信玄の言葉がありますが、よい人材あっての教室と考え、皆で少しずつ負担が増えるものの教育に手を抜いては行けないと思っています。そのために、4-5年生の実習、5-6年生の実習を根本的に見直しました。臨床所見、臨床データ、画像データをまとめ臨床情報を有機的に理解できるように作成した症例集や専門用語や手技、治療法、画像のポイントなどをまとめたワンポイント解説集も作成し実習に回ってくる学生の理解度を高める工夫をしました。初期研修医には経験すべき症候・疾病・病態がきちんと経験できるように教育責任者を新たに配置し調整したり、教育の充実度をあげる努力をしています。入局後の先生には、きちんとした手技を身につけてもらえる様に独自に質と数を充実させることができる内視鏡のマンツーマン指導形式を持っています。またエコーも枠を設定しマンツーマン指導を行い、さらに新たに動画付きの教材と共に作成し対応しています。胃カメラ、大腸カメラ、エコーの“三種の神器”をいち早くマンツーマンで身につけ、その後の飛躍のスピードを上げようというものです。儀式的な教授回診はやめ、若手医師、研修医、学生がきちんと必要事項を理解して考えられるようになる場になるように限られた時間の使い方にも工夫をするようにしました。こうして臨床の場で活躍できる医師を効果的に育成する事に現在、最も重きをおいています。今まで教育を一所懸命やっている先生方そしてそのような場所に人が集まる様子を見てきました。若い仲間と一緒に医局を作って行くのを楽しみに、教育を楽しみながら行えればと思っています。そして切磋琢磨しながらも、よい雰囲気、働きやすい雰囲気のなか仕事を行うことができる環境づくりが私のもう一つの重要な働きと思っております。
研究も少しずつ始めました。もともと、山梨大学では、榎本前教授がウイルスをやり、遺伝子解析などを得意としている土壌がありました。そこに私が、新潟で培った再生医療研究を融合させることで、全国にもまれな体制が作れるのではないかと考えています。臨床の合間に限られた時間でやる研究ですのでよく考えて、unmet medical needsがある課題に対応し、新潟で学んだ“自分にない特徴をもつ多くの専門家や企業と一緒に共同研究をする”事を生かして、基礎的な研究ばかりでなく臨床に近づく道筋を作っていきたいと考えています。今までにない、新しい研究を山梨からお届けしたいと思っています。
2025年4月1日からは、日本消化器病学会の甲信越支部で支部長を務めさせていただいております。先日も甲信越支部地方会がありましたが、新潟の皆さんとお会いできるのは、とてもうれしいことでした。山梨大学の立場から見ると、新潟にいるときにあまり感じませんでしたが、新潟は医師不足と言われながらもやはり人が多いな、病院が多いなというのが率直な印象です。育てていただいた甲信越支部で切磋琢磨し、恩返しができればと思っております。
それでは皆様とまた、地方会や忘年会などでお会いできることを楽しみにしております。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。